特別企画
【特別企画】奥川浩彦がニコン「D810」でモータースポーツ撮影に挑む(後編)
モータースポーツ撮影にはD4sとD810の組み合わせが理想的
(2014/10/2 13:11)
ニコンから7月に発売された超高解像度フルサイズ一眼レフカメラ「D810」でモータースポーツの撮影に挑む今回の企画。前編では高感度ノイズや電車の撮影によるオートフォーカス性能の確認を行った。後編はいよいよD810をサーキットで実戦投入だ。
撮影の舞台は鈴鹿サーキット。8月30日~31日に開催されたSUPER GT 第6戦「43rd International SUZUKA 1000km」なのだが、D810とレンズを受け取ったのはその10日ほど前。筆者にとってほぼ初めてのニコン製一眼レフということで、SUPER GTの1週前にツインリンクもてぎで開催されたスーパーフォーミュラ 第4戦に練習しに行くことにした。取説を持って本番の前にカメラに慣れようと出掛けたのだが、せっかく撮ったので先に紹介しておこう。
2年前のEOS 5D Mark IIIのとき(前編後編)は、元々キヤノンユーザーなのでレンズは共通、普段使用してるEOS 7Dと2台体制で臨んだので比較撮影をすることが容易だった。今回用意した機材はD810が2台とレンズが「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED」「AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II」「AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR II」の3本。
普段もEOS 7Dを2台と標準ズーム、望遠ズーム、サンニッパの3本で撮影しているので、ほぼ同じような組み合わせだ。比較撮影をしようと考えると、これらに加えてEOS 7Dとサンニッパを持って出ることになる。カメラ3台、サンニッパ2本はさすがに重い。なので、SUZUKA 1000kmはニコンのみで撮影を予定していた。その点、スーパーフォーミュラの撮影は練習なのでバリエーションを撮る必要はない。D810+サンニッパ、EOS 7D+サンニッパだけ持って撮影に臨むことができる。思い付きで出掛けることにしたのだが、よく考えると比較撮影するには絶好の機会だ。
土曜日のスケジュールは、午前中にフリー走行(1時間)とサーキットサファリ(15分)。午後は公式予選がF1のようにQ1(20分)、Q2(7分)、Q3(7分)とノックアウト方式で行われる。フォーカス性能を比較するにはマシン速度が速く、至近距離で撮影できるポイントで撮りたい。そこでフリー走行はダウンヒルストレート、予選Q1は3コーナーの進入で撮影した。
AF性能の評価は真正面から撮るのが理想だが、高速区間のストレートはエスケープゾーンがあるので至近距離で撮ることはできない。ストレートエンドのブレーキングが100m看板を過ぎたあたりと考えれば、エスケープゾーンの先からブレーキングの手前を撮ろうとすると200mほど離れた位置から撮ることとなる。
よって、至近距離で撮るにはブレーキングに入る手前をコースサイドから撮ることになる。この場合のデメリットはマシンを真正面から撮ることができないので、AFポイントを被写体に合わせる技量によって結果にバラ付きが出ることだ。
フリー走行はダウンヒルストレートのコースサイドで撮影。カメラの設定変更などの操作に慣れたり、ファインダー越しにマシンを追いかける練習を行う。サーキットサファリはヘアピンの立ち上がりで撮影。この日は2&4レースだったので全日本ロードレースのJ-GP2マシンの走行も行われており、その予選を1~2コーナーのイン側で撮影した。
午後のスーパーフォーミュラの予選Q1は3コーナーの進入をコースサイドから撮影した。D810とEOS 7Dにそれぞれ300mm F2.8のレンズを装着し、AFポイントは中心の1点をヘルメットに合わせ、シャッター速度1/500秒に設定した。
D810は撮像範囲をFXとDXに設定して撮影、それにEOS 7Dの3種の撮影を行った。20分の予選Q1の間に撮った画像から、マシンによるピントの合いやすさを排除するため3種の撮影で写っていた2号車、7号車、11号車、37号車、62号車で比較を行ってみた。
