レビュー
【タイヤレビュー】グッドイヤーのオールシーズンタイヤ「ベクター フォーシーズンズ Gen-3」、ドライと雪上性能を体験
2024年5月3日 09:15
ドライでの静粛性はサマータイヤ並み
まもなく5月となれば、冬タイヤを装着していた方々はサマータイヤに履き替えたころだろうか? それともゴールデンウイークの休みを利用し、重い腰を上げてタイヤ交換に挑むなんていう人も少なくはないだろう。実は筆者もそんな1人であり、数週間前にはせっせと自宅裏からサマータイヤを引き出し、家族に応援されることもなく、1人黙々とタイヤ交換する週末があった。腰は痛くなるし、後片付けは大変。もはや半年に一度の厄介な1日である。
そんな時に近年うらやましく思えてくるのがオールシーズンタイヤの存在だ。それを日本市場にいち早く持ち込んだ日本グッドイヤーは、第3世代に突入した「Vector 4seasons Gen-3」をリリースしている。グッドイヤーいわく、ポイントとなるのはドライ路面における性能がアップ。オールシーズンタイヤといえば、どうしてもノイズの大きさがネックだった。
パターンはセンターへ向かうほど細くなる新Vシェイプトレッドを採用。ピッチ配列を改めることで音を分散させている。これによりパターンノイズは旧製品から36%も減少。ロードノイズも31%引き下げられている。
結果としてドライ路面を走ると、言われなければこれがオールシーズンタイヤであるとは分からないかもしれないというレベルまで静かになった。もちろん、自分のクルマでサマーからオールシーズンに変更すればその違いも言い当てられるだろうが、初対面では「このクルマってこんな仕様か」と納得してしまいそうなくらいなのだ。
それは高速道路やワインディングを走ってみても同様の感覚。パターン配列を細分化したことで剛性への懸念があったが、内側に向かっていくにつれてRをきつくすることで剛性を高めることにも成功している。また、トレッドセンター部を浅溝化することで剛性を持たせ、センターリブがなくても直進安定性を確保。SUV用についてはポリアミドを1枚から2枚にすることでさらに剛性を持たせているという。結果として腰砕けのような感覚もなく、高速道路のワインディング区間を自信を持ってこなせるほど。うねりや継ぎ目のダンピングも程よい感覚だ。
ウエットやシャーベット路面も安心
ここまでドライ性能が良いと、心配になってくるのはやはりスノー路面だ。実はこのロケ、2月にそれを確認しようと長野県中部まで出向いたのだが、その周辺は雪が皆無! 仕方なく志賀高原まで北上してスノー路面を探し回ったのだった。
道中、ウエットやシャーベット路面があったが、そこにおいても不安感を覚えるようなことはない。しっかりと排水され路面に張り付いた感覚が得られるから安心だ。そして、標高の高いところまで行ってようやく少しだけスノー路面にありついた。走ればかつてのように縦グリップはあるけれど、横が弱いなんていうイメージはかなり薄くなっていることが確認できた。
ちなみにグッドイヤーのデータによれば、スノーブレーキは5%ほど旧製品よりも向上しているという。その特性を利用してしっかりと減速し、コーナーへとアプローチしていけば危険な状況に陥るようなことはない。あまり推奨されてはいないが、アイス路面も走れなくはない印象がある。おそらく使う機会はゼロに等しいだろうが、いざという時を考えてチェーンを携行しておけば問題ないだろう。
このように「Vector 4seasons Gen-3」は、僕の中にあったオールシーズンタイヤのイメージをかなり払拭してくれた。冬は走れるけれど夏がうるさいとか、縦はあるけれど横がない、なんていう感覚がかなり薄れたのだ。もちろん、スタッドレスタイヤと比べてしまえば冬性能が劣る部分はある。けれども、今年のように暖冬であり、非降雪地域の人間からすれば、スノー路面に出会うのはほんの一瞬というのであれば、これで十分というのが正直なところ。わざわざスタッドレスタイヤに履き替えたのに、ほぼスノー路面を走れずしてまたサマータイヤに履き替えることがどんなに虚しいことか……。「Vector 4seasons Gen-3」ならそんな落胆もない。タイヤ交換が面倒だという非降雪地域のユーザーであれば、これからの時期でもオールシーズンタイヤをチョイスするという選択肢があることを、頭の片隅にでも入れておいて頂ければと思う。