試乗記

ハーレーダビッドソンが世界で展開する1DAYライディングトレーニング「スキルライダートレーニング」を体験してみた

ハーレーダビッドソンが展開する「スキルライダートレーニング」に参加

400kgオーバーのロードグライドがキツいお年頃!?

 ハーレーダビッドソンが世界各国で展開中の公式1DAYライディングトレーニング「スキルライダートレーニング」が日本でも始まることになった。このプログラムはハーレーダビッドソンライディングアカデミーが認定するコーチにより、取りまわしの基本からレベルに合わせた個別の課題に寄り添ったレッスンを行なうもので、1人のコーチに対して5名を基本として手厚くサポートしてもらえる。

 この「スキルライダートレーニング」、自分のバイクで参加することはもちろん、最新のモデルをレンタルして参加することも可能だ。ハーレーダビッドソンを購入してみたものの、まだまだ自分のものにはできていないと感じる人や、これからハーレーダビッドソンに乗ってみたいという方にもピッタリだろう。海外ではおよそ7割の人が他社のオートバイユーザーで、「スキルライダートレーニング」に参加してみて重たいハーレーダビッドソンを乗れるかどうかを判断する人が多く、その後は実際にオーナーになるパターンも多いという。今回はそんな「スキルライダートレーニング」を凝縮したパイロット版を体験させていただく。

 筆者は10年ほど前に「スポーツスター・フォーティエイト」というモデルに惚れ込み、どうしても乗ってみたいと大型二輪免許を取得。それまでは中型二輪免許しかなく、およそ10年ぶりにリターンライダーとなった人間だ。その後はハーレーダビッドソンの世界にのめり込み、ソフテイルファミリーの「ブレイクアウト」に乗り換え、5年ほど前に現在のツーリングファミリー「ロードグライド」へと拡大路線を突き進んできた。

 だが、車重400kgオーバーのロードグライドは50代を迎えたあたりからキツくなり、そろそろダウンサイジングしようかと悩んでいる。次は少し戻って100kgほど軽いソフテイルファミリーの「ローライダーST」あたりか? なんて夢を膨らませている今日この頃だ。というわけで、今回は自らのロードグライドを持ち込むと同時に、「ローライダーST」もレンタル。果たして買い換えるべきか否かも判断してみたい。

左が筆者のロードグライド、右がレンタルした「ローライダーST」。この2台で「スキルライダートレーニング」を体験した

たった数時間でも「スキルライダートレーニング」は貴重な体験

 訪れた会場は東京都調布市にある味の素スタジアムの駐車場だった。そこにはパイロンを並べた特設コースが4つ作られている。まず最初に走るのは8の字旋回を行なうコースだった。パイロンが2つあるだけの単純な作りだから楽勝か!?

 けれどもこれがやってみるとなかなか難しい。まずはレンタルのローライダーSTでトライしたのだが、普段乗る自分のバイクよりも軽快に旋回するものの、目線やパイロンに対する進入角度などをよく考えてからアプローチしないとしっかり曲がれないことを確認。コーチから「もっと内側を見てください!」と声が飛び、それを実行していくと次々にキレイに旋回できるようになるからおもしろい。

指示どおりに実行していくと次々にキレイに旋回できるように!

 慣れてきたところで自分のロードグライドに乗り換えるが、基本を教わった後に乗れば重たいツーリングモデルでもスルスルと8の字を描けるようになってくる。教習所を出て10年。次第に自己流になりつつあるところに喝を入れられたことで、ライディングが今まで以上に楽になってくることを早くも感じ始めていた。

 続くコーナーリングコースでもその基礎は役立つ。目線はやはり重要っぽい。そこではさらにコーナー内側のステップに力を入れると同時に、「外の膝はタンクに押し付けるように旋回してみてください」とアドバイスをいただく。レンタルのローライダーSTはそのアドバイスどおりにしてみると見事なまでに曲がっていく。そこからスロットルを開ければ即座に旋回姿勢から戻り始め、強烈な加速を見せつけてくれるから軽快で楽しい!

