レビュー

【タイヤレビュー】ミシュランがこだわる「サステナブルタイヤ」とは? 4製品に乗ってその意味を確認した

ミシュランのいろいろなタイヤをまとめて試乗する機会を得た。実はどれもサステナブルに配慮したタイヤだ

 ラジアルタイヤ製造の先駆者で、技術の先進性でも注目を集めるミシュランは、また高い信頼性も築き上げている。

 そのミシュランがサステナブルをテーマに試乗会を行なった。タイヤは製造工程だけでなく走行中も摩耗することで細かい粉塵を出すことも事実で将来の課題となっている。

 一方、環境性能に目を向けると乗用車の販売台数では、ハイブリッドなどの電動車が全体の半数を超えていることから、ユーザーの環境意識も高まっていることが浮かんでくる。また、BEV(バッテリ電気自動車)も増加し続けていることから、タイヤの果たす役割も変わってくると予測されている。

電動車(BEV、PHEV、HEVなど)が増えている状況

 というのも、タイヤに求められる「安全性」「居住性」「経済性」に加えて「環境性」の比重が大きくなっているのだ。具体的には生産時のCO2排出量の削減、走行中の摩耗の低減、そして転がり抵抗の向上などが課題となっている。転がり抵抗性能ではすでにタイヤラベリング制度が始まって久しく、ウェットブレーキ性能との両面標示が行なわれている。

e-プライマシーのラベリング
パイロットスポーツ5のラベリング

 ミシュランではタイヤライフの中で、生産工程では再生可能エネルギーなどでCO2を削減し、使用時には摩耗性を向上させ、初期性能を維持しながらロングライフを目指すことで20~30%のCO2削減を図るとしている。

サステナブルに関する説明を行なった日本ミシュランタイヤ株式会社 研究開発本部 テクニカルエキスパート 蔭山浩司氏

 その後のリサイクルでは高機能素材を抽出して製造工程に戻すというループを作り、これを回すことによって省資源を進める。

 製造の工数やコンパウンド種類を減らしても、目的性能を発揮するタイヤを開発するのがミシュランの目標だ。

 他メーカーも同様に生産の効率化やタイヤのモジュール化を進めており、世界のタイヤメーカーは環境を軸に動き出している。

ミシュランタイヤは設計時点からサステナブルのための工夫を盛り込んでいる
さらなるサステナブル性能を高めるためのポイント

ウェット路面での性能を確認してみた

 今回は、現在ミシュランのラインアップの中から「パイロット スポーツ 4 SUV」「プライマシー SUV+」「e-プライマシー」、そして「パイロット スポーツ 5」の4種類のタイヤをSUV、セダン、BEVに履いて試乗した。

 試乗コースは栃木県にあるGKNドライブラインジャパンのテストコースで、降雨のため条件はすべてウェット。ウェットハンドリングを確認するには絶好の条件だ。

レクサス「RX350h」×「パイロット スポーツ 4 SUV」

レクサス「RX350h」×パイロット スポーツ 4 SUV

 最初はレクサス「RX350h」に同じシリーズにあるパフォーマンスモデル、「RX500h F Sport」に純正装着する「パイロット スポーツ 4 SUV」を履きタイヤの適応力をみる。タイヤサイズは同じ235/50R21で、ロードインデックスと速度レンジは101Wとなる。いずれも大径タイヤで最近のトレンドを示しているがRX350hでは別のタイヤを履いている。

 ハンドリング路でのウェット性能は高く、速く長いコーナーでもステアリングの修正も必要なく、一定の舵角で駆け抜ける。またタイトコーナーでの舵の効きも素晴らしく、スポーツタイヤのような軽快さだ。総じてタイヤのコーナリングパワーが高く、ボディが大きく背の高いSUVでも一定のリズムで走れたのはタイヤのポテンシャルに負うところも大きい。

パイロット スポーツ 4 SUVは、快適性と強度のバランスに配慮したSUV専用設計で、ハイパワーSUVの安全性を高めるウェット&ドライ性能を有している

 一方、変形オーバルの外周路での直進性やレーンチェンジ、そして乗り心地のためのバンプ路では異なった印象を持った。中速から高速での直進性やステアリングに感じる保舵感はミシュランらしく普遍的な安定性がある。

 レーンチェンジは長いスパンのWレーンチェンジになっている。少し速い90km/hで通過を行なうと2つ目のレーンチェンジでバネ上の動きが残るため操舵タイミングを微妙に変える必要があった。コーナリングパワーが高くスポーティなタイヤの性格はパワーのあるRX500hではさらに魅力が引き出されるに違いない。ドライバーの好みでよりスポーティなチョイスができる。

外周路にはWレーンチェンジのほかにスラロームも設けられていた

 路面に置かれたバンプ路は15mm程度だろうか。連続して同スパンで置かれていた。60km/hで通過したがショックを感じることはほとんどなく、スポーティなタイヤだがしなやかさは変わらず快適性は高かった。

連続で路面に置かれたバンプを通過してショックの大きさを体感

メルセデス・ベンツ「A 180」×「e-プライマシー」

 続いてFF車のメルセデス・ベンツ「A 180」。装着タイヤは転がり抵抗の小さいエコタイヤ「e-プライマシー」で、装着サイズは225/45ZR18 95XL。

 ウェットハンドリングでも背の低いセダンらしく軽快で、なおかつメルセデスのしっとりとした安定感を損なわない。タイヤとしては周剛性が高く感じられ、いかにも転がり抵抗は小さそうだが、ウェット路面でのグリップ力は唐突な変化も小さくコントロールしやすい。

