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パナソニックの大画面有機ELカーナビ「ストラーダ」がさらに進化 新機能「レコーダーリンク」など開発チームが明かす進化のポイントとは?

パナソニックのAVナビゲーションシステム「ストラーダ」の最新モデルが登場。注目の新機能レコーダーリンクをはじめ、細部までブラッシュアップした

 パナソニックのAVナビゲーションシステム「ストラーダ」の2022年モデルが登場した。ここ数年ストラーダは大きな変化を遂げているが、有機ELディスプレイ、ハイパフォーマンスの新プラットフォームを備えて登場した2021年モデルの次は、待望の「レコーダーリンク機能」の搭載だった。外出先から自宅のレコーダーで録画動画やBS/CS放送もリモートで見ることが可能と、車内のエンタテインメントがパワーアップした。

高画質で映像を楽しむ下地はそろっていたストラーダ

 毎年モデルを追うごとに映像機能がアップしている「ストラーダ」。映像再生には非常に有利な有機ELディスプレイは、すでに大画面ストラーダのマストアイテムとしてすっかり定着している。

 今回も進化ポイントは、自宅のレコーダーの録画動画をカーナビの画面に映し出すことができる「レコーダーリンク」の搭載や、高画質の視聴をより安定させる地デジチューナーの性能アップ、そして肝心のカーナビ機能ももちろん進化。

クルマにインストールした新しいストラーダ。フローティング構造で手前に出てくる分、大画面がさらに大きく見えるのもポイント

 レコーダーリンクでは、自宅にパナソニックのDIGAをはじめ、対応のレコーダーが設置してあり、高速インターネット回線に接続され、そして車内にはリンク設定をしたスマートフォンがあれば、自宅のレコーダーの録画動画や受信中のテレビ放送を車内で楽しむことができる。

 そこで、大画面有機ELディスプレイとレコーダーリンクという高画質をクルマで楽しむ2大条件がそろった新生ストラーダについて、機能を追加した理由や進化させたポイントなどを開発チームに聞いてみた。

レコーダーリンクが目指したのは「ナビとしての機能の融合」

 まず、レコーダーリンクを導入した背景から。毎回、新製品が出たあとには次の商品企画に役立てるために、必ずアンケート調査を行なっているというパナソニック。開発リーダーの船本氏は「テレビを視聴することは、いまでもユーザーアンケートの上位なんです。また、外部の調査には録画した番組を視聴したいという声が多い結果もありました」と語る。

最新ストラーダを前に説明する、パナソニック オートモーティブシステムズ(株) インフォテインメントシステムズ事業部の船本和彦氏

 また、ユーザーがストラーダを買うときに重視していることは「画質がいい」、多彩な「エンタテインメント」機能などが挙げられており、ストラーダとしても高画質、高音質は1つのアピールポイントになっていることから、「力を入れておきたいところ」だったと船本氏はいう。

 そこで要望の多い自宅のレコーダーの録画動画や受信中のテレビ放送をカーナビから視聴する「レコーダーリンク」の機能に着目し、今回の新製品では、この機能を推していこうと決まったという。

 もちろん、前回のアンケート結果をもって、ゼロから開発を始めていたのでは間に合わない。それには、カーナビから派生する利用シーンに対して、さまざまな構想を考えていたことと、前モデルで一新したプラットフォームがある。「格段に処理能力が高まったことで、新しい機能をどんどんチャレンジできる」と船本氏がいうように、高画質の動画再生と高度なカーナビ機能の両立が可能になる下地=新型プラットフォームに進化していたことが大きく、そこがベースになっていたから今回の進化も可能になったワケだ。

メニュー画面から「レコーダーリンク」を選ぶことで自宅のレコーダーの録画動画やBS/CS放送が見られる(レコーダーリンク機能は「CN-F1X10BGD」および「CN-F1X10GD」と9インチの「CN-F1D9GD」の3モデルが対応)

 そして、同部署の北野裕介氏によれば、スマホから自宅のレコーダーの録画動画を見たいのならすでにアプリ「どこでもディーガ」があるが、ストラーダで目指したのは「ナビとしての機能の融合」だと明かす。スマホとは違い“車内”でストレスなく使えるものにしたかったという。

レコーダーの映像をスマホで見るか、ストラーダで見るかの違いを説明するパナソニック オートモーティブシステムズ(株) インフォテインメントシステムズ事業部の北野裕介氏

