試乗記

メルセデスの新型「CLA」に試乗 余裕があって軽やかでスムーズな走りと最新インフォテインメントを堪能

CLA 180

Sクラス譲りの最新技術を盛り込んだ1台

 4ドアクーペの元祖は日本車らしいが、世界的大ヒットとなった4ドアクーペといえば、やはり2004年に誕生したメルセデス・ベンツCLSが先駆けだろう。あのうっとりするほど美しいボディラインは、メルセデス・ベンツの新境地を開いたといって間違いない。ただ、あの美しさと堂々たる存在感の両立は、フルサイズボディだからこそ成し得たものだと思われた。とくにフロントから流れるように弧を描くルーフラインを出すのは、コンパクトボディでは難しいとデザイナーから聞いたことがある。

 だから、2013年に初代CLAが登場したときは心底感心したものだ。実用性第一のモデルが多かった中、どこからどう見ても4ドアクーペ。メルセデス・ベンツの基本となるデザイン思想「Sensual Purity(官能的純粋)」に基づいて、ラインやエッジを減らした艶やかなデザインが目を引いた。そして2019年に2代目へと進化すると、そのデザインは一層セクシーに磨かれ、サイドから見なければドアが4枚あるとは思えないほどにクーペらしさが強まっていた。これは初代のころはエントリーモデルのセダンとしての役割も満たす必要があったが、2代目の頃にはAクラスセダンがラインアップされていたため、CLAはもっとデザインコンシャスに振ることができたのではないかと思われる。

 今回、3代目へと生まれ変わった新型CLAはどうだろうか。全長4725mmはコンパクトというにはやや大きくなったものの、エモーショナルな中にモダンな世界観を漂わせるデザインは、美しいだけではない強さと賢さを伝えてくる。実は今年2026年は、1886年にゴットリープ・ダイムラーとカール・ベンツが自動車を発明し、特許を取得してから140周年にあたるという。その長きにわたる技術革新を、現代の技術で再解釈した新世代モデルがこの新型CLAとなっている。プラットフォームやドライブトレーン、トランスミッション、サスペンションからデジタル体験までを刷新しているが、根本的な違いとしてはまず、新プラットフォーム「Mercedes-Benz Modular Architecture(MMA)」を採用し、1.5リッターガソリンハイブリッドと同時にBEVもラインアップしていること。これはBEVを主軸に開発されたプラットフォームだが、高効率な内燃機関モデルにも対応する柔軟性を備えており、ボディタイプは4ドアクーペに加えてシューティングブレークも展開。幅広い選択肢が用意されている。

CLA 180(598万円)。ボディカラーはクリアブルー(メタリック)。撮影車は、オプションのレザーARTICO/MICROCUTシート、AMGラインエクステリア、AMGラインインテリア、本革巻スポーツステアリング(ナッパレザー)などがセットになったAMGラインパッケージ(59万8000円)と、アダプティブハイビームアシスト・プラス、マルチビームLEDヘッドライト、ヘッドアップディスプレイ、Burmesterサラウンドサウンドシステムなどがセットになったアドバンスドパッケージ(57万8000円)を装着。ボディサイズは4730×1335×1455mm(全長×全幅×全高、AMGパッケージ非装着車は全長4725mm、全高1470mm)、ホイールベースは2790mm。車両重量は1660kg(AMGパッケージ非装着車は1650kg)。最小回転半径は5.2m
AMGラインパッケージにより、19インチAMGアルミホイールを装着。タイヤはミシュラン「e・PRIMACY2」(225/40R19)
フロントに望遠広角カメラを設置。ドアミラーには斜め後方の状況を監視するマルチファンクションサイドカメラが新設された。これらのカメラやセンサーで得られた情報を独自開発の「MB.OS」で処理し、運転支援などに役立てているという。なお、自動運転系の制御にはNVIDIA製のチップを、インフォテインメント系の制御にはクアルコム製のチップを使用しているとのこと
ヘッドライトとウインカーの点灯パターン
リアランプのウインカーの点灯パターン