コーチからは「外の膝はタンクに押し付けるように旋回してみて」などとアドバイスいただく。そのとおり実行すると見事なまでに曲がっていくからおもしろい

 のちに自分のバイクでもやってみるが、曲がりにくく重いと思っていたロードグライドでも、みるみる曲がるようになってくるから新鮮。曲がらないのじゃなく、自分の乗り方がわるかった。それを改めて見せつけられたようでうれしくもあり悲しくもあり……、である。

曲がりにくく重いと思っていた筆者のロードグライドでも曲がっていけるようになった

 次に挑戦するのは急制動プログラムだ。ここでは普段味わえないABSの効果をしっかりと体験できることや、フロントブレーキがいかに重要かを体験させてくれる。まずはローライダーSTに乗ってリアブレーキだけでどれだけ止まるのかを確認。やってみると、ハッキリ言って全く止まらない感覚。ABSが踏み始めからずっとカリカリ言っている感じだ。

 そこからフロントブレーキを足してやってみるが、フロントをワンテンポ早く効かせ始めるのがポイントだとコーチから伺う。リアから効かせたり、ほぼ同時にやりがちなところだが、重たいハーレーダビッドソンの特性を考えるとコレがベストとのこと。それを心がけて何度かトライすれば、はじめよりも短く止まれるようになっているから安心感が高まってくる。自分のロードグライドだと重いから少し制動距離は伸びる印象があるが、この乗り方を知る前と後では安全度はかなり違っているように思えてくる。

ブレーキ操作についてレクチャーいただく。教わる前と後で安全度が違うことを実感

 最後は歩くくらいの極低速を足を使わずに走るオーバルコースだ。エンジン回転数をわずかに上げた状態をキープしながら半クラッチを使ってそのコースを走れという。コーチは常に横を歩き、コチラの操作を確認。エンジン回転が高すぎるとか、一定になっていないとか、半クラッチがラフだとかをアドバイスしてくれる。できるだけ丁寧に扱うようにできた時、ようやくそのオーバルコースを歩く速度で動かせるようになってきた。速度を上げればラクになるが、それでは意味がない。交差点や路地裏などでもゆっくり動かせることこそ重要なのだと改めて教わった。これは慣れてくれば400kgオーバーのロードグライドでも十分にこなせるようになった。

極低速で走るオーバルコースではコーチが常に横を歩いてレクチャーしてくれた

 たった数時間ではあるが、この「スキルライダートレーニング」は非常に貴重な体験だった。年齢のせい、重さのせいにしてバイクをダウンサイジングしようとしていたのだが、それはもう少し先でも良いのかなと思えたのだから。このように、自分のライディングを冷静に見つめ直すのにはうってつけ。逆にこのプログラムを体験してからハーレーダビッドソンオーナーになるのも良いだろう。これを習ってから公道を走れば、間違いなく安全運転に繋がるからだ。

 最後にコーチ陣によるライディングレベルの判定が行なわれ、筆者はゴールド、シルバー、ブロンズとある中でシルバーだと言われた。コーナーリングと急制動は最上級だが、8の字と極低速はまだ改善の余地ありとのこと。よってシルバーなのだそう。まだ足りないところを上達させ、いつかはゴールドの称号を得てみたいものである。ちなみにゴールドは世界でも数人しかいないというから、かなり高いハードルのようではあるのだが……。

筆者のライディングレベルはシルバー。次は世界でも数人しかいないというゴールドを目指したい!?

 今後は全国のハーレーダビッドソン正規ディーラーが主催して実施するという「スキルライダートレーニング」。1日5時間を目安として、受講料はH.O.G.(ハーレーオーナーズグループ)会員が1万9000円、一般が2万9000円(いずれも消費税込み)となる。みなさまも一度トライしてみてはいかがでしょう? きっと新たなる気づきが得られること間違いなしですよ!

「スキルライダートレーニング」は実に意義深いイベントだった。今後全国のハーレーダビッドソン正規ディーラーが主催して実施するとのこと、興味のある方はぜひ参加してみてほしい
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。