 具体的には、エンジンをかけるとストラーダも同時に立ち上がるが、そのときにユーザーがストレスなく使えるように仕上げ、ナビとの融合といった部分も細かく造り込んでいるという。

自宅のレコーダーの録画動画だけでなく、放送中のBSやCSも視聴可能

 レコーダーリンクでできることは録画動画の再生だけではない。北野氏はレコーダーリンクの特徴として、車内からBSやCS放送がほぼリアルタイムで見ることができる点を挙げる。

 テレビ放送をリモートで見る機能はあるが、それならクルマにもアンテナが付いているのに、なにも自宅のレコーダーからわざわざ通信料をかけて映像を送ってもらわなくてもいい。しかし、BS放送はアンテナの制約でクルマにBS受信の機能を搭載することは難しく、安定的に見るためには「レコーダーリンク」のような仕組みが必要になってくる。

自宅のレコーダーの再生内容を選ぶ、録画動画と放送(チューナー)などが選べる。ただし、BS/CS放送の契約にかかわらず視聴できない放送中の番組や録画動画もある
レコーダーのメーカーや機種によって表示内容は異なるが、自宅のレコーダーと同じように録画動画を再生できる

 また、衛星放送だけではなく地上波でも似た問題がある。自宅エリアでしか流れない番組がある場合だ。それを、レコーダーリンクを使えば、BS放送をはじめ自宅エリアでしか流れない番組のリモート視聴が場所を選ばずに可能になる。

 最近はスポーツがBSで放送されることも多く、レコーダーリンクなら旅先でも視聴に対応できる。また、東京ローカルの放送局でしか放送されていない番組を、地方に旅行中の車内から見ることができる。録画設定しておけば自宅に戻ってから見ることができるが、スポーツならリアルタイムで見たいと思うのは当然で、そのようなときにもレコーダーリンクは重宝する。

自宅と同じBS/CS放送や録画動画を旅先の車内で視聴することが可能
レコーダーはパナソニック製だけでなく、シャープ製、東芝製にも対応。さらにNAS(Network Attached Storage)は、アイ・オー・データ機器製、バッファロー製にも対応(機種により非対応の製品もあり)

 しかも、スマホよりも大きい10V型画面で見ることができ、音質もストラーダならではの、音のプロがチューニングした「音の匠」の「極サラウンド」モードの臨場感のある高音質で聴くことができるのもうれしいポイント。

気になる通信量は3段階で調整可能

視聴設定で再生画質を選べば、データ通信量を調整できるほか、バッファ量も調整できるので、回線状態に応じて見やすい設定を選べる
レコーダーリンクで使ったデータ通信量の目安も確認できる。通信量のカウントのリセット日も設定できるので、料金プランの締め日が異なる通信事業者でも使いやすい

 ネット経由で録画した番組が見られるようになると、気になるのは通信量と料金だろう。パナソニックとしてもそこはネックになると考えていたが、自宅は固定のインターネット回線があり、スマホも定額や格安な大容量プランが多くなったため、レコーダーリンクも以前よりもかなり利用しやすくなっていると見込んでいる。

ストラーダの詳細な仕様について説明するパナソニック オートモーティブシステムズ(株) インフォテインメントシステムズ事業部の菊池裕太氏

 しかし、その一方で容量を気にする人のために、画質設定が設けてあるのもポイント。消費する容量は1時間あたりおよそ「1GB」「700MB」「500MB」の3段階となり、最低画質がどの程度の画質かというと、菊池氏は「ワンセグほどは落ちないですが、少しは粗くはなってしまいます」と説明する。自動で設定してしまうサービスもあるが、レコーダーリンクについては手動で設定でき、使いすぎを防ぐことができそうだ。

レコーダーリンクを使用する際は、専用アプリを使用する
アプリを起動したら自宅のレコーダーとナビを登録すれば準備OK
次回以降はアプリを起動すれば自動で接続してくれる設定も可能

チューナーは妨害電波に強くなり、より安定的な高画質視聴が可能に

 今回、地味だが地デジのチューナーの強化も大きなトピックとなる。高性能化については、パナソニックの船本氏によれば、「最近は車内の機器が増えていて、その影響を受けることが多くなっている」と実情を明かす。

