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BMW、“トヨタFCスタック”搭載の「5シリーズ グランツーリスモ燃料電池車プロトタイプ」公開
「FCVの市場導入目標は2020年」とパワートレーン研究部門執行役員 マティアス・クリーツ氏
2016年9月27日 00:00
- 2016年9月26日 開催
ビー・エム・ダブリューは9月26日、東京 お台場の臨海副都心地域にあるBMW&MINIブランドの体験型販売拠点「BMW GROUP Tokyo Bay」センター棟・コンファレンスホールで、研究開発中の「5シリーズ グランツーリスモ」をベースとした燃料電池車(FCV)プロトタイプを公開。合わせて記者会見が行なわれ、独BMW グループ リサーチ 新技術研究本部 パワートレーン研究部門執行役員のマティアス・クリーツ氏がプレゼンテーションを実施した。
2020年のFCV市場導入を目標に開発中
この記者会見は、開催に先立つ9月24日~25日に日本国内で「G7 長野県・軽井沢交通大臣会合」が実施され、独BMWはFC(燃料電池)システムで共同開発を行なっているトヨタ自動車とともにFCVの車両展示や技術解説などを実施。このために来日したクリーツ氏など同社でFC関連を担当するエンジニアが、より広くBMWグループが取り組んでいるFCVや環境技術などについて説明するために用意された。
プレゼンテーションの冒頭でFCVについての概要などを説明する動画を紹介したクリーツ氏は「私どもは、パリで2015年に開催された国連気候変動会議(COP21)の場で、とても大事なミーティングを行なわせていただきました。BMWグループは運輸部門の脱炭素化を積極的に推し進め、すべてのエネルギー消費部門のCO2排出量を大幅に削減し、2020年までにCO2排出量を40%下げるということで合意しております。さらに将来的にはCO2排出量を80%以上下げる計画で、これらは2020年、2050年などをめどにした内容ですが、自動車業界にとっては2050年というのも明日と言うことに等しい期間なのです」と語り、将来的なCO2排出量削減に向けて活動していることを紹介。
さらにクリーツ氏は、ドイツ国内で2050年までの期間に達成することが決められている「気候保護計画2050」について紹介し、これからドイツでは基本的に運輸業界で化石燃料から脱却することが計画されていると解説。これに適合していくため、BMWグループではバッテリー式のEV(電気自動車)である「BEV」と、FCシステムを搭載する「FCEV」の2種類を用意。小型車や中型車に適したBEVは日々の通勤や都市間の移動に理想的な乗り物であり、再生可能な方法で発電した電力をそのまま使用。大型車に適したFCEVは長距離の移動を視野に入れた乗り物となり、再生可能エネルギーを水素に変換して活用することを想定している。
このFCEVとして研究開発を進めている5シリーズ グランツーリスモをベースとした燃料電池車プロトタイプは、現時点で0-100km/h加速8.4秒、最高速180km/hを実現。できる限り長い航続距離を手に入れるべくさまざまなタンクシステムの開発に力を注いでおり、会場では例として700BARのCGH2(圧縮水素)、350BARのCcH2(極低温圧縮水素)について紹介。それぞれについてスウェーデンにおける-20℃での極寒テスト、南アメリカにあるテストコースでの35℃以上の状況における酷暑テストを行ない、日常的な使用での実用性を実証したと語っている。
一方で、現状では水素の供給インフラが不十分で部品コストもまだ高いため、FCEVは顧客にとって価値があり、経済的にも生産的なクルマではないと分析。この問題解決のためトヨタとの提携が重要な点になると語り、この協業が水素燃料電池技術の市場における成功、推進を目標としていると述べ、現時点では水素燃料電池の日常的な利便性を周知していき、将来的な見通しとして「2020年には燃料電池車の導入が可能になるよう開発を進め、(トヨタと)水素システムへの転換、水素インフラの整備、標準化における協力を行なっていきたい」とした。
プレゼンテーションの終了後にクリーツ氏は、展示された燃料電池車プロトタイプを使って技術解説を実施。車両のボンネット下に、エンジンの代わりにトヨタが開発した「トヨタFCスタック」を搭載しており、自社製の水素タンクを車両中央のキャビン下に縦置きレイアウト。駆動用モーターやバッテリーも自社製で、後輪軸重上のラゲッジスペースに重ねて配置しており、これによって水素を活用した“ゼロ・エミッション走行”が可能になることと同時に、従来型の乗用車と同じく4人の乗員が快適にすごせるキャビンスペースを両立していることを強調した。