試乗記
これぞフォリクラッセ(規格外)! ランボルギーニの最新HPEV「テメラリオ」をクローズドコースで攻める
2025年12月15日 11:30
ウラカンの血統を受け継ぐテメラリオ、破天荒なスペック
ランボルギーニのHPEV(ハイパフォーマンスEV)の第2弾となる「Temerario(テメラリオ)」に乗ってきた。HPEVの第一弾となるRevuelto(レヴェルト)は以前レポートしたことがあるが、そちらは6.5リッターのV型12気筒エンジンに3つ(フロント2つ、リア1つ)のモーターを加えた構成だった。
今回のテメラリオは4.0リッターのV型8気筒エンジンに基本的には同じようにモーターを加えている。つまりはレヴェルトが事実上Aventador(アヴェンタドール)の後継だったように、テメラリオはUracan(ウラカン)の血統を受け継ぐような立ち位置。ドアはレヴェルトのように跳ね上げ式ではない。
ちなみにサイズを比べてみると、レヴェルトは4947×2033×1160mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2779mm、車重1772kg。テメラリオは4706×1996×1201mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2658mm、車両重量は1690kgと、軽量&コンパクトに収まっている。アルミニウムのフレーム&ボディだからこその仕上がりなのだろう。
けれどもセンタートンネルにはレヴェルトと同じ3.8kWhのリチウムイオンバッテリパックが搭載されているし、フロントEアクスルは220kW/3500rpmで四輪駆動を成立させている。リアは電気モーターをV8ツインターボのハウジングに直接組み込み、どんな速度でもターボラグを回避し、300Nmのトルクを発揮。電気駆動ユニット全体はエンジンとデュアルクラッチトランスミッションの間にコンパクトに配置。スターターモーターや発電機としても機能する。これらの電動化によりウラカン比でCO2排出量を最大50%削減したという。
電動化したというと牙を抜かれたかのようだが、エンジンは単体で最高出力800CV/9000-9750rpm、最大トルク730Nm/4000-7000rpmを達成。システム最高出力でいえば920CVに達し、レブリミットは1万回転! メーカー公表値によれば最高速は343km/h、0-100km/h加速は2.7秒、100-0km/h制動32mとなかなかの破天荒ぶりだ。
テメラリオでしか得られないクルマとドライバーとの一体感
そんな猛牛を会員制コースのTHE MAGARIGAWA CLUBで走らせる。タイトターンが続くと同時に、起伏に富んだエスケープも少ないこの場所をどう走るのか?
ドライバーズシートに収まり室内ピットからエミッションフリーとなるCitta(チッタ)モードにより、モーター駆動でゆっくりと動き出す。これなら早朝の住宅街でもかなりマナー良く振る舞えそう。さすがはHPEVといったところだ。室内ピットのエンドでカーテンがはね上げられたところで、Strada(ストラーダ)モードに入れ、少しずつペースを上げていく。するとエンジンは即座に始動するのだが、まだまだ快適な乗り味とサウンドで一般公道でも快適にこなせそうな世界がそこにある。
けれども、その上のSport(スポーツ)モードとCorsa(コルサ)モードにすると、一気に背後がけたたましく感じてくる。吸気サウンドやエンジンの2次と4次の倍音が増幅され、室内に強調されるようになるのだ。これがHPEVなのかと疑うほど。ちなみにリチャージモードも搭載されており、その際にはモーターアシストはなくなりバッテリ充電を行なう。およそ20分ほどで満充電にすることが可能らしい。
コースとクルマに慣れてきたところで、いよいよ可能な限り全開にしてみる。レブリミットの1万回転まで各ギヤを引っ張り加速していけば、甲高い官能的なサウンドと共に200km/hオーバーの世界へとひとっ飛び。その際、どの領域からもリニアに応答し癖のない躍度を生み出し続けていくから心地いい。
おかげでコーナーからの立ち上がり加速ではテールが多少暴れながらもコントロールはしやすく、手の内に収めやすいところが好感触。コーナーのアプローチでは軽くノーズがインを突き、アクセルオンと共にアンダーステア知らずで軽快に曲がっていくからおもしろい。トルクベクタリング機能があってこその振る舞い。ただ、そこに違和感が一切ない仕立てがすばらしい。
おかげで中速1コーナーからの脱出は早く、その後に続く800mのストレートエンドではパイロンが置かれ、ブレーキングポイントがかなり手前に設定されていたにもかかわらず285km/hをマーク。もしそれがなければこの狭いコースであっても300km/hに到達していたのは間違いない。
一方でタイトターンが連続するシーンにおいても、パワーユニットのレスポンスはすばらしく、エンジン回転がドロップしたとしても、モーターの後押しもあり即座に吹け上がるドライバビリティの高さがある。また、コンパクトなボディやパワーユニットのおかげもあり、レヴェルトに比べればかなりの軽快さでありコーナーリングマシンのように感じる。V8と聞くと時代の流れや下のグレードのように感じる人もいるかもしれないが、それは違う。テメラリオでしか得られないクルマとドライバーとの一体感はほかでは得られないものがある。
官能的であり軽快さが際立つテメラリオの走りを支えていたのは、実は日本のブリヂストン「POTENZA SPORT」である。ウラカン STOより標準装着タイヤとして選ばれてきたPOTENZAはこのテメラリオでも変わることはない。フロント255/35ZR20、リア325/30ZR21というサイズながら、ウエットもドライも高速走行時のコントロールに気を遣ったこのタイヤは、たしかに扱いやすく、限界域も読みやすい仕上がりをしていた。テメラリオとのマッチングも良好であり、クセのないハンドリングが魅力的だ。
今回は同じ枠で目の前を元レーシングドライバーの土屋圭市さんが走っていたので、タイヤについて少しお話しを伺ってみたが、「このタイヤはクルマのサスペンションの一部になっている。サスの動きの周波数とタイヤのサイドウォールの周波数がマッチしていて乗っていてラク。アンダーオーバーが分かりやすくコントロールしやすいね! テメラリオもこんなに鼻先が軽くて軽快に走るから感心したよ」と笑顔で語っていたことが印象的だ。
ここまで走りに徹したテメラリオなら、やはりサーキットで本気で走りを楽しみたいという方にオススメしたい。





