FXに設定した場合だけ焦点距離(画角)が大きく異なるので、マシンとの距離が近くなるとフォーカス面では不利となる。さらに連写性能がそれぞれ5コマ/秒、6コマ/秒、8コマ/秒と異なることもあり、背景などからほぼ同じ位置を通過するマシンの連続する3枚の画像を対象とした。よってFXはサムネイルで見るとマシンが小さく写っているが、等倍にすると同じくらいの大きさとなっている。
マシンの速度やライン取りのバラ付きなども考えると同一条件とは言えないが、参考にしていただきたい。
●ニコン D810(FX)
●ニコン D810(DX)
●キヤノン EOS 7D
5台×3枚の写真を、筆者の主観でピントが合っていれば○、やや甘い場合は△、ピンボケの場合は×とした。当然、同じ画像でも人によってはピンボケと判断したり、OKと判断したり基準は違うと思われる。掲載した画像はすべて元画像を見ることができるので、自分で判断したい方は1枚1枚チェックしていただきたい。
D810(FX)○△△ ○△○ ○△○ △△× △△○
D810(DX)○△○ △△○ ○○× ○△△ ○△○
EOS 7D ○×○ ○○○ ○△× △△△ △○○
この結果を前編と同様に○を1枚、△を0.5枚と数えると
D810(FX)10枚
D810(DX)11枚
EOS 7D 11.5枚
○も△も許容範囲で1枚として数えると
D810(FX)14枚
D810(DX)14枚
EOS 7D 13枚
となった。結果は大差がなく、誤差の範囲内と思われる。実際に撮影しているときも、連写性能の差は強く感じたが、ファインダーを通して見る、いわゆるピントの食いつきには大きな差を感じられなかった。
Q2、Q3の短いセッションは2ndアンダーブリッジ、90度コーナーのイン側で撮影したので、こちらも4K(3840×2160ピクセル)サイズにレタッチ、リサイズしてみた。
ピットウォークで撮ったレースクイーンと、ル・マンの大クラッシュから復帰したロイック・デュバル選手の画像は縦位置なので、4Kにリサイズする意味もないと思うので元サイズのまま掲載しよう。ツインリンクもてぎでの予行演習としての撮影はここまで。いざ、鈴鹿へ。
D810のレビューに合わせて報道エリアの撮影について紹介
2年前、EOS 5D Mark IIIのレビューはマレーシアのセパンサーキットで撮影を行った。今回はCar Watch読者もおなじみの鈴鹿サーキット。おそらく「セパンサーキットの4コーナー」「7コーナー」と言われてもピンとこない人もいると思われるが、鈴鹿サーキットの場合は逆バンク、デグナー、ヘアピン、スプーンなど、コーナーの名称を聞くだけで景色が浮かぶ人も多いだろう。
筆者は30年ほど前、学生時代にサーキット観戦を始め、疾走するマシンを撮ってみたいと思い一眼レフカメラを購入。以来、二十数年サーキットの観客席で撮影を続けてきた。Car Watchが創刊し、長年お付き合いのあった編集長から声を掛けていただいたことで、報道エリアで撮影して原稿を書くようになり、現在に至っている。
筆者自身、趣味だったサーキット撮影が仕事になったことに驚いていたが、報道エリアで撮影しているカメラマンのなかには、普段は普通にサラリーマンをしながら週末は仕事でサーキット撮影をしている人がそこそこいることにも驚いた。もしかすると、Car Watch読者のなかにも数年後には報道エリアで撮るようになる人がいるかもしれないと思っている。そこで、ここからはSUPER GT 第6戦「43rd International SUZUKA 1000km」でニコン D810を使って撮った画像を紹介しつつ、報道エリアにおける撮影の様子などもお伝えしよう。
SUPER GTは、土曜日に2時間の練習走行と約1時間の予選、日曜日の朝に30分のフリー走行時間があって、午後に決勝が行われるのが一般的なスケジュールだ。決勝は通常なら300km、約2時間で争われるが、今回はシリーズ最長の1000km、約6時間のスプリント耐久レースというのが特徴だ。
筆者は決勝までのセッションでフォトギャラリー用の画像を撮影し、決勝はレースリポートで使用する画像とフォトギャラリー用の画像の両方を撮っている。レースリポートで使う画像はトップ争いが中心となるので、Pit-FMなどを聞きながら対応しているが、最終的な順位は終わってみなければ分からない。また、序盤に最後尾に落ちても表彰台まで登りつめるケースもあるので、レース前半は「証拠写真」として後方を走るマシンもできる限り撮るようにしている。
