トピック

三菱自動車のPHEVで電源供給! 大自然の中で電気でBBQをしながらリモートワークをやってみた

プラグインハイブリッド車の電源供給能力に驚いた

PHEVを駆使して大自然でリモートワーク

熟成の領域にある三菱自動車の2台のプラグインハイブリッド

 低炭素社会を目指す上で、クルマの電動化の波がいよいよ現実味を帯びてきた今日このごろ。世界各地のニュースや記事で「20XX年にガソリン車販売禁止」なんていう文言が聞こえてくるけれど、実はこれ、全てのクルマがいきなり100%電気自動車になるワケではなく、現段階の話では、エンジン+モーターを組み合わせたハイブリッド車など、何らかの電動化技術を備えたクルマも含まれていたりする。

 三菱自動車工業の加藤隆雄社長は「プラグインハイブリッド車(PHEV)には、電動車の構成要素がすべて詰まっており、EVとハイブリッドのどちらにも応用することができます」と、現状で三菱自動車が考える最適な答えがPHEVであることをコメント。三菱自動車は2013年の段階で、SUVとしては世界で初めて「アウトランダーPHEV」で量産型のPHEVの販売を開始したが、時間の経過とともに商品改良を重ねながらシステムを熟成させ、魅力的なクルマに仕立ててきた。

アウトランダーPHEV。ボディサイズは4695×1800×1710mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2670mm。「S Edition」「G Premium Package」「G Plus Package」「G」の4グレードと特別仕様車「BLACK Edition」があり、価格は436万4800円~529万4300円
2020年10月に一部改良が行なわれ、予防安全技術「e-Assist」の後側方車両検知警報システム(レーンチェンジアシスト機能付)「BSW/LCA」と、後退時車両検知警報システム「RCTA」が全車標準装備となった

 今回紹介する「アウトランダーPHEV」と「エクリプス クロス PHEV」は、大容量のバッテリー、2つのモーターとエンジンを搭載し、基本的には電気自動車のようにモーターで走行。エンジンは発電役にも直接タイヤを駆動して走ることもできるSUV。

 いまでは、国内外のメーカーからさまざまなPHEVがリリースされているが、後から登場したクルマたちでもかなわないほどに、この2台のPHEVは三菱自動車の独自性が際立つポイントも多い。

電気自動車としての特性を持ち、静かで快適な走行性能を持つ

三菱自動車の電動化技術が詰まり、EV走行に加えて電源供給もできるPHEV

 三菱自動車といえば、電気自動車の「i-MiEV」で得た電動化技術のノウハウのほかに、「パジェロ」で長年培ってきたオフロード性能、4WDのスポーツカーである「ランサー エボリューション」で車両運動制御技術などを磨き上げてきたブランド。そうしたノウハウが活かされたPHEVのシステムは、発売当初から走って楽しく、静かで快適。悪路走破においても頼もしい存在として、専門家たちを唸らせた。

 さて、そんな魅力をもつ三菱自動車の「アウトランダーPHEV」と「エクリプス クロス PHEV」に乗って、今回は山間の地に出掛けてみることに。この2台の実力を試しつつ、自然の環境で伸び伸びとしてみようと目論んでいる。

アウトランダーPHEV、エクリプス クロス PHEVが搭載する直列4気筒2.4リッターエンジンは最高出力94kW(128PS)/4500rpm、最大トルク199Nm/4500rpmを発生。モーターは、フロントが最高出力60kW(82PS)、最大トルク137Nmを発生する「S61」型、リアが最高出力70kW(95PS)、最大トルク195Nmを発生する「Y61」型が組み合わされる

 実はこの2台のPHEVは、バッテリーに蓄えた電力をコンセントで取り出して使う外部給電機能を備えている。2.4リッターのガソリンエンジンと大容量のバッテリーを搭載しているが、ガソリン満タン、バッテリー満充電の状態であれば、エンジンが発電しながら一般家庭の約1週間分の電力を供給できる凄さを持ち合わせている。

 100%モーターのみで走る電気自動車の場合、充電してエネルギーを蓄えても電欠すれば動けなくなってしまうが、PHEVなら自らがエンジンで発電して走り、バッテリーにエネルギーを蓄えられる強みがある。もちろん充電スポットで充電することもできる。

