試乗記

【国内メーカー最新電動モデルイッキ乗り】ステアバイワイヤ仕様のレクサス「RZ550e“F SPORT”」はBEVの持つ未知の可能性を感じさせる

3月に行なわれたメーカー合同EV取材会。国内メーカーのBEV/PHEVを主とした最新電動モデルが一同に会し、各モデルに試乗することができた。今回はその第一弾としてレクサス「RZ550e“F SPORT”」編をお届けする

ステアバイワイヤとは?

 トヨタ自動車のマルチパスウェイ。ストロングハイブリッドを中心にPHEV、内燃機関、燃料電池、BEV(バッテリ電気自動車)とあらゆる選択肢を排除せず、市場、用途に応じて幅広く展開する。トヨタしかできない戦略だが粛々と進められている。BEVではトヨタブランドでbz4Xを投入し、最近ではスバルのトレイルシーカーの兄弟車になるツーリングをリリースしている。

 一方、電動化宣言を出しているレクサスはBEVのRZを2023年にデビューさせ、現在は駆動方式、出力の異なる3種類のSUVをラインアップ。最上級のハイパフォーマンスモデル「RZ600」はすでに完売しており、トップグレードは試乗した「RZ550」になる。

今回の試乗車は2025年12月に発売となったBEV「RZ」の「RZ550e“F SPORT”」グレード(950万円)。ボディサイズは4805×1895×1635mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2850mm。電池容量は76.96kWhで、航続距離は582km。前後に167kW(227PS)/268Nmの「2XM」モーターを装着する4輪駆動モデルになる。ちなみに「RZ350e“versionL”」では733kmの航続距離を実現している

 特にRZ550e“F SPORT”はステアバイワイヤを装備している。初めてのシステムだけに長い時間をかけてテストされていたが、2025年秋に発売にいたった。ステアリングロッドを切り離したことで、ステアリング舵角と実際のホイールの切れ角を、速度などのパラメーターを組み合わせることで自在に変えられる。低速では小さな舵角で大きなホイールの切れ角、高速では少しの舵角でわずかなホイールの切れ角を実現している。

 ハンドルはグルグルまわす必要がないので、航空機のような長方形の形を採用し、上下のスペースを得て広い足下や視界が開けた空間ができた。ハンドルの操舵角は最大200度で通常型と違って切り返すという作業がないので最初は戸惑う。

 しかしメリットも大きい。例えばキックバック。通常ステアリングは路面の突起でハンドルが取られる場面もあるが、ステアバイワイヤでは軽く手を添えていればよい。傾斜した路面も同様だ。では接地感はと言えば、路面状況が分かるほどのハンドルフィールを実現しており、走行中に不安感はなかった。

 高速でも同様で、路面からの余分な振動がカットされている。ドライバーの疲労軽減には大きな効果があると思う。ハンドル操舵量は通常は2.5回転~3回転。ステアバイワイヤでは200度。つまり、ほぼ半回転で駐車のような大舵角から、高速での指一本の操舵までまかなってしまう。

レクサスRZ 550e“F SPORT”のインテリア
インテリアではステアバイワイヤシステム用ステアリングホイールが目を引く。ステアリングホイールの回転角は中立位置から左右約200度の範囲で設定されている

クルマが自然に曲がっていくような感覚

さっそく試乗

 試乗は変化のあるテストコースで、中速から高速まで運転した。いろいろなコーナーがあるが、速度とコーナーのRに合わせてハンドルの操舵量がごく自然に変化し、すぐに慣れた。クルマが自然に曲がっていくような感覚だ。ドライバーに染みついたハンドルの操舵感にクルマが寄り添ってくれる感覚だ。

 では駐車はどうだろう? 苦手なバック駐車をやってみた。最初は感覚が追い付かず、ハンドルを切り過ぎて狙った枠を飛び越えた。しかし軽い操舵力と少ない操作量は楽に曲げられると分かると、狙ったとおりの駐車位置に収められた。最小回転半径は5.6mと標準ハンドルと同じだが、操舵量が少なく軽いためか、小まわりが効くように感じられる。

 動力性能では搭載するバッテリの総電力量は76.96kWh。出力はフロントとリアで同じモーターを使ったAWDで、167kW/268Nmの出力はすばらしい余力を生み出す。

速度とコーナーのRに合わせてハンドルの操舵量がごく自然に変化してくれるので、運転にはすぐに慣れた

 WLTCモードでの航続距離は582kmを確保しているので、高速道路の充電網が充実してきた今、BEVの行動半径は確実に広がっている。発進力は爆発的と言うよりも力強く自然な加速だ。追い加速もピッチングが小さいフラットな姿勢で揺れが少ない。

 前後駆動力配分は45:55から80:20まで流れるように変化させ、コーナリングも滑らかだ。前後のタイヤサイズも変えている。フロントは235/50R20、リアは255/40R20のダンロップ「SP SPORT MAXX」を履く。リアのワイドホイールは視覚的にもグンと踏ん張る姿勢で頼もしい。

RZ550e“F SPORT”が履く20インチホイール。タイヤはダンロップ「SP SPORT MAXX」で、サイズはフロント235/50R20、リア255/40R20

 おもしろいのは、エンジン音とトランスミッションの擬似感覚を再現するMボタンがあることだ。短い試乗ではそこまで試せなかったのが残念だった。ヒョンデのアイオニック 5 Nで味わったおもしろさにすっかり心を奪われたが、プレミアムSUVのMモードはどんな経験ができるのだろうか。

 レクサスは実験的なチャレンジもしてきたブランド。RZではステアバイワイヤも一例だが、BEVの持つ未知の可能性を感じさせたモデルだった。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:安田 剛