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日産&NISMO、参戦ドライバー&監督のトークショーも行なわれた「2017年モータースポーツ活動計画」発表会

SUPER GT参戦車の「MOTUL AUTECH GT-R」2017年仕様のカラーを初公開

2017年2月19日 開催

2017年仕様のカラーリングを施された「MOTUL AUTECH GT-R」

  日産自動車とNISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)は2月19日、神奈川県横浜市にある日産グローバル本社で「2017年のモータースポーツ活動計画」発表会を行なった。会場は日産グローバル本社の1階にあるギャラリー。この発表会は一般来場者も自由に観覧できるようになっており、熱心なファンが朝早くから詰めかけた。

ステージ上にMOTUL AUTECH GT-Rと「B-MAX NDDP GT-R」の2台のGT-Rレースマシンを展示
2017年シーズンのSUPER GT GT500クラスに参戦するMOTUL AUTECH GT-R。2017年仕様のカラーリングは初お披露目となった
2016年シーズンと同じGT-Rをベースとする車両だが、GT500クラスの新規則「トータルダウンフォース25%削減」に則っており、ボディにはさまざまな変更が実施されている
同じく2017年シーズンのSUPER GT GT300クラスに参戦するB-MAX NDDP GT-Rも展示された。こちらも2017年シーズンの参戦仕様
MOTUL AUTECH GT-Rと同じGT-Rをベースとする車両だが、こちらはFIA GT3という規格に準拠したマシン
ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル株式会社 代表取締役社長 兼 最高経営責任者 片桐隆夫氏

 まずはNISMOの片桐隆夫社長から、2017年のモータースポーツ活動についての発表が行なわれた。片桐社長は冒頭「私は昨年の4月にNISMOの社長に就任いたしまして、ファンのみなさまの熱い応援をいただきながら各チームとともに戦ってまいりました。SUPER GTのGT500クラスではあと一歩のところで3連覇を逃し、大変悔しい思いをしました。ただ、一方でこのGT500クラスにおいては8戦中5勝という素晴らしい結果を残せています。また、カスタマーレーシングの分野においてはGT3でも、あるいはNISMOのレース用エンジンを供給しているLM2、LM3といったカテゴリーでも、カスタマーチームが日本、および世界各地のレースで数多くの勝利を獲得していただけました。このような結果を残せた2016年においては、ファンのみなさま、スポンサーのみなさまのご支援、応援に深く感謝いたしますとともに、日産、NISMOのレーシングDNAを引き継ぎながら、今年も日産、NISMOに勝利をもたらすべく、各チームと挑戦してまいりたいと思います」と、2017年のレースシーズンに向けた抱負が語られた。

 続けて2017年の日産&NISMOのモータースポーツ活動の内容について紹介があったが、これに関しては2月17日の記事でも紹介しているので、そちらを参照していただきたい。

SUPER GT、およびカスタマーレーシング GT3プログラムの布陣
SUPER GT以外にも、ブランパンGTシリーズやスーパー耐久シリーズに参戦する
2018年シーズンに向けて「GT-R NISMO GT3 エボルーション車」の開発が開始されることも発表された。開発ドライバーは柳田真孝選手とミハエル・クルム選手が担当
NISMOのエンジンサポートプログラムについての紹介
ドライバー育成プログラムについての紹介
オーストラリアで最も人気があるスーパーカーズチャンピオンシップに参戦する日産 アルティマとドライバーの紹介
発表会では日産系チームの総監督である田中利和氏をはじめとしたSUPER GT、スーパー耐久シリーズに参加する各チームの監督とドライバーが紹介された
会場に集まったファン向けの撮影会も開催。シーズン中は厳しい表情になる監督やドライバーだが、この日はリラックスしたムードで笑顔が多かった
「GT500監督トークショー」