 東日本大震災から10年が経ち、台風や大雪などで災害が多い日本においては、時として大停電が起こることがあり得るが、移動でき、自ら発電する蓄電池として考えれば、車内に設置されたコンセントでAC100V(最大1500W)の家電製品が使えることは、多くの人たちを不安から救ってくれることだろう。

センターコンソールの操作パネルにコンセントの給電ON/OFFスイッチを配置
アウトランダーPHEVはコンセントがラゲッジルームのほかにフロアコンソールボックス背面にもある
ラゲッジルームのコンセント

PHEVを使って、大自然の中でリモートワーク&ランチ

 コロナ禍が押し寄せてから、家で過ごす日々も増えた。そこで今回は気分をリフレッシュしようと、感染リスクを避けながら空気の美味しい自然の中に足を伸ばしてみることに。現地でリモートワークができるとすれば、原稿もはかどりそうだ。ただ、キャンプ道具を持ち出すほどの時間はないし、ノートパソコンを使うことを考えたら、電源があると安心。ということで、この際、三菱自動車のPHEVの実力を試しながら仕事をこなしてみようと、このプランを遂行することになった。

 今回のドライブでは、アウトランダーPHEVは、バッテリーが減っている状態でスタートし、走りながらバッテリーに充電しながら走る「バッテリーチャージモード」で現地に向かう。

シフトレバー手前に走行モードの切り替えがあり、チャージモードやセーブモード、EVプライオリティモードの切り替えが可能
パドルシフトで回生ブレーキの量を変更する。まさにシフト操作でエンジンブレーキ量を調整するような感覚となる
クルマの状態はメーターパネル中央に表示できる
スポーティなクロスオーバーSUVとして走行モードの設定が行なえる

 一方で、エクリプス クロス PHEVは、バッテリーをほぼ満充電にして走り出し、バッテリー残量を保ちながら移動する「バッテリーセーブモード」を選択して走った。どちらも、現地に辿り着いた際にバッテリーにできるだけ多くのエネルギーを保つことには変わりないが、モーター走行とエンジン稼働の割合、燃費などにおいて、どういう差が生まれるのか気になるところだ。

エクリプス クロス PHEVはセーブモードでバッテリーの充電容量を“セーブ”して移動
バッテリーが減っていたらチャージモードで蓄えることができる
バッテリー容量があればEVモードで静かかつ低振動で走れる。PHEVなら電池容量を最後まで使い切っても動けなくなることがない

 とはいえ、アウトランダーとエクリプス クロスはクルマの土台となるプラットフォームは共有しているものの、クルマとしてのキャラクターは異なる。さっそく、アウトランダーPHEVのハンドルを握って走り出してみる。搭載されるエンジンは、発売当初の2.0リッターから2019年モデルの大改良で2.4リッターに排気量が増やされ、駆動用バッテリーは容量、出力ともにアップしていたりと、走行中の快適性を高めている。

 悠々と構えながらドライブできる感覚は、アウトランダーに相応しい乗り味。ノーマルモードで走っている時であれば、バッテリーを満充電にした電力を活用することで、WLTCモードで57.6kmはエンジンの力に頼ることなく、モーターのみで走行できる計算になる。

車体の重さを感じさせないパワフルな走りが頼もしい
アウトランダーPHEVを運転して快適に移動中

 実際の走行では、アクセルを深く踏み込めばエンジンが掛かって直接タイヤを駆動する。モーターの力にエンジンの駆動力が加わることで、車体の重さを感じさせないパワフルな走りを披露してくれる。

 アウトランダーはバッテリーが少ない状態でチャージモードを使って走ってきたが、約20km走った時点で目盛の4/6程度までエネルギーを溜め込んでいる。高速道路と一般道を走ってきた50km地点では、バッテリーに充電されている容量はあまり変わらなくなっていたが、燃費は8.7km/L、エンジンを使わずモーターのみで走った(EV Driving)比率は46%だった。バッテリーが減っている状態で走り始めると、エンジンが走ることにも発電にもエネルギーを必要とするぶん、燃費の数値は低くなりがちな印象だ。