メルセデス・ベンツ「A 180」×e-プライマシー

 大きい転舵では特有の“シャー”という転舵ノイズが出るが、コーナリングフォースが急激に低下することはなく安心感がある。さらに転舵を大きくしてみるとフロントからずるずると滑り出すが急変しないのが好ましい。

 エコタイヤらしい感触もあるものの、ハンドリング路ではタイヤの違いを意識せずにハンドルを握れた。

ウェットでもコントロールしやすい印象だ

 外周路で90km/hのWレーンチェンジでもタイヤの縦横バランスがよく、滑らかな操舵フィールが印象的だ。さすがにバンプ路60km/h通過ではパンパンという衝撃感があるものの上下収束はよく不快感はない。

レクサス「LBX」×「e-プライマシー」

 コンパクトSUVのレクサス「LBX」でも「e-プライマシー」を試したが、こちらは純正装着品でサイズは225/55R18 98Hだ。「A 180」に装着したサイズよりもロードインデックスも速度レンジも低くなっており、日本市場に合わせたタイヤだ。

レクサス「LBX」×e-プライマシー。新車に装着されている組み合わせとなる

 おりから雨も強くなってきたが、滑らかでクルマとの相性がよい。タイトコーナーで水深の深いところを走ると、ハイドロ気味になる場所もあるものの回復は早い。

 外周路でもレーンチェンジ、高速直進性、バンプ路の乗り越しなどバランスがよく、さすがにクルマとのマッチングは優れている。

e-プライマシーはミシュラン史上最高の低燃費性能を誇るプレミアムコンフォートタイヤだ

日産「エクストレイル」×「プライマシー SUV+(新品&2分山)」で急制動

 日産「エクストレイル」で使用したのは「プライマシー SUV+」でパターンの細かいSUVらしいタイヤだ。

日産「エクストレイル」×プライマシー SUV+

 サイズは235/60R18 103Vとなる。こちらのプログラムでは、2分山まで削ったタイヤと新品タイヤで70km/hからの全力制動を行なった。通常のウェット路面では制動距離に大きな違いはなかったかも知れないが、制動路面では水深がかなりあったために、新品では19.6mで止まれた距離が、摩耗タイヤでは26.6mと大きく伸びた。ブレーキ直後からハイドロを起こし空走感と姿勢が少し乱される挙動があり、速度が落ちて水深も浅くなる場所にいたると急激にABS作動でピッチングをしながらの制動となった。

新品と2分山で制動比較を実施
車内には計測器も装着して、制動距離をデジタル値で確認できた

 ちなみにタイヤラベリングは転がり抵抗性能A、ウェットグリップ性能bだが、もはやこれらの水深では溝効果が大きく、ミシュランと言えども摩耗したタイヤで水深のある場所でのフルブレーキは無謀だ。名誉のために路面を変えて50km/hからの制動では、新品が10.7mと2分山が13.7mと差は縮まった。

 やはりウェット路面では車間距離をいつもより長くとることが大切だ。

50km/hからの制動でも新品と2分山では数mの差があった

 一方、ウェットハンドリングは快適でe-FORCEの制御も手伝って快適なハンドリング性能を楽しめた。コーナリングフォースはそれほど大きくないが運転が楽しめる制御を車両側で行ない、タイヤはその制御を邪魔することなく素直に同調していく。適度に滑る時もジワリとグリップするのでコントロールしやすい。

 外周路でのレーンチェンジもステアリングの応答遅れもなく、ヨーの収束も素直。さらにバンプ路での上下動もSUVらしく柔らかく収束する。周剛性はガッシリしているが、入力に対してバランスの取れているのが魅力で、今回の試乗でもっとも感銘を受けたのが「プライマシー SUV+」だった。

快適性と高速安定性を両立したプレミアムコンフォートSUVタイヤのプライマシー SUV+

テスラ「モデル3」×「パイロット スポーツ 5」

 最後はテスラ「モデル3」。装着タイヤは「パイロット スポーツ 5」で、サイズは235/60R18 103V、ラベリングは転がり抵抗性能A、ウェットグリップ性能bだ。

テスラ「モデル3」×パイロット スポーツ 5

 ウェットハンドリング路の旋回力は非常に高く、「パイロット スポーツ 5」のグリップ力の高さを再認識した。ステアリングの応答性、コーナリングフォースの高さともに驚くほどで、低重心のテスラの特性と相まって、ICEのクルマとは感覚が異なり限界点をつかみにくい。

パイロット スポーツ 5は、意のままのハンドリングを実現するハイグリップスポーツタイヤだ

 ただ、直進時に比べて高周波の転舵ノイズは少し耳につきやすい。タイヤは非常にしなやかで心地よいドライブフィールだ。バンプ路のあたりは少し強めだが、これは車両側に起因があるようで、タイヤそのものはしなやかだ。それこそ「THE SPORT TIRE」である。

グリップ力の高さ、ステアリングの応答性、コーナリングフォースの高さともに驚くほどの実力

 冒頭にも記したように、ミシュランでは生産や部材の効率化を進めながら、すべての性能円を大きくし、低燃費性能(転がり抵抗の小ささ)や摩耗しにくさ、性能の維持、静粛性を上げることを目標としている。

 今回の試乗でも転がり抵抗の小ささに重点を置きながら摩耗しにくいタイヤで、かつ走行性能を上げるというタイヤ作りの一端を垣間見ることができた。タイヤのパイオニア、ミシュランの果たす役割は大きい。

ミシュランでは材料やトレッドパターンを進化させることで、よりトータルパフォーマンスを高め、サステナブル性を高めていくとしている
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。