特別企画
【特別企画】カメラマン高橋学のスバル「レヴォーグ」を運転してみました
1.6GT EyeSightが気に入りましたね
(2014/3/26 00:05)
Car Watchでは、新車の撮影やSUPER GTに参戦するスバル(富士重工業)「BRZ」の参戦記などをお願いしている高橋学カメラマン。その高橋カメラマンが、最近気になるクルマとして挙げているのが「レヴォーグ」だ。松田秀士氏によるレヴォーグ プロトタイプのインプレッション撮影も高橋カメラマンにお願いしたのだが、撮影の最中も「んー、気になる」という言葉を何度となく発していた。
それでは、ということでお願いしたのが高橋カメラマンによるインプレとなる本記事だ。レヴォーグは“ツーリングスポーツ”をウリとしたクルマ。多数の撮影機材を積み、各地(高橋カメラマンの場合は主にサーキット)に移動しなければならない高橋カメラマンは、想定ユーザーとしてのマッチング度も高いと思われる。ワゴンユーザーでもある高橋カメラマンのインプレをお楽しみいただきたい。
「レヴォーグ」を撮るだけでなく運転してみた
「レヴォーグ」はプレカタログに「2014年4月発売予定」としか記されていないのに何故「レヴォーグを運転してみた」なのか? それは私の職業が自動車雑誌やモータースポーツ関連のカメラマンでもあるから、その機会恵まれたというのが理由です。Car Watchでも松田秀士氏による「レヴォーグ プロトタイプ」のインプレッションが掲載されていましたが、あのとき撮影を担当したのが私でした。ちなみに下記の記事が松田秀士によるインプレッションです。写真にも注目してもらえると、ちょっとうれしいです。
●スバル「レヴォーグ プロトタイプ」
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/impression/20140123_632001.html
カメラマンの仕事はクルマをかっこよく撮ることや、運転するドライバーを車内から撮ること。そのため、1.6モデルの後席に乗って多くのシャッターを切っていました。そのとき思ったのは、「後席の乗り心地が硬いなぁ」ということ。その感想を覚えていたCar Watchの編集者から、「レヴォーグの試乗会が再度あるので、乗り心地に関してコメントしていた高橋さんが書いてみませんか」というオファーがあり、受けることにしました。運動性など深い部分についてはすでに松田秀士氏がCar Watch誌上で書いており、「荷物をたくさん積み込んでサーキットへ向かうなど、長距離を自走するカメラマンとしての視点でヨロシク!!」との注文でした。
前回の試乗会の際、開発陣が後席の乗り心地の硬さを把握しており、改良に取りかかることを知らされていたので、個人的にもその進捗状況を確かめたい部分がありました。仕事用のクルマとして、そしてファミリーカーとしてのレヴォーグをプロドライバーとは違う視点でお届けできればよいなぁ、なんて思いながらツインリンクもてぎへ向かいました。
乗り込む前に、まずは仕事に使えるのかをチェック
プロカメラマンの仕事は、多くの場合カメラバッグ1つでこなせるものではありません。三脚はもちろん、脚立であったり大型ストロボであったりなど、発注者からの多様な注文に的確に応える機材を持っていないと、次回の発注が期待できなくなります。とくにクルマを撮影する場合、現場でひらめいた注文も多く、いかに的確な撮影環境を作り出すかが腕の見せ所です。そのため、トランクの容量チェックには、よく登場するゴルフバックではなく、撮影機材などを多数詰め込んだ自分のバッグを試乗会場に持ち込み、確認してみました。
最も大きいものはスーツケースで外径寸法は80×60×28cm。これは多くの航空会社が採用する国際線の受託手荷物の最大サイズ(3辺の合計が158cm)より一回り大きなものですが、それでも3個積めます。空港で頻繁に見かけるサイズのスーツケースなら4個を飲み込んでしまうでしょう。ちなみにレヴォーグはそのデザイン上リアウインドーが傾斜していますが、実は影響はわずかなもので、写真のとおり問題なく積めます。そのほかのパターンは写真にてご覧ください。
全高を抑えスタイリングに抑揚を持つレヴォーグですが、ラゲッジルームの使い勝手や大きさに抜かりはなく、ツーリングワゴンに対するスバルのこだわりが随所に見える素晴らしいできだと感じました。もちろん私自身の仕事にもまったく支障はなさそうです。
GT-Sにするか、GTにするか?
