レビュー

【ドラレコレビュー】ケンウッド「DRV-N520」

彩速ナビと「スマート連携」を行なうDRV-N520

 数年サイクルでトレンドが移り変わっていくカーAV業界。CDプレーヤーだったり、スピーカーだったり、2000年前後にはカーナビゲーションが頂きを目指してシノギを削っていた。で、ここ数年、カーナビに変わってカーAV業界のけん引役となっているのがドライブレコーダー、いわゆる「ドラレコ」だ。

 その背景にはカーナビ市場が成熟して飽和状態にあることに加え、安全に対するユーザーの意識改革が進んだ面も大きい。ほんの少し前までは「ユーザーは安全にお金を支払わない」なんて時代があったものの、エアバッグからはじまり、今では衝突被害軽減ブレーキに代表されるセーフティデバイスを装備していないと「クルマが売れない」までに至っている。そうした中でドラレコは、メーカーによるクルマへの標準装備化が進んでいないこともあって、売れ筋商品となっているわけだ。

 また、ソーシャルメディアの発達も追い風となった。個人が手軽に情報を発信できるようになったことで、クルマに限らず「風景を記録する」ことの重要度が高まったわけだ。記憶に新しいところではロシアの隕石動画、台湾の航空機事故動画といったあたりは、ドラレコがあったからこその映像と言える。

ドラレコの選び方

 それじゃあドラレコを買おう!となった時に難しいのが機種選び。売れ筋の商品だけに数千円から数万円まで幅広い価格帯の商品が販売されており、性能もピンキリ。録画が不安定なだけならまだしも、クルマのレーダーなどに影響を与えかねないモノなど、素性のアヤシイ商品もあって、まさに玉石混交といった様相を呈している。

 そんな中で人気となっているのが、老舗カーAVメーカーであるケンウッドの商品群。2016年に同社の「DRV-610」「DRV-410」を記事で紹介しているが、今回は新たに登場した「DRV-N520」にスポットを当ててみたい。

本体にはマニュアル録画ボタンや電源スイッチなどがある。カードスロットは向かって左側
DRV-N520スペック

位置受信方式:GPS(カーナビゲーションから受信)
衝撃感度:-4G~+4G(0.1G単位)
撮像素子:1/3型 約400万画素カラーCMOSセンサー
有効画素数:約300万画素
カメラ画角:水平約117度/垂直約63度(対角128度)
レンズF値:2.0
動作温度範囲:-10度~+60度
撮影画像最大:2304×1296
フレームレート:27FPS
録画フォーマット:MOV(映像:H.264 音声:リニアPCM)
記録メディア:microSDHC(8GB SDHC付属)8~32GB対応Class6以上推奨
外形寸法(突起物除く):79×22(ブラケット装着時約66mm)×48mm(W×H×D)
質量(ブラケット、ケーブル含まず):約77g
ケーブル長:3.5m

 型番から見るとDRV-610とDRV-410の間を埋めるグレードなのかな、といった印象を受ける。確かに、その2機種のコンセプトとなっている「フルHDを超える3M(メガ)2304×1296画素の高解像度を実現」「高精度な自車位置測位」「運転支援機能の追加および駐車録画機能の改善」は、このモデルにも受け継がれているなど共通点は多い。

 しかし、DRV-N520には、DRV-610とDRV-410とは大きく異なる点が1つある。それは、DRV-610とDRV-410は単体で機能を完結したスタンドアロンタイプなのに対し、DRV-N520は同社の彩速ナビ「MDV-Z904/Z904W」「MDV-Z704/Z704W」「MDV-L504/L504W」「MDV-L404/L404W」と接続して使う、「スマート連携」を果たしたタイプなのだ。

 一般的なドラレコは後付けを前提としているため、カメラはもちろんGPS受信機、データを記録するためのカードスロット、映像を確認するモニターが一体となっているのが普通。

 しかし、DRV-N520はカーナビと接続して利用するモデル。カーナビと連携するそのメリットは?というと、大きなカーナビ画面での映像確認やドラレコの各種設定が可能なほか、地図との2画面表示、記録映像の部分拡大などを実現している点だ。

彩速ナビで全画面表示が可能
地図との2画面表示
左上にモード表示があり、常に状態の確認が可能

 ドラレコ本体についているモニターはDRV-610が2.7型、DRV-410が1.5型なのに対し、カーナビ画面は7型なのだから、見やすさ、操作のしやすさは段違い。スタンドアロンタイプだとモニターが小さいこともあって「ちょっと走ったところを見てみようかな」なんて思うことはあまりないけれど、このカーナビ連携タイプならカーナビ画面上のボタンを押すだけで7型の大きな画面で見ることができるから、いつでも記録した映像を見ることができる。地図との2画面表示もできるので、どこを走った時の映像なのかを同時に確認できるのも便利だ。「車載動画」を重視するなら、この手軽さは大きなメリットといえる。