 発表会に続いて「GT500監督トークショー」が開催された。参加したメンバーは総監督の田中利和監督、NISMOの鈴木豊監督、TEAM IMPULの星野一義監督、KONDO Racingの近藤真彦監督、MOLAの大駅俊臣監督の5人だ。

 トークショーはまず、田中総監督から2017年仕様のニューマシンについての話題から始まった。

 田中総監督は「2014年から始まった規則が2016年まで続いてきました。この規則では車体にドイツのDTMと共通のモノコックを使い、それに加えて新しい空力のルールも取り入れられました。あと、エンジンが直噴の2.0リッター4気筒ターボに統一されたことも以前のクルマと比べて大きな変更点でした。この新しい規則の下でいいクルマを作ることで各メーカーがしのぎを削った期間でしたが、そのなかで日産は昨年こそ、残念ながらチャンピオン獲得を逃しましたが、8戦中5勝を上げています。それに2014年、2015年はチャンピオンを獲るという結果を残していますので、2014年からの規則に非常に上手く対応できていました」。

「そして2014年から2016年までの規則をベースに、さらに進化させた2017年からのものになるわけですが、大きなポイントは2点あります。1つは空力に関することです。空気の流れによってクルマを路面の押さえつける力のダウンフォースに関して、従来より25%削減されました。もう1つはエンジンに関してです。これまでは年間を通じて使用できるエンジンが3基となっていましたが、今年からは2基のエンジンで戦わなくてはいけないことになりました。こういった変更に合わせるため、各メーカーのエンジニアは重箱の隅をつつくような細かいことを積み上げていくクルマ作りをしています。我々日産勢も、開幕のギリギリまで開発をしていきます」と語られた。

左から総監督の田中利和監督、NISMOの鈴木豊監督、TEAM IMPULの星野一義監督、KONDO Racingの近藤真彦監督、MOLAの大駅俊臣監督

 これについて、マシン開発も担当している鈴木監督から「開発陣にとってはハードルの高い内容です。とくにダウンフォースが25%削減されるとコーナーリングスピードが遅くなってしまうので、それをいかに去年のレベルまで取り返すかということをやっています。ただ、この点も順調に進んでいて、マレーシアのセパンサーキットでのテストでは去年より2~3秒速いタイムが出ています。まあ、このサーキットは路面改修を行なっているのでその影響もあるでしょうが、新しい規則に沿いながら、速さに関してはかなりリカバリーされてきています」とコメントされた。

 さて、この規則の変更についてだが、そもそも速さを競い合うレーシングカーにおいて、速さを抑える規則は進化とは真逆のことになる。これについて田中総監督は「レギュレーション改正を行なわないとクルマはどんどん速くなってしまいます。もちろん、速くなることはいいことなのですが、レースは安全が確保されたうえで開催するのが大前提です。安全確保された環境で全力を出すという面から、クルマの進化スピードを抑える必要があるのです。こういうことから、ダウンフォースを減らすとかエンジンの使用数に制限を付けるのです」と補足説明を行なった。

 なお、規則ではエンジンの出力を制限する方法として、エンジンに送る燃料の量を規制する項目がある。これによって少ない燃料でパワーを出す技術が発展するのだが、こういった技術は市販車にも生かされるので、時代に合った規則を取り入れることはモータースポーツの安全面を確保するとともに、市販車に向けた技術をフィードバックすることに貢献しているということも説明された。

監督同士のトークショーらしく、冒頭から専門的な話が展開された。司会進行はレースアナウンサーの辻野ヒロシさん(左)
田中総監督からは2017年の主な車両規定と対応状況が説明された
マシン開発を担当している鈴木監督からも、2017年仕様車の仕上がりについて話があった。セパンサーキットでのテストでは、すでに2016年のマシンより2~3秒速いタイムを出しているという
ちょっと固い雰囲気だった会場を一気に和ませてくれたのが星野監督。トークの最中は終始笑顔。シーズンが始まるとあまり見られない表情だ。ほかの監督の発言にも星野監督の経歴やエピソードが盛り込まれるなど、いつも話題の中心にいる存在感を見せた

