NEXCO東日本に聞く、高速料金複雑化時代の「ドラぷら」活用法 休日上限1000円区間乗り継ぎにも対応 |
Car Watchでは、いわゆる“地方部上限1000円”をはじめとする「ETC休日特別割引」を使って山形や岡山、那須へ出かける記事を掲載した。これらの記事には、払った高速料金の額を割引前の金額とともに掲載しているが、編集部が計算した金額とETCの利用証明書の金額が食い違うことがあった。
各高速会社が運営している高速道路の経路探索サービスなどを使えば正しい金額が分かるのだが、なぜこのような金額になるのかが分からない。休日特別割引にしろ通常の料金にしろ、高速料金の算出方法は分かりにくいのである。
これらの記事で料金の確認によく利用したのが、NEXCO東日本(東日本高速道路)のオンライン経路探索サービス「ドラぷら」である。そこで「ドラぷら」担当の同社事業開発部の沓抜憲氏と、広報室の小橋尚氏に、高速道路の料金の仕組みと、あわせて「ドラぷら」の賢い使い方をうかがった。
■高速料金計算の基本
──弊誌の記事で、ETC休日特別割引企画を使って埼玉県岩槻から山形県酒田まで走行したら、次のような料金になったのですが、割引前も割引後も、どうしてこのような金額になるのかがよく分からなかったのです。
利用IC(自) | 利用IC(至) | 通常料金 | 割引後料金 | 割引額 | 割引内容 |
岩槻IC | 月山IC | 8250 | 1350 | 6900 | 休日特別割引(大都市近郊区間22時~6時+上限1000円) |
たとえば、岩槻IC~月山IC。岩槻ICから加須ICまでは大都市近郊区間ですが、岩槻ICを午前2時に出発しているので、休日特別割引の夜間料金が適用されます。この条件で岩槻IC~加須ICだけをドラぷらで検索すると450円と出るんですね。
そして加須ICから月山ICまでが休日特別割引の上限1000円が適用され、1000円になります。
ということは合計1450円のはずですが、請求されたのは1350円でした。ドラぷらで岩槻IC~月山ICを同じ日時で検索してもやはり1350円になります。これはなぜなんでしょう。
小橋 まず、岩槻IC~加須ICのみをご利用の場合は、大都市近郊区間は1kmあたり29.52円で計算されます。それから、ご利用1回に対する部分である「ターミナルチャージ」が150円加算されます。これに消費税5%がかかります。岩槻IC~加須ICは22.9kmあるので、通常料金は次のようになります。
29.52円×22.9km=676.008円 | 通行料 |
676.008円+150円=826.008円 | ターミナルチャージ加算 |
826.008円×1.05=867.3084円 | 消費税加算 |
これを丸めて850円としたのが通常の通行料金です。休日特別割引(22時~6時)ならば、850円の5割引に端数調整をして、450円になります。ただし、今回の岩槻IC~月山ICのように、ご利用区間の一部に大都市近郊区間を含む場合、岩槻IC~加須IC分の料金は、距離に応じた額のみで計算し、29.52円×22.9km×0.5=338.004円を端数調整して350円としています。
──これにターミナルチャージを足して、消費税を掛けると(338.004円+150円)×1.05=512.4042円ですよね。
小橋 ご利用になった岩槻CI~月山ICの通常料金は8250円です。これを5割引とし、端数調整すると4150円になります。ここから先ほどの岩槻IC~加須IC分とする350円を差し引くと3800円になります。3800円は1000円を超えていますので、採用されずに1000円になります。
つまり、この地方部上限1000円は、ターミナルチャージを含めてということになります。ターミナルチャージは1走行につき1回加算する固定部分ですが、これは上限1000円の通行料に含まれています。
したがって岩槻IC~月山ICの料金は、岩槻IC~加須IC分の350円に、そのほか1000円を加えた350円+1000円=1350円というわけです。
■「24捨25入」の秘密
──ところで先ほど、岩槻IC~加須ICの通常料金の計算で、867.3084円を丸めて850円にしていました。四捨五入して870円にするとか、小数点以下を切り捨てて867円にするほうが自然に思えるのですが。
小橋 高速道路の料金の丸め方は「24捨25入」という独特の方式を使っています。これは、料金の10の位までが1~24円のときは0円に、25~74円のときは50円に、75~99円のときは100円に丸めます。
10の位 | 1~24円 | 25~74円 | 75円~99円 |
24捨25入後 | 0円 | 50円 | 100円 |
800~899円の料金を例にすると、次のようになります。
計算上の料金 | 800円 | 801円 | 824円 | 825円 | 840円 | 850円 | 855円 | 874円 | 875円 | 899円 |
24捨25入後 | 800円 | 800円 | 800円 | 850円 | 850円 | 850円 | 850円 | 850円 | 900円 | 900円 |
つまり、25円と75円を境に、10の位を0か50にするための計算方法なのです。
──なるほど「24捨25入、74捨75入」ですね。なぜこのようなあまり一般的でない丸め方をするのですか?
