レビュー
【タイヤレビュー】しなやかさ際立つファルケンのプレミアムタイヤ「AZENIS FK510」
SUV用「FK510 SUV」、ランフラットタイヤ「FK510 RUNFLAT」もラインアップ
2018年4月17日 11:30
ファルケンブランドの動き
近年、ファルケンブランドの勢いが増している。レッドブル・エアレースに参戦する室屋義秀選手をTeam FALKENとしてサポート。ニュルブルクリンク24時間耐久レースにもFALKEN Motorsportsがファルケンカラーのポルシェによって3位入賞を果たしている。いまなぜここまでファルケンブランドが勢いづいているのか? それは住友ゴム工業とグッドイヤーとのアライアンス解消に端を発しているというから興味深い。
そもそもファルケンとはオーツタイヤのブランド。住友ゴムがオーツタイヤを吸収合併し、それは引き継がれた。後に住友ゴムは1999年にグッドイヤーとアライアンスを組むことになるが、住友ゴムのダンロップブランドは、ヨーロッパとアメリカに関してはグッドイヤーが使用権を持つことに。日本は住友ゴムがダンロップを使うことになった。
そして2015年にグッドイヤーと住友ゴムはアライアンスを解消することになるが、ヨーロッパではメーカーOEタイヤもリプレイスタイヤもグッドイヤーが引き続きダンロップブランドの使用権を確保。アメリカについても、非日系のメーカーOEタイヤとリプレイスタイヤはグッドイヤーがダンロップブランドの使用権を持つことに。アメリカにおいて住友ゴムがダンロップブランドを使えるのは、日系OEタイヤと2輪についてのみという限定的な状況になった。すなわち、住友ゴムはヨーロッパ&アメリカで、リプレイスタイヤについてはダンロップブランドを使えなくなってしまったのだ。
このような背景があり、住友ゴムがグローバルで展開することが可能なファルケンブランドに白羽の矢が立つことになったという流れ。だからこそ、近年ファルケンブランドが表舞台に積極的に出てきたということだろう。
そんなファルケンを日本にも浸透させるべく投入されたのが、「AZENIS FK510」である。新生ファルケンのフラグシップモデルとなるこのタイヤは、欧州市場ではすでに販売されており、厳しい評価が行なわれていると言われる雑誌の評価でも、52銘柄中2位を獲得したという製品。高速操縦安定性能とウェット性能を大切にしたというその造りが評価されたようだ。
コンセプトは思いどおりのハンドリングを可能にするというもの。非対称パターンを採用し、トレッド外側は高剛性化。イン側には太い溝を3本も配することでウェット性能を高めている。プロファイルはサイドウォールの柔軟性を高めるべく、円形に近いデザインとすることにより、直進時もコーナリング時も接地圧分布を最適化することが可能になり、高速操縦安定性能を高めたという。また、コンパウンドについてはシリカを多く配分することによって細かな路面の凹凸に絡みつくように接地し、ウェットグリップを高めたそうだ。
インチアップ派にも嬉しいタイヤ
そんなAZENIS FK510を「ゴルフ R」の純正サイズで走ると、スポーティな方向のタイヤの割にはしなやかさが際立っているように感じる。ニュートラル付近のシビアさはよい意味で削ぎ落とされており、高速域において落ち着いて走れる雰囲気がある。
だが、例えば高速のIC(インターチェンジ)などの回り込むシーンにおいて、とにかく粘ってくれる感覚があるのだ。タイヤがたわみ切るまでの過渡領域の動きも読みやすく、操りやすいところがメリットのように感じる。クセがなく一定したフィーリングがあるところこそ、このタイヤの見どころだ。コンフォート系のタイヤには負けるが、この手のタイヤにしては静粛性も高い。後にSUV向けの「FK510 SUV」をポルシェ マカンでも試したが、ハイトが増していたとしてもその印象が変わることはなかった。
一方でサイズアップをし、低偏平になった場合も体験するために用意されたメルセデス・ベンツ C180にも試乗。こちらはローレウスエディションのサイズ、フロント245/40 ZR18、リア265/35 ZR18である。ノーマルがフロント225/45 R18、リア245/40 R18なので、見た目にはかなりの迫力なのだが、これがなかなかのバランスに仕上がっているから面白い。
低偏平にして太くしてとなれば、バタつきや乗り心地の悪化などが予測されるのだが、FK510の持ち味であるしなやかさによって、そうしたネガティブな部分を出さずに走れてしまったのだ。突き上げも少なく、収束もシッカリ。これはインチアップ派にとっても嬉しいタイヤとなりそう。
ファルケンが名実ともに勢いを増していることが手に取るように伝わってくるタイヤだった。