レビュー

【ナビレビュー】9V型HD液晶を搭載したケンウッド“彩速ナビ”の2019年モデル「MDV-M906HDL」は大画面“高解像度ナビ”に

操作速度はそのままに、見やすい鮮やかな大画面地図

9V型HD液晶を採用した「MDV-M906HDL」

 2011年にデビューしたケンウッド(JVCケンウッド)の“彩速(さいそく)ナビ”。2DIN一体型のボディで美しい画面とハイレスポンスの両立を目指して登場したこの新シリーズは、機能強化を行ないつつ世代を経るごとに着実に進化。発売当初のコンセプトはそのままに、イマドキのナビにふさわしいモデルとなっている。当初、シンプルだったバリエーションも徐々にワイド化&変遷を遂げており、2019年モデルからはフラグシップを「TYPE M」シリーズが担い、ミドルクラスに「TYPE S」シリーズ、ベーシックモデルが「TYPE L」シリーズという構成になった。

 この1月に発表された2019年モデルは、TYPE Mが1機種、TYPE Sが3機種、TYPE Lを2機種ラインアップ。計6機種がデビューしたわけだけれども、なかでも注目したいモデルとなるのが今回レビューを行なうTYPE Mの「MDV-M906HDL」だ。

9V型HD液晶の採用で地図がさらに見やすく!

 本機で最大のポイントとなるのは、彩速ナビ初となる9V型の大画面ディスプレイを採用している点だ。据え置き型ナビの大画面化はここ数年トレンドとなっているけれど、彩速ナビもその流れに乗ったカタチだ。もっとも、TYPE Mには以前から8V型ディスプレイ搭載モデルが用意されていたので、サイズ面ではひと回り大きくなっただけといえなくもない……。だがこのディスプレイ、ただ大きいだけじゃない。なんと1280×720ピクセルの解像度を持つHDパネルで、地図表示自体もドットバイドットを実現しているのだ!

 これまで据え置き型カーナビの場合、ディスプレイサイズの大小にかかわらず、多くは従来どおりのワイドVGA(800×480ピクセル)解像度止まりだった。この1年ぐらいでようやく高解像度パネル採用モデルが登場したものの、地図表示に関してはワイドVGAベースのものを引き延ばしているだけで性能を活かし切れていない感があった。スマホやタブレットの高解像度化が進みつつある中で、カーナビだけがいつまでもジャギジャギなスケーリングした地図のままだっだのだ。

 しかし、ようやくというかやっとというか、高解像度で地図表示可能なモデルが登場したことになる。地図の記憶媒体がCDからDVDを経てHDD、SSD(メモリ)と変わっていく中で、長らく置き去りにされていた部分にようやく手が入ったわけだ。いや~長かった(遠い目)。で、HD!HD!と騒いでいるけれど、実際どのぐらい違うのよ? ってギモンは当然。なので、前回レビューを行なった「MDV-Z905」の画面と比較してみよう。正確な数字が分からないのでアバウトになってしまうけれど、まずは画素密度を計算してみると7V型VGAが70ppi弱なのに対して9V型HDは80ppiと緻密さがアップ。では、実際の写真でそれを確認……、と言いたいところだけれど、残念ながら記事中の写真はリサイズ済み。そのため精細感については非常に伝わりにくくなってしまっているけれども、1画面に表示される範囲がひとまわり以上広がり、左右はもちろん前後もより遠くが確認できるようになっているのが分かるハズ。あまり広くなりすぎると自車位置を見失ってしまうので限界はあるだろうけれど、このぐらいならまったく問題なく実用範囲。「ビバ高解像度!」と素直に喜べるのだ。

左が2019年モデルのMDV-M906HDL、右が2018年モデルのMDV-Z905の画面。より広い範囲が見えているのが分かる

 と、まぁ、そんな個人的な感想はさておき、高解像度化が進まなかった点にも理由がある。適応温度などの面で車載に耐えるパネルがなかったことに加え、数字上はそれほど変わらないように見えるものの、1画面に表示する情報量は2.4倍(ワイドVGA→HDの場合)にも増える。つまり、地図描画の負担が大きくなりパフォーマンスにも影響を与えてしまう。となると、ハードウェア面でも高性能化が必要となり、それが価格上昇につながる……。てなぐあいに、ひと口に高解像度化といってもなかなか難しいのだけれど、このモデルでは従来からの「ジェットレスポンスエンジンIII」&「デュアルコアCPU」の組み合わせをそのままキャリーオーバーしつつそれを実現。「それじゃ“彩ナビ”になっちゃう!?」。なんて不安になるかもしれないけれど、使ってみた限りではそんな心配は一切無用。ピンチイン/ピンチアウトによる地図の拡大縮小、フリックによる地図のスクロール、各種メニュー選択、ルート探索など、こんな冒頭で結論を書いてしまうのもどうかと思わなくもないものの、従来通りの“彩速”ぶりは健在だ。今後は“彩高(解像度)速ナビ”なんて呼ぶのもアリかもしれない。

