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「Intel 5G Mobile Trial Platform」がノンスタンドアローン5G NRに対応した第3世代に進化

自動車メーカーなどが2020年の5G NR立ち上げに向けて開発可能に

2017年9月7日(現地時間)発表

クルマのトランクに搭載されてデモが行なわれた第2世代のIntel 5G Mobile Trial Platform(2月にスペインで開催されたMWCで撮影)

 半導体メーカーのインテルは9月7日(現地時間)、同社が通信キャリアや自動車メーカーなどに提供している5Gの開発プラットフォームとなる「Intel 5G Mobile Trial Platform」を第3世代に進化させ、3GPP(通信規格の標準を決める標準化プロジェクト)で仕様の策定が進んでいる次世代高速通信規格の「5G」(ファイブジー、第5世代移動通信システム)のノンスタンドアローン NR(New Radio)スタンダード(ノンスタンドアローン5G NR、従来のLTEなどと協調して動作する5Gの方式)に、今年の第4四半期から対応させることを明らかにした。

 インテルによれば、ノンスタンドアローン5G NRに対応した5G開発キットを出荷するのは業界初で、これにより、2019年にも登場が予想されるノンスタンドアローン5G NRに対応した機器の開発が進むことになりそうだ。

2019年~2020年に登場が予想されているノンスタンドアローン5G NRベースの5G対応機器

 2019年~2020年と予想されている5Gに対応した機器の登場に向けて、通信業界やデバイス業界では5G対応機器の開発が進んでいる。5Gではミリ波(28GHz以上)などの超高周波数帯なども通信に利用することが可能になっており、6GHz以下(サブ6GHz)の現行の帯域と合わせて活用することで、帯域幅を大幅に高め、レイテンシ(遅延)を大幅に削減することが可能になる。このため、常にクラウドサーバーと協調して動かなければいけない自動運転車、IoTなどに必要とされており、自動車業界からも大きな注目が集まっている。

 そうした5Gの導入に向けて、通信規格を話し合って決定する3GPPというプロジェクトにおいて、5Gの標準規格策定の話し合いが進んでいる。現在は「3GPP Release 15」という最新の規格のなかで、ノンスタンドアローン5G NRと呼ばれる仕様の策定が進んで最終段階になっている。

 このノンスタンドアローン5G NRは、5Gでサポートされる新しい無線を、従来からあるLTEなどとセットにして稼働させる仕組みのことで、5Gのネットワークが独立して稼働するスタンドアローン5G(2018年中に標準規格を策定予定)に先行して仕様策定されており、2019年~2020年には対応製品が登場する見通しとなっている。つまり、2020年の東京オリンピックあたりで日本にも登場すると考えられている5G対応の通信機器は、このノンスタンドアローン5G NRに対応した機器になると予想されている。

ノンスタンドアローン5G NRに対応した第3世代Intel 5G Mobile Trial Platformを第4四半期から提供開始

Intel 5G Mobile Trial Platformの概要(出典:Intel 5G Mobile Trial Platform update、Intel Corporation)

 今回、インテルが発表したIntel 5G Mobile Trial Platformの第3世代は、このノンスタンドアローン5G NRに対応している。

 Intel 5G Mobile Trial PlatformはインテルのFPGA(Field Programmable Gate Array)とCore i7プロセッサ、5Gの無線部分を搭載している。最初の世代は2016年のMWCで発表され、4×4 MIMOに対応した第2世代が2016年8月に発表されている。

 今回の第3世代はそれに次ぐアップデートで、第2世代と比べてプロセッサの処理能力が2倍になっており、最大で10Gbpsのスループットを実現することができる。機能はソフトウェアを利用して実現されているので、規格がアップデートされた場合でもソフトウェアの改良で対応できるほか、世界各国で異なるテストのニーズにも柔軟に対応することが可能。

第3世代Intel 5G Mobile Trial Platformの強化点(出典:Intel 5G Mobile Trial Platform update、Intel Corporation)

 無線部分は3GPPのノンスタンドアローン5G NRの標準規格と早期の互換性を実現しており、600-900MHz、3.3-4.2GHz、4.4-4.9GHz、5.1-5.9GHzといったいわゆるサブ6GHzと、28GHzや39GHzといったミリ波の両方に対応。世界で利用される5G NRの帯域に対応しており、日本を含む世界各国で5Gの動作確認に対応することができる。

 インテルによれば、第3世代のIntel 5G Mobile Trial Platformは第4四半期から通信キャリアや自動車メーカー、大手通信機器メーカーなどに対して提供が開始される予定。これにより、自動車メーカーなどがデバイスの互換性試験を迅速に始めることができるし、通信キャリアも実環境で試験を行なえるようになるといったメリットがあるとインテルは説明している。

Intel 5G Mobile Trial Platformの外観(2月にスペインで行われたMWCで撮影した第2世代)