試乗記

テスラ新型バッテリEV「モデルY L」に速攻試乗! ロングホイールベースになった乗り味や実用性を確認してみた

テスラの新型モデルY Lに試乗

「モデルY L」と聞くと、ミッドサイズSUVの世界販売台数No.1となる「モデルY」の追加グレードなのかと思ってしまうが、実はテスラにしか実現しえない究極のファミリーカーを目指し、中国チームと協力しながら開発が進められたモデルだという。6人乗りオールラウンドSUVとして、どのような違いや進化ポイントがあるのか、興味津々で都心を試乗した。

 もちろん、モデルYから受け継いでいるものもある。フロントマスクやスタイリング全体の印象もそうだが、「運転しやすさ」「実用性」「安全性」という基盤が受け継がれ、プラスされた「L」がロングを意味する通り、ボディサイズとしては全長がモデルYより190mm長い4980mm、全幅は同等の1920mm、全高は45mmアップして1670mmとなった。

モデルY Lのボディサイズは4980×1920×1670mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは3040mm。日本でのグレードは「プレミアム」のみで価格は749万円
ボディカラーは「ステルスグレー」が標準色で、そのほかに試乗車の「コズミックシルバー」をはじめ、「ダイヤモンドブラック」「グレイシャーブルー」「ウルトラレッド」「パールホワイトマルチコート」などは有償カラーとなる

 ホイールベースも150mm延長しており、3040mmとラージセダン並みを確保。ルーフライン全体を再設計し、エレガントで上質なデザインを作り上げつつ、3列シートでもゆったりとした室内空間を実現している。

 そしてロングになったのはサイズだけでなく、航続距離も一充電あたり788kmをマーク。例によってテスラは電池容量を公開していないが、モデルYのロングレンジが682kmだったため、大幅に伸びてミッドサイズセダンである「モデル3」の766kmも超えてきた。

19インチ マキナ2.0ホイールに、タイヤは前後ともコンチネンタルタイヤの「エココンタクト7S」を装着。サイズは前255/45R19、後275/45R19

 駆動方式はデュアルモーターAWDのみだが、驚くのは空気抵抗係数であるCd値が0.216と、セダンに勝るとも劣らない数値を達成していること。ボディサイズに応じたバッテリ増量にプラスして、この驚異的な空気抵抗の小ささも航続距離アップに貢献しているはずだ。

ルーフの形状はホイールベースを伸ばしたことで再設計。Cd(空気抵抗)値はSUVでありながら驚異の0.216を誇るほか、モデルYよりも風切り音を11%、ロードノイズを4%低減している

 この3列シートの大空間と、800kmに迫る長い航続距離によって、モデルY Lは多人数でのロングドライブを容易にでき、利用シーンが大きく拡大した。「モデルX」のようなファルコンウィングドアではなく、オーソドックスなヒンジドアを採用しているが、3列目シートへのアクセスをスムーズにする2列目キャプテンシートが備わり、ミニバンとして使いたいファミリーにも魅力的なパッケージに仕上がっている。

エクステリアデザインはモデルYを継承

 そして室内に入ると、大きなガラスルーフが2列目シートの頭上まで広がり、圧迫感のない視界をつくっている。全シートを再設計したといい、前席はクッションの厚みがあって電動のレッグサポートも付いている。

内装の標準色は「オールブラック」。試乗車の内装色12万6000高の「ゼングレー」
前席はシートヒーターとベンチレーション、ランバーサポートも標準装備
前席は電動レッグサポートも備える

 2列目と3列目はやや薄型だが、キャプテンシートとなる2列目の座り心地はふっくらとしており、座面の大きさも申し分ない。最大125度の電動リクライニングと、電動で昇降するアームレストがプレミアム感を演出。小ぶりだが、あるだけで姿勢が安定してリラックスできる印象だ。

2列目には自動昇降式アームレストを完備(左が格納状態、右が使用状態)。さらにシートヒーターとベンチレーションを標準装備するほか、ドリンクホルダー、エアコン送風口、USBポートも備える

