試乗記

ボルボ伝統のエステート「V60」とフラグシップSUV「XC90」を箱根で試乗 進化した最新モデルの魅力に触れる

ボルボの最新モデルに試乗する機会を得た

 ボルボ最初の1台がスウェーデンの工場からロールアウトしたのは、1927年4月14日の朝のことだった。4気筒エンジンを搭載したオープンカー「OV4」から世界への第一歩を踏み出したボルボは、厳しい北欧の自然や道路環境をベースとした安全思想で、人を第一に想いやる魅力的なモデルを生み出していく。

 その26年後、仕事とレジャーの両方を1台でまかなえる新たなモデルとして「デュエット」が誕生。それが長きにわたりボルボの代名詞となる「エステート」の元祖といわれ、今も「V60」に受け継がれている。

V60 Ultra T6 AWD Plug-in hybrid

 日々熟成と改良を積み重ねているボルボの最新モデルがそろう試乗会で、久しぶりに「V60 Ultra T6 AWD Plug-in hybrid」に触れることができた。日本ではステーションワゴンというカテゴリーの呼び方が一般的なエステートは、全高が1430mmと低く抑えられ、全長4780mmでホイールベースを長くとった伸びやかなボディラインが優美でありながら、フォーマルなシーンだけでなくアクティブなシーンを思わせる機能美も兼ね備える。街中に背の高いクルマが溢れている今では、かえって新鮮なデザインに感じられた。低い全高で全幅が1850mmと意外にスマートなので、機械式立体駐車場が利用しやすいメリットもある。

ボディサイズは4780×1850×1430mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2870mm、車両重量2050kg、最小回転半径5.7m、試乗車のボディカラーはオーロラシルバーメタリック
試乗車が装着するタイヤはミシュランの「プライマシー4」でサイズは235/40R19。ホイールは8.0J×19インチ の6スポーク(ダイヤモンドカット/ブラック)
左フロントフェンダーに充電ポートを備える

 インテリアでは、2025年7月の仕様変更でセンターディスプレイが新世代インターフェイスに変更された。ディスプレイのサイズはやや小さめながら、次世代コンピューター基盤を導入したGoogle搭載で、従来比2倍以上の情報処理速度と10倍のグラフィック生成速度を実現している。同時にドライバーディスプレイのグラフィックスも刷新されており、運転席に身を預けて前を向くと最新ボルボの光景が広がっている。

内装はチャコール仕様。オーディオはハーマンカードンのプレミアムサウンド・オーディオシステム(600W+14スピーカー&サブウーファー)を完備
シートカラーもチャコールでインテリアは統一されている。フロントシートは「電動バックレスト・サイドサポート」「リラクゼーション機能」「パーフォレーテッド仕様」「ベンチレーション機能」を標準装備
後席を起こした状態で最大519Lの収納力を備え、リアシートを格納すれば最大888Lまで拡張する

 シートはステッチが入った上質なレザーで、立体的な形状がほどよく身体に寄り添いながら、ゆったりとした空間が保たれていて心地いい。シフトレバーはスウェーデンの高級クリスタルガラスブランド、オレフォス。日本人が好きな北欧のラグジュアリーが、ここにはある。

9インチのタッチスクリーン式センターディスプレイで「ドライブモード」や「バッテリーの使用」「クリープのON/OFF」「ステアリング操作感」を設定できる
ドライブモードの変更は画面右下にアイコンが設けられワンタップで展開できるように利便性を向上している。Googleアシスタントも搭載し、エアコンやナビなど発話で操作できる

 V60は現在、直列4気筒2.0リッターターボエンジン+モーターを基調に、7速DCTを組み合わせるマイルドハイブリッドのFWDモデルが2タイプと、8速ATを組み合わせるAWDモデルのプラグインハイブリッドがラインアップ。ほかに同シリーズとして、アクティブな要素を強めたV60 Cross Countryも人気だ。ボルボの主力車種としてはSUVに移りつつある現在も、コンスタントに売れているロングセラーモデルとなっている。

