レビュー

【タイヤレビュー】耐摩耗性の向上など“長持ち”がキーワードのダンロップ「エナセーブ EC204」

EC203から耐摩耗性能を4%、耐偏摩耗性能を16%向上させて“もったいない”を解消

“長持ち”がキーワード

 ダンロップ(住友ゴム工業)の低燃費タイヤブランド「エナセーブ」には5つの銘柄がラインアップされ、低価格のスタンダードなものからミニバン用、低燃費追求モデル、さらにはウェット性能を追求したものまで幅広く存在する。今回は、その中でもスタンダードモデルでモデルチェンジが行なわれた。これまでそのスタンダードモデルは「EC203」という銘柄があったが、それが「EC204」へとスイッチ。その進化を探ってみる。

 EC204が大切にしたのは耐摩耗性についてだ。キーワードは“最後まで使える長持ちタイヤ”。ダンロップによれば、これまで交換されたタイヤのうち51%が偏摩耗を起こしていたというデータがあるのだという。主溝は残っているにも関わらず、アウト側ショルダー部分の摩耗が激しく交換に至ったということのようだ。ショルダー部分の溝がなくなってしまえば、コーナリングする際に滑り出す恐れがあることは明白。瞬間的にそれが訪れる可能性も高いだけに、主溝が残っていたとしても交換するのは仕方がないところだろう。

 より長く使うためにはどうしたらよいのか? そこで行き着いたのが非対称パターンの採用である。新たなEC204は、アウト側のブロック剛性を高めることで、ショルダー部分のヨレを軽減。対称パターンだった旧製品のEC203に対してシーランド比(溝の部分を海に見立てたsea、接地するブロック部分を島に見立てたislandとした割合)を4%向上させている。すなわち、接地面積を拡大することで接地圧を分散させ、摩耗を軽減しようとしたわけだ。

 さらに、新プロファイルを採用して四角に近い形状だった接地形状を丸くすることで、コーナリング時にアウト側にかかり過ぎていた接地圧を軽減している。どんな走行状態であったとしても、接地圧をできるだけ均一化しようという工夫が長持ちに繋がっているのだ。こうした苦労の甲斐もあって、耐摩耗性能は4%向上。耐偏摩耗性能については16%も引き上げられたというから興味深い。経済性に敏感なユーザーが多いスタンダードモデルにおいて、見た目の価格だけでなく実質的なコストを抑えたことは素晴らしい。

2月に発売されたスタンダードタイヤ「エナセーブ EC204」。国内タイヤラベリング制度で転がり抵抗性能「AA」、ウェットグリップ性能「c」を獲得する低燃費タイヤだ
非対称パターンの採用によりトレッド部アウト側のブロック剛性を高めるとともに、新プロファイルの採用でタイヤの接地圧を均一化し、耐偏摩耗性能を従来の「エナセーブ EC203」から16%向上。また、タイヤのトレッド面に占めるブロック面積の比率となるランド比をアップさせ、タイヤの接地面積を増加させることで接地圧を分散し、耐摩耗性能を4%向上することに成功している
2018年はJ・Bダンロップ(ジョン・ボイド・ダンロップ)氏が空気入りタイヤを実用化してから130年目という節目の年にあたることから、空気圧の大切さを引き続き訴えていくという
タイヤをより長く使うためには、摩耗だけでなく「ショルダー摩耗」も抑えることが重要
「アクセルを踏む」「ブレーキを踏む」といったアクションではタイヤ全体で摩耗するが、「ハンドルを切る」ではショルダー部の摩耗エネルギーが大きい、すなわち摩耗しやすい状況になる
カーブを曲がるにはハンドルを切る必要があるが、ハンドル操舵量が小さい方がショルダー部の負担が少なく、ショルダー摩耗を抑えられる
ハンドル舵角量を低減するためには旋回特性の向上が必要
EC204では「ランド比アップ」と「アウト側ショルダーブロック剛性アップ」で旋回特性を向上
旋回特性の向上により、同じカーブでもEC204は小さい舵角で曲がれるようになった(EC203比)
ハンドル舵角量が低減することでショルダー摩耗を抑制
ショルダー摩耗を抑制することで、EC203から耐摩耗性能(主溝摩耗)が4%、耐偏摩耗性能(ショルダー摩耗)が16%向上
EC204のライフ性能まとめ
EC203から接地形状を丸くすることでタイヤ振動を抑制。静粛性と乗り心地の向上を実現させたという
EC204の性能チャート

進化したのは耐摩耗性だけではない

EC204の試走は日産自動車のEV(電気自動車)「リーフ」とトヨタ自動車のHV(ハイブリッド)「プリウス」で行なった

 そんなEC204を旧製品と比較しながら試乗してみると、少ないステアリングの操舵角でクルマが反応をすることが感じられる。おかげで同じコーナーでも操舵角は少なく、結果としてタイヤに負担をかけずに旋回できていることが分かる。

試走会ではEC203(左)とEC204(右)の比較も行なえた

 また、旧製品のEC203はニュートラル付近の曖昧さがあり、片手でステアリングを握っている状況は避けたくなるところがあるのだが、EC204にはそれがない。直進安定性の高さについても向上していることは明らかだったのだ。さらに、音や乗り心地にザラつきを感じることがなくなったところも好感触。

 吸音スポンジを採用するなどして静粛性に拘った低燃費タイヤ「LE MAN V(ル・マン ファイブ)」と比べてしまうと、弾けるような高音はやや感じるものの、それにずいぶん近づいたのだと感じる部分もある。耐摩耗性の話だけでは終わることのない進化がEC204には存在していた。

EC204(左)とLE MAN V(右)のトレッドパターン比較

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。走りのクルマからエコカー、そしてチューニングカーやタイヤまでを幅広くインプレッションしている。レースは速さを争うものからエコラン大会まで好成績を収める。また、ドライビングレッスンのインストラクターなども行っている。現在の愛車は日産エルグランドとトヨタ86 Racing。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。