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コンチネンタル、スマホやクラウドとクルマを連携させる「アクセス制御システム」記者説明会

スマホを使ったドアキー操作やカーシェアリングアプリなどを紹介

2016年7月12日 開催

 コンチネンタル・オートモーティブ・ジャパンは7月12日、快適で安全な車両アクセスを実現する「アクセス制御システム」の技術や最新動向などを紹介する記者説明会を開催した。

 コンチネンタルは世界有数のキーレスアクセス制御システムのサプライヤーの1社として、現代の車両の利便性と安全性の向上に役立つ革新的な技術を開発している。その技術は、新しい快適性機能、個人設定の可能性、高度な車両アクセスの安全性、安全なデータ転送、柔軟な拡張の可能性などを持ち、より便利な車両アクセスの実現に貢献しているという。

2015年実績では3000万以上のキー用エレクトロニクスを提供

独コンチネンタル AG ボディ&セキュリティ事業部長 アンドレアス・ヴォルフ氏

 記者説明会ではドイツから来日した独コンチネンタル AG ボディ&セキュリティ事業部長であるアンドレアス・ヴォルフ氏から、まずコンチネンタルの概要や事業部の戦略についての説明が行なわれた。

 ヴォルフ氏は「コンチネンタルはタイヤメーカーとして認識されているが、実際に昨年のセールスにおいてタイヤは26%。シャーシ&セーフティー、エンジン制御やHEVなども含むパワートレーン、そしてITS関連テクノロジーも含むボディ&セキュリティを合わせると、売り上げの60%はオートモーティブとエレクトロニクス部門で構成されている」と、2015年の売り上げ構成比率について解説。さらに5つの部門に分割されており、「今日はアクセスシステムに関する解説が主になるが、それを担うボディ&セキュリティ ビジネスユニットはインテリア部門に含まれている。ドライバーへのインフォメーションを与えるディスプレイ、ラジオ、マルチメディアシステム、テレマティックス、ボディコントローラー、ゲートウェイ、ドアハンドル、アンテナ、タイヤの情報システム、バーチャルキー、シートコントロール、多機能スマートフォンターミナルなどもボディ&セキュリティ ビジネスユニットのプロダクトである」とコメントした。

オレンジの部分がオートモーティブ(エレクトロニクス含む)、黒の部分がタイヤとコンチテックの製品(空港内などのベルトコンベアシステムなども含む)。タイヤは全体の売り上げでは26%ほど
コンチネンタルは大きく分けると5つの部門に分割することができることを示すスライド
ボディ&セキュリティ ビジネスユニットが含まれるインテリア部門を分割して解説。ドライバーに各インフォメーションを伝えるディスプレイや、インフォティメント&コネクティビリティについてはラジオ、マルチメディアシステム、テレマティックスが含まれているだけでなく、ボディコントローラーやゲートウェイ、ドアハンドルやアンテナ、タイヤの情報システム、内装ではスマートフォンを使ってクルマにアクセスするバーチャルキーやシートコントロール、多機能スマートフォンターミナルや、さまざまなプラスチック部品などを使用し、機能を完全化しているという
アクセスコントロールシステムについては、その種類と現在までの流れについて説明。「コンチネンタルは車両アクセス、スタートシステムサプライヤーの主要ベンダーの1社。昨年実績では3000万以上のキー用エレクトロニクスを提供した」と話す
「ボディ&セキュリティ ビジネスユニットの売り上げはアジアが1位なので、日本のお客様に力を入れている。日産、ホンダ、マツダ、三菱自動車などにプラットフォームを提供している」と、アクセスシステムに関する事例も提示。ルノー・日産アライアンスとの関係や、BLRCシステム(US市場向け双方向中距離キー)でホンダとともにオートモーティブニュースのイノベーションパートナーアワードを受賞したことも重要なポイントとしてアピールする