パワートレーンは最高出力186kW(253PS)/5500rpm、最大トルク350Nm/2500-5000rpmを発生する直列4気筒2.0リッターターボエンジン(B420)と、フロントに最高出力52kW/3000-4500rpmを発生するT52モーター、リアには最高出力107kW/3280-15900rpmを発生するTZ220モーターを搭載。トランスミッションは電子制御前進8速A/T(ロックアップ機構付き)ギアトロニックを組み合わせる。燃費はWLTCモードで15.6km/L。0-100km/h加速は5.4秒を誇る

 今回試乗するプラグインハイブリッドモデルは、一充電で約91kmのEV走行が可能。任意にバッテリを保留にして好きなタイミングでEV走行に切り替えたり、エンジンで発電して優先的にバッテリを貯める充電モードに切り替えることも可能。試乗コースは箱根方面ということで、最初はバッテリを保留にしてハイブリッドでスタートした。

ステアリングフィールはとってもおだやか

 エンジンが回っているとはいえ、市街地ではいたって低回転で室内はとても静かだ。車両重量は2tを少し超えるが、そうとは思えない転がりのスムーズさと、ロングホイールベースらしい落ち着きのある乗り味が“いいクルマに乗っている”という実感を高めてくれる。19インチタイヤの当たりも硬すぎず、マンホールや路面の継ぎ目をしっとりといなしながら、大切に運んでもらっているような丁寧な乗り味だ。ステアリングフィールにも落ち着きがあり、肩の力を抜いてリラックスして走れるエステートの希少な存在を再認識した。

アクセルを踏み込めばモーターのサポートもありチカラ強く加速する

 海沿いの有料道路に入り、しばしおだやかなクルージングを楽しむ。こんな時、自分のスマホと連携させておいて、Googleに「海が似合う曲をかけて」などと話しかければ、最高のBGMを流してくれるのだろう。そこから、合流や追い越しのために少し強めにアクセルを踏み込むと、飛び出すようなスカッとする加速が瞬時に手に入るところが頼もしい。山道に入ってEV走行を試してみると、路面をしっかりと捉える低重心感がありながらも、スルスルとなめらかな加速が爽快だった。

ゆったりと流すクルージングも快適

XC90 Ultra T8 AWD Plug-in hybrid

 続いて乗ったのは、ボルボのフラグシップモデルであり、3列シーター7人乗りSUVとなる「XC90 Ultra T8 AWD Plug-in hybrid」。2025年に大幅改良を受け、デザインやインターフェィスが最新世代となった。全長4995mm、全幅1960mmの堂々たる体躯となるが、とくに売れているのは都心部だという。従来より前輪の位置を10cmほど前に出し、フロントフードが長くなったスタイリングはとても美しくモダンで、確かに都心の景色にも溶け込みそうだ。

ボディサイズは4955×1960×1775mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2985mm、車両重量2300kg、最小回転半径6.0m、試乗車のボディカラーはブライトダスクメタリック

 インテリアも刷新されており、従来からの上質でモダンな北欧デザインをブラッシュアップしながら、XC90ユーザーからのフィードバックに応えた実用性の高い設計となっている。カップホルダーやワイヤレス充電器の位置見直しや収納スペース拡充によって、見た目よりずっと使いやすさを感じる。ディスプレイも大きく、見やすさと操作しやすさがベストなバランスだ。

内装は汚れの目立ちにくいチャコール(灰色)

 シートは、肌に触れただけで上質感が伝わってくるファインナッパレザーが使用されており、ふっくらとしたクッションや背もたれに包み込まれるような座り心地。これが3列目シートにまで統一されており、2列目シートの中央にはジュニアシートの役割を果たしてくれる「インテグレーテッド・チャイルド・クッション」が標準装備というのもボルボらしいところ。

