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藤島知子のドライブレコーダーもリアモニターもHD画質で連携する「彩速ナビ」レビュー

HD画質でスマート連携した彩速ナビを試してみた

 カーナビやスピーカー、ドライブレコーダーなど、各社の製品開発は日進月歩の進化を遂げている。ただ、実際に購入するとなると、自分にとってどれを選んだらハッピーな選択となり得るのか悩ましいものだ。例えば、ハイスペックでも使い切れない機能に高い金額を投じるよりは、必要最小限で比較的新しいもので落ち着く…… なんていうケースも少なくない。しかし、もしそれが、あったらうれしい画期的な性能や使いやすい機能性がバランスされた製品だったとしたら、どうだろう?

 今回はそんな、高性能と使いやすさをバランスした商品が欲しいと思うみなさんに、ケンウッド(JVCケンウッド)が提案するハイビジョン対応の彩速HDナビ「MDV-M906HD」シリーズ。そして「スマート連携」という形で組み合わせ可能なフルHDドライブレコーダー「DRV-MN940」、HD液晶リアモニター「LZ-1000HD」を紹介したい。お話をうかがったのは、JVCケンウッド オートモーティブ分野 アフターマーケット事業部 国内営業統括部 営業企画G 課長主事 南拓司氏だ。

株式会社JVCケンウッド オートモーティブ分野 アフターマーケット事業部 国内営業統括部 営業企画G 課長主事 南拓司氏にお話をうかがった

 ケンウッドというと、カーオーディオメーカーとしてのイメージが強いかもしれないが、南氏によれば、日本ビクターと経営統合した現在は、音だけでなく映像の部分でも強みを生かした製品作りをしているという。

 カーナビにおいては、ケンウッドブランドで2011年2月よりAVナビゲーションシステム「彩速ナビゲーション」シリーズを販売。その名のとおり、高画質や高速レスポンスを追求した。2013年には据え置きカーナビとしてはいち早く、スマホのようなフリック入力に対応。2015年にはハイレゾ音源に対応するなど、同社の強みを活かしたこだわりの商品展開をしている。その結果、カーナビ市場においてシェアを広げ、2015年以降は連続して前年度超えの伸びをみせているという。

 2019年3月に発売された最新の彩速ナビ「TYPE M」シリーズでは、大画面の9V型をラインアップに加えたほか、1280×720ピクセルの解像度を持つHDパネルの採用でさらなる高画質化を図ったという。地図データについてもHDに最適化したことで、大画面にしても、画像が引き延ばされてボヤっとしてしまうようなことはなく、どこまでもクッキリとした表現を可能にした。従来モデルのワイドVGA(800×480ピクセル)と比較すると、HDパネル採用の彩速ナビは約2.4倍の高解像度を実現したうえ、広視野角で映し出すことで、どの角度から見ても高精細な映像を見ることができるという。

 高価なハイエンドモデルに最新機能が搭載されることはよくあることだが、嬉しいのは、ボリュームゾーンとなるミドルクラスの7V型のモデルにもHD対応の彩速ナビが導入されたことだろう。9V型と変わらぬ性能が7V型に導入されるとなれば、価格帯的にも最新鋭の機能がお値打ち感のある価格帯で提供されることにも繋がり、触手が動くというものだ。

大画面9V型のMDV-M906HDL
7V型ワイドのMDV-M906HDW
7V型スタンダードのMDV-M906HD

 また同社ではドライブレコーダーについても力を入れているが、昨今のあおり運転に関する報道の影響もあって、ドライブレコーダーの需要も年々高まっているという。そうした市場のニーズもあって、今回のHDパネル搭載彩速ナビの専用オプションとしてナビ連携型ドライブレコーダー「DRV-MN940」もリリースした。

 これはあおり運転にも対応できる、前後2カメラのドライブレコーダーで、前後方向の映像をそれぞれフルHDで記録できる。さらに、HDパネルの彩速ナビに接続することで、ナビ画面でHD画質のカメラ映像を確認できるのが最大の特徴とのこと。カメラ部とメインユニットが別体になっているので、カメラ部がコンパクトで運転視界の妨げになりにくく、加えて前後カメラの映像を1枚のマイクロSDカードに記録できたり、メインユニットを手の届くところに配置することで、記録したいときにすぐに操作できるというのも特徴だ。

