試乗記

スズキの新型クロスオーバー「SV-7GX」に試乗してみた

快適性を手に入れ継承されたスズキのVツインモデル

2026年10月20日 開催
スズキの新型クロスオーバー「SV-7GX」に試乗してみた

 スズキは10月20日、新型ミドルクラスモデル「SV-7GX」の報道関係者向け商品説明会および試乗会を開催。山梨県富士吉田市の人材開発センター 富士研修所を拠点に開催された試乗会で、新型「SV-7GX」で富士五湖周辺を試乗できたので、その印象をお伝えする。

 SV-7GXは、ロードスポーツ「SV650」の軽快なハンドリングと、アドベンチャーツアラー「Vストローム650」の高い快適性を高次元で融合させた、新設計のミドルクラス・クロスオーバーモデル。2024年に登場したGXシリーズのフラグシップ「GSX-S1000GX」のプロポーションとダイナミズムを色濃く受け継ぎながら、日常の街乗りからロングツーリングまで、気兼ねなく楽しめる俊敏性と快適性を備えたモデルとなる。

スズキが新たに投入したミドルクラスのクロスオーバーモデル「SV-7GX」

チーフエンジニア加藤氏「身近にクロスオーバーを楽しんでほしい」

商品説明会に登壇した開発陣。左からテストライダーの赤堀康裕氏、車体設計の甲斐智樹氏、エンジン実験の伊藤篤氏、エンジン設計の小出翔氏、チーフエンジニアの加藤幸生氏

 商品説明会の冒頭、二輪商品企画部 チーフエンジニアの加藤幸生氏が登壇し、SV-7GXの開発の狙いを語った。加藤氏は「GSX-S1000GXは新しいカテゴリーへの挑戦でしたが、発売以来、スポーティなのに疲れにくい、用途を選ばず楽しめるクロスオーバーという新しい価値を実感していだけました。本日ご紹介するSV-7GXは、より多くのライダーにより身近にクロスオーバーを楽しんでほしいという思いで開発したモデルです」とその狙いを紹介した。

 また、スズキのVツインモデルを次世代に継承するという狙いもあり、開発コンセプトには「響く鼓動、新たな旅のその先へ」を掲げる。「Vツイン独特のビートを刻みながら、新たな体験や新たな旅の広がりを感じてほしい。そんな思いも込めています。私たちが追求してきたのは、速さだけではなく、鼓動、常用域での扱いやすさ、そして操る楽しさです。SV-7GXはライフスタイルや多様な走り方に寄り添う、新しいミドルクラスのクロスオーバーに仕上がっています」とその仕上がりに胸を張った。

電子制御スロットルを得てスズキのVツインエンジンが新世代へと進化

スズキのVツインエンジンを次世代に継承するSV-7GX

 SV-7GXに搭載されるパワーユニットは、1999年の初代登場以来、世界で累計50万台以上を生産してきたVツイン、645cm 3 水冷4サイクル90度V型2気筒DOHC4バルブエンジン。最高出力54kW(73PS)/8500rpm、最大トルク64Nm/6800rpmを発生しつつ、最新の排ガス規制「ユーロ5+」および国内排出ガス規制に対応した。

 技術的なハイライトとしては、独立制御が可能な電子制御スロットルバルブの採用で、機械式ワイヤ連動だった前後シリンダのスロットルを個別に緻密制御することで、極低回転域からリニアかつスムーズなスロットルレスポンスを実現させたという。

 さらに、スズキの電子制御技術「S.I.R.S.(スズキ・インテリジェント・ライド・システム)」を投入。路面環境や好みに応じて出力特性を3段階に切り替えられる「SDMS(スズキ・ドライブ・モード・セレクター)」、スピン発生時から点火時期とスロットル開度を協調制御して自然な介入感をもたらす3モード+OFFの「STCS(スズキ・トラクション・コントロール・システム)」、クラッチ操作なしでシフトアップ/ダウンを行なえる「双方向クイックシフトシステム」を標準装備している。