彩速ナビらしいレスポンスのよさは健在

 で、解像度の話ばかりになってしまったけれど、このディスプレイ、表示自体も文句なしにキレイだ。従来の7V型ディスプレイに比べて上下左右の視野角が170度へと広がったほか、LEDバックライトの輝度も約1.3倍アップ。文字はもちろん道路や建物、地表の表現などもクッキリ鮮やかに表示してくれる。

 そのほかのスペックをざっくり書いておくと、16GB SSD、CD/DVDスロットおよびSDカードスロット、フルセグ地デジチューナーなどを標準搭載。外部メディアとしてはBluetooth接続のほか、1A対応のUSB端子が2系統、SDメモリーカードを利用した音楽・動画再生、iPhone/iPodを接続しての音楽再生も可能だ。スマホ連携はBluetoothまたはケーブル接続(iPhoneのみ)で対応。テザリングでインターネットに接続したり、「KENWOOD Drive Info」アプリを介して渋滞情報などを取得したりと、より便利に使うことが可能になる。もちろん、彩速ナビならではのハイレゾ音源にも対応しており、従来からの「DSD」「FLAC/WAV(192kHz/24bit)」、Bluetooth経由の「LDAC」に加え、新たに「MQA(Master Quality Authenticated)」にも対応。データ再生だけでなくMQA-CDも内蔵プレーヤーで再生可能となっている。

ディスプレイはチルトだけでなく視野角の調整も可能。クルマを選ばず美しい画面を堪能できる
USB端子は2系統。どちらも1A出力を持ち、一方は急速充電にも対応
MQA-CDの再生が可能
高音質低容量を実現するMQAフォーマットにも対応

 HD化に合わせてホーム画面のインターフェースも刷新された。画面下に設けられた「HOME」ボタンを押すことで表示可能なホーム画面は、メニューを選んで各種操作を行なうためのスタート的なポジションだ。従来モデルでは地図の上に透過処理したメニューを表示する「アクティブオーバーレイGUI」を採用していたが、本機では地図表示をベースにリアルタイムな走行情報を表示する「Info画面」、楽曲やソースなどの情報を表示する「AV画面」と、2つのサブウィンドウを表示する「オーガニックGUI」を新採用したのだ。

画面下中央にHOMEボタンを用意

 Info画面では目的地の距離や方向、渋滞情報、制限速度といった走行に関する情報に加え、KENWOOD Drive Infoによる天気情報、一時停止や踏切といった注意喚起など、さまざまな情報を表示。AV画面では再生している楽曲の情報やグラフィックイコライザー、地デジなどの映像が表示できる。2つのサブウィンドウは上下にドラッグすることでサイズ変更も可能と、彩速ナビらしい操作感が継承されている。さらにこのサブウィンドウ、アクティブオーバーレイGUIを踏襲しており、表示されている地図が透けて見える透過処理を実現。開発担当者からは「結構重い処理」とのコメントを聞いているけれど、それでもなお採用しているのは、見やすさや分かりやすさの点でメリットがあるからだ。もちろん、地図画面を犠牲にせずにこれだけ多くの情報を表示できるのは、高解像度なHDディスプレイならではのポイント、とも言える。

 ついでに、といっては何だけれども、サブウィンドウまわりなどのアクセントカラー、それにHOMEボタンなどのハードキーのイルミネーションはそれぞれカスタマイズが可能。こんなちょっとした遊び心も嬉しいポイントではないだろうか。ちなみに、メニューアイコンが並ぶいわゆる普通のメニュー画面は、画面右下に用意されている「メニュー」ボタンを押すことで移行可能だ。

サブウィンドウのサイズは大中小の3種類用意。ウィンドウの境界部分をドラッグすることでカンタンにサイズ変更可能だ
天気情報取得時は表示部分を押すことで詳細な情報がチェックできる
高速道路走行時はIC(インターチェンジ)などの情報を表示
注意喚起のメッセージなども
ボタンと画面のカラーがカスタマイズ可能
画面カラーを変えた場合の表示
ボタン枠やメニューまわりも選択した色に
メニュー画面
メニュー画面をフリックすることで設定や検索、ソース切替のメニューに