フロントカメラとリアカメラ、メインユニットの3ピース構造となるドライブレコーダー「DRV-MN940」

 HDパネルを持つ彩速ナビにHD画質でドライブレコーダーの映像を映す。と、聞けばそれほど難しそうではないが、従来のVGA画質はアナログ接続なのに対し、HD画質になるとデジタル接続が必要。通常はHDMIケーブルを用いるところを、取り付けの取りまわしやすさなども踏まえて、アナログ同様の同軸ケーブルを使ってデジタル伝送を可能とする「HD-TVI」という規格を採用。こんなところにまでこだわりが詰まっている。

彩速ナビを中心にHD画質の連携ができると語る南氏
ドライブレコーダーとのデジタル接続によってHD画質の再生を可能にした

 さらに、こちらは彩速ナビ専用というわけではないが、「後席でもハイクオリティな映像を楽しみたい」というニーズに合わせて、10.1V型HDリアモニター「LZ-1000HD」も発売するという。すでに発売済みとなるHD画質のリアカメラに加えて、これら商品群の登場によって、HDパネルの彩速ナビを中心として、ドライブレコーダーでもリアモニターでもHD画質を楽しめるHDクオリティの「スマート連携」が構築できるというわけだ。

10.1V型のHD液晶リアモニター「LZ-1000HD」
HD対応のリアビューカメラ「CMOS-C740HD」

早速「スマート連携」を試してみた。まずは彩速ナビ

 HDパネルを搭載した彩速ナビを中心に、そのHDパネルに映像を映せるドライブレコーダー、そしてHD画質対応の10.1V型リアモニターの組み合わせは、実際に使ってみてどんなメリットが得られるのか、それらの製品を搭載したデモカーに乗りこんでドライブしてみることにした。

彩速ナビを中心にHD対応製品で組み合わせたデモカーでドライブ。その使い勝手は?

 まずは彩速ナビのデザインに目を向けてみる。フラットパネルのスッキリとしたたたずまいは、隅々まで精緻に組み上げられているもので、見た目から高性能なモデルであることが伝わってくるようだ。操作性をつかさどるインターフェースには「オーガニックGUI」が搭載されているが、目的地設定をするためにメニュー画面に触れると、スマホの操作と同様にフリック操作にも対応している。トップ画面にはエンタメ系、カーナビ、各種設定など多彩なメニューが用意されているが、高精細な画面表示でありながら、自分が探しているページにレスポンスよくサッと切り替わるので、数あるメニューから画面を切り替える際のフラストレーションを感じさせない。

大画面で高精細な画面のおかげでたくさんの情報もすっきりと見ることができる

 地図表示も明るく鮮明なものだ。パッと見たときの色の組み合わせも絶妙で、高速道路、一般道の幹線道路、それ以外の道の違いがひと目で把握しやすいものになっている。不慣れな土地で運転しながらナビにパッと目を向けた時に区別がつきやすいから、曲がり角で慌てるようなこともない。実際に出発地の周辺は初めて走る地域だったが、不安に思うこともなく、高速道路の入口にスムーズにアクセスすることができた。

文字入力はフリック入力にも対応。スマホ感覚で操作できる
目的地「サザンビーチ」で検索したリスト
ルートは推奨のほか、距離優先、高速道路優先など5つのプランから選択できる

 また、地図の表示を拡大・縮小については、スマホのようにピンチ操作でも対応できるが、ナビ画面の縮尺表示をタッチすると現われるスライダーバーをスライドしてもシームレスに縮図を変えることができる。実際に表示されるスケールを見ながら拡大・縮小ができるので、信号待ちなどの短い時間で確認するのに重宝する。さらに、自車位置のマークをタッチすると自車周辺が部分的に拡大表示される「ワンタッチルーペ」という画期的な機能も。一瞬で自車周辺の詳細地図を確認できるので、道を間違えてもう1周なんていうロスも回避しやすくなるのではないだろうか。