SV-7GXに搭載される645cm3水冷4サイクル90度V型2気筒DOHC4バルブエンジン
シャシーは、しなやかな剛性感としなりを両立する「SV650」のスチール製トレリスフレームを踏襲しつつ、クロスオーバー専用のディメンションへと最適化が図られた

西湖周辺をツーリングしてみて感じたカーペットの上を走るかのような上質な乗り心地

 商品説明会の後、試乗会の拠点となった富士研修所を出発して西湖を1周するルートを走ってみた。

 実車を前にしてシートに跨ってみると、795mmに抑えられたシート高のおかげで足つき性は非常に良好。セルを回してエンジンを始動すると、そのサウンドは角が取れたまろやかな印象を受ける。「ドカドカ」や「ドコドコ」といった荒々しいものではなく、「ドルンドルン」と表現したくなるような、耳に心地よい音色が響く。

 走り出してすぐに感じたのは、まるでカーペットの上を走っているかのような滑らかな乗り心地に驚いた。西湖を目指すルート上には、路面がひび割れて荒れている区間も多かったが、そうした場面でもライダーの身体に伝わってくる振動や衝撃が見事に吸収されている。衝撃が少ないだけでなく、直進安定性も極めて高い。

 新型SV-7GXでは、足まわりは専用セッティングを施した125mmストロークの正立フロントフォークと、7段階プリロード調整が可能なリンク式モノショックリアサスペンションを組み合わせ、タイヤには高いウェットグリップと耐摩耗性を持つピレリ製「ANGEL GT II」を標準装着する。こうした専用設計のサスペンションたちがしっかりと仕事をしていることを感じられた。

エアクリーナボックスのアウトレットチューブ長を短縮して高回転域の伸びを強化しつつ、吸気音のチューニングが行ない、Vツインらしい力強い鼓動感を保ちながら環境性能とドライバビリティを高めた
シート高は795mmに抑えられ、足つき性にも十分配慮された。ライディングポジションはアルミ製テーパーハンドルバーの採用により、SV650比でグリップ位置を27mm高く、24mm手前へ配置し、ハンドル幅も50mm拡大。上体を自然に起こしたアップライトな乗車姿勢と良好な前方視界を確保した

Vツインがもたらす鼓動感とともに高い静粛性や快適性を持つクロスオーバーモデル

3段階の高さ調整が可能なウインドスクリーンと、走行風を受け流すナックルカバーを装着する

 乗り心地のよさに加えてさらに印象的だったのは、巡航時の静粛性だ。5速や6速といった高めのギヤに入れたクルージング時に、下り坂や惰性で走っているようなエンジンに負荷がかからない状態になると、エンジンの存在感がふっと消える領域がある。これによりメカノイズや振動がなくなり、ライダーの身体に感じるのは風だけという、心地よい体験ができる。

 そのライダーが受ける風に対しても、風洞実験に基づき50mmの範囲で3段階調整が可能なウインドスクリーン、防風効果の高いナックルカバーが標準装備されるなど、ライダーにとって心地よいレベルに抑えられている。

 試乗を終えて全体の印象を振り返ると、一般道での走行は終始快適そのものだった。足まわりの硬いスポーツ寄りのバイクと比較すると、長距離を走った際の疲労感は明確に違ってくるはずだ。

WMTCモード値24.6km/Lと合わせて400km以上の航続距離を確保。長距離ツーリングを視野に入れ、燃料タンクはSV650の14Lから17Lへと容量を拡大している
燃料タンクはプレス成型シミュレーションを徹底して追い込むことで、ニーグリップ部のスリムさと足つき性を損なわずに大容量化を達成した

 SV-7GXは、Vツインエンジンならではの鼓動感、ミドルクラスの手軽さ、クロスオーバーモデルとしての快適性を感じられ、どこまでも走り続けたくなるようなモデルであるなということを体験できた。「ちょっと気になるな」と思うのであれば、一度試乗してみることをおすすめしたい。

編集部:椿山和雄