レビュー
【ナビレビュー】カロッツェリア初の8V型カーナビ「楽ナビ AVIC-RL09」
スマートコマンダーで使いやすさを追求、史上最強の楽ナビ登場
(2015/3/17 00:00)
カロッツェリアブランドでカーナビをリリースするパイオニア。“サイバーナビ”をフラグシップと位置づけ先進機能を投入、一方ボリュームゾーンには分かりやすさや使いやすさを重視した“楽ナビ”を用意。カーナビそのものにも2つのブランドが用意されているわけだ。
そんな背景がある中、2014年秋にフルモデルチェンジを実施したのが楽ナビ(2014年モデル)だ。同社では初となる専用フィッティングにより8V型モニターを採用したモデル、200mm幅のワイド2DIN対応モデルなど、10機種を一気に投入してきた。今回は、その中から最上位モデルとなる「AVIC-RL09」のレビューをお届けしよう。
スマートループ渋滞情報やフリーワード音声検索など、サーバーデータと連携
2014年モデルの楽ナビは大きく分けると3タイプ用意されている。上位モデルとなる“09”シリーズ、ミドルグレードの“03”~“07”シリーズ、機能を絞ったリーズナブルな入門機となる「AVIC-MRZ02II」だ。
09シリーズは「AVIC-RL09」「AVIC-RW09」「AVIC-RZ09」が用意されており、新アイテムとなる「スマートコマンダー」が付属しているのが大きな特長。このの3モデル、性能面での違いはなく順に8V型モニター、7V型モニター&200mmワイド2DINサイズ、7V型モニター&180mm2DINサイズを採用と、本体および画面サイズが異なるバリエーションモデルとなる。
そのほか主なところでは、
・16GBの内蔵メモリーに地図データを収録
・CD/DVDプレイヤー内蔵
・SDメモリーカード(SDXC、~128GB)
・USBマスストレージクラス対応(~16GB、1A)
・Bluetooth 3.0+EDR
・iPod/iPhone接続対応
・4チューナー×4アンテナ採用の地上デジタルTVチューナー内蔵
といった内容。加えて、オプションのデータ通信専用通信モジュール「ND-DC2」やスマホと接続することでデータ通信が可能となり、カロッツェリアならではの「スマートループ渋滞情報」によるリアルタイム渋滞情報を取得できる。
プローブ情報の老舗だけに渋滞予測精度の高さはさすがの一言。スマートループ渋滞情報では、VICSより密な情報を得ることができるため、複数のルート選択が可能な場面では強い味方になってくれる。そのほか、天気予報や駐車場満空情報、ガソリン価格なども調べることが可能だ。そうそう、新たに「フリーワード音声検索」も搭載された。クラウドを利用するタイプで発話~認識には5~10秒を要するものの認識率はまずまず。入力が面倒な長い名称をもつ施設の検索時には重宝する。
といったように、楽ナビのブランドではあるものの、そのパフォーマンスは上位モデルのサイバーナビに肉薄。マニア(!?)でも十分に満足できる内容になっている。
これまでの不満を一掃する大画面&新アイテムの採用
さて、話を楽ナビ AVIC-RL09に戻そう。本機の注目ポイントといえば、やはり8V型モニターの採用だ。現状、8V型はもちろん9V型を装着可能としているメーカーもあって、画面の大型化はカーナビ業界のトレンドといえる流れ。同社がこの流れに乗ることで対象車種が増えたり、ユーザーがメーカーを選べるようになったりするのは歓迎だ。本機での対応車種は販売予定を含め今のところトヨタ「プリウス」や「アクア」、ホンダ「フィット」など16モデル。フィッティングが気になるところかもしれないが、試乗した日産「セレナ」では質感的にもまったく違和感のない仕上がりだった。「純正じゃないと見た目が……」なんてユーザーでも不満は出ないだろう。
で、もう1つ特筆したいのが09シリーズのモニターには「ブリリアントフィニッシュパネル」が採用されている点だ。これまでの同社のカーナビはタッチパネルが感圧式ということもあってコントラストが低めで、最近のスマホなどを見慣れた目には若干眠い表示に感じられた。だが、このパネルではそんな印象を払拭。映像系のラインがコンポジットからコンポーネントになったことも相まって、クッキリと鮮やかな表示は地図を含めてこれまでにない美しさだ。