コンチネンタルのエキスパートが製品・技術に関して解説

独コンチネンタル AG ボディ&セキュリティ ビジネスユニット アネッテ・へブリング氏

 続いて、コンチネンタルの車両アクセス・認証システムの概要について、ボディ&セキュリティ ビジネスユニットのアネッテ・へブリング氏から解説された。まずへブリング氏は「コンチネンタルは1994年にイモビライザーを市場投入し、素晴らしいカーセキュリティをエンドユーザーに提供した。その後に最初のPASE(Passive Start and Entry)システム、双方向システム、1kmまでカバーできる中距離システムを開発したあと、2013年に最初のPASEシステムに基づいた第4世代のPASEシステムを開発した。そして2018年に第5世代のPASEシステムを投入していく。クルマの鍵やレシーバーはもちろん、アンテナモジュールやイモビライザー、NFC(近距離無線通信)のトランシーバー、コントロールモジュールなども必要」と語り、コンチネンタルの車両アクセス・認証システムの歴史と必要なデバイスについて説明した。

第5世代のPASEシステムに必要となるデバイスの概略図と、車両アクセス・認証システムについてのニーズを調査したグラフ。「ハンドレスなものがどんどん普及してきているし、エンドユーザーにもニーズが高い」とへブリング氏はコメント

 へブリング氏は「PASEシステムはエンドユーザーに快適性を提供するものであり、シームレスに機能するもの。技術的な障壁も低くなっており、いちいちなにが起こっているのかをユーザーは気にする必要もないし、具体的に特別なハンドリングも必要ないばかりか、OEM先に対してもコストは安価になる」と話したあと、「まずキーを持つが、キーは手に持つ必要はなく、ボタンを押す必要もない。クルマとキーがRF(高周波)とLF(長波)で通信し、キーがクルマの中にあるのか外にあるのかも判別する。近づけばドアロックは解除され、キーを持ってクルマに乗り込めばエンジンをスタートすることができる。キーを持って9m以内に近づくとウェルカムライトが点灯する機能もあり、暗闇でも容易に自分のクルマを見つけられる。そしてシートやミラーのポジションを個人設定に合わせて調整するので、クルマに乗り込めばすぐにスタートさせることができる。そしてキーを持ってクルマから降り、ドアを閉めて離れれば、ドアは自動で施錠される」と、PASEシステムの機能について解説。

PASEシステムの機能について解説するスライド。キーを持っていてクルマに乗り込もうとすれば、ドライバーが特に操作をすることなくクルマをスタートさせられる状態にしてくれる
へブリング氏によるPASEシステムのデモンストレーション。近づくだけでドアロックが解除され、キーがクルマの中にあるのか外にあるのかも判別可能
「ダイナミックローカライゼーション機能」について解説するスライド

 トランクオープンの機能については「ユーザーの両手が荷物でふさがっている際には、キーの動き方によって解錠が可能。バンパーの静電センサーも必要なくなった」ともコメントしている。さらに「ダイナミックローカライゼーション機能」では、クルマに対してのキーの移動とステップを測定し、乗り込む意思がないと判断した場合には施錠したままで、乗り込もうとしていると判断した場合は解錠することが可能とのことだった。

アクセスシステムに関するスライド。RF/LFによる動作をクラシックアクセス、ゲートウェイキーが介在しスマートデバイスや既存のRF/LFも活用できる動作をトレンドアクセスとして、スマートフォンから充電して利用できるシャドーキーや、ブレスレッド形式などのウェアラブルキーも紹介。次のステップである「コンチネンタルスマートアクセス」ではBLE(省エネ規格:Bluetooth Low Energy)とNFCを活用。バックエンドから有効な仮想キーをスマートデバイスに送ることで、クルマとスマートデバイスが通信する動作を可能とする
「コンチネンタルのCoBePa(コンチネンタル バックエンドプラットフォームの略称)がクラウド対応のキー。エンドユーザーは自分のクルマの仮想キーをスマートデバイスに受け取ることによって、システム全体が機能することになる。まもなく第1バージョンが市場投入される予定」とへブリング氏は今後の展開についても解説
施錠状態を示す赤い照明から、ブレスレッド状のキーを近づけることで解錠し、緑色の照明に切り変わったことを紹介するデモの様子

