フランクフルトショー 2017
【フランクフルトショー 2017】セアト、欧州初のAmazon「Alexa」対応車を2017年末までに発売
「CESでAlexaを知ってから短期間で開発を進め、約半年で実装できた」とセアト
2017年9月20日 22:13
- 2017年9月12日(現地時間)発表
独フォルクスワーゲングループでスペインの自動車メーカーのセアトは、2017年フランクフルトモーターショー(プレスデー:9月12日~13日、一般公開日:9月16日~24日)の初日にあたる9月12日(現地時間)に同社ブースで記者会見を開催。同社が2017年末から販売を開始する予定の新型車両などを発表した。
このなかで同社は、2017年末までにAmazonのAIアシスタント機能「Alexa」を同社の「Leon」「Ateca」に搭載し、2018年にはさらに「Ibiza」「Arona」やSUVモデルなどに拡大していくと発表した。Alexaは、Amazonがクラウドベースで提供しているAIアシスタント機能で、AIによる音声認識を利用して機器を操作したり、検索したりなどが可能になるため、自動車との相性はわるくないと考えられている。9月12日の夕方より行なわれたセアトの記者説明会では、「Alexaを知ったのは今年1月のCESで、2月のMWCでAmazonとミーティングして開発を開始した。そこからあっという間に実装することができた」と説明され、非常に短期間で開発が進められたことが明らかにされた。
2017年末までに「Leon」「Ateca」にAlexaを搭載。2018年は搭載車種を拡大
AmazonのAlexaはマンマシンインターフェイス(人間と機械の接点)に音声認識を採用し、機器に人間が自然言語で話しかけると様々な操作ができる仕組みで、AIアシスタント機能などと総称されている。欧米市場ではAmazonがEcho(エコー)と呼ばれる機器を出荷しており、音声でネット検索したり、家庭にある電子機器を操作したりということができるようになる仕組み。Alexaはクラウドベース(インターネット上のサーバーにプログラムの実体があること)で提供されており、新しい機能の追加が容易であることなどから、現在ソフトウェア開発者などがアプリケーションを提供するようになっているなど、次世代のデジタル機器のプラットフォームとして期待されている。特に1月に開催された世界最大の技術展示会「CES」では、Alexaやその対抗となる「Google Home」、Microsoft「Cortana」などが非常に大きな注目を集めた。
AlexaのようなAIアシスタント機能は、音声認識を利用してネット検索や機器の操作が可能になる仕組みであることから、自動車との相性もいいと考えられており、自動車メーカーがこうしたAIアシスタントを自動車に組み込む動きが加速している。CESでは日産自動車がCortanaを搭載することを発表して注目を集めた。Alexaにも多くの自動車メーカーが注目している状況で、今回のフランクフルトモーターショーでは、セアトがAlexaを順次同社のラインアップに搭載していくと発表した。
セアトによれば、Alexaは2017年末までにLeonとAtecaに、2018年にはIbiza、AronaやSUVモデルなどに搭載していく。すでにセアトは自社の車載情報システム(IVI)に音声検索システムを搭載しており、今後はそれを順次Alexaに置き換えていくものとみられている。会場に展示されているセアト車のハンドルには音声認識用のボタンが用意されており、これを押すと現在はセアト独自の音声検索機能が立ち上がるが、Alexa搭載後にはこれがAlexaのボタンになると考えられる。
CESでAlexaの盛り上がりを見て採用を検討。MWCで採用を決定してから半年で実装
9月12日の夕刻には、セアト 研究開発担当副社長 マティアス・ラーベ氏、Amazon Alexa担当副社長 ネド・キューリック氏により、両者の提携に関する記者説明会が行なわれた。
このなかで、セアトのラーべ氏は「デジタル化は自動車メーカーが直面している最大の課題。現在自動車業界のトレンドは電動化、自動化、新しい形の交通システム、そしてコネクテッドカー。とくに若い顧客はコネクテッドカーの実現を望んでおり、自動車はこれまでクローズな形での開発だったが、今後はインターネットに対してオープンな開発をしていかなければならない」と述べ、セアトやフォルクスワーゲングループはそうしたデジタル化に全力で取り組んでおり、携帯電話回線の自動車への標準搭載にも取り組んでいると説明した。その上で「デジタル化で重要なのは優れたユーザー体験を提供することで、Amazonはその上で完璧なパートナーだ。Alexaのフル機能を実装していき、将来的にはAlexaをクルマの操作にも使えるようにしていきたい」と述べた。
Amazon Alexa担当副社長 ネド・キューリック氏は「元々はスタートレックの世界を実現しようとして始めたプロジェクト。その“Computer”はクラウドだろうと考えて、この数年開発を続けてきた。我々は、クラウドベースの音声認識サービスで音声は次世代のメジャーなユーザーインターフェイスになると考えていて、現在多くの開発者がアプリケーションを開発しており、Amazonはツール、API、ドキュメントを提供して開発者が開発しやすいようにしている。Alexaにより自動車がもっと適応性を持つようになり、より自然に活用できる。地図のスケールを音声で変更したり、音声でレストランを探したり、ガレージの扉を音声で開けたりということが可能になる」と、Amazonが自動車でのAlexaの可能性に期待しているとアピールした。
その後、セアト CDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)ファビアン・シンマー氏が加わり、質疑応答が行なわれた。シンマー氏によれば「Alexaをクルマに実装するのは、さほど難しいことではなかった。今年のCESでAlexaは自動車にとって重要だと気付いて、MWCでAmazonと話をしてそこから実装を開始した。クラウド側で我々の車載情報システムとどうやって適合させるかが課題で、そこに注力して開発した」と述べ、1月のCESで採用を検討し、2月末に行われたAmazonとのミーティングで採用を決定し、そこからわずか半年程度で発表までこぎ着けたという。通常、自動車メーカーがこうした機能を実装するには採用を決めてから数年かかることを考えると、驚くほどのスピードで実装したと言っていいだろう。
また、セアトのラーべ氏は「今はスタート地点に立っているに過ぎない。現状では音声検索ぐらいだが、例えば自動車に多くあるボタンをAlexaで置き換えることができるようになるなど、多くのアイディアがある。その意味で非常にエキサイティングな取り組みだと評価している」と述べ、窓やエアコンの制御など現在自動車に用意されている多数のボタンをAlexaで置き換えていくことが可能になると述べた。