圏央道のさがみ縦貫道路 上依知第1トンネルが貫通
貫通の瞬間を地元小学生も見学

貫通したトンネル。1mほどの穴から外光が差し込む

2009年11月5日実施



 国土交通省 関東地方整備局は11月5日、圏央道の神奈川県区間の一部となるさがみ縦貫道路の上依知第1トンネルを貫通させた。このトンネルが厚木市立上依知小学校のグラウンドの下を通っていることから、同校の4年生~6年生約190名による見学会も開催した。

 上依知第1トンネルは、相模原IC(インターチェンジ)~圏央厚木IC間にあるトンネルで、上り線589m、下り線652mとなる。すでに上り線は貫通しており、今回は下り線の貫通となる。貫通の瞬間に立ち会ったのは、上依知小学校の6年生。トンネルの突き当たりをブレーカーと呼ばれる重機で掘り始めると、どんどんと土が崩れはじめ、わずか数分で貫通。外光が暗いトンネル内に差し込み、作業員から万歳の声が上がった。

地元小学生の見守る中、トンネルが貫通した。人数の関係で貫通の瞬間は6年生のみが見学。その後4年生や5年生も入れ替わりで見学した無事貫通したことの感謝を込めて作業員全員で礼見学した小学生

 見学した小学生は「めったにできない貴重な経験ができた」と喜んでいたが、中には「もっと派手なのかと思った」と言う声も。工事関係者の話によれば、もっと地盤が硬いところであればダイナマイトで発破をするようなこともあるが、ここは土壌が軟らかいためこのような形になったとのこと。逆に軟らかすぎるため、トンネルを掘り始める前に出口付近の軟らかい土壌を取り除き、コンクリートを混ぜた土を盛っているのだと言う。そうすることでトンネルの掘削途中で出口側から崩れることを防ぐのだ。この日に穴を開けたのは、まさにそのコンクリートを混ぜた土の部分だと言う。

最後に穴を開けたのは、掘削作業中に崩れないようあらかじめ固めておいた土だが、巨大な重機の手にかかればあっという間に穴が開いてしまう。右の写真がブレーカーの先端部分

 トンネルと言うと、最近では山手トンネルなど、巨大なシールドマシンを使った工法が目立つが、上依知第1トンネルではNATM工法と呼ばれる工法で掘られている。NATM工法では、1m(上依知第1トンネルの場合)掘るごとに鋼製支保工と呼ばれる鉄製の枠とコンクリートの吹きつけで内壁を作っていくというもの。さらにロックボルトと呼ばれる長さ4mのボルトを10本、トンネルの両側面に打ち込んで補強。これを繰り返して掘り進んで行く。吹き付けたコンクリートの上にはさらに防水シートを覆い、その内側に「スライドセントル」と呼ばれる巨大な移動式型枠をはめて、最終的にトンネル内側の表面となるコンクリートを流し込んで行く。この表層のコンクリートは厚さ30cm~35cmで、最初に吹き付けるコンクリートが約25cmとなるため、あわせて厚さ60cm近いコンクリートのトンネルとなる。

NATM工法で作られたトンネルの内壁鋼製支保工と呼ばれる鉄製の枠。これを1m間隔で組み込む鋼製支保工とコンクリートの吹きつけでトンネルの剛性を確保。水色にペイントされているのがロックボルトで、側面に片側5本ずつ打ち込まれる
吹き付けたコンクリートの上に防水シートをかぶせるトンネルの入り口方向に向かって見たところ。オレンジ色の巨大な骨組みがスライドセントル。このスライドセントルと防水シートの間にコンクリートを流し込むトンネル入り口側から見たところ。一番奥にはスライドセントルが見える。手前は表面となるコンクリートが打ち終わっていて、その先には白い布の様なもので覆われた場所がある。これは乾燥中のコンクリートで、覆うことで乾燥の時間を遅め、ひび割れを防ぐのだと言う
トンネルの入り口部。左が上り線で右が下り線トンネル入り口の上部には木が置かれているが、これはトンネルの入り口を鳥居に見立てたもので、工事が安全に行われることを祈念して行われるもの。トンネル完成の暁には外される上依知第1トンネルの概要

 こうしてできたトンネルは、幅11m、高さ9.6mで、片側2車線のトンネル。今後残りの外壁や路面部分の表層、防災設備の設置などが行われ、トンネルがある海老名IC~相模原IC間は2010年度に開通する予定。来春には開通する海老名IC~海老名JCT(ジャンクション)と合わせ、相模原ICと東名高速が繋がることになる。さらに2012年度には、北は中央道、南は新湘南バイパスまで繋がり、圏央道全体としても、千葉県の東関東道までつながる予定となっている。

(瀬戸 学)
2009年 11月 10日