地図はフリック操作やピンチ操作でコントロールできるほか、スライダーで縮図を変えたり、押した方向に地図がスクロールする従来のナビ操作方法にも対応する
ナビ画面の自車位置をタッチすると自車位置周辺が拡大されるワンタッチルーペも画期的

 ガソリンスタンドなどの周辺施設を探したい時に便利なのが「ピンドロップ周辺検索」。一般的なナビの場合、現在地からガソリンスタンドまでの距離が店名と数字で表示されるものの、地図と上手くリンクしていなくてどの方角にあるのかが分かりづらいものが多いが、このナビの場合、検索した施設の候補を地図上にピンをドロップして表示してくれるので、それが立ち寄りやすい場所か否かという判断がつきやすい。

「わずかな時間でも迷わせない」―――その分の気持ちの余裕は運転に集中することに繋がっていく。つまり、必要な情報をサッと提供してくれることが、安全ドライブにも繋がるというワケだ。

 走行中に表示されるナビ画面は、ドライバーが運転中に情報と向き合う関係性も考え抜かれている。ベースとなる画面には目的地までのルート案内を行なう地図が表示されているが、サブ画面として、オーディオの情報、走行時の注意喚起、渋滞情報などを同時に表示することができる。しかも、それらのインフォ画面は指先で自由にサイズ変更が可能で、その時に見たい情報を拡大して見ることもできる。また、それらの情報は地図上に透かした状態で重ねて表示されるから、道案内は常に視覚的に捉えながら、欲しい情報を得ることができる。

地図上で目的地の位置関係が分かる「ピンドロップ周辺検索」
「方面看板表示」には自分の進むべき道が青色で表示される
次の分岐点までの距離をカウントダウン表示する「ここです案内」
交差点に接近すると表示される「交差点拡大表示」
高精細な画面を生かして多くの情報を表示できる
どの情報画面を大きくするかなど、直感的に自由に操作できる

ドライブレコーダーはいかに?

 次にドライブレコーダー DRV-MN940の性能を確認してみよう。最近のクルマのフロントウィンドウは、ドライブレコーダーを取り付けるスペースに限りがある。オートワイパーの雨滴センサーや予防安全装備を作動させるためのカメラ・センサーが設置されているためだ。今回のドライブレコーダーはカメラ部がコンパクトなため、取り付け場所の自由度が高い。クルマは灼熱や氷点下など、厳しい環境にさらされることを考えると、記録を担うメインユニット部分を日光が直接当たりにくい場所に設置できるのは、機器にとって負担が少なく、衝突した際に破損するリスクも減らせるだろう。

フロントカメラ部。本体が別体だからこそのコンパクトさ
リアカメラ部。サイズはフロントカメラと同等
メインユニット部。マイクロSDカードスロットやマイク、Gセンサーなどはここに内蔵される

 では、肝心の画質はどうなのだろう。フロントカメラについては、小型ながら偏光フィルターが採用されていているもので、フロントウィンドウの映り込みを低減してくれる。さらに、朝昼夜のシーンに合わせて画質を調整する機能も新たに加わって、自然な色彩を再現するそうだ。また、トンネルを抜けて明るみに晒されるシーンはカメラにとって厳しい状況といえるが、暗がりから明るみの変化にもレスポンスよく対処してくれるので、ブラックアウトやホワイトアウトする時間が短い。「肝心な時に撮影できていない」なんていう残念な状況も回避できそうだ。

 そしてなにより、彩速ナビの画面で見るHD画質の映像はなかなかのもの。従来のVGAの映像と比較してみるとその差は歴然だった。

上の写真がHDパネル搭載彩速ナビにDRV-MN940の映像をHD画質で表示したもの。下が従来の彩速ナビにVGA表示したもの。その差は歴然だ
録画した映像をHD画質ですぐに確認できるのがメリット
彩速ナビに表示した録画中の映像
こちらはトンネル出口。この時点でトンネル外の明るさに露出が合い始めている
走行中は地図と録画映像を同時に見ることもできる

