レビュー
【タイヤレビュー】グッドイヤーの新「イーグルF1 アシメトリック6」はどう進化しているのか? ドライとウェットで試す!
2024年7月8日 07:06
- 2024年3月 発売
- オープンプライス
グッドイヤーのスポーツレンジを担う「イーグル」シリーズ。そのなかでもウルトラハイパフォーマンス(UHP)タイヤに位置づけられる「イーグルF1 アシメトリック6」を、富士スピードウェイ 「モビリタ」内に設けられたテストコースと、一般道で試した。
グッドイヤー・ジャパンいわくそのキャラクターをひと言で表すと、アシメトリック6は「大人のプレミアムタイヤ」だという。
縦軸に「プレミアム性能」、横軸に「スポーツ性能」をとったグッドイヤーの性能グラフではまんなかからややプレミアム寄りにポジショニングされており、そのキャラクターを伺い知ることができる。
ちなみに一番高いグリップ力を発揮するのは、GR86/BRZ CUP プロクラスやYARIS CUP(指定タイヤ)でも使われる「イーグル RS Sport S-SPEC」。そしてプレミアム性能とスポーツ性能を両立するフラグシップモデルとしては、UUHP(ウルトラ・ウルトラ・ハイパフォーマンス)タイヤである「イーグルF1 SUPER SPORT」がグラフの一番右上にポジショニングされる。最もベーシックなスポーツタイヤは、「イーグルF1 SPORT」だ。
そんなイーグルF1 アシメトリック6が今回のフルモデルチェンジで目指したのは、先代アシメトリック5に、さらなる運動性能を与えることだったという。具体的にはドライ路面におけるアジリティ(俊敏性)を高め、より運転することが楽しくなるタイヤを目指した。
その上で効果的な技術は、負荷に応じて接地形状を最適化することができる「ドライコンタクトプラステクノロジー」だという。
これがハンドリング面では操舵レスポンスを向上させ、直線制動での制動距離を短縮した。具体的には時速100km/hからのフルブレーキング(ABS作動)で、先代モデルより制動距離が4%短縮されたとグッドイヤーでは発表している。
こうしたドライ路面での性能向上を実現した上で、背反しがちなウェット性能を落とさないことも課題だった。
そこでグッドイヤーはトレッドゴムの柔軟性を上げるべく、新たに樹脂をコンパウンドに配合した。
これによってウェット路面での制動テスト(時速100km/hからのフルブレーキング)でも、その制動距離は3%短縮されたという。
ちなみに樹脂は通常、加工助剤として使われる素材だという。基本的にはゴムとの混ざりが悪く、ゴム分子や樹脂分子同士でこすれあって、熱エネルギーロスの原因にもなりやすい。
しかしグッドイヤーは今回ゴムとの相性がよい樹脂を見つけ出し、それをトレッド面に適量配合したことで、ゴムの柔軟性を高めることに成功したのだという。
テストコースでドライとウェットにおける性能を試す
こうしたアップデートの成果は、テストコースで確認できた。
60km/hからのウェット制動では、新旧で制動距離の差を比較したが、その差は3本の計測で最大2.62m、平均して0.76mと、3%よりは少ない数値だがアシメトリック6の方が、確かに制動距離が短くなった。
制動時のフィーリングは、アシメトリック6の方がじわっと路面に食いつく感じ。そうしたコンパウンドのしなやかさは、ウェット・ハンドリング路でより明確なものとなった。
水深およそ1mm程度の低μ路では、圧倒的に新型の挙動が安定していた。グリップの途切れ方が唐突で、アンダーステアもオーバーステアも突然出るアシメトリック5と比較してアシメトリック6はじわりと路面をつかみ、滑っても粘り続けようとしてくれる。そこには数字に表れない、安心感の高さがあった。
テストコースでの最後はドライ路面を走って、ハンドリング性能やブレーキング性能を確認した。
ただ残念だったのは、ここで新旧比較が用意されていなかったことだ。その代わりにアバルト500、GR86、シビック e:HEVの3台で、乗り味の違いを比べることができた。
高速バンクを100km/hで駆け抜け、直線からのブレーキング。約50km/hでダブルレーンチェンジを2回行なったあとは、パイロンターンを繰り返す。
こうしたメニューで得られた感触は、ウェット路面同様タイヤの“もっちり感”と、高い剛性だった。
通常これだけソフトなコンタクトフィールだと、荷重が掛かった時はトレッド面がムービングしたり、サイドウォールが腰砕けしそうだが、アシメトリック6はしっかりと踏ん張る。
また入力に対して反発せず、かなり高いグリップ力をリニアに立ち上げてくれるから、市販車の足周りでもかなりマッチングがいい。
アバルト500だと少しグリップ力が高過ぎて、リアサスが伸びきってしまうほど荷重移動してしまったが、GR86などはダンパーがワンランクよくなったかのような印象を受けた。
今回はあくまでグリップの範囲内で走らせるという条件だったので過渡特性まではわからないが、ウェット路面での感触を踏まえても、そのコントロール性は穏やかそうだ。アシメトリック5もかなり穏やかなタイヤだったが、それがもっと骨太になったという印象を持った。
対して高速領域におけるハイドロ性能は、少し弱いと感じた。
これはメニューにはなかったが、外周路にあるウェット路面を時速70km/h以上で横切ったとき、全ての車両でハイドロプレーニングが起きた。
前述した通り直線制動ではきちんと止まれていたから、操舵した状況で斜めにウェット路面に入って行くと、その排水性が若干落ちてしまうのだと思う。
かなり厳しい条件ではあるが、経験則で言うと直近のライバルでもっと高いウェット旋回性能を持つタイヤはある。アシメトリック5のドライグリップ性能はかなり魅力的だが、個人的にはもう少し溝面積を増やしてもよいと思う。
一般道での乗り味や静粛性はいかに?
そして最後は一般道を走らせたが、その乗り味は極端に言うとスポーツタイヤとは思えないほど快適だった。試乗車はスバルのレヴォーグだったが、ロードノイズがプレミアムタイヤ並に抑え込まれている。
タイヤがもたらすパターンノイズは、溝の中を通る空気の音(気柱共鳴音)や、溝の中の空気が路面に打ち付けられて起こる炸裂音が原因なのはご存じの通りだ。
これに対してアシメトリック6は、従来2~2.5mmあったセンターリブのサイプを、約1mmほど細くした。これに応じて低下する排水性に対しては、その本数を増やすことで対処したという。
またショルダー部のパターンにはチャンファー(面取り)加工を施して、炸裂音を緩和している。
静粛性と共に、乗り心地もいい。バネ下でタイヤがバタつかず、アクセルオフ時ではタイヤがよく転がる。
今回高速道路まで足を伸ばす時間はなかったが、タイヤのサイドウォール形状をスムーズ化してエッジを抑えたことで、燃費も上がっているのだという(エアロダイナミックサイドウォールシェイプ)。
ちなみにそのラベリングは転がり抵抗「A」グレードがこれまでより3サイズ増えた17サイズになった。また「B」グレードは2サイズと、従来から3サイズ減ったという。
スポーツタイヤでも快適な乗り味を持たせるのは昨今のトレンドだが、その中でもイーグルF1 アシメトリック6は、かなり絶妙にスポーツ性能と日常性能をバランスさせている。きっとグッドイヤーの中だけでなく、ライバルと比べたときの性能チャートにおいても、真ん中からややプレミアム寄りにポジショニングされるウルトラ・ハイパフォーマンスタイヤだと思う。