 3列目シートはさすがに狭いかと思いきや、足下・頭上ともにわずかながら余裕がある。リアスポイラーにハイマウントストップランプを内蔵することで、ガラス面をフリーにして3列目シートのヘッドクリアランスを稼ぐとともに、後方視界も確保。小学生ならかなりゆったり座れるはずだ。もちろんファミリーユースを想定しているので、チャイルドシートの装着にも対応している。

3列目ともにドリンクホルダー、エアコン送風口やUSBポートも完備

 ラゲッジは6人乗車時だと奥行きは短いが、28インチと20インチのスーツケースが積載可能だという。加えてテスラでは「フランク」と呼ぶ、フロントの収納スペースにも20インチスーツケースが入る。3列目シートがワンタッチで電動折り畳み可能で、最大積載量は2539Lと大型SUV並みを確保している。

3列目シートを使用した状態のラゲッジスペースは420L
ラゲッジスペースの下段にも収納スペースを設けている
2列目シートは通常の位置で3列目シートを倒した状態
3列目シートを倒し、2列目シートを前方に動かせば最大2539Lの容量を確保できる
フランクの収納容量116LはモデルYと同じ

テスラらしいどっしりと安定感のある走りが特徴

 運転席に乗り込めば、あとはステアリングを握ってアクセルを踏み込むだけという、テスラならではの走り出しはボディが大きくなったことなど微塵も感じさせない、スマートで余裕たっぷりの加速フィールに感心した。

 車道に出る手前で一時停止する際にも、全高がアップしたような前のめり感がなく自然なブレーキング。リアタイヤが遅れることなくついてくる感覚で、路面をしっかりと捉えて加速していく安定感も感じられる。少しラフにアクセルペダルを扱った場合などに、スイッチ的な反応をすることもなくはないが、市街地でのコントロールしやすさもアップしているような印象だ。

走りはいたってスムーズで余裕たっぷりの加速フィールを味わえる

 そして速度を上げていっても変わらない、安定した乗り心地。最大100kgのダウンフォースを発生するという新しいリアスポイラー、アダプティブサスペンションの採用や、リアタイヤのサイズアップで後席まで快適性を高めていることもあるが、ボディ下部は一体成型のリアアンダーボディを再設計し、フロアスチールビームの増強などで車体剛性をアップするなど、見えない部分の進化も大きいようだ。

 ディスプレイで車両の減衰量調整を選ぶことができたり、「リアコンフォートモード」を選ぶとリアの接地感が高まりつつ、後席がしなやかな乗り味に変化するのも感じられた。

加速や減速、乗り心地とハンドリング、トラクションコントロールなどはディスプレイで設定を変えられる

 短時間の試乗では魅力的なクルマだと感じたが、ネックになるとすれば、日本の道路事情ではやや大きさが気になるボディサイズと実店舗の少なさ、ミニバンといえばスライドドアという既成概念を崩せるかどうか、というところ。

 ただ、テスラの面白さは破天荒ともいえるキャンペーンやサプライズを用意してくるところにもある。今回もこのモデルY Lの発売に合わせ、6月30日までに納車を完了すると「燃料代3年間無料」という前代未聞のキャンペーンを打ち出している。

速度を上げても安定した乗り心地が続く

 もちろんテスラはバッテリEV(電気自動車)なので、全国に約146か所ある「テスラ スーパーチャージャー」による充電代を無料にするというものだが、あえて“燃料代”というのはガソリン車からの乗り換え需要にも期待しているからだろう。

 年間1万km走行する場合、3年間の燃料代は約29万円になると仮定し、それがテスラなら0円というのはなんとも心揺さぶられる。国からの補助金も127万円と高額。東京都ならさらに60万円。着々と生産能力を拡大中のテスラは、納車期間も1~2か月と短いそうだ。こうしたスマートさ、スピーディさに惹かれる人にも、モデルY LはおすすめしたいバッテリEVモデルとなっている。

Y Lではなく、Yを連ならせることでロング感を表現したロゴマークもかわいい
まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラス、スズキ・ジムニーなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSD。

Photo:堤晋一