 次に話題を振られたのはTEAM IMPULの星野監督だが、星野監督は開口一番「みなさんを前にしてレギュレーションの話はつまんないでしょ」と切り出し、場内で大きな笑いが起きた。この星野監督のひと言で会場の雰囲気は一変。ステージ上にいるチーム監督と客席のファンという距離感がグッと縮まったように感じた。

 司会の辻野ヒロシさんから、改めて星野監督にも新しいクルマについて質問が投げかけられたところ「いや、正直なところいろんな問題はありますよ。でも、さっき鈴木監督が言っていたダウンフォースの削減やエンジン規制などもあって、そのなかで戦わなければいけないのですから、やるしかないですね。ただ、去年は最高のドライバー、マシンのポテンシャルがあったけど、それでもチャンピオンを取れなかったんです。それくらいSUPER GTで勝つことはすごく難しいということだよね」。

「ボク的にはいい状態だった日産系チームからチャンピオンが出ると思っていたのに、そうではなかった。つまり、チャンピオンを獲るためにはなにか大事なことがあるのだと思うけど、それがなにか今でも分からない。だから今年はあれこれ言うのでなく“男は黙って勝負する”で行こうと思うんですよ。毎年、『チャンピオン目指して頑張ります』なんて言っているのがイヤになってきちゃったよ」とかなりのぶっちゃけトーク。これに対して会場は星野監督の発言を追いかけるように笑いが出て、最後は大きな拍手が涌いた。

 そんな和んだ雰囲気のなか、続けて近藤監督が発言。近藤監督からは新しいレギュレーションに対して、チームが使用している横浜ゴムのタイヤ開発が好調であることが語られた。これに関してマシン開発を担当する鈴木監督も「公正な目で見て、KONDD Racingさんがいちばん仕上がりがいいと思います」と語り、この発言に対して会場から「ほ~」という感嘆の声が上ったが、近藤監督は「そういうこと言うと星野さんの機嫌がわるくなるからやめて下さいよ~」とおどけてみせていた。

 続いて発言した大駅監督は、大駅監督のチームであるMOLAはまだ今年のマシンのシェイクダウンが済んでいないということだが「みなさんがテストして得たよいところを、全部取って走り始めます」と笑顔で語った。

「ドライバー時代の星野監督のかっこよさに憧れてレースの世界に入った」とレースを始めたきっかけについて語った近藤監督
TEAM IMPULでメカニックをしていた経験もあるという大駅監督。「星野監督は怖いことはことは怖いですが、レースのことは常に真剣で尊敬できる」とコメント
レーシングチームの監督というと、シーズン中は厳しい表情になる立場なので近寄りがたい存在のように思えるが、気さくで楽しい一面も見られたトークショーとなった
「GT500ドライバーズトーク」

 大盛り上がりとなった監督トークショーの次は、GT500ドライバーによるトークショーを開催。ステージにはNISMOの松田次生選手とロニー・クインタレッリ選手、TEAM IMPULの安田裕信選手とヤン・マーデンボロー選手、KONDO Racingの佐々木大樹選手とジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手、MOLAの本山哲選手と千代勝正選手の8名の選手が登場した。

8名の日産系GT500ドライバーが勢ぞろいしたトークショー

 こちらもまずはニューマシンの印象から始まったが、総じて「いい」とのコメントが返ってきた。とくに今シーズンからGT500クラスにステップアップすることで注目のマーデンボロー選手は「とても速いクルマなのでワクワクしています。エンジン特性も自分の好みに合っていて楽しい」とコメントした。また、調子がいいと言われているKONDO Racingのオリベイラ選手も「マレーシアでテストしたのですが、とてもいい印象を受けました。タイヤに関して去年の実績もあるだけに、今年はチャンピオンを狙える状況にあるのではないでしょうか」とのことだった。