こちらはエクリプス クロス PHEV、アウトランダーよりもドライバーとクルマとの一体感が強い感覚だ

 一方のエクリプス クロス PHEVは、ホイールベースやトレッドの数値はアウトランダーとほぼ変わらないにしても、アウトランダーよりも全長は短く、全幅は広く、全高は25mm、地上高は5mm低くなっている。ちなみに、車両重量は両者ともに1920~30kgといった程度で、一見大きく見えるアウトランダーが重さで不利になるほどの差はない印象だ。

 エクリプス クロスのクロスオーバースタイルは、マイナーチェンジ後にスポーティさと洗練さが共存したデザインに変わっており、走らせていると、アウトランダーよりもクルマの重心が低い感じが伝わってくる。

2020年12月の大幅改良により前後オーバーハングが140mm延長され、洗練されたフォルムに仕上げられたエクリプス クロス PHEV。ボディサイズは4545×1805×1685mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2670mm。PHEVモデルは「M」「G」「P」の3グレードで価格は384万8900円~447万7000円。ガソリンモデルは「M」「G」「G Plus Package」の3グレードで価格は253万1100円~334万6200円

 アクセルとクルマの動きが連動しながら、ドライバーがクルマとの一体感を得て走れる感覚はスポーツカーライクで楽しい。それでいて、快適性もバランスしている印象だ。個人的にはランエボのSUV版だと思えるほどに、スポーティなクロスオーバーSUVのキャラと三菱自動車の4WD制御などを伴うPHEVのメリットがマッチしている点が魅力的に思えた。

 肝心の燃費については、50km地点で15km/L。EV Drivingの比率は42%。スタート時にバッテリーがほぼ満充電の状態から走り出せば、例えバッテリーセーブモードで走っても、燃費はそれほど悪化していないことが分かる。

プラグインハイブリッドのロゴが輝く
ライトグレーのレザーシート仕様も用意される
エクリプス クロス PHEVもアウトランダーPHEVと同じくシフトレバー手前に走行モードの切り替えを配置する
エクリプス クロス PHEVのコンセントはラゲッジルームに配置される
エクリプス クロス PHEVのコンセントの給電ON/OFFスイッチはステアリングの右側にある
コンセントへの電源供給をオン!
ラゲッジルームのコンセント。蓋を開いて使う

エンジンを回さず電気ホットプレートで肉を焼く

 そんなふうに走りを楽しんでいると、あっという間にキャンプ場に到着。さっそくテーブルを組み立ててパソコンを置く。

普段とは違う大自然の中で原稿を書くのは新鮮

 ここでひと息つこうということで、自宅から持ってきた電気ポットが活躍することに。アウトランダーPHEVには、AC100V 1500Wまで使えるコンセントが用意されている。車内に配置されたAC1500Wと書かれたスイッチを押して、さっそくお湯を沸かした。

家庭のコンセントと変わらない電源供給力で、電気ポットからあっという間に湯気が出てくる
すぐにお湯が沸き、コーヒーにお湯を注ぐといい香りが自然に広がる
空気が美味しい自然の中でコーヒーブレイク

 お気に入りのカップも持参してきたし、空気が美味しい自然の中でコーヒーブレイクできるのは、とても充実した気分になる。

 ランチタイムは暖かい物を食べたいとホットプレートを持参してきた。ステーキにソーセージ、お野菜もプラスしてと。これだけプレートの上にたくさんの食材をのせると、すぐに中まで熱が入るのか心配だったものの、しっかりと給電が行なわれて熱量は十分。焼いている途中で温度調節のダイヤルを少し弱めるくらい。家で使うのとまったく変わらずに焼くことができた。

ランチはちょっと豪華にステーキとお野菜。コンパクトなホットプレートを使えば意外に簡単
クルマからの電源供給というと少し不安な印象があるかもしれないが、熱量は十分。しっかり火(熱)が通って焼き目もバッチリ。自然の中だとおいしさは倍増! ただし、使用する電気製品に付属する取扱説明書や製品に記載されている注意事項をしっかりと確認した上で使用することと、消費電力が1500Wを超えると給電停止または出力が低下する場合もある。また、ACコンセントのたこ足配線は厳禁となっているのでくれぐれもご注意いただきたい

