試乗記
【国内メーカー最新電動モデルイッキ乗り】ステアバイワイヤ仕様のレクサス「RZ550e“F SPORT”」はBEVの持つ未知の可能性を感じさせる
2026年4月1日 07:00
ステアバイワイヤとは?
トヨタ自動車のマルチパスウェイ。ストロングハイブリッドを中心にPHEV、内燃機関、燃料電池、BEV(バッテリ電気自動車)とあらゆる選択肢を排除せず、市場、用途に応じて幅広く展開する。トヨタしかできない戦略だが粛々と進められている。BEVではトヨタブランドでbz4Xを投入し、最近ではスバルのトレイルシーカーの兄弟車になるツーリングをリリースしている。
一方、電動化宣言を出しているレクサスはBEVのRZを2023年にデビューさせ、現在は駆動方式、出力の異なる3種類のSUVをラインアップ。最上級のハイパフォーマンスモデル「RZ600」はすでに完売しており、トップグレードは試乗した「RZ550」になる。
特にRZ550e“F SPORT”はステアバイワイヤを装備している。初めてのシステムだけに長い時間をかけてテストされていたが、2025年秋に発売にいたった。ステアリングロッドを切り離したことで、ステアリング舵角と実際のホイールの切れ角を、速度などのパラメーターを組み合わせることで自在に変えられる。低速では小さな舵角で大きなホイールの切れ角、高速では少しの舵角でわずかなホイールの切れ角を実現している。
ハンドルはグルグルまわす必要がないので、航空機のような長方形の形を採用し、上下のスペースを得て広い足下や視界が開けた空間ができた。ハンドルの操舵角は最大200度で通常型と違って切り返すという作業がないので最初は戸惑う。
しかしメリットも大きい。例えばキックバック。通常ステアリングは路面の突起でハンドルが取られる場面もあるが、ステアバイワイヤでは軽く手を添えていればよい。傾斜した路面も同様だ。では接地感はと言えば、路面状況が分かるほどのハンドルフィールを実現しており、走行中に不安感はなかった。
高速でも同様で、路面からの余分な振動がカットされている。ドライバーの疲労軽減には大きな効果があると思う。ハンドル操舵量は通常は2.5回転~3回転。ステアバイワイヤでは200度。つまり、ほぼ半回転で駐車のような大舵角から、高速での指一本の操舵までまかなってしまう。
クルマが自然に曲がっていくような感覚
試乗は変化のあるテストコースで、中速から高速まで運転した。いろいろなコーナーがあるが、速度とコーナーのRに合わせてハンドルの操舵量がごく自然に変化し、すぐに慣れた。クルマが自然に曲がっていくような感覚だ。ドライバーに染みついたハンドルの操舵感にクルマが寄り添ってくれる感覚だ。
では駐車はどうだろう? 苦手なバック駐車をやってみた。最初は感覚が追い付かず、ハンドルを切り過ぎて狙った枠を飛び越えた。しかし軽い操舵力と少ない操作量は楽に曲げられると分かると、狙ったとおりの駐車位置に収められた。最小回転半径は5.6mと標準ハンドルと同じだが、操舵量が少なく軽いためか、小まわりが効くように感じられる。
動力性能では搭載するバッテリの総電力量は76.96kWh。出力はフロントとリアで同じモーターを使ったAWDで、167kW/268Nmの出力はすばらしい余力を生み出す。
WLTCモードでの航続距離は582kmを確保しているので、高速道路の充電網が充実してきた今、BEVの行動半径は確実に広がっている。発進力は爆発的と言うよりも力強く自然な加速だ。追い加速もピッチングが小さいフラットな姿勢で揺れが少ない。
前後駆動力配分は45:55から80:20まで流れるように変化させ、コーナリングも滑らかだ。前後のタイヤサイズも変えている。フロントは235/50R20、リアは255/40R20のダンロップ「SP SPORT MAXX」を履く。リアのワイドホイールは視覚的にもグンと踏ん張る姿勢で頼もしい。
おもしろいのは、エンジン音とトランスミッションの擬似感覚を再現するMボタンがあることだ。短い試乗ではそこまで試せなかったのが残念だった。ヒョンデのアイオニック 5 Nで味わったおもしろさにすっかり心を奪われたが、プレミアムSUVのMモードはどんな経験ができるのだろうか。
レクサスは実験的なチャレンジもしてきたブランド。RZではステアバイワイヤも一例だが、BEVの持つ未知の可能性を感じさせたモデルだった。