一方、フォトギャラリーで心掛けているのはマシンと絵のバリエーションだ。フォトギャラリーでは60枚から70枚の画像を掲載しているが、目安としては両クラスの表彰台に上がったマシンを各3枚程度、GT500クラスの4位以下は全車両1枚以上。GT300クラスは4位から10位までは1枚以上としている。それ以外は最終順位に関係なく、場所や色のバリエーションなどを考慮して追加している。
同じ撮影ポイントで撮ったマシンを多数並べれば枚数を容易に確保できるが、それでは面白味がない。そこでマシンが異なるだけの同じような絵は2~3枚までとしている。とは言え、何十個所も移動できるわけではないので、同じ場所でも望遠と広角で撮り分けるといった工夫でバリエーションを増やしている。今回のフォトギャラリーでは72枚を掲載しているが、重複を除いて50ほどのバリエーションを確保している。
●2014 SUPER GT 第6戦「International SUZUKA 1000km」フォトギャラリー
http://car.watch.impress.co.jp/docs/photogallery/20140908_665643.html
サーキット内の移動は会場となるサーキットによってさまざまな手段がある。鈴鹿サーキットはセッションの合間にコース内をメディアバスが1周してくれるので、セッション前にバスで移動し、セッション中は徒歩で移動。セッションが終了したらバスでパドックに戻るという具合だ。決勝は1000kmで173周。約6時間とたっぷり撮影時間があるので、それまでのセッションはアクセスがあまりよくない西コースを中心に撮影。決勝は徒歩でまわれる東コースというスケジュールを立てた。
土曜日、午前の練習走行。2時間のセッションなので130R、デグナーイン側、ヘアピンアウト側と移動しながら撮る計画を立てた。まずは130R。西ストレートから130Rに向かうマシンを正面から撮ることができるのだが、晴れていると陽炎の影響で被写体がゆらゆらと歪んでしまう。バリエーションの1つと割り切って軽く撮影した。
続いて130Rを抜けるマシンを、シャッター速度1/125秒で流し撮り。数枚撮ったところで32号車が炎上し、赤旗中断となった。この中断中にデグナー2つ目を見下ろせる丘に移動。デグナー2つ目を抜けるマシンを、ここもシャッター速度1/125秒で流し撮り。ここは左右は逆だが、S字2つ目をスタンド最上段から撮る位置関係に近く、マシンのレコードラインのRの中心付近から撮れるので成功率が高い。
そのままデグナー側に降りて、デグナー1つ目と2つ目の短いストレートをシャッター速度1/125秒で流し撮り。背景の木漏れ日を入れるため、ゆとりを持ったフレーミングで2ラップほど撮影した。
130R、デグナー2つ目、デグナーの短いストレートの3枚の画像を比較してみよう。差が分かりやすいように元画像のまま掲載する。流し撮りの際、ボディーの中心はブレていなくて、フロントやリアがブレることは多い。ブレていない芯の部分はシャッター速度を落とすと小さくなる。同じシャッター速度1/125秒の3枚だが、コーナーのアウト側で撮った7号車は前後がかなりブレて芯が小さめ。これに対してコーナーのイン側で撮った50号車は、マシンの前後もブレが少なく芯が大きい。リアウイングの翼端板などが顕著だ。ストレートを横から撮った100号車はその中間くらいだろうか。単にイン側なら芯が大きくなるというものではなく、Rの中心付近から撮ると芯が大きくなる。観客エリアでは2コーナーイン側の激感エリア、S字2つ目のD席スタンドは、Rの中心付近から撮ることができるポイントだ。
立体交差下の日陰に入り、デグナーを立ち上がってくるマシンを撮影。そこから雑草をかき分けてヘアピンのアウト側に移動。この途中、コース内のマシンがガードレールのすぐ横を猛スピードで抜けていくので、少々危険を感じる。
ヘアピンは観客エリアからでもさまざまな方向から撮影できる。報道エリアも同様にバリエーションを稼げるポイントで、7枚をフォトギャラリーに掲載した。これで午前中のセッションは終了。午後はデグナーのアウト側で撮影だ。
D810のフォーカス性能をチェック!