 ドライバーのトークショーではレース関連の話はほどほどで終了し、裏話的な話題やプライベートなことなどの話題が中心となった。さらに、司会の質問に対して各選手がパネルに回答を書いて発表するというパネルゲームも実施。ここではユーモアに富んだ答えが出るたびに会場が笑いに包まれた。

カーナンバー23 MOTUL AUTECH GT-Rの松田次生選手(左)とロニー・クインタレッリ選手(右)
カーナンバー12 カルソニック IMPUL GT-Rの安田裕信選手(左)とヤン・マーデンボロー選手(右)
カーナンバー24 フォーラムエンジニアリングADVAN GT-Rのジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手(左)と佐々木大樹選手(右)
カーナンバー46 S Road CRAFTSPORTS GT-Rの本山哲選手(左)と千代勝正選手(右)
「レーシングドライバーという仕事ならではの困ったこと」という質問について、本山選手(中央)は体型にフィットするフルオーダーのレーシングスーツを着ることから「太れない」ということを挙げた
安田選手はバックしての車庫入れが苦手とのこと。星野監督を乗せて移動したときも、よし!と思った駐車なのに斜めになっていたと語る
佐々木選手はドライバー的な習性としてやりたくなることについて「信号でスタート練習をしたくなる」と回答。「もちろんやりませんが」と念押しするが、松田選手から「GTはローリングスタートじゃん」とツッコミが入る
パネルゲームで目立っていたのはクインタレッリ選手。レーシングドライバー的な習性は?という問いかけに「負けず嫌いなところ」を挙げ、今回メンバーでいちばん女性にモテそうな人というお題には、松田選手の似顔絵を描いて回答。レーシングドライバーにならなかったらなにになっていた?という質問には、母国イタリアの人気スポーツであるサッカーの選手と回答
「GT3グローバル・トーク」

 次にステージに登場したのは、SUPER GTのGT300クラスに参戦するNDDP RACINGの長谷見昌弘監督、ドライバーの星野一樹選手と高星明誠選手。そしてヨーロッパで開催されるブランパンGTシリーズに参戦する千代勝正選手、スーパー耐久シリーズのST-XクラスにKONDO Racingから参戦する藤井誠暢選手。さらにGT-R NISMO GT3エボルーション車の開発ドライバーのミハエル・クルム選手というメンバー。今年が最後となる現行モデルのGT-R NISMO GT3のこれまでの印象と今年の抱負が語られた。また、長谷見監督からはドライバー育成についての思いも解説されている。

2018年にGT-R NISMO GT3の“エボルーション車”が登場する予定になっているので、現行モデルのGT-R NISMO GT3にとって最後のシーズンとなる。長谷見監督や各ドライバーからはレースにおける思い出などが聞けた
NDDP RACINGの長谷見昌弘監督
NDDP RACINGのB-MAX NDDP GT-Rをドライブする星野一樹選手
NDDP RACINGのB-MAX NDDP GT-Rをドライブする高星明誠選手
ブランパンGTシリーズに参戦する千代勝正選手
スーパー耐久シリーズのST-XクラスにKONDO Racingから参戦する藤井誠暢選手。2016年のシリーズチャンピオンだ
GT-R NISMO GT3エボルーション車の開発ドライバーを務めるミハエル・クルム選手

 13時から始まった発表会&トークショーは、SUPER GT開催時に開局している「ピットFM」とグローバル本社で開催しているパブリックビューイングの紹介を実施。最後に参加した監督やドライバーなどの登壇者全員と来場したファンがステージ上でハイタッチする「ハイタッチイベント」で締めくくられた。

SUPER GT開催時に開局しているピットFMと、グローバル本社ギャラリーで行なっているレースのパブリックビューイングについて紹介
開始から約3時間半という長いイベントだったが、最後まで座席は満席。立ち見も出るという盛況となった。最後のハイタッチイベントもファンによる長蛇の列ができた