 今回はガソリンハイブリッドモデルを試乗したが、そのエンジンも新開発。直列4気筒1.5リッターガソリンエンジンの「M252」はメルセデス・ベンツ史上最も効率のよいエンジンの1つと言われており、新型CLAには最高出力100kW、最大トルク200Nmの「180」と、最高出力140kW、最大トルク300Nmの「220」を設定。どちらも48Vハイブリッドシステムを搭載しており、電気モーターを統合した8速デュアルクラッチトランスミッションを組み合わせる。エンジンにもさまざまな工夫があり、オールアルミ製クランクケースはそれぞれのシリンダーブロックの内側に「NANOSLIDE」という超低摩擦コーティングが吹き付けてある。これによって鏡面に近い滑らかな表面と、潤滑油を保持する微細な孔を両立し、高出力と燃費向上に寄与するほか、部分的に排気マニホールドを統合したシリンダーヘッドや、セグメント化タービンを備えたターボチャージャーを採用。徹底的に高効率や効率維持、耐久性などにこだわって開発していることがうかがえる。さらに48Vエアコンコンプレッサーの採用により、エンジン停止中も単体で作動することができ、試乗日のような猛暑でも信号待ちでエアコンまで止まってしまうことがなく、乗車前にアプリであらかじめ車内を適温にしておくことも可能となっている。

CLA 180は最高出力100kW(136PS)/5500rpm、最大トルク200Nm/1600-4500rpmを発生する直列4気筒1.5リッター「252」型エンジンを搭載。ハイブリッドモジュールに最高出力22kW/1150rpm、最大トルク200Nm/0-1000rpmを発生する「EM0046」モーターを搭載する。トランスミッションは8速ATで、前輪を駆動する。WLTCモード燃費は20.3km/L

 もう1つの大きな進化が、6月に先んじて新型Sクラスに搭載された、メルセデス・ベンツ自社開発のオペレーティングシステム「MB.OS」が新型CLAにも搭載されたこと。これは、従来はインフォテインメントや自動運転機能など別々に管理していたものが、車両に深く統合されたチップ・トゥ・クラウドアーキテクチャによって一括で制御することができるというもの。主要な車両ソフトウェアがOTAで継続的にアップデート可能となり、購入した時期によってクオリティに差がつかないことも大きな魅力だ。

 そのMB.OS上で作動する最新インフォテインメントシステム、第4世代となった「MBUX」も搭載されている。これは複数のAIを1つのシステムに統合した新しいMBUXバーチャルアシスタントによって、まるで友人と会話しているような自然なコミュニケーションを可能とするという。試乗時には「ぜひいろんな会話を楽しんでください」と、会話例のシートまで用意されていた。これまで、車内AIとの会話で満足した経験が乏しいのだが、果たして新型CLAはどうだろうか。

CLA 180のインパネ
AMGラインパッケージの本革巻スポーツステアリング(ナッパレザー)。左スポークにはACCの設定ボタンを、右スポークにはオーディオやメーターなどの画面を変更できるボタンを配置
ステアリング右側に生えているノブがスタート/ストップスイッチ兼シフトとなる
デジタルコックピットディスプレイは好みに応じて変更可能
独自開発の「MB.OS」に加え、第4世代のMBUXを採用する最新のインフォテインメントシステムを搭載し、メディアディスプレイにはGoogleと提携して開発した新世代のMBUXナビゲーションなどの情報を表示するだけでなく、左上に表示されているMBUXバーチャルアシスタント(今回は丸っこいキャラクターの「リトルベンツ」を選択)との会話も可能。MBUXバーチャルアシスタントではナビゲーションに関連する会話はGeminiやGoogleマップをベースとし、通常の対話にはChatGPTや検索エンジンとしてマイクロソフトのBingを採用している
助手席側の大きなMBUXスーパースクリーンはオプション装備。今回、中央のメディアディスプレイと助手席のスクリーンで、連続した同一テーマの背景を表示できるようになった。表示にはUnityのゲームエンジンを採用しており、滑らかで高解像度な映像を映し出せる
フロントシート
リアシート
パノラミックルーフは標準装備。ヘッドクリアランスを広く確保したり、常に開放的な室内空間を演出したりするため、今回はシェードが廃止された。ガラスの外側には赤外線コーティング、内側にはLow-Eコーティングを施し、UVカット率は99.9%を実現。夏の暑い日は車内の温度上昇を抑え、冬の寒い日は車内を温かく保つといった、季節を問わず車内を適温に保つ機能も備えている
セダンのラゲッジルーム。ゴルフバッグ2個を積載できるスペースを確保しており、トランクスルー機能も採用

