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【インタビュー】新型ジープ「コンパス」のデザインについてデザインマネージャーのクリス・ピシテリ氏に聞く

「プレミアムな小型車が存在するんだということをアピールしたかった」

12月2日に発売された新型コンパクトSUV「コンパス」のデザインについて、FCA USで新型コンパスのエクステリア・デザインマネージャーを務めたクリス・ピシテリ氏に聞いた

 FCA ジャパンは、ジープブランドの新型コンパクトSUV「コンパス」を12月2日に発売した。

 ジープブランドの日本における販売状況は、2009年は998台だったところ2016年は9388台と、ここ8年で約10倍の販売台数を記録している。2017年はその勢いをさらに加速させるとしており、その原動力の1つとなるのがCセグメントに属する今回の新型コンパスだ。

 その新型コンパスではエントリーグレードの「Sport」(323万円)、ブラックルーフが標準装備される「Longitude」(351万円)、最上級グレードの「Limited」(419万円)の3グレードを展開。いずれも最高出力129kW(175PS)/6400rpm、最大トルク229Nm(23.4kgm)/3900rpmを発生する直列4気筒2.4リッターマルチエアエンジンを搭載し、2WD車には6速AT、4WD車には9速ATを組み合わせる。

最上級グレードの「Limited」。ボディサイズは全車共通で4400×1810×1640mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2635mm

 10月に行なわれた新型コンパスの発表会では、FCA USでコンパスのエクステリア・デザインマネージャーを務めるクリス・ピシテリ氏が登壇し、デザインの特徴について語った

 新型コンパスでは戦闘機をモチーフにして初期のデザインイメージを作成したこと、1941年以降に導入された台形のホイールアーチや、黒で縁取りして存在感を高めた7スロットグリルを採用したこと、ボディサイドでは力強さやシンプルさを表現するために、数本の横に走るラインとそのラインの間に余裕を持たせるような曲線のデザインを採用したことなどが語られた。

 ボディサイズは4400×1810×1640mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2635mmで、先代から全長が75mm短縮されたにも関わらず、フラグシップモデル「グランドチェロキー」でも採用する上記のデザインエッセンスなどを採り入れたこともあって、その出で立ちは堂々としたもの。デザイン力が新型コンパスの最大の魅力といってよいだろう。

エクステリアでは7スロットグリルをはじめ、クラブシェルタイプのエンジンフード、台形のホイールアーチなどジープ伝統のデザインを採用

 装備面ではLEDシグニチャーランプが備わるバイキセノンヘッドライト、LEDテールランプをはじめ、「Apple CarPlay」「Google Android Auto」に対応する「Uconnectシステム」といった最新の装備が与えられた。さらに各種エアバッグやエレクトロニック・スタビリティ・コントロール、トラクションコントロール、リアパークアシストを全車に標準装備するとともに、Limitedモデルではクラッシュミティゲーション付前面衝突警報、ブラインドスポットモニター/リアクロスパスディテクション、ParkSenseフロント・リアパークアシスト、Parkviewリアバックアップカメラなどの先進安全装備も与えられ、現代的に進化したのも新型コンパスでの特徴と言える。

 そんな新型コンパスのデザインの魅力について、短時間ながらピシテリ氏に話をうかがうことができたので、その模様をレポートする。


――改めてデザイン上で新しく変更した点、あえて変更しなかった点について教えてください。

ピシテリ氏:新しいクルマを作るというのは、フレッシュなスタートを切れるというチャンスだと思いました。1枚の紙とペンを持ってCセグメントに適したSUVをデザインしようとプロジェクトを立ち上げました。(新型コンパスは)ジープブランドのなかでもプレミアムサイドに属しますが、フィーリングとしては若々しいデザインに仕上がったと思っています。

プレゼンテーションで示された新型コンパスのスケッチ

――7スロットグリルを今回も採用することで、デザインの自由度が狭まったり、デザインをするうえで難しい点はなかったのでしょうか。

ピシテリ氏:確かにヘリテージとも言われる7スロットグリル、台形のホイールアーチなどは大切なものであり、それが阻害要因だとは考えていません。これらがあることでひと目でジープだと分かるのです。ただし、非常にユニークで新しいものを作っていくためにはどのようにしたらいいのか、それを考えて工夫してきました。

例えばLongitudeではブラックペイントルーフ(およびブラックルーフレール)を採用していますが、こうしたものはこれまでのジープブランドではなかったもので、新しいデザインを採り入れました。また、全体的にスポーティブネスであり、これも今までにない進化だと思っています。

――そもそもプレミアムな方向にデザインを振ったのには、どのような理由があるのでしょうか。

ピシテリ氏:確かに今回、意図的にプレミアムサイドに移行しようと考えました。これにはジープファミリーに「レネゲード」があり、レネゲードは「ラングラー」に近いビジュアルでラフなイメージ。また遊び心に溢れています。そのようななかにあって、新型コンパスではプレミアム感を出し、世界市場に受け入れられやすいグローバルモデルを作りたかったのです。

「プレミアムな小型車が存在するんだということをアピールしたかった」と語るピシテリ氏

――サイズ的にレネゲードと被ってくるので、キャラクターをより明確にしたという理解でよろしいでしょうか。

ピシテリ氏:おっしゃるとおりです。この2つのモデルの方向性がまったく違うということを、お客様がショールームに行ったときにお分かりいただけるようにしたのです。

――赤色のボディカラー(エグゾティカレッド)が非常に美しいですが、ピシテリさんとしては何色がおすすめですか?

ピシテリ氏:ボディカラーというのはさまざまありまして、アドベンチャーに適した色があったり、洗練された色を追求したものがあったり。そのなかで私個人の好みとしては「ビレット」というカラースキームで、メタリックなシルバー(ミニマルグレーメタリック)と黒(ブラックルーフ)という組み合わせです。

――ジープのカンファレンスでデザインについて長くプレゼンテーションを行なったのは記憶にないのですが、それだけデザインにこだわったのですね。

ピシテリ氏:デザインというのは大変重要な項目でして、やはり実車を見て(いいかわるいかを)判断しますよね。これまでは小型車というのは“品質が低い”と思われていたかと思うのですが、それを打破したい。打破するためにはデザインが重要であり、プレミアムな小型車が存在するんだということをアピールしたかったのです。

完成したモデルを見ていただければ感じていただけると思うのですが、相当デザインに力を入れました。私たちのデザインチームは少数なのですが、とにかく“ジープ愛”“コンパス愛”に富んでおり、情熱的な人間が情熱を傾けてデザインしました。

――全長4400mmですが、もう少し大きなクルマに見えます。コンパクトなサイズを保ちながらクルマを大きく見せる工夫というのはどこにあるのでしょうか。

ピシテリ氏:まずボディサイドに「ホリゾンタルライン」というものを用い、これがあることによって広がりを強調しました。ウィンドウ上部を巡るクロームの加飾、そしてブラックルーフと相まって視線がボディの中核にいきます。そうすることで全長のあるモデルのように見えるのです。

提供:FCA ジャパン株式会社