レビュー

【タイヤレビュー】横浜ゴムの新オールテレーンタイヤ「ジオランダーA/T4」、SUV&ピックアップトラックで試す!

横浜ゴムの新スタンダードオールテレーンタイヤ「ジオランダーA/T4」を試した

今回のフルモデルチェンジで目指したのはファッション性

 横浜ゴムの新型オールテレーンタイヤ「GEOLANDAR A/T4」(ジオランダー・エイティーフォー)を、一般道とオフロードコースで試乗することができた。

 ジオランダーA/T4は横浜ゴムのSUV・クロスオーバーSUV用タイヤとして、性能グラフのど真ん中に位置するタイヤだ。オンロードとオフロード、運動性能と快適性が最もバランスされたキャラクターがその持ち味であり、マッドテレーンの最高峰モデル「X-MT」のような、いわゆるハードコアなオフロードタイヤではない。モデル的には「A/T G015」の後継タイヤであり、4世代目ということでA/T4のネーミングとなった。

 そんなジオランダーA/T4が今回のフルモデルチェンジで目指したのは、誤解を恐れずに言えば「ファッション性」の向上だ。ご存じの通り、SUV/ピックアップトラック市場は世界的に右肩上がりの成長を続けており、それに合わせてタイヤもオフロードカスタムの需要が増えてきている。横浜ゴムはその市場に合わせて、ジオランダー A/T4にフルモデルチェンジしてきた。

ジオランダーA/T4は5月より全世界で発売。日本では5月に発売する19サイズを皮切りに、7月までにLTサイズを含めて計31サイズまで拡大

 具体的にはそのトレッドに、よりオフロード用タイヤらしいゴツゴツとしたパターンを与えた。かつ側面にも大型の「デュアルサイドウォール」を搭載してファッション性を高めた。ちなみにこのサイドブロックはタイヤの製造年週などを表示するセリアル側に「GEOLANDAR」ロゴを配置し、反対側は少しシンプルなデザインとなっている。ジオランダーA/T4は回転方向の指定がないから、ユーザーは好みのデザインを表側に装着することができるとのことだ。

ジオランダーA/T4はセリアル側、反セリアル側のどちらを車両の外側につけても性能の違いはないため、好みで選べるようになっている(写真はアウトラインホワイトレター仕様で、上がセリアル側、下が反セリアル側)
デザインで言うとホワイトレター仕様(185/85R16 105/103N LT)も1サイズ用意

 このように先代モデルと比較して、その見た目をよりアグレッシブなデザインとしてきたジオランダーA/T4だが、オールテレーンタイヤとしての性能も愚直に高められている。トレッド面で見ると中央3列の「2in1センターブロック」には、剛性を高めるべく補助溝や装飾溝が一切入っていない。その一番真ん中のブロックは、1つのデザインを交互に反転させながら長めのジグザグ配置に。そして両側を2種類のブロックで挟み込み、合計4種類のパターン(デザイン的には3種類)で屈強なセンターブロックを構成。オフロードでのトラクション性能を高めながら、ブロックの耐カット性と耐チッピング性もきっちり確保した。

 またトレッドの両側には「シングルピッチショルダーブロック」を配置して、アグレッシブなデザインながらもパターンノイズの悪化を抑えた。ちなみに車内騒音はこれまでと同等レベルだが、車外騒音に対しては若干静粛性が引き上げられている。

 さらに「3Dディープサイプ」を2本ずつ各ブロックに搭載し、ウェット性能のみならずスノー性能も向上。0度付近のアイス性能(氷上の水膜除去性能)はスタッドレスに軍配が上がるものの、滑りやすい路面でのグリップ性能や排水性は大きく向上したという。ちなみにそのサイドウォールには、スノーフレークマークが記載されている。

 これまでストレート基調だった4本の主溝は、中央ブロックの形状変更によってジグザクとなり、オフロードでのトラクション性能を確保しながら雨天時の排水性をも両立できるようになった。ちなみにこのジグザグパターンは気柱共鳴音をも緩和し、ショルダーブロックのシングルピッチと共に、パターンノイズを低減しているとのことだ。また外側に向かって広がる「ディープ&ワイドショルダー溝」と、各ブロックに配置した「切り欠き溝」が排水/排雪/排土性を高めている。

ジオランダーA/T4ではアグレッシブなトレッドパターンとサイドウォールのブロックデザインでオフロード感を高めるとともに、オフロード性能や耐カット・チッピング性能を向上。冬用タイヤとして認められた証「スノーフレークマーク」を全サイズで獲得し、冬用タイヤ規制時でも走行可能(全車チェーン規制の場合はいかなるタイヤもチェーン装着が必要)なタイヤとなっている

RAV4とジムニーで一般道を走った感想は?