走り以外の機能も満喫

 運転席に乗り込むとまず、助手席側まで大きなディスプレイが続く、オプションのMBUXスーパースクリーンに圧倒された。センターコンソールは2段構えで、部分的に配されるシルバー加飾がアクセントとなって、個性的かつ先進的なインテリアだ。頭上のゆとりは前席・後席とも想像以上。フロントガラスのフレームから後方までシームレスに広がる一体型固定式のパノラミックルーフが標準装備で、視覚的な開放感もあって居住性はしっかり確保されている。

CLA 180に試乗

 試乗したCLA 180の走りは、操作に忠実な滑らかさと余裕を感じさせる加速フィールが印象的。全体的にはしっかりとした接地感がありながら、再加速シーンなどでは軽やかさも顔を出す。街中のストップ&ゴーはキビキビと、幹線道路などでは伸びやかさもあり、そのバランスがちょうどいい。欲しいところではモーターが賢くアシストしているばかりか、実は22kW/85Nmの電気モーター一体型のトランスミッションには3つのクラッチがついており、モーターのみでの走行もこなす。上限の速度はなく、22kWに達するまではモーター走行ができるということで、今回の試乗中も頻繁に切り替わっていたはずだが、乗っていてそれが明確にわかる瞬間はないほどスマートだった。

 一方で少し強めに踏み込んでみると、ターボらしくパワーの盛り上がる感覚がエモーショナル。減速では8速すべてで回生を行なうこともあり、メリハリの効いた加減速がしやすいことから、もしワインディングなどに行っても楽しそうだと感じた。サスペンションはフロントに新開発の3リンク式、リアにマルチリンク式を採用しており、上級モデルで培われた技術を注いでいるというように、段差を乗り越えた際の振動もすぐに収束させる。タイヤは19インチのミシュラン・eプライマシーを履いており、後席ではやや接地感の硬さを感じるシーンもあったが、前席では乗り心地はおおむね快適だった。

走りはスマート

 そして帰り道に、MBUXバーチャルアシスタントに話しかけてみた。ディスプレイには「リトルベンツ」など3つのアバターから選んで表示させることができ、ヒョコヒョコした動きがちょっとかわいい。周囲を見ていてパッと頭に浮かんだ質問を投げてみる。

「この辺りのタワーマンションの相場は?」
「…………」

 あわわ、いきなりちょっと意地悪だったか。やはり最初は会話例シートの中から話しかけてみよう。

「冷蔵庫の中に豚肉ともやしがあるんだけど、おすすめのレシピある?」
「それなら、こういうのはどうですか。まずフライパンに油をひいて……」

 すごい。スラスラ~っとよどみなく、おいしそうなレシピを披露してくれた。運転中なのでメモれないんだけど……と思わなくもなかったが、この調子でほかにもいろんな会話ができた。後席から話しかけても答えてくれたので、これならドライブ中にスマホを出して検索することなく、MBUXに話しかけて解決できるようになるのだろう。タワマン事情には詳しくないようだが。

 ちなみに今回、ラッキーなことに短時間ではあったがCLA 220 シューティングブレークにも試乗することができた。全長もホイールベースも4ドアクーペと変わらないため、運転している感覚としては挙動の違いなどはなく、とても扱いやすい。乗り味は上質感がやや増した印象があり、低中速域がメインの街中ではパワーもトルクもまだまだ余っている。もっと高速道路でバーンと踏み、ロングドライブをするようなシーンで乗ってみたいと思った。1.5リッターと聞いてガッカリする必要はなく、ディーゼルじゃなくて悲しむ必要もなく、新型CLAは確かにこれからのメルセデス・ベンツを担っていくモデルなのだと実感させてくれる。BEVに乗るのも楽しみになった。

CLAはパワートレーンに出力違いの180と220のハイブリッドモデルのほか、200と250+のEVも設定されており、さらにセダンとシューティングブレークというボディタイプもラインアップされ、幅広い選択肢を持つ
まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラス、スズキ・ジムニーなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSD。

Photo:安田 剛