シート素材はファインナッパレザーでカラーはカルダモン
3列目もゆったりした空間が広がる。乗り込む際は2列目シートを前方に倒してスライドする
2列目中央にはジュニアシートにもなる「インテグレーテッド・チャイルド・クッション」を標準装備

 3列目シートは身長170cm以下を想定しており、乗り込む際には2列目シートを倒してスライドする操作が少しコツはいるものの、座ってしまえば窓が大きくガラスルーフが標準装備で圧迫感もなく、これなら長めのドライブでもリラックスしやすそうだと感じた。

3列目の背もたれを起こした状態でも最大262Lのラゲッジスペース容量を確保する。3列目を格納すれば692Lまで拡張するほか、トランク床下にも31Lのスペースを備える。また、2列目は3分割なので中央だけを倒せば長尺荷物にも対応する

 XC90には現在、直列4気筒2.0リッターターボ+モーターのマイルドハイブリッドが2タイプと、このプラグインハイブリッドがあり、すべてAWDモデル。プラグインハイブリッドは一充電で約73kmのEV走行が可能となっている。ドライブモードには「hybrid」「Power」「Pure」に加え、「Off-road」と「AWD」があり、このグレードのみに装備されるエアサスペンションとあいまって、走行状況に応じた最適なバッテリ制御と乗り心地が提供される。

パワートレーンは最高出力233kW(317PS)/6000rpm、最大トルク400Nm/3000-5400rpmを発生する直列4気筒2.0リッターターボエンジン(B420)と、フロントに最高出力52kW(71PS)/3000-4500rpm、最大トルク165Nm/0-3000rpmを発生するT57モーター、リアには最高出力107kW(145PS)/3280-15900rpm、最大トルク309Nm/0-3280rpmを発生するTZ220モーターを搭載。トランスミッションは電子制御前進8速A/T(ロックアップ機構付き)ギアトロニックを組み合わせる。燃費はWLTCモードで13.3km/L。0-100km/h加速は5.3秒を誇る

 いきなり箱根の山道から走り始めたにもかかわらず、そのグイグイと力強いパワーを悠々とした豊かさに変えるような走りに心を奪われた。カーブではV60よりおおらかな挙動となるものの、それがまたワイルドな感覚で気持ちもアクティブになってくる。

 ディスプレイの「ドライビングダイナミクス」のところで、ステアリング操作感も「ソフト」か「硬め」かを選択でき、今回は「硬め」にしてみるとちょうど引き締まった操作感で山道も走りやすかった。

どっしりした2.3tのボディは安定したクルージングを楽しめる

 そして、ドライブモードで「AWD」を選択すると、どっしりとした重厚な接地感とともに、後輪からもしっかりとした蹴り出しが感じられ、山道の下りでの安心感が高まったように思えた。好みは分かれるが、Bモードにするとリアモーターで効率的な回生ブレーキを使うことができ、アクセルペダルのみで減速から停止まで可能。

 観光客で賑わう箱根でのちょっとした渋滞時なども、操作がラクで負担を感じにくい。バッテリに余裕があれば、「hybrid」にしていても強くアクセルを踏み込んだりしない限りはモーター走行を優先してくれるようで、室内はとても静かでラグジュアリーな空間。帰路ではアップライトな視点で、再び海沿いのドライブを堪能させてもらった。

大きなボディだがしなやかにコーナリングしてくれる

 今回は大きな荷物はなかったが、V60もXC90も大容量かつ使い勝手のいいラゲッジルームが備わっていることも大きな魅力。レジャーやスポーツで荷物が多くても、これならすっきりと積み込んで出かけられることだろう。安全をベースに、人が豊かに過ごすためのあらゆるシーンへ想いを馳せて実現する機能の数々。急速に電動化へと突き進むボルボだが、そうしたボルボらしさは失われることなく、むしろ加速していることをあらためて実感した試乗となった。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラス、スズキ・ジムニーなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSD。

Photo:堤晋一