試乗記

初期型86向け「Re:エボリューションパッケージ(仮)」装着車は想像以上の仕上がりだった!

ワークスチューニング試乗会【TRD編】

TRDが手がけた86、ハイラックスを一気乗り! ハイエースは装着パーツをチェックしてみた

 TRDが用意したのは、今回新たに“ZN6 Re:Evolution Package(仮)”を装着した86、ハイラックス“スーパーワイドトレッドキット”、ハイエース“TRD Selection”の3台。86とハイラックスは試乗、ハイエースはカスタマイズ用品の紹介だ。

トータルバランスにこだわった「86」

 TRDが2014年に創立60周年を記念して制作し、630万円で販売した限定100台のコンプリートカー「86 TRD 14R-60」の乗り味に、現代の技術で近づけることをコンセプトに、2012年~2021年のZN6型を使用して開発を進めているという86。2024年から外観は変わらず、中身がアップデートされている。

ベース車両は86(ZN6型)GTグレードを使用
フロントスポイラー(LED付き)は標準より約25mmダウン、約35mm長い。合成ラバーのエアロタービュレーターも別途装着している
サイドスカートは約35mmダウン、約5mmワイド
リアバンパースポイラーは約10mmダウン、約5mmワイド、約15mm長い。ハイレスポンスマフラーVer.Rを装着
リアトランクスポイラー、リアサイドスポイラーに加え、今回新たにGTウイングも追加された

 内容的にはエアロパーツとサスペンションのチューニングが中心で、今回新たにフロントロアアーム、リアトレーリングアーム、リアロアアームを強化品に交換しつつ、フロントタワーストラット、ステアリングラック、カウルインナー、センタートンネル、トランク、リアエンドにブレースバーを追加。さらにミッションマウント、リアメンバー、リアデフケースのカラーに高剛性のものを追加する「ZN6 Re:Evolution Package(仮)」を装着している。

 86がさらに楽しいクルマになるようボディ剛性を上げるだけでなくトータルバランスにこだわり、車体との一体感を味わえる絶妙なセッティングを開発ドライバーと一緒に作り込んできたという。

 試乗会ではノーマルのZN6と乗り比べることもできたのだが、もはや別物になっていた。ノーマルは初期型で全体的にグリップが乏しく、テールがいとも簡単に流れることをあらためて確認した。それはそれで面白いけどね……(笑)。

エンジンはノーマルのまま。KW製の車高調整式サスペンションキットを装着し、車高は約15mmダウン。バネレートはフロントが80N/mm、リアが90N/mm

 一方のパッケージ装着車は車格がグンと上がった印象で、上質なFRスポーツをドライブしている感覚を味わえる。グリップ感が高く、操舵に対して正確に応答し、リアもしっかりふんばってくれて、スライドしてからもコントロールしやすい。

 タイヤは215サイズのミシュラン「プライマシー」から、235サイズのポテンザ「RE-71RS」に変更されており、ブレースだけでなくホイールを支えるためのアーム類も不要な動きを抑えるため強化されている。

TRDバケットシートとTRD×サベルトの6点シートベルトはすでに発売中
GR86用のクロスミッションを装着(1&2速クロス、3&4強化型)、ファイナルギヤは4.100から4.555へと変更している

 開発スタッフによると、ブッシュ類をつないで駆動系のグニャグニャ感を抑えてあるので余計な動きの影響もなく、セットアップを決めやすかったという。「キモになるところを選んでチューニングしている」とのことで、これだけ多岐にわたればそれなりの価格にはなりそうだが、そのぶん走りも激変している。

ハイグリップラジアルタイヤにちょうどいいパフォーマンスに仕上げている

 スリックタイヤを履けるレベルまで視野に入れたという86 TRD 14R-60は、かなりハードだったが、ハイグリップラジアルまでを想定したという今回のRe:エボリューションパッケージ装着車は、バネレートがやや落とされていて、そこまでスパルタンではなく、むしろちょうどいいかも、という印象だ。

コントロール性も抜群の1台だ

 今回新たに装着されていた「ZN6 Re:Evolution Package(仮)」は現在鋭意開発中で、販売中の強化レリーズフォーク、クラッチディスクとともに、2026年春ごろに数量限定パッケージとして発売予定とのこと。まだまだたくさん流通している中古のZN6型を楽しむための、期待大のアイテムだ。

中古の初期型86をベースに思い切りチューニングするのも楽しいかもしれない!

