フランクフルトショー 2017

【フランクフルトショー 2017】スマートシティのビジョンを示したアウディ会長の講演

2025年までに20を越えるEVを投入すると表明

2017年9月12日~24日 開催

アウディAG 取締役会長 兼 CEO ルパート・シュタートラー氏

 独アウディAG取締役会長 兼 CEO ルパート・シュタートラー氏は、ドイツ フランクフルト市で開催されている2017年フランクフルトモーターショー(プレスデー:9月12日~13日、一般公開日:9月16日~24日)と併催して行なわれたNew Mobility Worldの講演に登壇し、同社が考えるスマートシティ(自動化やインターネットなどの導入により進化した都市のこと)のビジョンに関して説明した。

 このなかでシュタートラー氏は「2025年までに20を越える電動化された自動車を投入する」と述べ、アウディが電動化車両(EVやPHVなど)を2025年までに20車種以上投入することを明らかにした。

 アウディが属するフォルクスワーゲングループは2025年までにグループ全体で80車種以上の電動化車両を投入するという「Roadmap E」を明らかにしており(別記事参照)、そのうちアウディは20車種以上を2025年までに発売することになる。

2050年のスマートシティで必要とされるインフラの75%は未建設、投資が必要とアウディ会長

 フランクフルトモーターショーと併催されたNew Mobility Worldは、現代の自動車の大きなテーマとなっている電動化、そしてデジタル化といった新しいテーマを扱った展示などが行なわれるイベントになっており、別記事で紹介したQualcommのような通信由来のベンダーなども参加するなど、自動車が主役のフランクフルトモーターショーとしてはちょっと毛色の異なるイベントとなっている。

 その公演に登場したのが、アウディAG 取締役会長 兼 CEO ルパート・シュタートラー氏だ。言うまでもなく、フランクフルトモーターショーが行なわれているドイツの自動車メーカーであるアウディだが、他の公演のメンバーはどちらかと言うとIT由来のベンダーという中で、自動車メーカーを代表して、デジタル化や電動化に関するビジョンを語った。

 アウディはITの取り組みに熱心な自動車メーカーとしても知られており、NVIDIAのAI技術を利用したレベル3の自動運転を実現した新型「A8」をいち早く今年発表しているし、今回のフランクフルトモーターショーのプレスデー初日に同社が行なった記者会見でもレベル3の新型「A8」、さらにはレベル4の自動運転を実現したコンセプトカーの「Elaine」の展示(発表はオート上海2017)、レベル5の自動運転を実現したコンセプトカー「Aicon」を発表している(別記事参照)。

 今回のNew Mobility Worldで行なわれたシュタートラー氏の講演では、スマートシティについてのアウディのビジョンについて説明が行なわれた。スマートシティとはICT(Information and Communication Technology、情報通信技術)を活用して、人々の生活がより便利になる都市のことを意味している。現在世界各国で、都市をスマートシティ化する取り組みが始まっており、以前はSFでしかなかった、街中で自動運転の車両が走っており、それに自由に乗れて移動できる、そういう都市作りが今後取り組まれていくことになる。

タイトル
海底に沈んだという伝説の都市国家アトランティス
2050年のスマートシティに必要なインフラの50%はまだ構築されていない

 シュタートラー氏は、古代ギリシヤの神話として知られている大西洋にかつて繁栄している都市国家でゼウスの怒りに触れて海中に沈んでしまった「アトランティス」の話から始めて、そうならないようにスマートシティを実現するにはどうしたらいいかを説明した。シュタートラー氏は「明日のスマートシティを実現するには、Quality of Life(高いレベルの生活環境)を実現したり、健全でいる必要がある。2050年に必要となる都市のインフラの75%はまだ構築されておらず、適切に投資していく必要がある」と述べ、スマートシティの実現に向けた都市インフラへの投資が重要だとした。

渋滞の1/3は駐車場を探したり、違法駐車
駐車問題を解決する必要がある
都市のビッグデータをシェアする
HEREが高精度3Dマップを提供
ゼロエミッションを実現する必要性

 その具体的な方法として「都市の渋滞原因の1/3は駐車場を探しているクルマ。これを修正する必要がある」と述べ、IoTなどを利用して駐車場をインテリジェントにしたり、それに合わせて自動駐車機能を自動車に実装するなどしてより先進的な駐車環境を実現していくべきだと訴えた。そのためには、ビッグデータのような都市に関するデータを、社会、企業、政治などが協力してシェアしていく必要があるとした。ドイツの自動車メーカーが共同で出資している地図ベンダーのHEREが高精度3Dマップを作成している例を挙げて、そこには天気や道路など様々な情報が蓄積されており、今後もそうしたデータの蓄積が重要だと述べた。

シュタートラー氏のそのほかのスライド

アウディは2025年までに20車種を越える電動化車両を投入する

 シュタートラー氏は「アトランティスが復活するにはゼロエミッション(排出ゼロ)の社会を実現しなければならない」と述べ、自動車メーカーがゼロエミッションへ取り組むことの重要性を強調した。その上でアウディがe-tronブランドで販売している電動化車両を、2025年までに20越える車種を発売すると強調した。アウディが属するフォルクスワーゲングループは2025年までにグループ全体で80車種以上の電動化車両を投入するという「Roadmap E」を明らかにしており(別記事参照)、その80車種以上のうち20車種は少なくともアウディブランドで販売されるということになりそうだ。

2025年の20車種以上の電動化車両を投入

 次いで、シュタートラー氏はAI(人工知能)に話を移し、「AIはパワフルな技術で我々の生活を変える。我々は先日レベル5の自動運転車となるアウディ Aiconを公開したが、これこそ自動車の未来だ。今は1日に1時間ドライブしているが、その1時間がほかのことに使えれば、1日25時間になったのと同じことだ」と述べ、自動運転が実現することで、ドライバーが自由に使える時間が増えることが自動運転のメリットでもあると強調した。

AIは人々の生活を変える
レベル5の自動運転を実現するAicon
1日に1時間運転に使わなくなれば
1日に25時間あるのと同じになる
Pop.Up

 その後シュタートラー氏は交通システムの未来について説明し、アウディが航空機メーカーのエアバスと共に行なっているPop.Upの研究などについて説明した。Pop.Upは、シャシーと車体部分が分離している小型自動車で、シャシーから分離した車体にドローンを取り付けてヘリコプターのように利用できる空飛ぶ自動車のプロジェクト。ドローンはレンタルで、必要な時だけオーダーする形になっており、それを利用して必要に応じて自動車として走ったり、ヘリコプターとして空を飛んだりできる仕組みだという。今後こうしたこれまでの自動車の枠に捕らわれないような自動車の可能性も追求していくとした。

シュタートラー氏のそのほかのスライド

笠原一輝