彩速ナビに表示される設定画面

 もちろん、本体からカードを抜いてパソコン上のビューアー「KENWOOD DRIVE REVIEWER」(Win/Mac)を使って見ることも可能。こちらは動画だけでなく、ファイルの一覧、速度、加速度等を1画面で表示することができる。

ケンウッドからはドラレコ向けのpSLCタイプのmicroSDHCカードがリリースされている。8GBのカードが同梱されているが、容量を増やしたいならこちらを選ぶと安心

 自車位置測位についても連携タイプに分がある。車内に設置された本体内でGPS信号を受信するスタンドアロンタイプより、彩速ナビでGPS信号だけでなく、車速等も考慮された正確な自車位置情報をDRV-N520では利用しているため、安定度が一枚上なのは当然だ。

 こうした連携タイプならではのメリットのほかにも、本機ならではの魅力的な機能が目白押し。

 まず、なんといっても「3M録画」。これは録画画素数が2304×1296ピクセルと約300万画素であることを示している。最近、高解像度を謳うドラレコが多くなってきているけれど、大抵はフルHD(1920×1080ピクセル)で約200万画素だから、それよりさらに美しい映像が撮影できるわけだ。

 もう1つ大きなポイントなのが「HDR(High Dynamic Range)」の搭載。これは明暗差の大きな画像の白とびや黒つぶれを抑えて画質を向上させる技術で、トンネルからの出入りや夜間など、環境が目まぐるしく変わるドラレコには必須と言ってよいもの。こちらはフルHD解像度のみ対応となっているが、操作画面から簡単に切り替えることが可能だから、シチュエーションに応じて選択するといいだろう。

 もう1つうれしいのが運転支援機能。画像認識技術を使って「前方衝突警告」「車線逸脱警告」「発進遅れ警告」を実現しているほか、駐車時のクルマへの衝撃を感知して録画を開始する「駐車録画」機能を搭載。前者は画像処理やGPS情報などによる状況を認識すると地図画面上への文字と共に警告音で教えてくれるもの、後者は車両へのイタズラや当て逃げに効果を発揮するもので、スタンドアロンタイプと異なり常に電源外供給されるため長時間の監視を可能にしている。

画像認識技術を使って前方衝突警告、車線逸脱警告、発進遅れ警告を実現

映像の美しさもさすがのハイレベル

ドラレコで撮影した静止画
室内から撮影用カメラで撮った画像

 と、機能満載のDRV-N520だけれども、やはり気になるのは実際の映像だろう。今回は実際に首都高速道路を走った3M(2304×1296)映像とフルHD(1920×1080ピクセル)+HDRの2パターンを掲載する。なお、動画についてはYoutubeでは1080Pに変換されて再生されるため、実際の映像ファイルも用意した。ダウンロードして、画質を確認していただきたい。

DRV-N520(フルHD+HDR).MOV(300.00MB)

DRV-N520(3M).MOV(370.00MB)

 フルHD+HDR映像は首都高 大師JCT(ジャンクション)を走行したもの。太陽の向きがぐるりと変わる状態、さらにトンネル~トンネル出口の描写を見てほしい。

DRV-N520、フルHD+HDRの映像

 3M映像は同じく首都高の大黒JCT。遠景のベイブリッジや停泊する自動車運搬船、工場群などの描写に注目。最後に一般道も走行しているので、信号表示なども見てほしいポイントになる。

DRV-N520、3M映像(3Mの動画については1080Pに変換されて再生されます)

 両者を見比べてもらえば分かるように、それぞれに違ったよさがあることが分かるはず。とはいえ、どちらかに「絶対こっちじゃなきゃダメ」ってほどの差があるわけでもないから、常に3Mでも問題がないように感じられた。

 彩速ナビとの接続が必須になることから若干ハードルは高いものの、逆に彩速ナビユーザーなら必須と言えるのが、このモデル。もちろん、DRV-N520のために彩速ナビを装着するのもわるくないチョイスだ。

安田 剛

デジモノ好きのいわゆるカメライター。初めてカーナビを購入したのは学生時代で、まだ経路探索など影もカタチもなかった時代。その後、自動車専門誌での下積みを経てフリーランスに。以降、雑誌やカーナビ専門誌の編集や撮影を手がける。一方でカーナビはノートPC+外付けGPS、携帯ゲーム機、スマホ、怪しいAndroid機など、数多くのプラットフォームを渡り歩きつつ理想のモデルを探索中。