ハイラックスをワイドでスパルタンな風貌に仕上げるキット

 ハイラックスは、主に海外で販売中の部品などを使用して、国内の車両向けにキット化したという「スーパーワイドトレッドキット」を装着した仕様だ。見てのとおりアドオンすることで、スポーティで力強いルックスにアップグレードできる。

TRDの「スーパーワイドトレッドキット」が装着できるのは「GR-S」グレードと「ROCCO」グレードとなっている。キット内容は、前後オーバーフェンダー、前後インナーフェンダー、フロントサスペンション&スプリング、フロントドライブシャフト&サスペンションアーム&タイロッドエンド、フロントブレーキホース、リアホイールスペーサー

 パーツとしては、前後のオーバーフェンダーとサスペンションを交換するとともに、リアにはスペーサーを追加している。すでに乗っている愛車をリフレッシュしたいときの新たな選択肢として注目すべきアイテムだ。

 走りについても、見た目とは裏腹に意外なほど乗りやすい。ワイド化が効いて安定しているので、重心がそれなりに高いクルマでありながらタイトコーナーでもあまり不安を感じることなく乗れる。見た目がよくなって走りもよくなる、うれしいキットといえそうだ。

エンジンは競技用にチューニング済み。CT12DVタービンや大容量インジェクター、ECU(コンピュータ)の競技用プログラムに書き換えられている
大迫力のオーバーフェンダー
ラゲッジは競技用仕様で、スペアタイヤや油圧ジャッキを搭載している
フルバケットシートやロールケージなど内装も競技用に仕上げられている

 スーパーワイドトレッドキットは東京オートサロン2026で展示予定で、2026年春ごろにパッケージとして発売予定という。海外仕様の情報を知って、日本仕様よりもカッコイイと思った人も少なくないだろう。ハイラックスオーナー諸氏は楽しみにして待っていてほしい。

マッドフラップもTRD製で、サイズは前360×580mm(幅×長さ)、後360×880mm(同)で、厚みはともに4mm

世界各国の選りすぐりパーツを装着したハイエース「TRDセレクション」

 TRDではもともとレース車両製作のため、内外の競技用部品やツール類を輸入販売していた。そんなTRDの目利きエンジニアが今回、モータースポーツでの実績を持つメーカーの商品を使ってハイエースをカスタマイズし、仕事車としての走りと機能をアップグレードしたのがこの「TRD Selection」だ。

TRDのスタッフが世界各国からチョイスしたパーツを装着

 注目すべき装着パーツとしては、ブラジルのKaiser LockerというL.S.D(リミテッド・スリップ・ディファレンシャル)、アメリカのKING SHOCKSのショックアブソーバー、日本のBRIDEのシート、オーストラリアのTJMの追加ハイビームなどが挙げられる。

 こちらもノーマルのハイエースと乗り比べができて、やはり違いは歴然としていた。まずは乗り心地がいいのにコーナーを曲がっても不安なく走れることに感心した。これには大容量のショックアブソーバーが効いている。

TRDフロントスポイラーバンパー(LED付き)にはTJM製スリムラインワークランプを追加ハイビームとして装着
TJMは1973年にオーストラリアで創業し、四輪駆動車向けの高品質アクセサリーを製造・販売しているメーカーだ
TRDサイドスカート
TRDリアバンパースポイラー、TRDマッドフラップも装着

 開発関係者が「ロール角度ではなくロールスピードが大事で、パタンと倒れると怖いけれど、ゆっくりだと怖くありません」と述べていたとおり、ゆっくり動く。乗り心地にガチガチな印象がぜんぜんないことについては、「硬いとグリップしなくなってしまう。ロールしても動いている間はグリップしています。硬いとロールが止まってタイヤのグリップだけになって滑りやすくなるので、ずっと動いていたほうがいいのです」とのことだった。なるほど、おかげでミニサーキットのような場所を走っても乗り心地もいいし、ぜんぜん危ない領域までいかないわけだ。

KINGのサスペンションキットを装着

 ショックアブソーバーを単品で見てみると、たしかにフロント2.0インチ、リア2.5インチというだけあって、太い! おかげで荷物を満載して重量が増しても安定した減衰を発揮するので、高速道路を安定して長距離を走れるだろう。

 走りのよさには、TRDフルバケットシートと同デザインの試作品というBRIDEのシートも効いている。着座フィールがノーマルとは段違いで、ほどよいホールド感で身体を支えてくれる。これまた仕事車にはありがたいアイテムだ。

シートはBRIDEのDIAGOIIIをベースにしたTRDロゴ入りのコンフォートスポーツシート

 さらに右後輪が完全に浮いてしまう特設コースで、開発中の「Kaiser Locker LSD」の効果を体感した。一般的な多板クラッチ式LSDとは異なるロックとアンロックしかしない独自の機構により、いとも簡単に進むことができて驚いた。しかも普通に走っているときにバキバキいうこともない。

開発中の「Kaiser Locker LSD」の効果を体感してみた

 TRDでは昔からこのスグレモノのLSDを使っていて、今回ハイエース用を作ろうとテストしているところだという。これまたハイエースオーナーは要注目だ。

すべてTRDのこだわりを感じられるデモカーだった
岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一