土曜日、午後の予選では、GT300クラス、GT500クラスのマシンがQ1、Q2と別々に走行する。セッションの途中にわずかだが空き時間があるので移動しやすい。撮影場所はデグナーのアウト側。ここでもヘアピンと同様に色々な方向から撮影し、バリエーションを稼いだ。
D810のフォーカス性能の確認もこのセッションで行った。ほかのサーキットも同様だが、速いストレートはエスケープゾーンが広いので正面から撮ると遠くなってしまう。鈴鹿サーキットでは1コーナー、スプーン、130Rなどは近くで撮るのが難しい。このデグナー立ち上がりは比較的正面に近く、至近距離で撮影できるポイントだ。デグナーから立ち上がって来るマシンを連写した元画像を何枚か掲載しよう。撮影の開始位置は直前に撮ったマシンとの位置関係によって変化するので、枚数に差はある。
9号車 ポルシェの最初の2枚はいまひとつだが、全体的にフォーカス性能は十分だ。ちなみに61号車 スバル BRZの2枚目はフォトギャラリーに掲載した画像の元画像。後方のマシンが排気熱で揺らいでおり、マーシャルなどが背景に写り込んでいないことでこの画像を選択した。この場所では1枚しか使わなかったので、数十枚はお蔵入りだ。
日曜日の朝のフリー走行も、西コースのスプーンカーブで撮影した。フリー走行は30分で、その後に15分のサーキットサファリが行われるというスケジュール。まずは西ストレートに向かうマシンを斜め後ろから流し撮り。最初はシャッター速度1/30秒、その後は1/15秒で撮影。フォトギャラリーに掲載した画像はシャッター速度1/30秒で撮った0号車で、CR-Zの大人しめな絵を選択した。
掲載しなかった画像もお見せしよう。同じく1/30秒で撮った画像は、3台のマシンが入ったのはよかったが、マシンをもう少し前(進行方向)、縁石の右端から離れた位置に置きたかった。1/15秒で撮った39号車は手前にマシンが入ったのはよかったが、クリッピングに見切れたマシンが邪魔になる。同じく1/15秒で撮った61号車も手前にマシンが入っているが、ややブレが大きく、これももう少しマシンの位置を前に置きたかった。結局、掲載するマシンのバリエーションとの関係もあり、ブレが少なかった0号車となった。
同じスプーン2つ目の進入側でも流し撮りをして、1つ目の進入を正面から撮ってフリー走行は終了となった。次までの空き時間に、スプーン進入のブレーキングを横から撮れる位置に移動。サーキットサファリはブレーキローターの赤熱シーンが狙いだ。シーズン序盤はレクサス勢のマシンが真っ赤に焼けたローターを見せてくれたが、カバーが装着されるようになって見えなくなったので、現在はホンダ勢がターゲット。特に32号車 エプソンが最も赤熱する可能性が高い。なんとかブレーキローターが赤熱する絵は撮れたが、芯が後方にズレてフロント付近がブレ気味。ボツにしたもう1枚はマシンの位置、ブレは問題ないのだが、狙いのブレーキローターが赤熱していない。結局、赤熱した方の画像を選択している。
D810のファインダーの広さが流し撮りの成功率を高める
決勝のスタート後は、2コーナーを立ち上がってくるマシンがS字に切り込むところで撮影。ここは1~2コーナーを抜けたマシンが並ぶので、レース序盤の順位が分かる証拠写真を撮りやすいポイントだ。