小橋 料金所で現金で精算するとき、あまりに端数の金額が細かいと、お金のやり取りに時間がかかって1台あたりの精算に時間がかかります。これは渋滞にもつながりますし、利用者のみなさんの利便性を損なうことです。一方で、なるべく実際の料金と丸めた料金の差も減らしたい。そこで、端数は100円単位と50円単位で済むように、24捨25入が採用されたのです。
──それから、岩槻IC~月山ICの通常料金は8250円となっています。大都市近郊区間の岩槻IC~加須ICは29.52円×22.9km=676.008円。加須IC~月山ICは24.6円×364.6km=8969.16円。合計して676.008円+8969.16円+150円(ターミナルチャージ)×1.05=10284.9264円になりそうなものですが、これはなぜでしょう。
小橋 まず通常料金は、長距離の区間が安くなる「長距離逓減制」を採っています。100km~200kmの走行部分が25%、200km以上の走行部分が30%安くなるように計算します。
もうひとつ、山形自動車道の笹谷IC~関沢IC、5.8kmの区間は例外的な扱いになっていて、ここだけ200円になります。ここはもともと一般有料道だったところなのでほかの高速国道とは違う設定にしています。この部分は長距離逓減の計算からも省きます。こうした条件を計算すると、8250円になるのです。
高速国道は一般的に距離に応じて料金が増える対距離料金制を採っていますが、状況に応じて均一料金にしたり、特別料金区間を設けたりしています。
■外部との提携でさまざまな機能を提供
──これだけ複雑な料金体系ですから、事前にドライブの計画を立てるためにはドラぷらの経路検索機能は、ユーザーにとって重要だと思いますが、これについていくつかお聞きしたいことがあります。
まず、4月29日から始まるETC休日特別割引の東京都内を通過する場合などの乗り継ぎ(仙台~静岡の旅行であれば、東北道と東名など前後の地方部を合わせて上限1000円と計算される。現在は、前後でそれぞれ上限1000円を支払っている)です。このインタビューをしている4月13日の時点ではまだ乗り継ぎに対応していませんが、いつごろ対応されるのでしょう。GW前に計画を立てたいという人もいると思いますが。
沓抜 早くご覧になりたいというニーズは承知していますが、4月28日までは乗り継ぎに対応していない経路検索をされるお客様もたくさんおられるので、今から乗り継ぎ対応料金を表示すると混乱を招いてしまいます。これについては慎重にタイミングを見計らっているところですが、ドラぷらが対応する前に対応料金をお知りになりたい場合は、お客さまセンターにお問い合わせください。
【編集部註】ドラぷらでは4月28日正午から、乗り継ぎに対応している。
──この乗り継ぎには、大都市近郊区間を通過する時間に制限があります(例:浦和本線料金所~東京料金所は6時間以内に通過すれば乗り継ぎ可能)。しかし、東京通過以外の乗り継ぎ特例対象箇所では時間が違うところもありわかりにくい。ドラぷらでこれらのルートを計算したとき、乗り継ぎ制限時間を考慮した検索結果が表示されるようになるのでしょうか。
沓抜 ドラぷらでは現在、通過時間判定はやっていません。乗り継ぎ制限時間を考慮に入れた検索をしたいというニーズは承知していますし、課題として受け止めていますが、自動車は電車のように時刻表通りに走行できるわけではないので、単純に表示するわけにはいきません。ただ、なんらかのアドバイス的な表示ができないか、検討中です。
──それから、ドラぷらでルートを選択すると基本的に最短距離が選ばれます。しかし、大都市近郊区間を避けた遠回りのルートを計算したいときもあります。
沓抜 「地図から検索」で経由地を設定できるようにしました。
「地図から検索」では経由地を1つ設定できる。これは青森から東京の大都市近郊区間を避けて新潟を経由し、紀伊半島に至る、上限1000円で走れる最長距離を指定したところ | 検索結果。ETC休日特別割引料金も1000円と表示されている |
──経路検索では、ICとICの間の料金が検索できますが、これは前提としてIC名を知っている必要があります。近所のIC名ならともかく、あまり行かないところのIC名を知らないときは、たとえば「東京駅から甲子園球場」のように、ランドマークなどを指定した検索はできるようにならないのでしょうか。
沓抜 まずドラぷらでは「住所から検索」を用意しています。住所を指定すれば、その周囲にあるICを表示してくれます。
