レビュー
【タイヤレビュー】ブリヂストン「レグノ」ブランドの新製品「GR-XII」は摩耗時でも本当に静か?
新品と40%摩耗時を乗り比べ。運動性能の高さも体感
2019年3月29日 05:00
EV(電気自動車)やハイブリッドカーが浸透しつつある現在、クルマはどんどん静かになっている。それは遮音性の向上や空力性能の向上もあるのだろうが、クルマ自体から発する音が軽減され、みるみるうちに静粛性が高まったことは多くの人々が体感しているところだろう。だが、自動車メーカーが最後まで自らで手を付けられないのが、路面に接触しているタイヤが発するロードノイズやパターンノイズである。タイヤメーカーはそこに対し、常に真摯に向き合っている。
その最高峰といっていいのが、ブリヂストンのトップブランドである「REGNO(レグノ)」だろう。ラテン語で王者を意味するレグノは、1981年に登場した初代「GR-01」以来、静粛性にこだわり続け、最新の技術を投入。防弾チョッキなどにも使われる衝撃吸収部材であるアラミドを採用するなど、他とは違ったアプローチを開始。それ以降もトレッドパターンの位相ずらしを行ない、路面への当たりを分散させることで衝撃を吸収したり、衝撃吸収シートをトレッド下に備えたり、さらには縦溝に対してサイドブランチ型消音器を備えることで音を打ち消したりといった技術も次々に盛り込まれたのだ。
そのレグノが生まれ変わる。新たに投入されることになる「GR-XII」が最も注力したのは、減った状態でも変わらぬ静粛性を備えること。縦溝から横にひげのように伸びるサイドブランチ型消音器は、従来では減った状態になるとその姿を消してしまい、そこで高周波ノイズの“シャー”という音が高まってきてしまうというネガを持っていた。そもそも消音器を持たないタイヤは、縦溝と路面との間で生まれる筒状のところから、ヒューヒューと鳴く気柱管共鳴音を前後から発する。減った状態になった場合、一般的なタイヤと同様の状態となり、レグノが目指す静粛性とはかけ離れた状態になるというところが問題だったわけだ。
そこでブリヂストンは溝が減った状態でもサイドブランチ型消音器をが消失しないように、シークレットグルーブを開発。これは、新品時は細い状態なのだが、トレッドの底へ向けて溝が拡大する形状をしており、ゴムが薄くなっても消音器自体の体積が変化しないようにしたものだ。展示品を手にしてゴムをめくれば、その下にはかなり大きい溝が構えていることが理解できる。こんな形状をしていると剛性が気になるところだが、走りもウエットも、そして静粛性も犠牲にしない「GREAT BALANCE REGNO」を謳うのだからきっと大丈夫なのだろう。
試乗をする前に、同乗走行でその静粛性を味わうことにした。まずは新品のGR-XIIの静けさを体感した後に、GR-XIIを40%摩耗させたものに乗ると、ほとんどその違いを感じることはない。厳密に言えば摩耗したことでトレッドの剛性が高まってしまうため、若干高めの音はあるのだが、気にならないレベルになっていることはたしかだ。その後、従来製品の40%摩耗状態を試したが、こちらはシャー音が明らかに気になるレベルになっており、そこを解消したかったというのは頷ける。摩耗しても静かであるという当初の狙いはきちんと達成できているように感じた。
だが、それで終わりというわけではない。GR-XIIはタイヤの形状を変更することで、少しラウンドした形状としているところも見どころの1つだという。突起に対してリニアに当てていくことで、衝撃を一気に高めることなく心地よさを改善したというのだ。波状路においてそれを体験したが、タイヤが第2のサスペンションとなり、路面からの入力を見事に吸収してくれていることが確かに理解できる。トレッド下に備わるノイズ吸収シートIIの効果もあるのだろう。
ここまで静粛性やダンピングのよさを追求すると走りが気になるところだが、スラロームを繰り返しても狙ったラインをトレースすることも可能。もちろん、スポーツタイヤのようにハイグリップを生み出すわけではないのだが、リニアな動きは実に心地いい。また、コーナリングしてタイヤがヨレた時であっても、音の変化が少なかった。このステージで基準タイヤとして引き合いに出した「ECOPIA NH100」では、突起の乗り越えもパタンパタンとややハード。コーナリングした瞬間から音が高まるところも、いかにも基準タイヤといった感じだった。
最後は一般道~高速道路においてその走りを体感してみたが、直進安定性にも優れ、速度を高めてみても静粛性が相変わらずだったところはマル。急激なレーンチェンジでもきちんと受け止められる頼りがいのあるところも好感触だ。新コンパウンドを採用することで、低燃費タイヤのグレーディングにおいて、転がり抵抗「AA」を獲得しているだけに、スーっと転がる抵抗感の少ないところも魅力の1つ。今回は試すことができなかったが、ウェット性能も「b」を獲得しているから、問題はないだろう。
このように、あらゆるシーンにおいて永続的にその効果が発揮されるGR-XIIなら、新品から廃棄するまで心地よさを得られることは間違いがなさそうだ。これぞまさに、GR-XIIの“GR”のもとになった「GREAT BALANCE REGNO」。レグノはまだまだその道の最高峰を突き進んで行きそうだ。