 とくに、機器の種類が増えているだけでなく、たとえばカーナビのテレビアンテナを貼り付けることが多いフロントガラスには、ドライブレコーダーも貼り付けられることが増えてきた。

 一般的に、電子機器からはBluetoothやWi-Fiといった通信のために出す電波のほかプロセッサの動作クロックなどさまざまな「漏れ」電波がある。規制はされていても、さまざまな機器が増えているなかで影響は決して少なくない。

 具体的に地デジチューナーに与える影響は、放送電波の受信性能が落ちてしまうこと。そこで、今回はそういった妨害からの耐性を強くしたことで、結果的に電波が弱い環境での受信性能がアップすることになるという。船本氏によれば、「フルセグからワンセグに切り替わってしまうようなシチュエーションが減って、より安定してテレビ放送を受信できるようになっている」とのことだ。

ナビアプリで操作するリモコン機能が復活

スマホ用アプリ「CarAV remote S」をインストールすれば、レコーダーリンクをはじめ、FM、テレビ、DVD、HDMI、Bluetoothオーディオなど、スマホをリモコンとして操作が可能になる

 続いてリモコン機能が復活した。以前もAV機能操作のリモコンはあったが、今回スマホアプリ「CarAV remote S」を使うかたちで復活させた。その理由としては、10V型の大画面に秘密がある。

 実は画面が大きくなることで、前列だけでなく後列からも視聴しやすくなったのが大きな要因。と、なれば当然、後席からも操作をする必要が出てくる。とくに、現代はタイムシフト再生が当たり前で、必要に応じて巻き戻しをし、重要なシーンを見返すのはふつうだ。テレビ放送のように流れているものを見ているだけではない。

 リモコンがあれば音量調節も後席からできるので、前席の人が代わりにボリューム調整するといった余計な操作も不要となる。つまり、リモコンがあれば操作面の利点のほか、安全運転にも寄与してくれるわけだ。

ナビ機能もしっかり進化。安全・安心運転のサポートをより充実

 ここまではAVの機能だったが、カーナビとして機能も進化している。たとえば、「ゾーン30」と呼ばれる一帯が30km/hの速度規制を行なっているエリアに入ったときのアラートが搭載された。

 安全・安心運転サポート機能としては、すでに一時停止や制限速度の案内などが表示されているが、ゾーン30については今回追加され、ゾーン30に入ったときのお知らせはポップアップと音声で案内され、ドライバーにしっかりと情報を伝えてくれる。

ゾーン30に入ると画面上にポップアップ表示でアラートが出る

 これは安全・安心運転をサポートする機能の1つだが、現在、全国的に生活道路の交通事故対策として、一定の範囲(ゾーン)を交通事故致死率が下がる30km/h以下に速度規制する場所が増えている。生活道路として速度を抑制するだけでなく、抜け道としての利用を抑制したり排除したりするためでもある。

 また、ナビゲーション中の案内もより見やすくなった。今回、変化した点は交差点の案内。次とその先の曲がる方向や車線案内が分かりやすく変更。たとえば幅広の道路を横切るような場合など、交差点が二重になっているような場合、その先の交差点の車線案内まで同時に表示してくれるため、どの車線を走ればよいかが決めやすくなっている。

交差点の車線案内は次とその次まで表示。画面地図の道路上にあるマークの色と、右上の車線表示の左端にあるマークの色を合わせている
交差点で曲がることがなくても、車線案内は表示される

 画面上の地図では、車線表示が2つ表示されるとともに、地図上に緑、オレンジのマークが表示され、次とその次の交差点の位置関係まで確認できる。さらにその先、曲がる交差点は青で表示され、曲がるまでの車線変更など一連の動きとしてイメージしやすく、スムーズな運転をサポートしてくれる。

 また、そのほか、非常に速いルート探索や、2点ドラッグや回転ドラッグができる「ダイレクトレスポンスII」を採用、便利な交差点での2画面表示などは、そのまま前モデルからしっかりと継承している。

非常に速いルート探索、離れた場所への5ルートでもあっという間に探索結果が出る
交差点では分かりやすい拡大地図を画面分割で表示

新しいストラーダとともに実際の道路へ

 新しいストラーダの概要が分かったところで、早速、新しいストラーダを搭載したクルマに乗り込み、レコーダーリンクの性能を確認、さらにドライブへと繰り出した。

 後編では、新しくなったストラーダの使い勝手などをインプレッションするのでお楽しみに。