「住所から検索」は「高速料金検索」の「地図から検索」の下にある | 住所を指定するとその周囲のICを表示し、出発IC、到着IC、経由ICに指定できる。 |
それから、提携先のゼンリンデータコムのサイト「いつもガイド」で、「ドライブルートを作る」というサービスを提供されています。これはゼンリンデータコムの地図でスタートと経由地、ゴールを指定すればドライブルートを検索してくれるサービスですが、高速道路の料金はドラぷらの機能を使っています。ETC料金を表示するときはドラぷらにジャンプします。このほかにも「じゃらん」や「Yahoo! トラベル」などがドラぷらの機能を使って、さまざまな検索機能を提供しています。
さらに、ドラぷらの経路検索ができるブログパーツを用意していて、これは一般の皆さんや企業の方が無償でご利用いただけます。このブログパーツは、着発ICをユーザーがカスタマイズできるようになっています。ご自分のブログや企業のホームページなどに、ご近所のICをデフォルトで入力した状態で貼り付けられるようになっています。
ドラぷらで提供されている経路検索ブログパーツ | 出発ICや到着ICなどをデフォルトで入力しておく設定ができる |
■経路検索以外にもつかえる「ドラぷら」
──ドラぷらというと高速道路の経路検索のサイトというイメージがありますが、そのほかにもクレジットカードの申し込みができたり、SA/PA情報や雪道情報が提供されたりしていますね。
沓抜 ドラぷらはNEXCO東日本のB2Cサイト(企業とユーザーの橋渡しをするサイト)と位置付けており、東日本だけでなく全国のユーザーに向けて情報発信しています。道路ユーザー向けの情報はドラぷらに集中させ、NEXCO東日本の会社情報や投資家向け情報は、NEXCO東日本のコーポレートサイトに置いています。
──このほかにドラぷらのおすすめコンテンツはありますか?
沓抜 ゴールデンウィーク(GW)に向けて、渋滞予報カレンダーを掲載しています。これはNEXCO東日本だけでなく、中日本、西日本の3社が共通で持っているデータをこの時期に発表しているものです。過去3年の渋滞のデータをベースに発表してきましたが、今年はETC特別割引による渋滞の予測もプラスアルファで入れています。ただ、GW中にどの程度の渋滞になるかは予測し得ない部分もあるので、道路情報センターなどのリアルタイム渋滞情報をあわせて活用して、渋滞のピークを外して利用していただければと思います。
それから、「ドラぷらモバイル」という携帯電話向けのサイトもあります。こちらは渋滞予報カレンダー、SA/PA情報、季節によっては雪道情報を提供しています。PC向けサイトへのアクセスは金曜日に増えますが、ドラぷらモバイルへのアクセスは休日の午後がピークになるんですね。出先で携帯電話から、帰り道の道路情報をご覧いただいているのではないかと考えています。
──経路検索以外にもいろいろな活用法があるドラぷらですが、利用状況はどのようになっていますか。
沓抜 ページビュー数は1カ月に約2000万~3000万PVです。傾向としては、休日の前日によくご覧いただいています。またGWとお盆、年末年始にもアクセスが増えます。
──みなさん、はやり出発前にドライブの計画に活用されているということでしょうか。3月のETC割引開始時はアクセスが増えたのではないでしょうか。
沓抜 3月のページビュー数は4700万PVで、前年比240%でした。とくに開始前日の3月27日のページビュー数は通常の1日の4倍、GW中の倍になりました。4月に入ってからもGW並みのアクセスをいただいています。
──それだけアクセスが突然増えると、サーバーの負荷も大きくなって、動作が遅くなったりしたのではないでしょうか。
沓抜 若干、「遅い」とお叱りをいただきましたが、サーバーが落ちるような致命的なことにはなりませんでした。これは、冬場の雪道情報提供がスムースに運ぶように、回線やサーバーを強化しておいたほか、今回の更新に合わせて料金検索エンジンのプログラムを改良したからです。
──今後のドラぷらについて教えてください。
沓抜 ドラぷらはお客様のニーズに応える形で進化を続けてきた結果、高速道路情報をお伝えするサイトの中では最大級のサイトとなってきました。今後とも、さまざまなWebサービスと相互乗り入れをして、いろいろなニーズに応えていきます。
(編集部:編集部:田中真一郎)
2009年 4月 28日