レビュー
【ナビレビュー】ケンウッドのトップエンドモデル「彩速ナビ MDV-Z905」。スマホライクで素早く操作できる“最速にして彩速なナビゲーション”
熟成されたナビ機能で便利さを実感
2018年3月15日 00:00
ケンウッド(JVCケンウッド)が美しい画面とハイレスポンスの両立を目指した2DIN一体型ナビ「彩速(さいそく)ナビ」をリリースしたのは2011年のこと。以来、OSの刷新をはじめとしたソフトウェア面、ハイレゾ音源への対応といったハードウェア面と世代を経るごとに着実な進化を遂げてきている。
バリエーションも増えつつあり、現在ではフラグシップの「TYPE Z」シリーズをはじめ、ミドルクラスの「TYPE M」シリーズ、ベーシックモデルとなる「TYPE L」シリーズと、3ライン構成となった。
最新世代は2017年10月にケンウッド設立70周年記念モデルとしてリリースされたTYPE Mシリーズが先鞭を付け、この2018年2月にTYPE Zシリーズが、3月にTYPE Lシリーズが発表されている。
今回、レビューのターゲットとなるTYPE Zシリーズは、2DINサイズの「MDV-Z905」と、200mmのワイド2DINサイズ対応となる「MDV-Z905W」の2モデルをラインアップ。先代モデルまでは700番台の型番を持つモデルが用意されていたが、こちらはTYPE Mシリーズに統合された格好になる。つまり、TYPE Zシリーズが名実ともに彩速ナビのトップエンドモデルとなったわけだ。
2018年モデルのトップエンドとなるTYPE Zシリーズ
さて、2018年モデルとなったTYPE Zシリーズ。機能面に関しては先代モデル「MDV-Z904」を受け継ぎつつ、先行発売されたTYPE Mシリーズが搭載したナビ機能や、「DSD」「FLAC/WAV(192kHz/24bit)」に加えて「LDAC」への対応など、ハイレゾ音源再生をさらに1歩先に進めたことなどが特長だ。
毎回のお約束となっているので一応スペックを羅列していくと、まず1番目に付くディスプレイは「プレミアム・ファインビュー・モニター」と名付けられた7型ワイドVGA静電タッチパネルを採用。TN液晶ではあるものの上下左右ともにそれを感じさせることはなく、十分な視野角を持っている。ムリヤリ視点を移動してみれば上下方向が若干狭く感じるものの、通常、シートに座ってしまえば視点移動はほとんどないし、マイナス方向を含めた豊富なチルト調節および視野角調整機能を備えているため、それが気になることはないハズだ。そのほか、32GB SSD、CD/DVDスロットおよびSDカードスロット、フルセグ地デジチューナーなどを標準搭載する。外部メディアとしてはBluetooth接続のほか、3系統すべてが1A対応となったUSB接続、SDメモリーカードを利用した音楽・動画再生、さらにTYPE ZシリーズではMHL/HDMI接続も利用可能。スマホ連携としてiOSの「Apple CarPlay」、Androidの「Android Auto」にも対応している。ネットワーク接続に関しては先代モデルがUSBテザリングだったのに対し、新モデルではBluetoothテザリングを利用と、微妙に変更が加えられている。
拡張性の面では、近年必須アイテムとなっているドライブレコーダーに対応しており、ナビ連携型としてフロントだけではなくリア用も設定。TYPE Mシリーズと同じく前後同時録画が可能となっているので、万一の保険としてばかりでなくドライブの記録にも便利だ。また、リア用はルームミラーとして活用する、なんてことも可能。そのほか高度化光ビーコン対応ETC2.0車載器「ETC-N7000」、9V型WVGAリアモニター「LZ-900」などがオプションとして用意されている。
最速にして彩速なナビゲーション
毎度毎度書いているので“耳タコ”かもしれないけれど、彩速ナビと言えば操作性のよさは外せないポイント。ピンチイン/ピンチアウト、フリックによる地図操作、各種メニュー選択、ルート探索など、「ハイスペックスマホもかくや」といったストレスとは無縁の操作感を味わうことができる。たまたま、このレビュー直前に借りたレンタカーに先代モデルが装着されており、その際も「速いな~」と感じていたのだけれど、新型を使うと「やっぱり新型だよね」と改めて感じてしまった。
このあたりを担当者に尋ねてみると「ジェットレスポンスエンジンIII」&「デュアルコアCPU」といったハード面は変わっていないものの、ソフトウェアの最適化を常に行なっているとのこと。そうした地道な作業の効果がキッチリ反映されているってことだろう。とにかく、この気持ちのよい感覚はぜひとも店頭などで試してみてほしいところ。
サブウィンドウ表示がより便利に