今回何より気になるのが、新開発のブルーボクサーエンジンである水平対向4気筒 直噴1.6リッターを搭載する1.6GTですが、今回の試乗車はすでにリアシートの乗り心地が改良されていて、リアシートに座る家族からは文句は出ないだろうと思う仕上がりになっていました。
試乗コースは、ツインリンクもてぎのオーバルであったり、サーキット内の外周路であったり、はたまたサーキットコースであったりとグレードごとに違う所を走ったので比較はしにくいのですが、実は快適性においても18インチタイヤ+ビルシュタイン製ダンパー付きのGT-Sの方が好ましく、プラス26万円以上の価値はあると感じてしまったのが正直な所です。2月27日時点ですでに5673台もの先行予約のあるレヴォーグの受注構成比で、Sグレードを選ぶ人は1.6リッターモデルでは7割、2.0リッターモデルでは9割を占めているとのことで、初期受注もSグレードに人気が集中しているようです。
ちなみにサーキットコースではアウディ「S3」をベンチマークとし開発したという2.0GT-Sに試乗しましたが、パワフルなのに刺々しさのない素直なドライブフィーリングはやはり魅力的でした。25年もの長きに渡り築いて来たレガシィのスポーティなイメージの正当な後継はこちらなのかもしれません。
一方、現代のトレンドの1つでもあるダウンサイジング直噴ターボである1.6リッターモデルはほかのスバル車には搭載されていない新開発エンジン。今まで築き上げたブランドイメージとは違う新しい価値を発信する重要なモデルなのかもしれません。2.0リッターの走りに魅力を感じつつも、私個人としては本体価格、燃料代の安さ、燃費、アイドリングストップ機能など経済性を重視するので、1.6リッターモデルに軍配を上げたいと思います。
これは絶対はずせない“EyeSight ver.3”
先代レガシィ登場時にその性能に驚いた先進安全技術「EyeSight(アイサイト)」もレヴォーグではver.3に進化。既存のプリクラッシュブレーキや全車速追従機能付クルーズコントロールの進化に加え、3つもの新機能が追加されました。そのうちの1つ「アクティブレーンキープ」を今回の試乗で体感する事ができました。
要は走行時に道路に引かれた車線を逸脱するのを防ぐ機能です。クルコン使用時には車線の中央を維持しながら走ります。またクルコン未使用時には車線をはみ出しそうになるとステアリングアシストが行われ車線内に車を戻そうとする機能です。どちらもサーキット内の短いテストではありましたがその効果は確実に体感できます。
個人的に評価したいのはその介入の“加減”です。電子デバイスによる運転の自動化や直接介入には否定的な意見もあるようですが、個人的にはアイサイト最大の美点は、さらっと介入するものの決して余計なお世話に至らない点にあると思ってます。これはアイサイト登場時にも同じ様にも感じました。「走って楽しい車」を常に追い続ける、スバルならではのサジ加減こそがアイサイトの魅力だと改めて感じました。本当の実力は街に出てさまざまなシチュエーションで運転してみないと分からないというのが正直な所ですが、レヴォーグで外せない機能がこのアイサイトです。
レヴォーグの開発最高責任者 熊谷PGMに聞いてみた
脈々と受け継がれた魅力を備えながらも、どこかおおらかな大陸的雰囲気を併せ持つ現行型レガシィに移行できなかった先代ワゴン(BP型)ユーザーの受け皿にもなりえるし、実際開発時にはメーカーにもそういう意識はあったというレヴォーグ。先代のツーリングワゴンに憧れていた私としては、2.0NA、2,5NA、3.0NA、2.0ターボとワイドバリエーションを展開した先代に対し少々選択肢が少ないことと、私の中で未だにくすぶる「もう少し車体幅を狭くできなかったのだろうか?」という疑問を開発の最高責任者である熊谷氏に投げかけてみました。
ボディーサイズに関しては「全国のスバルディーラーに話を聞くと、長さ(現行型レガシィの)4790mmに対する不満が圧倒的に多かった。それに対し1780mmの幅はギリギリではあるが許容範囲という反応でした。日本の5ナンバー枠の駐車場だと、出し入れの際長さで不便を感じる人が多いようです。それならば全長を短くした上で幅は平坦になりがちなワゴンのサイドパネルに豊かな表情を持たせ、デザイン的自己主張が強く1800mmを超える幅を使い立体的になってきているライバルに対抗するために1780mmいっぱいに使わせてもらおうと考えました」「あと、先代ユーザーの中には(現行型の)広さが必ずしもプラスではなく、室内の(ほかのパッセンジャーとの)一体感が失われた、との声もありました。室内空間に関してはその辺の“居心地”も意識しています」とのこと。
選択肢に関しては、「1.6リッターに関してはとにかくレギュラーガソリンで性能を出すことにこだわりました。(SIドライブの)Iモードで最大限の燃費効率を出そうと考えて開発しました。その辺のこだわりは(価格の絶対値こそ上がったが)先代の2.0iオーナーにも満足してもらえる仕上がりだと思ってます」。そこには、新規購入、他のメーカーからの乗り替え、現行モデルからの乗り替えはもちろん、先代を気に入ってくれているユーザーを強く意識している熊谷氏の姿勢が強く感じられた。ステーションワゴンにおいてほかの国産メーカーが海の外ばかり見ているように感じる中、ちょっと嬉しいお答えでした。
なお国内専売を謳うレヴォーグですが、すでに欧州からも輸出を望む声はあがっているそうです。熊谷氏自身が「日本に輸入されている欧州ワゴンに対抗できる装備をすべて盛り込んだ」というレヴォーグが欧州で走る日もそう遠くないように思えますが、北米ですでに成功を収めているレガシィ、欧州車をもライバル視した日本向けレヴォーグ、このキャラクターの異なるステーションワゴンを同じメーカーで選べることは今だけのチョットした贅沢かもしれませんね。
なお、レヴォーグは3月31日までに先行予約すると予約特典があるようです。東京モーターショーからレヴォーグを撮影してきているのですが、結構気に入ってる自分自身に気がつきました。