 アウトドアでの食事はいつも以上に美味しく感じられる。たき火と違って後処理も簡単だから、思いつきで出掛けても手間取らないのが嬉しい。

気分転換に河原を散歩

 順調に仕事をこなしつつ、気分転換にぶらぶらと河原を散歩。少し肌寒くなってきたので、暖を取ることにした。ここでは、電気毛布が大活躍。温まるまで時間が掛からないから、身も心もホッと癒される。

寒くなったら電気毛布で暖を取ることもできる。PHEVの十分な容量のバッテリーなのでエンジンはピクリとも動かなかった

 原稿が一段落して、そろそろ帰り支度を始めようと思っていたら、オンライン形式での打ち合わせがあったことを思い出す。1200Wのドライヤーを持ってきていたので、ヘアスタイルのリセットも完了。オンライン会議では、パソコンのバッテリー残量を気にすることなく、無事に会議をこなすことができる。

ビデオ会議に備えて身だしなみを整える、ドライヤーの熱量も十分
1200Wと家電の中では大きめの消費電力のドライヤーも問題なく使える

エンジンを回さず、大自然でリモートワーク完了!

 現地で家電を使う際は、全てアウトランダーPHEVを活用したが、帰路につく時点でのバッテリーは50%程度残っている状態。エンジンが掛かることなく、ガソリン残量も到着時と変わっていなかったので、静かに外部給電をしてくれていたようだ。

 帰り道は往路と同様に一般道と高速道路を使ってUターン。目的地に辿り着いたとき、走行距離は117kmだったが、キャンプ場で外部給電を行なったアウトランダーPHEVは、バッテリーチャージモードで走ってきて、平均燃費11.5km/L、EV Driving比率は45%。目盛をみるとバッテリーは5/6までチャージされ、ガソリンは4/6程度残っていた。

平均燃費とEV Drivingの比率が表示される(画像はエクリプス クロス PHEV)
EVの残量がゼロの状態だとEVモードは使用できない(画像はアウトランダーPHEV)

 往路もそうだったが、充電しながら走ると想像以上に早いタイミングでバッテリーが充電されていくことが分かった。1900kg程度の車両重量はそれなりの重さがあるが、2.4リッターに排気量をアップさせたエンジンは発電時に低い回転で効率的に充電できるし、直接タイヤを駆動して走るシーンにおいてもパワフル。余裕をもって走れることで、バッテリーにチャージしていないノーマル走行時は、静かにクルージングできる点も魅力的に映った。

十分な充電量で帰路についたエクリプス クロス PHEVはガソリン消費は非常に少なかった

 一方で、現地で外部給電を行なわなかったエクリプス クロス PHEVは、バッテリーセーブモードは使わず、ノーマルモードで帰路についたが、到着した際の平均燃費は24.8km/Lと大幅に向上。モーターを積極的に使って走り、高速道路では時折エンジンが掛かったりしながら、基本的にはバッテリーのエネルギーを活用して走ることができた。その点では、トルクが得られるモーターが主役として走り、足りない領域だけエンジンの力を利用して燃料消費を抑えるPHEVの強みが現れた。

 いまブームの真っ最中ともいえるSUV。人気の秘密はアクティブなスタイルとファミリーカーとして乗れて、キャンプなどのレジャー用とで大活躍する実用性を併せもつ点が挙げられる。その点、今回の2台はその実用性を損なう要素はない。さらに、運転席でハンドルを握ればクルマと気持ちをひとつにして走れる三菱車ならではの醍醐味を与えてくれる。

 それだけでも魅力的なクルマであるにもかかわらず、外部給電機能を備えていることで、アウトドアで活用できるし、有事の際は助けにもなる頼れる存在にもなってくれる。たった1日では試し尽くすことができないこの2台の懐の深さをみても、2013年から世界の60か国以上で27万台以上を販売してきた実績や、2020年に欧州市場でSUVのPHEVで販売台数No.1、PHEV全体でも第2位を獲得したことも納得できる。

 クルマが電動化する時代を迎えているいま、三菱自動車の回答である今回の2台のPHEVは、さまざまなシーンでその実力を見せつけてくれることは間違いなさそうだ。

気分転換ができるワーケーションは最高でした