タッチパネルは従来どおり感圧式のままなので爪先でのタッチ操作が可能。スマホやタブレットで主流の静電式とはフィーリングが違うものの、ドラッグやフリックによる地図スクロール操作もOKだ。操作性に関しても同社が「従来モデルの約2倍」と謳うスクロール速度は決して誇張ではなく、“ヌルサク”とまではいかないものの確かに相当にスムーズになった。各種操作に対するレスポンスも上がっており、ほとんどのユーザーはそれほどストレスを感じないハズだ。
操作性の面ではスマートコマンダーの採用も大きなトピックと言える。その昔、同社のカーナビにはステアリングリモコンが付いていた時期があったけれど、それの発展版となるのがコレだ。平たくいってしまえばBMWやマツダ車に採用されているコマンダーの汎用版といったアイテムで、メニューなどの呼び出しが可能な4つのボタンにジョイスティック、ロータリーボリュームが付いている。ダイヤルでは地図スケールの拡大/縮小またはボリュームの上/下、ジョイスティックは地図のスクロール用、そしてジョイスティックを押すことで専用メニューに用意された3つのコマンドの実行が可能だ。
ただ、メニューを呼び出すことはできるもののコマンドを選ぶことはできないし、文字パレット表示時にジョイスティックとして使うこともできず、たいていの操作にはタッチパネルを併用する必要がある。……なんて、ネガな面を先に書いてしまったけれども、使ってみると実は結構便利なことに気がつく。特にボタンを押した際に表示される専用メニュー「ダイレクトメニュー」が、「ルート案内中の現在地/任意の地点」「ルート非案内時の現在地/任意の地点」と4パターン用意されており、それぞれ3タイプの異なる操作ができるようになっているのがポイント。これにより「自宅に帰る」や「ルート再探索」といったよく使う操作がほぼワンタッチで行えるのだ。使用頻度が高い地図の縮尺切り替えや地図スクロール時に画面に触る必要がないのも嬉しい。「現在地」「AV」のメニューボタンに加え、任意の機能が割り当てられるダイレクトキーが2つ用意されているのもありがたい。
先代モデルで導入されたジェスチャーも残っているけれど、こちらはランチャーメニューの表示専用となった。画面に手を近づけることで、専用の「お出かけランチャー」が表示されるのだ。コマンダーとランチャーの組み合わせによりタッチパネルを触る頻度が下がり、さらにレスポンスもよくなった新しい楽ナビの使い勝手はかなりイイ感じ、なのだ。
レスポンスアップで魅力が増したナビ機能
メインのナビ機能に関していえば先代モデルをほぼ踏襲した内容だ。
まず、地図表示。普通の2D表示のほかに3Dタイプの「スカイビュー」、ドライバー目線の「ドライバーズビュー」、2画面で異なる縮尺や視点の地図表示が可能な「ツインビュー」、音楽や映像と地図を同時表示する「AVサイドビュー」など豊富なモードを用意。通信により天気を取得して画面上に反映する、なんてことも可能だ。また、「文字拡大モード」「道路重視モード」と、2つのカスタマイズモードも用意されている。これら地図の切り替えはひとつの画面にわかりやすくまとめられており、いつでもカンタンに変更・選択できるようになっている。
検索機能は約3930万件のデータを収録する住所、約3050万件のデータを収録する電話番号を筆頭に名称、周辺、ジャンルといったモードが用意されている。また、前述したフリーワード音声検索や自分で任意の文字を入力するフリーワード検索では、単語や地名、キーワードなど曖昧な内容を組み合わせて検索できるので便利だ。もちろん、従来からある一つのキーワードで検索し、数ある候補の中からジャンルやエリアで絞り込んでいくこともできる。ある程度、検索するスポットの詳細が分かっていれば、こちらの方がスピーディだ。そのほか、カーナビらしい機能と言えるのが営業時間考慮検索。ガソリンスタンドやコンビニ、ATM、ファミリーレストランを検索すると、営業時間内と時間外の施設を異なるアイコンで表示してくれる。
ルート探索は「推奨/有料標準」をベースに「推奨2/有料標準」「推奨/有料回避」「推奨2/有料回避」「エコ優先/有料標準」「幹線優先/有料標準」の合計6パターンが用意されている。これらは「距離」「所要時間」「料金」「推定燃料費」「推定CO2排出量」と5つのパラメータの優先順位が異なったもので、探索画面の「6ルート地図」や「6ルートリスト」で確認することができる。と、内容そのものは従来と変わっていないのだけれど、探索に要する時間はだいぶ短縮されたように感じられた。特に1ルートだけならほぼ待たされる感覚はなく、とてもスムーズ。さすがに6ルート探索するとかなり時間が掛かるものの、ベースの推奨/有料標準を利用するならその終了を待つ必要はなく、「案内開始」ボタンを押せばすぐにルート案内を開始することが可能だ。