 もう1つ、彩速ナビの特徴で忘れてはならないのが、多彩なオプションによる機能拡張だ。なかでもオススメなのは、ここ最近注目度が高いドライブレコーダー。フロント用だけでなくリア用を同時に接続することができ、ナビ画面上でカンタンに設定や録画映像の再生が可能。加えてリア用はルームミラーとしても活用できる。人や荷物で車内がいっぱいでも後方確認できるのは意外なほどに便利で実用的だ。そのほか、高度化光ビーコン対応ETC2.0車載器「ETC-N7000」を加えれば、通行料の支払いだけでなく信号情報活用運転システムの受信も。今回のテストコースでは見ることができなかったけれど、この機能の未来感はなかなかのモノ。クルマに乗る機会が多いならぜひとも同時装着したいアイテムの1つだ。

 また、今回のテスト車両には装着されていなかったけれど、HD解像度に対応した専用のリアビューカメラ「CMOS-C740HD」もリリースされている。日常的な実用度って意味ではドライブレコーダーより高いと思われるので、SUVなどリアの確認がしづらいクルマのオーナーならこちらも装着をオススメしたい。

フロント用のドライブレコーダー「DRV-N530」
リア用のドライブレコーダー「DRV-R530」
フロントとリアの切り替えは画面左のボタンでカンタン。設定や調整も9V型の大画面でできるのでラク
地図と同時に表示できるのも連動型ならでは
地図画面右下の「Vルームミラー」ボタンを押すとバーチャルルームミラー画面に。こちらもサイズを変えることが可能
信号情報活用運転システムの表示。信号が変わるタイミングなどを教えてくれる便利な機能だ

分かりやすく使い勝手のいい地図画面

 画面下の「MAP/AV」ボタンを押すことで普通の地図画面表示も可能だ。表示そのものは従来モデルを継承しているものの、そこはHDディスプレイ。冒頭にも書いたけれど広々してて文字はクッキリ、見やすさもグッドだ。多くのユーザーが基本とするであろう100mスケールに関しては、ノーマル表示と市街地図表示をメニューで選択可能。都市部では一方通行が表示される市街地図表示が便利に思える半面、画面がごちゃごちゃするのがイヤって人もいるだろうから、選択できるのは嬉しい。地図の縮尺はピンチイン、ピンチアウトに対応していることもあり、ここで紹介している以上に豊富に用意されている。となると、逆に変更する際におっくうになりそうだけれども、スケール表示部分を長押しすることでスライダーバーを使って一気に変更することもできる。例えば「ルートの先のほうを確認したい」なんて時に一気に広域に変えることができて便利だ。そのほか、3Dや2画面表示にももちろん対応しており、こうした画面表示でもHD化による弊害を感じることはなく、レスポンスのよさも含めて従来モデル通りの使い勝手だ。

 地図表示でちょっと面白い、というかスゴイのが地図色の切り替え。多くのナビには昼画面、夜画面が用意されていて、時間やポジションライト点灯で切り替わるようになっている。が、このMDV-M906HDL。日の出、日の入り時刻をデータで持っており、それに応じて30~40分かけて徐々に色を変化させていくという。つまり、切り替え直後に画面がまぶしいとか、暗いなんてことが起こりづらいのだ。今回のレビューでは確かめることができなかったのだけれど、今までにない面白い試みと言える。

市街地図表示の100mスケール
ノーマル表示の100mスケール
変更はメニューで行なえる
スライダーバーを使って一気に縮尺変更が可能
各スケールでの市街地図表示。実際はもっと細かく用意されている
200mスケール
500mスケール
1.0kmスケール
2.0kmスケール
5.0kmスケール
10kmスケール
20kmスケール
50kmスケール
100kmスケール
200kmスケール
全国スケール
3D表示時は周囲の建物をリアルに再現
2画面表示はサブウィンドウのサイズを2パターン用意。それぞれに縮尺や2D/3Dを設定できる

 画面下にはユーザー設定が可能なショートカットキーを表示することができ、よく使う項目をセットしておけばいちいちメニューをたどらずに済むので便利。不要な時は折りたたんで画面を広く見ることができる。それ以外にも地図色が3パターン用意されていたり、文字サイズも3パターン変更できたりと、多くのカスタマイズが可能だ。何気ない部分ではあるけれど、こういった部分を使いこなすことで使い勝手が大きくアップ。デフォルトのままで使うのではなく、ぜひ自分好みにカスタマイズして便利に使ってほしい。