ナビ関連の機能に関しては先代モデルをほぼ踏襲している。目的地を探す、設定を変更する、AVソースを切り替えるなどの際は、「HOME」ボタンを押してホームメニューから目的の操作を行なうといった流れになる。このあたりはカーナビとしては「お約束」の使い方になるので、他社モデルからの乗り換えなんて時でもあまり悩まずに使えるハズ。
独特なのは画面横、つまり枠部分から中央に向かってドラッグすることで引き出すことができるサブウィンドウ。慣れていないとちょっと戸惑ってしまうかもしれないけれど、いちいち「メニューボタンを押してから表示したい画面を選んで~」なんてやっているより、よほどスマートだしスピーディ。こうした操作に慣れない人のためにメニューからの選択も可能となっている。
サブウィンドウは「INFO」「MAP」「AV」の3画面が用意されており、大きさも大小2種類を用意。この新型からは時計などを表示できる「マルチINFOウィンドウ」がブラッシュアップされており、従来からの時計やエコ表示に加えて全画面化が可能になった。これにより「渋滞表示」「速度履歴」「高速道路施設情報」「交差点案内」「ルート情報」「天気予報」「AVビジュアライザ1」「AVビジュアライザ2」と、8種類の情報が表示できる。画面全てが情報画面になってしまうため同時に地図を見ることはできないものの、出発前や休憩後などにざっくりとした状況を確認する際には便利。これらは画面上をタッチすることで切り替えることが可能なほか、一定時間で自動的に変更する設定も用意されているから、とりあえず表示しておいて情報をチェック、出発時には地図に戻すなんて使い方が便利そうだ。
地図表示も従来モデル譲り。通常、多くの人が利用するであろう100mスケールは、道路を重視したノーマル表示と、道幅や建物の形状や一方通行表示などがあるいわゆる市街地図表示の2タイプが用意される。情報が多すぎて道路が分かりづらいなんて時はノーマル、目的地付近で詳しい地図が見たいなんて時は市街地図、といった具合に使い分けると便利だ。メニューでは市街地図を「50m以下」か「100m以下」のどちらで表示するか変更することで対応している。よく走るロケーションを考えて選んでおくとよいだろう。
地図スケールの変更はピンチイン/ピンチアウトだけでなく、スケールが表示されている部分を長押しすることで現われるスライダーバーを使って行なうことも可能。どちらを使ってもスムーズな縮尺変更が可能で、彩速ナビならではのパフォーマンスが感じられる部分だ。
地図の表示モードは一般的な2D表示に加えて鳥瞰タイプの3D、サブ画面を加えての2画面表示を用意。2画面表示では異なる縮尺や2D/3Dを組み合わせての表示が可能になっている。2画面表示は前述したサブウィンドウ表示となっており、必要に応じてすぐに引き出して使うことができるのが嬉しい。
目的地検索のメニューは「名称」「ジャンル」「住所」「電話番号」「郵便番号」「マップコード」などごく一般的。ナビに詳しい人は「あれ?“周辺検索”は」と疑問を感じるかもしれないが、ジャンルを選ぶと「現在地周辺」という選択肢が現われ、そこから検索することが可能だ。画面下部に用意された折り畳みメニューにも「周辺」というコマンドが用意されているが、こちらはスマホを接続してリアルタイム情報を取得する「KENWOOD Drive Info.」を利用するモノ。周辺検索はもちろん「ガソリン価格」「駐車場満空」「天気情報」といったコンテンツをチェックすることができる(一部有料)。そのほか、スマホなどを介してネットに接続することにより、曖昧検索やアンド検索が可能になる「フリーワード検索」や、「VOIPUT」アプリを使った音声検索、「NaviCon」アプリと連携してのオンライン検索も利用可能だ。
こうしたデータを利用する場合、“鮮度”が重要になってくる。鮮度を保つためには冷蔵庫……、ではなくデータを更新することが必要。TYPE Zシリーズの場合は2パターンが用意されており、1つは有料サービス「KENWOOD MapFan Club」に入会して自分でデータをダウンロードするパターン、もう1つは「ナビ地図定期便」でSDメモリーカードを送付してもらうパターン。どちらも利用料金が必要になるけれど、前者は年額3600円(税別)と安価で年2回リリースされるデータを利用できるのが魅力。後者は9980円(税別)で年1回、自動的に地図更新SDカードが送付されてくるので手間いらずといった具合。どちらを選ぶかはユーザー次第となるけれど、彩速ナビをより便利に使うならスマホ連携によるリアルタイムコンテンツ配信サービスも利用可能になる前者がオススメだ。
スピーディなルート探索と分かりやすい案内を実現