安心のルート案内と、やっぱり圧巻の自車位置精度
ルート案内に関しても先代モデル譲り。サイバーナビにも採用されているオートアングルチェンジやドライバーズビュー、それに交差点拡大図、アローガイドが用意される。一般道では方面看板やレーンガイドも豊富に用意されており、またルート案内の如何に関わらず表示されるため、慣れない道路でもスムーズにドライブすることが可能だ。
カロッツェリアナビといえば一番に思い浮かぶのが自車位置精度の高さ。先代モデルでは時間の都合でほかの場所でのチェックとなったけれど、今回はいつものコースで確かめることができた。結果からいえば、完璧! 高速道路と一般道が上下に並んでいる場所や、GPSの電波を受信することができない地下駐車場など、少しも迷いなく正しい場所を示してくれた。一般道のアンダーパスと側道もキチンと判断してくれるし、ルートを間違った際のリルートもほぼ一瞬なのだから、もはや文句の付けようがない。
上位モデルとなる09シリーズは最大3年間、無料で地図更新が可能となっている。更新は通信モジュールのほか、パソコンとSDメモリーカードを使っても行えるようになっている。道路データは毎月、地点データは年10回更新されるため、常に新しい情報や道路を使ったルート探索、ルート案内が受けられるのは嬉しいポイントだ。
ついにタイムアライメント機能を搭載!
新しい楽ナビはAV能力もサイバーナビ並みに充実したものとなった。新たに新設計のDSPを搭載することでタイムアライメント機能を実装。グラフィックイコライザーも7バンドから13バンドへとほぼ倍増することで、より各ユーザーの好みに合わせたセッティングが可能になった。ただ、設定があまり複雑になってしまうと、細かなセッティングに興味がないユーザーには「使い切れない」なんてことも考えられる。そのために用意されたのが「簡単ベース設定」だ。「迫力アップ」「音声くっきり」など用意された5つのシチュエーションから選ぶだけでカンタンに音場が変えられる。
ソース対応力は従来どおり。4チューナー×4アンテナのフルセグ地デジを筆頭にDVDビデオ/CD再生、USBメモリやSDカードを使った音楽や映像の再生、Bluetoothによる音楽再生が可能。また、音楽CDを再生することでMP3形式でSDカードへの録音が可能な「ミュージックサーバー」機能も搭載。入力端子としてAUX端子に加えHDMI端子まで用意されているほか、オプション設定されているケーブルが必要となるもののiPhone接続にも対応している。
もはやスタンダードとは呼べない史上最強の楽ナビ
もともとは上位機種サイバーナビに対してスタンダードモデルの位置づけだった楽ナビ。だが、年々機能アップが行われ、ほぼ「できないことはない」ぐらいの高機能モデルとなった。
ただ、高機能になったことによる弊害、つまりレスポンスのわるさが弱点でもあった。だが、今回の2014年モデルでは、それがかなり払拭されたといえる。今までなら使っていて「ん~、遅い~」とストレスを感じる場面があったけれど、今回はそれがほとんどなかったのだ。もう1つ、ずっと同社ナビが抱えてきた感圧式パネル故のコントラストの低さも、今回のブリリアントフィニッシュパネルにより解決。これらの点においてはサイバーナビを完全に上回ったといってよい。
先代モデルのレビューで「魅力を感じない」と書いたエアージェスチャーは、新たにスマートコマンダーに置き換えられた。こちらは「メニュー選択などにも使えれば」と思う面もあるものの、現状でも十分に使えるアイテムになっている。
と、まさにブラッシュアップが行われた今回の新しい楽ナビ。間違いなく“買い”の1台と言える。
「でも、AVIC-RL09はちょっと高いし……」ってことならミドルグレードで8V型モニター採用の「AVIC-RL05」がある。地デジがワンセグのみだったり、スマートコマンダーがオプションだったり、またフリーワード音声検索非対応だったりと、一部の機能が削られているものの、モニターはAVIC-RL09同様ブリリアントフィニッシュパネルを採用。お手頃価格で大画面のナビが楽しめる。