2コーナーのアウト側にある縁石からマシンが直線的に向かってくるので、フォーカス性能を確認するにはうってつけの場所なのだが、晴れると陽炎の影響を受けてしまう。8枚連写した画像の2枚目と4枚目を除いた6枚の画像を見ていただきたい。真っ直ぐ向かってきて写真の右側に切り込んでいくのだが、フロントマスクに備えたスリーポインテッドスターのエンブレムから左右に伸びる赤・銀のバーを見ると、陽炎の影響が収まるのは最後の1枚だけだった。
証拠写真と数枚のフォトギャラリー用の画像は使用したが、残念ながらここでフォーカス性能の確認はできなかった。当初はS字から2コーナーのイン側、ストレートエンドと移動するつもりだったが、激感エリアが混雑しているのを見て計画を変更。報道エリアに立つと激感エリアで撮る人の邪魔になるし、天気もよく、2コーナーのB席をバックにスローシャッターを切るにはかなり絞り込みが必要だと判断して、2コーナーはレース終盤に撮ることにした。計画を変更し、逆バンク方向に尺取り虫的に移動しながらバリエーションを意識しての撮影となった。
さて、次の2枚の画像も逆バンクのイン側から撮ったものだが、できれば大きなサイズで見比べていただきたい。1枚目はシャッター速度1/125秒で普通に流し撮りしたもの。2枚目は1/30秒とスローシャッターで撮っており、背景が大きく流れている半面、マシンはブレ過ぎという感じがする。
2枚目の画像の元画像を見ていただこう。ズームを44mmと広角気味にしてスローシャッターで撮り、トリミングしたのが2枚目の画像だ。このようにマシンを小さく撮るとブレやすいと感じたことはないだろうか。
元画像は筆者の腕ではブレが少なく撮れた方だ。ファインダー内に大きく映った被写体と小さく映った被写体では、大きく映った方が流し撮りをするときに追従しやすくなる。その点、フルサイズのD810はファインダーが広く、被写体を大きく映すことができる。APS-C機を使用してる人は、フルサイズ機のファインダーを覗いて「広い」と感じるはずだ。
ファインダーの視野率が100%とか97%といった話しはよく聞くが、ファインダーの倍率はあまり注目されることがない。D810の倍率は約0.7、筆者が使用しているEOS 7Dは約1.0。倍率は50mmのレンズを付けたときの数値なので、EOS 7DはAPS-Cで80mm相当のレンズを付けたときの数値だ。これを換算すると0.625となり、D810の0.7より被写体が小さく見える。少し前に、他人の一眼レフのファインダーを覗いて「狭い」と感じたことがあった。あとで調べると、換算した倍率は0.6だった。実際に見ると0.6、0.625、0.7の差は大きい。その差が流し撮りの成功率にどれくらい影響するかは分からないが、理論上は大きく見えるファインダーの方が流し撮りの成功率が上がるはずだ。
逆バンクからコースに沿って数個所で撮影しながらシケインにたどり着いた。ちょうどGT300クラスのトップ2台が接戦になったので、証拠写真を撮りつつ撮影場所を微妙に変更し、シャッター速度も変更して撮影。シケインから最終コーナーのイン側まで降りて、Q2席のスタンドをバックに流し撮りをしてメディアセンターに戻った。
レースは前半が終了。筆者もメディアセンターで休憩し、飲料などを補充して再びコースサイドに戻った。後半は逆バンクのアウト側からS字を抜けて1コーナーまで行き、S字まで戻って地下道を抜け、イン側に入り2コーナー、ストレートエンドと撮り進める計画だ。1コーナーの正面とストレートエンドのイン側を除けば、激感エリアを含めて観客席から多くのカメラマンが撮っているポイントだ。