ルート探索は「推奨」「距離」「高速」「一般」「高速/距離」の5パターンと先代モデル同様。多くのカーナビでは推奨ルートを探索後、複数ルートを一気に探索するモデルが多いけれど、こちらはルートを選ぶとその都度探索する感じ。とはいえ、探索に要する時間はごくわずかでストレスを感じることはない。今回は動画を用意しているので、そちらを見てもらえればそのスピードが実感できるハズだ。
「有料優先」「道幅優先」「渋滞回避」「踏切考慮」の各項目で重み付けを変えることができるカスタマイズ機能「マイルートアジャスター」も健在。「信号考慮」や「ルート学習」のON/OFFも選択でき、自分好みのルートに近づけることが可能だ。選んだ組み合わせを3パターン登録しておけるから、「時間重視」「コスト重視」など、シチュエーション別のパターンを登録しておくと便利そうだ。
実際に案内ルートを走る際、最もよく目にするのが交差点の案内だ。設定により変更できるけれど、一般道での案内の基本となるのは進行方向と残距離をグラフィカルな表示で示す「ここです案内」、交差点に近づいてからは交差点付近を拡大表示、といった流れ。走行中はそれに加えて、方面案内看板やイラスト表示などがサポートしてくれる。
また、先代モデルからは先々の案内ポイントをラリー競技などで使う“コマ図”のような感覚で確認できる「案内先読みガイド」も搭載。次にどの方向に進むのかを事前に、そしてカンタンにチェックすることができる。とても実用的で便利な機能だ。
カーナビならではの自車位置精度の面では、新たに3軸ジャイロと3軸加速度センサーを組み合わせた「6軸慣性センサー」を搭載。衛星もGPS、準天頂衛星「みちびき」、ロシアの衛星測位システム「グロナス」に対応と、より高い精度を追求しているのが、新しいTYPE Zシリーズの特長となる。
まず、いつものチェックポイントとなっている地下駐車場。衛星からの電波を受けることができないため、6軸慣性センサーが威力を発揮するシチュエーションだ。途中、若干不安定な動きを見せたものの、最終的にはほぼ問題のない結果で、地上に出てからはすぐに完璧な位置に修正された。
一般道と高速道路を見分ける高さ方向のチェックは、テスト場所を今までの首都高速の新山下ランプから磯子ランプへと変更。ここは一般道、首都高速の側道および一般道への分岐、首都高速と3階建ての複雑な構造となっている。なかなか難しいシチュエーションではあるものの、側道に降りると即座にリルートを行ない分岐での方面案内看板を表示。さらに、一般道へ降りると次の交差点のレーンガイドに切り替える、と完璧な案内を行なった。逆方向、一般道から首都高速へのルートでも試してみたけれど、それも完璧。据え置き型カーナビならではの高い精度を遺憾なく発揮した格好となった。
トップエンドモデルならではのハイスペックなAV機能
ケンウッドが先鞭を付け、今ではカーナビに必須の機能となりつつあるのがハイレゾ対応だ。実はTYPE Mシリーズと大きな差別化が図られているのもこの部分で、AKM(旭化成エレクトロニクス)製32bitプレミアムDACの搭載をはじめ、周波数レベルや周波数帯域を細かく調整できる「プロモードEQ」、DSD11.2MHzファイルの再生など、プレミアムモデルにふさわしい内容となっている。
新たな機能としてはもう1つ、ラジオ型音楽配信サービス「SMART USEN」アプリへの対応もトピック。同アプリ(Android/iPhone)をインストールしたスマホと接続することで、「シーン/気分」「年代/季節/時間帯」「ジャンル」といったカテゴリーの中から好みのチャンネルを選んで再生することが可能となる。こちらは別途月額の利用料金が必要となるものの、自分で音楽データを用意する必要がないため気軽に楽しめる。
もちろん、こうしたマニア(?)向けの機能だけでなく、DVDビデオ再生やフルセグ地デジ、iPhone/iPod接続(オプションケーブルが必要)、LDACに対応するBluetooth接続など、便利な機能が満載だ。
新機能を盛り込みつつ不満も解消
彩速ナビの頂点に立つTYPE Zシリーズ。TYPE Mシリーズが先行して発売されたため新鮮味は若干薄れてしまったものの、機能面ではやはりトップエンドモデル!と感じられる充実度となっている。
このレビューで重視しているナビゲーション面では大きな変更は行なわれていないけれど、熟成により最適化が進んでいたり、記事では触れていない部分も細かな改良が行なわれていたりと、確実に進化を遂げていることが確認できた。
なにより地図操作でのレスポンス、検索の小気味よさ、そしてルート探索の速さと、使っていてまったくストレスを感じないのは彩速ナビならでは。前回と同じシメになってしまうのは手抜き感があるけれど、「クルマによく乗りカーナビをよく使う人にこそオススメ」したい。蛇足ついでにもうひと言書いておくと、初めて使う人はもちろんだけれども、以前のモデルを使っていた人ならより便利さを体感できる、そんな仕上がりとなっているモデルなのだ。