トピック
ケンウッドのドライブレコーダーが作られるタイ工場「JKOT」を見学してきた
ホンダアクセス、ケンウッドとモータースポーツの関わりとは?
- 提供:
- 株式会社ホンダアクセス
2019年7月23日 00:00
6月29日~30日(現地時間)の2日間に渡り、SUPER GT 第4戦「2019 AUTOBACS SUPER GT Round4 Chang SUPER GT RACE」がタイ王国 ブリーラムにある「チャン・インターナショナル・サーキット」において開催された。このレースにはホンダアクセスがサポートする64号車 Modulo Epson NSX-GT(ナレイン・カーティケヤン/牧野任祐組、DL:ダンロップ)、34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3(道上龍/大津弘樹組、YH:横浜ゴム)の2台も参戦しており、レースを大いに盛り上げた。
そのホンダアクセスがサポートしてGT300クラスに参戦している34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3には、サブスポンサーとしてJVCケンウッドも参加しているが、レースに先立ってそのJVCケンウッドの工場を視察する機会を得たので、その模様を紹介していきたい。
ビクターとケンウッドが合併してできたJVCケンウッドはモータースポーツ支援に熱心な企業
JVCケンウッドは、2008年に日本ビクターとケンウッドというわが国を代表するエレクトロニクス機器メーカーのブランド同士が合併した企業としてスタートした。ビクターは映像機器に、ケンウッドは車載機器に強みを持っており、それぞれを1つに統合することで強みを出していく合併として注目された。
それから10年が経ち、JVCケンウッドという会社名もすでにおなじみになったと言っていいだろう。特にモータースポーツファンにとって有名なのはマクラーレンF1とのパートナーシップで、それこそセナ・プロの時代から「KENWOOD」としてチームに無線機器を供給しており、その品質はF1の世界でもトップクラスと高い評価を得ている。
また、以前はWTCC(世界ツーリングカー選手権)のタイトルスポンサーを務めたり、WTCCの後継となるWTCR(FIA ワールド・ツーリングカー・カップ)では、2018年の鈴鹿ラウンドでタイトルスポンサーを務めたりしたのはよく知られているところだ。
そしてSUPER GTでは、常にホンダアクセスがサポートしているチームでスポンサーを続けてきている。2016年にはホンダアクセスがModuloブランドでサポートしてきた15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT(武藤英紀/牧野任祐組)の時代にも、KENWOODのロゴがフロントノーズに付けられるなどしており、ホンダアクセスと共同でホンダのチームをサポートしてきた。その2016年のタイ戦では同チームが2位表彰台を獲得している(その時の記事はこちら)。なお、その時がSUPER GTデビュー戦だった牧野任祐選手は、現在64号車のエースドライバーへと成長している。
その後、2018年にスタートした34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3のプロジェクトでは、その車両名からも分かるようにチームのサブスポンサーとして34号車を強力にバックアップしている。
2年連続日本市場販売数量1位を確保しているJVCケンウッドのドライブレコーダー
そのようにモータースポーツの世界でも密接な関係を築いている両社だが、実業においても深い関係がある。ホンダアクセスが販売しているGathers(ギャザズ)ブランドで販売しているカーナビゲーションや、ホンダ車向けの純正ドライブレコーダーの一部製品はホンダアクセスとJVCケンウッドが共同開発したもので、JVCケンウッドが生産していることはよく知られている。
特にドライブレコーダーは、現在「激売れ」と言ってよいほどの人気商品になっており、起こってほしくないが「いざ」という事態が起きた時に備える商品として、また安全運転に寄与する商品として欠かせないものになっている。JVCケンウッドはホンダアクセスのようなOEMメーカー向けにカーメーカー純正のドライブレコーダーを生産しているほか、自社ブランドの「KENWOOD」でも販売をしており、同社によれば日本国内のドライブレコーダーの販売数量では2年連続1位を維持しているという。