 また、コンチネンタルのスマートアクセス「OTA Keys」については、ボディ&セキュリティ ネットワークデバイス製品グループのマネージャーである松本浩幸氏から解説が行なわれた。

「OTA keysは、コンチネンタルとベルギーの自動車サービスグループのディーテラン(D'leteren)が、カーシェアリングサービスの開発、機器の提供のために作った合弁会社。OTA Keysは車載機からバックエンドサーバー、モバイルフォンのアプリケーションまで含め、カーシェアリングサービス事業者に対し、モバイルフォンのネットワークを通じて鍵を配信するシステムが提供できる。追加機能として、クルマの情報をサーバー側で入手することも可能」と松本氏は解説する。

 OTA keysによるカーシェアリングの利用方法については、AppStoreやGoogle PlayからスマートデバイスにOTA keysのアプリをダウンロードし、IDとパスワードを入力してログイン。アプリを起動して利用予約を行ない、予約時刻にクルマの解錠やエンジンスタートが行なえる鍵をネットワークを介して入手してチェックインする。カーシェアリングを終えるときに鍵をリリースすることでチェックアウトになるので、分単位でのカーシェアリングの課金も可能になるとのこと。また、使用中に車両に損傷が生じてしまった場合などにサーバーに画像を送信する機能などもアプリに備えられていた。

OTA Keysの概要と、カーシェアリング「SMART MOBILITY」の具体的な操作に関するスライド

 ハードウェアについては、メインユニットとなる車載器「OBU(ONBOAD CONNECTIVITY UNIT)」を、クルマ側のOBDコネクターに接続することで電力が供給され、クルマ側のネットワークとコミュニケーションを取って利用開始が可能。3Gモデムもユニットに含まれており、ファームウェアのアップデートなども行なえるとのことだ。また、スマートフォンなどとの接続では超低消費電力のBLE(Bluetooth Low Energy)を使う。GPSモジュールも内蔵し、3G通信を利用して車両位置などを定期的にサーバーにアップロードすることも可能となっているので、カーシェアリングやカーレンタルを手がける事業者が、自社のクルマの所在地を明確に把握できるという。さらにRFIDやNFCを使ってクルマにアクセスしたり、オプショナルユニットの「BADGE READER」にはLEDを備え、現在のステータスを確認することも可能。インストールはメインユニットにケーブルを繋ぐだけと解説された。

車載コンポーネントに関する解説。「NFCは通信距離が短いので、オプショナルユニットの『BADGE READER』は、窓のところに装着して車外からタッチできるように配置する必要がある」とのこと。ソフトウェアにはカーシェアリングでの利用時に必要な機能が備えられており「フリートマネージメントについても対応可能」と解説された
「スマートデバイスの利用は解錠や施錠、エンジンのスタートがメインになる。BLEとNFCはスマートフォンに搭載されている機能だが、カードなどでRFIDを用いての制御も可能。オプショナルユニットのBADGE READERが必要になるが、カードであれば電池も不要であり、カーシェアリング事業者のカードでもサービスを行なうことが実現可能になる」とコメント。カーシェアリング以外にフリートマネージメントでも利用できるという

 ソフトウェアについては「iOS SDKとAndroid SDKを用意しているので、事業者側で必要なアプリを開発することが可能。バックエンドと繋がるときのAPIもPUSH ENGINEとして用意している」と自由度の高さをアピールし、「アプリとしては、予約やブッキングマネージメント、解錠&施錠、利用前に車両のダメージをチェックしてサーバーに画像送信する機能などをあらかじめ実装している」とのこと。また「アプリやSDKなどが用意され、簡便ですぐにビジネスをスタートさせることが可能なので、すでにフランス、ドイツ、スイス、オランダで、いくつかの事業が行なわれていることに加え、2016年にも多くのビジネスのスタートが期待されている」と松本氏はコメントしている。

松本氏によるOTA Keysのデモンストレーション。スマートフォンで車両情報を確認して利用予約。マップで場所の確認も行なえ、チェックインすることで解錠やエンジンをスタートが可能になる。フロントウィンドウ内側のユニットは、オプショナルユニットのBADGE READER