 こうしてできあがったジオランダーA/T4は、とてもバランスのよいオールテレーンタイヤに仕上がっていた。

 まず試したのは一般公道だ。試乗会場となった「アサマレースウェイ」の周辺道路は、荒れた路面とスムーズな舗装が混在するテストにはうってつけのコースだったが、LT225/65R17サイズのジオランダーA/T4を履いたトヨタ「RAV4」の走りは、予想以上に快適だった。

 今回テストしたジオランダーA/T4は、全てライトトラック用の「LTタイヤ」であり、その内圧設定はRAV4でいうと330kPaと、標準的なサマータイヤに比べてかなり高かった。にも関わらず陥没した舗装ではタイヤが反発することもなく、しなやかにこれをやりすごした。サマータイヤに比べてその重量は重たいはずだが、バネ下での収まりが良く、乗り心地も快適だった。

 ロードノイズはRAV4の静粛性が高いこともあり、中音域がうっすらと目立ち、これが気になるユーザーはいるだろうと思えた。しかしそのトレッドパターンから想像するようなゴロゴロとした振動はなく、高周波も巧みに抑えられていた。

 ハンドリングにはややLTタイヤの特性が出ていた。タイヤ自体の剛性は高いので、ライントレース性は良好。しかし切り始めのグリップ感(接地感)が希薄で、RAV4のようにハンドリングがよいSUVだとオンロード性能がわずかにスポイルされている。内圧を微調整すればその傾向は改善できるだろうが、クルマ的にはステア感度を重視しないオフローダーの方が当然マッチすると感じた。

 もう1台の試乗車であるスズキ「ジムニー」は、ハイリフトされたライトチューン仕様だった。RAV4同様、デコボコ道でもその乗り心地は極めて良好で、ほどよく硬められた足まわりに対しても、タイヤが腰砕けすることなくカーブで荷重を支えた。

 そしてRAV4で気になった中音域のロードノイズは、3気筒ターボの快活なサウンドやさまざまな外乱要素と共に中和されていた。今回は高速巡航を試せなかったが、クルマが静か過ぎなければオンロードでも普通に使える印象だ。ちなみにそのタイヤサイズは185/85R16LTで、内圧は170kPaだった。

オフロードビギナーにも扱いやすいジオランダーA/T4

 オフロードでは平地のショートコース(内周路)をトヨタRAV4で、一周約3kmのロングコースをトヨタ「ハイラックス」と三菱自動車「トライトン」で走った。

 結論から述べてしまうと、ジオランダーA/T4はオフロードビギナーの筆者にはかなり扱いやすいタイヤだった。高速セクションを省いた安全なコース設計のおかげもあるが、ショートコースを走らせたRAV4は本当に危なげない。ぬかるみや轍のあるオフロードでの操舵フィールはオンロードとはひと味違うリニアさで、ブレーキングではきちんと減速Gを高めてくれるから安心感がある。ゴリゴリと土を掘り起こすような過激さはないのだが、車両の安定装置と4WD制御が許す限り、確実にトラクションをかけてくれる。そして乗り心地がとてもいい。

 よりスピードレンジが高いロングコース(外周路)でも、その特性は同様に保たれていた。ハイスピードで轍(わだち)やこぶを乗り越えても着地はしなやか。タイヤがホイールからずれ込むような感触もなく、安心して負荷を掛けていくことができる。

 こうしたマイルドな操作性ゆえに、車両のキャラクターまでもがつかみやすい。トライトンはシャープなハンドリング特性とピックアップの良いエンジンで、ガンガン攻めるタイプ。対してハイラックスはその穏やかな身のこなしがむしろ、オフロードビギナーには運転しやすいということが分かった。

 総じてジオランダーA/T4は、とてもレベルの高いオールテレーンタイヤだ。その性能はマイルドで、尖ったところのないオールラウンダータイプだが、それこそがLTタイヤとしての高い技術力を示す証だと筆者は感じた。

 むしろLTタイヤとしての性能が高すぎて、ファッション志向のソフトユーザーにはもう少しレベルを下げてでもオンロード性能を上げた方が適切かと思ったくらいだが、聞けばこのあと乗用車用「PCタイヤ」もラインアップされるという。

 ちょっとハードなルックスのオールテレーンタイヤを履いてみたいけど、どれにしたらよいのかよく分からない。開発陣いわくそんなときは「迷ったらジオランダーA/T4です!」と、自信を持って答えてくれた。確かにそう言えるだけの、懐の深さがこのタイヤにはある。

山田弘樹

1971年6月30日 東京都出身
A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。
編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースを経てスーパーFJ、スーパー耐久にも参戦。この経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆活動中。またジャーナリスト活動と並行してレースレポートや、イベント活動も行なう。

Photo:安田 剛