今の売れ筋商品は、6月に発売されたばかりの「DRV-MN940」で、フロントとリアという2つのカメラを1つのユニットで管理することができ、前も後ろも同時に録画できるため人気を集めているという。
そうしたホンダアクセスやJVCケンウッドのドライブレコーダーを生産しているJVCケンウッドの工場が、SUPER GT 第4戦 タイ戦が行なわれたチャン・インターナショナル・サーキットがあるブリーラムにほど近い「ナコーンーラーチャシーマー」(通称コラート)というタイ東北地方最大の都市にほど近い場所にある。ブリーラムからはクルマで2時間程度という場所になり、タイの首都バンコクからはクルマで3時間程度という場所に位置している。
ナコーンーラーチャシーマーの工場は、JVCKENWOOD Optical Electronics(Thailand)Co.Ltd(通称JKOT)というJVCケンウッドの子会社で運営しており、元々は合併前のケンウッドが光学ドライブ向けのピックアップ(光学ドライブがDVDなどの光ディスクをレーザーで読み取る装置)を生産する工場として1995年にスタートしている。同社が作っているピックアップは、DVDレコーダーやPC向けなどの民生用ではなく、より厳しい基準(温度など)をカバーして生産される必要がある車載用を生産しており、現在でもその生産は続けられている。
それに加えて、2014年からリアカメラやドライブレコーダーなどの生産も開始しており、現在ではその生産が主力となりつつある。
1階でドライブレコーダーを生産し、2階で車載用光学ドライブのピックアップを生産
JKOTの工場は敷地面積が2万2400m 2 、建物床面積が1万5300m 2 となっている。現在は2つの建屋があり、現在メインに使われているのはFactory 2(ファクトリーツー)と呼ばれる2015年11月にできた工場建屋となる。
Factory 2には2つのフロアがあり、1階はドライブレコーダーの、2階は光学ドライブのピックアップの生産が行なわれている。また、2階には工場のオフィスも用意されており、事務方の社員はそこで働いている。従業員は2000名だが、男女比率では女性が96%、男性が4%と圧倒的に女性が多くなっているという。実際、オフィスの事務方の社員も女性が多く、女性の社会進出が進んでいるというか、女性が主役となっている。
Factory 2の1階ではKENWOODブランドのドライブレコーダー、そしてOEM向けのドライブレコーダーが生産されていた。ラインは複数用意されており、複数の製品を平行して生産することが可能になっていた。
ラインには組み立てだけでなく、基板製造のラインも用意されており、プリント基板に部品を実装することも行なわれている。その後、組み立て工程にまわされ、最後に検査工程で製品として問題がないかがチェックされる。
工場の手前には部品を保管しておく倉庫があり、生産をできるだけ効率よく行なうために整理して置かれている。その置き方にもこだわりがあり、例えば地面に段ボールを置いたりしない、トレイの上に置くなどして落下して破損したりということがないように、ある一定の高さより上には置かないなどの配慮がされていた。
そうして作られたドライブレコーダーは最後に箱に詰められて、出荷を待つことになる。KENWOODブランドで販売されるものであればKENWOODのロゴが入った箱に入れられ、ホンダアクセス向けであればホンダのロゴがついた箱に入れられて出荷されることになる。
開発は八王子事業所で行なわれ、製造ラインとのやりとりも密接に
なお、JKOTの工場は基本的には生産ラインになっており、開発などは行なわれていない。しかし、開発と製造は密接に関わり合っているので、JVCケンウッドのカーエレクトロニクス関連の研究開発拠点となる「八王子事業所」と密接にやりとりをしており、八王子事業所のエンジニアが出張してきて、製造課程で見えてきた課題をフィードバックするということを行なっているという。
昨今発生しているさまざまな交通事故の映像がニュースやYouTubeなどを通じて流れることで、ドライブレコーダーの必要性への認知度は高まっている。言うまでもなく、交通事故をなくしていくことは重要な取り組みだが、不幸にして事故が発生してしまっても事実をきちんと捉えることができるドライブレコーダーの搭載率が高まることは、結果としてドライバーの意識を変えていく可能性を秘めており、よいことだと言っていいだろう。JVCケンウッドはそうしたドライブレコーダーの市場シェアでNo.1を実現しているが、今回JKOTの最先端の製造ラインを見学してみて、その高い人気の秘密の一端が分かったような気がした。