 リアカメラについては、フロントカメラと同じ約207万画素という高画質化を実現している。ワイドな画角で記録できるのに歪みが少なく、後方を走行している車両のナンバープレートも鮮明に映し出してくれる。ちなみに、リアカメラが映し出す映像を走行中に表示させて「バーチャルルームミラー」として活用することも可能だ。後席に背が高い乗員が座っていたり、荷物を満載にしていたりする時に、後方の死角をフォローしてくれるメリットもある。車庫入れの際は「サブリアカメラ」としても活用できるので、歪みが少ない鮮明な画像は自車直近の障害物の状況も把握しやすい。

彩速ナビの画面で見る録画中のリアカメラの映像。「フロント切替」をタップするとワンタッチでフロントのカメラ映像に切り替えができる
バーチャルルームミラーとしてナビ画面上にバックカメラの映像を映しておくことも可能

 フルハイビジョンで録画した映像は、彩速ナビのモニター上でGPSの位置情報とともにハイビジョン映像として再生することもできるし、アプリをダウンロードすれば、PC上でドライブ中の映像を再生することもできる。記録映像は使い手のアイデア次第でさまざまなものに活用することができそうだ。

実際に録画した映像から切り出したフルHDの画像。写真をクリックするとフルHDサイズで表示されます
こちらは追い越す瞬間の画像。これぐらいの距離でもナンバーの文字が読み取れる。こちらもクリックするとフルHDサイズで表示されます
PC専用アプリで表示した画面。前後の映像を切り替えて表示できるほか、GPS情報も記録しているので、走行している場所を地図に表示したり、Gセンサーのデータを見たりもできる

 また、駐車中にクルマをぶつけられるなど衝撃を検知した場合にも記録可能な「駐車監視録画」や、マイクロSDカードの寿命による録り逃しを防ぐ「SDカード寿命告知機能」なども搭載するなど、ドライブレコーダーに求める性能を網羅している印象だ。

HD画質のリアモニターは家族の満足度もアップ

後席に座ってリアモニターのLZ-1000HDの画質も確認

 後席に座ってリアモニターのLZ-1000HDの画質も確認してみた。10.1型という大画面に加えて、従来のWVGAパネルと比べて2.6倍の情報量となるHD画質のおかげで、とても高精細な映像を楽しむことができる。さらに彩速ナビは音もこだわっているので、そういった部分でも満足度は高いだろう。試しにいくつか映像を見させてもらったが、まるで車内がシアターやコンサートホールに変わったかのように、美しい自然の景色や臨場感のある映像とサウンドが飛び込んでくる。特に、後席から見ても彩速ナビのHDパネルの映像のきれいさが分かるだけに、後席でも同じようにきれいな映像を楽しめるというのは満足度が高い。

 モニターにはHDMI入力が2系統あるので、手持ちのスマホを接続して撮影した動画やYouTubeを再生するといったこともできるし、HDMI出力も持っているので、分配器を使うことなく数珠つなぎでもう1台のモニターを接続することができる。オプションとして、モニターを前席のヘッドレスト部に取り付けられるキットも用意されている。さらにヘッドフォン端子もあるので、後席2人が違う映像を楽しむといった使い方も可能だ。

コントラストが高く高精細で昼間でもはっきりと見やすいリアモニター
モニター2台を数珠つなぎする形で接続できるのも特徴
HDMI入力を2系統、HDMI出力を1系統、給電用のUSB端子とヘッドフォン端子を持つ

 今回の企画では、HD対応となった彩速ナビと、そんな彩速ナビと連携する専用設計のドライブレコーダー、さらには後席でダイナミックな映像が楽しめるリアモニターをレビューさせていただいた。この製品が気になっているみなさんは、おそらくハイビジョンがもたらす高画質や、高音質に対応するハイレゾなど、スペック的な要素が先ずは目に留まるかも知れない。しかし、実際に使ってみると、この会社がもつ技術が活かされた製品であり、移動しながらさまざまな環境下に置かれるクルマやドライバーの状況を先回りしたアイデアが凝らされていることに気づく。

 私が一言でこれらの製品を表現するとしたら、「使いこなせる高性能」とうたうだろう。使い手の立場に立った設計思想は、道具を人が使いこなす上で理想的な進化の形ではないかと思う。カーナビの進化はもはや頭打ちかと思えた時期もあったが、時代の流れにともなって、まだまだ進化の可能性は残されていそうだ。