折り畳みできるショートカット。こちらも2パターン用意。使わないときは表示を消して画面を広く見ることができるのも便利
画面上のボタンを押すことでECO情報やECOレシオを見ることができる
ベースとなる地図カラーは3パターン。このレビューで使っているのは地図色「1」だ
文字サイズ「大」
文字サイズ「小」

 カーナビを使う上で忘れてはならないのが地図更新。せっかくの高機能ナビもデータが古いままでは性能のムダ遣いになってしまう。本機の場合、地図更新は有料サービス「KENWOOD MapFan Club」に入会して自分でデータをダウンロードするパターン、「ナビ地図定期便」でSDメモリーカードを送付してもらうパターン、カー用品店などでバージョンアップ用SDメモリーカードを購入するパターンの3タイプが用意されている。最も手軽なのは最初に書いたKENWOOD MapFan Clubに入会する方法。年額3600円(税別)で年2回リリースされる地図データがダウンロード可能だ。なお、1年分の無料優待券が付属しているから、お試しもかねて使ってみるのがベター。2019年度末もいくつか大きな道路開通が控えているので、更新データがリリースされた際にはアップデートをしておきたい。

目的地検索やルート探索も思いのまま

 目的地を探すにはメニュー画面に用意された「名称」「ジャンル」「住所」「電話番号」、それに「登録地点」「履歴」などのメニューから行なう。名称検索では文字入力に「フリック入力」が追加された。個人的には50音キーボードのほうが便利に思えるけれど、そこは好み(いや世代?)の問題か。そのほか地図の任意の場所や目的地検索した際に表示可能なサブメニューを使うと、周辺検索のほかスマホ接続してのKENWOOD Drive Infoにもアクセス可能。ガソリンスタンドの価格や天気予報、有償とはなるものの「駐車場満空」情報が取得できる。課金が必要となるのはちょっと残念だけれども、リアルタイムプローブデータを活用する「スマートループ渋滞情報」も同時に使えるようになるから、ナビを使う機会が多いなら必要経費と割り切ってしまうほうがよさそうだ。

名称検索時に利用するキーボードにフリック入力を追加。好みで選択できる
住所検索は地名を選択していくだけ
番地は直接入力して探すことが可能
検索結果。設定でマップコードや緯度経度の表示を選択できるようになった
「周辺」ボタンを押すと周辺情報メニューが表示される
「駐車場満空情報」を使えば空いている駐車場がひと目で分かる
料金などの情報も確認可能だ
ジャンル検索の項目は豊富
ジャンルを選んでからエリアを選択
提携パーキングがある場合はそれを探すことも可能

 ルート探索は「推奨」「距離」「高速」「一般」「高速/距離」の5パターンと従来モデルから変わらず。まずは推奨ルートが表示され、それ以外を選択するとその都度探索を行なうといったパターン。目的地検索の文字入力から始まってルート探索を終えるまでの速度は、彩速ナビの真骨頂といった気持ちよさ。動画を用意したのでぜひチェックしてほしい。

 最近のナビでは当たり前になりつつあるカスタマイズ機能も搭載。それが「マイルートアジャスター」で、「有料優先」「道幅優先」「渋滞回避」「踏切考慮」の各項目のほか、「信号考慮」や「ルート学習」のON/OFFも選択できる。選んだ組み合わせは3パターン登録しておけるから、シチュエーションやドライバーの好みなどで登録しておく、といった使い方ができそうだ。

目的地検索からルート探索までの流れ。目的地は石川県にある「のとじま水族館」だ
検索結果
のとじま水族館を選択
地点情報
目的地の天気を調べるのもカンタン
目的地に設定するとルート探索が行なわれる。まずは推奨ルートを表示
距離を優先したルート
高速を優先したルート
一般道を優先したルート
高速と距離を優先したルート
ルート情報
所要時間や距離、高速料金を一覧で比較
マイルートアジャスターを使えばより自分好みのルートに
目的地検索からルート探索まで。このサクサク感は彩速ナビ最大のポイントだ

 最近は「スマホナビで十分」なんて人もいるようだけれど、1歩どころか2歩も3歩もリードしているのがルート案内だ。一般的な交差点ではまず進行方向と残距離をグラフィカルな表示で示す「ここです案内」をサブウィンドウに表示、交差点に近づいてからはサブウィンドウで拡大表示といった具合。推奨走行レーンを表示してくれるレーンガイドも豊富に用意されており、都市部でも安心して走行することが可能だ。今回のルートでは表示されなかったが、複雑な交差点にはリアルなイラストを使った拡大図も用意されている。サブウィンドウはタッチすることで消すことができるので、地図をよく見たいなんて場合でも煩わしくないのも嬉しい。万一、道を間違ってしまっても、即座にリルートが行われるのも安心感の面では高ポイントだ。