コース下を通るトンネルを抜け、インフィールド側に入って2コーナーのイン側に向かっている途中で、筆者は大変なミスをしていることに気付いた。まだチェッカーまで30~40分ほどあると思っていたが、実際には残り周回が10周、20分ほどでチェッカーとなっていた。
6時間レースが行われるという計算から逆算して移動していたが、この日はセーフティーカーが1度も出ていない。加えて今年はマシンの速度が上がっているので例年より大幅に早くチェッカーとなった。2012年は5時間59分、2013年は5時間55分でチェッカーとなっているが、今年は5時間37分と20分も短くなっている。
2コーナーのイン側、いつもの消化器の横で撮影を開始。もう少し1コーナー側に寄って撮りたいところだが、激感エリアで撮る人の邪魔になるので、元々撮影の邪魔になる消化器の印として設置されたオレンジ色のポールの横にいれば、影響が少ないだろうという考えだ。レーススタート直後に比べると、激感エリアの人も半分以下に減っていた。
望遠レンズを使い、シャッター速度1/100秒で2ラップ、標準ズームに交換して観客席をバックにシャッター速度1/30秒で2ラップ撮影し、ストレートエンドのイン側に移動した。この時点で残り周回数は2周ほど。証拠写真も考慮しつつスタンドをバックに撮影。最後は近付いてくるマシンをシャッター速度1/30秒で撮ってこの日の撮影は終了した。
数日に渡ってD810を使用し、連写性能が5コマ/秒(DXモード時は6コマ/秒)であることを除けばサーキット撮影に十分使えるという印象を持った。おそらくD4sとD810の組み合わせが理想的で、D810が単体でサーキット撮影に向いているかと言えば疑問だ。ツインリンクもてぎでの撮影時はEOS 7Dといっしょに使用したので連写がもの凄く遅く感じられたが、鈴鹿サーキットではD810だけを使用したのでそれほど遅く感じなかった。なので、フォトギャラリーに掲載した画像でDXで撮ったのは4枚だけだ。
クロップ機能は確かに便利だが、それは元々の解像度が7360×4912ピクセルと大きいからで、EOS 7Dにクロップ機能が欲しいかと聞かれればこれは疑問だ。撮った画像を後からトリミングすれば済むと感じている。もしもD810がDXに切り替えると連写性能が7コマ/秒に上がるというなら、クロップ機能はグッと魅力を増すだろう。
前回の電車を撮った画像を見ると、D810+300mm F2.8とEOS 7D+200mm F2.8では背景のボケ方がまったく違っている。フルサイズならではの絵が撮れる魅力は確かにあるが、レンズを含めた重量や連写性能などを考慮すると、筆者にはAPS-C機の方が合っていると感じた。
筆者は2年前にEOS 5D Mark IIIをマレーシアのセパンサーキットに持ち込みレース撮影を行っている。そのときもEOS 5D Mark IIIはAF性能が申し分なく、サーキット撮影は十分に可能だったが、連写性能やフルサイズとAPS-Cの組み合わせがしっくり来ないことなどもあり、数カ月後に2台目のEOS 7Dを購入した。もちろん、そこには当時の3倍近い価格差も選択要素として入っている。
筆者は主な撮影対象がモータースポーツなので、当然、EOS 7D Mark IIが次のターゲットだが、風景などの撮影が主でたまにサーキット撮影という使い方であれば、D810はより魅力的なカメラだと思う。