交差点ではまず曲がる方向と距離を案内するウィンドウを表示
交差点に近づくと拡大図になる
方面案内看板は直進時でも表示される
細街路でもきちんと拡大図で案内してくれるので安心
高速道ではハイウェイモードに
リスト中のPA(パーキングエリア)やSA(サービスエリア)をタッチすれば地図の表示も
分岐や出口はイラストで分かりやすく案内

 個人的に便利だと思っているのが、先々の案内ポイントを“コマ図”で確認できる「案内先読みガイド」。案内ポイントまでの距離と曲がる方向をチェックできるので、出発前などにざっくり見ておくと安心だ。

分岐をコマ図でチェックできる先読みガイド。事前に大まかなルートを確認できるので余裕を持ったドライブが可能になる

 精度面はハイエンドモデルのTYPE Z譲り。3軸ジャイロと3軸加速度センサーを組み合わせた「6軸慣性センサー」を搭載したほか、衛星もGPSだけでなく準天頂衛星「みちびき」、ロシアの衛星測位システム「グロナス」にも対応している。いつものチェックポイントを走ってみた感じでは、前回レビューしたMDV-Z905と同傾向。地下駐車場や首都高ランプでもまずまず安定した自車位置を示してくれた。

都市高速を案内中にあえて一般道へ。ちゃんと認識してくれるのはさすが
地下駐車場でのチェック。若干微妙な動きを見せたものの、出口では正確な位置を示した

豊富なソース対応に加え、上位モデル譲りの調整機能を搭載

 2018年モデルまではTYPE Zが存在したため、従来モデルのTYPE Mでは若干差別化が図られていたのがAV関連の機能。だが、冒頭で書いたように2019年モデルからは最上級モデルとなったこともあり、AKM(旭化成エレクトロニクス)製32bitプレミアムDAC、周波数レベルや周波数帯域を細かく調整できる「プロモードEQ」など、TYPE Zのみに許されていたリッチな環境を手に入れている。加えて高音質フォーマット MQAへの対応も果たしており、その面ではTYPE Zよりも1段アップした性能を手に入れたと言っていい。もちろん、ラジオ型音楽配信サービス「SMART USEN」アプリにも対応している。

 そのほかにもフルセグ地デジやDVDビデオ再生、iPhone/iPod接続など一般的なAV機能も充実。このあたりで不足を覚えることはまずないハズだ。

サウンド設定メニュー
イコライザー
バランス/フェーダー
音質・音場効果
スピーカー
リスニング設定ではポジションだけでなくフォーカス位置まで設定可能
TYPE ZのウリだったプロモードEQも搭載
クロスオーバー周波数も細かく設定できる
HDディスプレイならではの精細感が味わえるアナログメーターモード。カラーが3色用意されており任意に選べるほか、時間によって自動的に変わる設定とすることも可能

音楽に続いて画面もハイレゾ対応で魅力度倍増!

 フラグシップモデルとなったことで、HDディスプレイや新世代のインターフェースを手に入れたMDV-M906HDL。後者は好みが分かれる部分だとしても、前者に関しては市販ナビでは間違いなくトップの性能。地図表示だけを見ても高解像度のメリットは絶大で、広い範囲を見渡せるのは快感ですらある。速度面に関してもそのデメリットはほとんど感じられず、今までの彩速ナビ同様ストレスのない操作感が味わえる。「スマート連携」と名付けられたドライブレコーダーなど各種オプションとのコンビネーションもケンウッドならではの便利さだ。

 ただし、残念というか当然なんだけれども、装着できる車種が限られてしまう。現状対応しているトヨタ系の一部車種のみしかこの恩恵を受けることができないのだ。この際、実表示面積は小さくなってしまうけれど7V型ディスプレイでもHD化を実現してほしいぐらいだ。ちょっと話がそれてしまったけれども、対応車種のオーナーなら真っ先に装着を考えてほしい、そんな風に思えるモデルだ。

安田 剛

デジモノ好きのいわゆるカメライター。初めてカーナビを購入したのは学生時代で、まだ経路探索など影もカタチもなかった時代。その後、自動車専門誌での下積みを経てフリーランスに。以降、雑誌やカーナビ専門誌の編集や撮影を手がける。一方でカーナビはノートPC+外付けGPS、携帯ゲーム機、スマホ、怪しいAndroid機など、数多くのプラットフォームを渡り歩きつつ理想のモデルを探索中。