BMW、「Mobility of the Future」開幕。EV、HEVを披露
アクティブハイブリッドX6とMINI Eを日本にも

ビジョン・エフィシエント・ダイナミクスとクルーガー社長、BMW AGの執行役員

2010年6月15日
東京ビッグサイト



 ビー・エム・ダブリューは、「BMW Mobility of the Future - Innovation Days in Japan 2010(走りのこと。環境のこと。このイベントで、BMWがクルマの未来を発信する。)」を、6月17日~18日に、東京ビッグサイト(東京国際展示場)西ホール2で開催する。

 このイベントは、同社の「エフィシエント・ダイナミクス」戦略、つまり環境性能と、人々がBMWグループに期待する「歓び」の両立について、現在と将来の計画を紹介するもの。事前に行われた応募で当選した招待客のみが参加できる。

 開幕に先立つ15日、同社は会場で報道関係者向けに記者会見を開催。独BMW AGから販売、開発を担当する執行役員3人が来日し、同社の「エフィシエント・ダイナミクス」戦略を説明し、ベルリンにおける電気自動車(EV)実証実験で得られた知見を公開した。

 この中で、ハイブリッドSUV「アクティブハイブリッドX6」を2010年内に日本に導入すること、ベルリンでの実証実験に使われたコンパクトEV「MINI E」の実証実験を、2011年初頭から日本でも開始すること、さらにハイブリッドサルーン「アクティブハイブリッド7」の発売時期を7月と発表した。

 これらの車両と合わせ、コンセプトカー「ビジョン・エフィシエント・ダイナミクス」「コンセプト・アクティブE」と、同社のラインアップが会場に展示される。

 なおこのイベントで行われるシンポジウムや、MINI Eなどの詳細を、順次掲載する。

ビジョン・エフィシエント・ダイナミクス。コンセプトカーやアクティブハイブリッドはすべて自走して登場したアクティブハイブリッドX6アクティブハイブリッド7
コンセプト・アクティブEMINI E同社のラインアップ

 

ローランド・クルーガー社長

「アクティブハイブリッド7はハイブリッドカー攻勢の手始め」
 「ここ(東京ビッグサイト)は次の東京モーターショーの会場」と切り出したビー・エム・ダブリューのローランド・クルーガー社長はまず、アクティブハイブリッド7が「7月にショールームに並ぶ」と発表。同モデルはすでに2009年10月末から受注が開始されているが、いよいよ納車が始まる。

 さらに、同モデルは出力を14%上げたにも関わらず、日本のテストサイクルでの燃費が41%向上(10・15モード:9.3km/L、JC08モード:9.1km/L)。ショートホイールベース版とロングホイールベース版の両方ともが、エコカー減税・新車購入補助金の対象になると発表した。

 クルーガー社長は「しかしアクティブハイブリッド7は、今度発売するハイブリッドカーの手始めに過ぎない」と続け、アクティブハイブリッドX6が年末までに日本市場に投入されることを発表。

 アクティブハイブリッドX6は、X6にツインターボ付きの4.4リッターV型8気筒エンジンと、2モーターのハイブリッドシステムを搭載したモデル。同社初の「フルハイブリッド」モデルであり、「60kmまで電気だけで走行できる。つまり、短距離ならゼロ・エミッションで走れる」(クルーガー社長)。同等のガソリン車と比較すると、最高出力が19%アップしたのに対し、欧州テストサイクルでの燃費は20%改善されたとしている。

アクティブハイブリッド7アクティブハイブリッドX6

 さらにクルーガー社長は、5シリーズと3シリーズのハイブリッドカーをいずれ発表するとした。

 また、ハイブリッドカーから派生したブレーキエネルギー回生システムやスタート・ストップ機能が現行のBMWとMINIに搭載されており、5月24日に発表された「320i」は、エンジンの直噴化と合わせて27%の燃費改善に成功したとアピールした。

冒頭に流れた、BMW AGのノルベルト・ライトホーファー会長による会見のビデオ。3シリーズなどのハイブリッド化を検討

 

アルビン・ディャンドーファー博士

5シリーズハイブリッドは2011年に
 クルーガー社長に続いて、独BMW AGの車両開発担当執行役員であるアルビン・ディャンドーファー博士が、2009年のフランクフルトショーで公開したコンセプトカー「ビジョン・エフィシエント・ダイナミクス」とともに登場。同社の戦略「エフィシエント・ダイナミクス」と、同社の環境技術のロードマップを説明した。

 ひと言で言えば、エフィシエント・ダイナミクスは「性能を維持したまま、効率を高める」こと。これは、環境性能の改善が喫緊の課題である一方で、BMWユーザーは「BMWが究極のドライビングマシーンであることを求めている」(ディャンドーファー博士)ため。

 エフィシエント・ダイナミクスに使われる技術の方向性は、「軽量化」「低燃費」「高性能」を最適なバランスで実現すること。「BMWのエンジニアは、以前から(環境性能に貢献する)エアロダイナミクスや軽量設計に力を入れてきたが、現在では高騰するエネルギー価格などにより、今まで以上に基本として求められるようになった」と博士は言う。

エフィシエント・ダイナミクスは、効率と性能の両立軽量化と低燃費がエフィシエントダイナミクスのカギラインアップ車平均のCO2排出量と出力の比較。他社よりも高い出力と少ないCO2を実現した

 「低燃費」については、「内燃機関の効率向上」「ハイブリッドやEVによるパワートレーンの電動化」「水素」の道筋を説明。

 内燃機関改良の最新の例としては、5シリーズ グランツーリスモで登場し、5シリーズなどにも搭載されている直列6気筒エンジン「N55B30A」を紹介。同社独自の可変バルブリフト機構「バルブトロニック」に、ツインスクロールターボと筒内燃料噴射(直噴)を組み合わせ、535iで燃費を13%改善する一方で、出力は13%向上したことを挙げた。このエンジンは、エンジン・オブ・ザ・イヤーを受賞したと言う。

 これらを体現したコンセプトカー「ビジョン・エフィシエント・ダイナミクス」は、ディーゼルエンジンとモーターのハイブリッドパワートレーンにより、262kW(356PS)の出力と、26km/Lの燃費を実現したことを紹介し、博士は「このビジョンを現実のものとする」「アクティブハイブリッド7とアクティブハイブリッドX6は新たな試みの始まりに過ぎない」と言い、5シリーズのアクティブハイブリッドを2011年に生産開始すると発表した。

 そして、ハイブリッド後はパワートレーンの全面電動化に進み、その後は水素燃料に移行すると述べた。同グループが長年手がけてきた水素燃料エンジンをまだあきらめていないことを明らかにしたわけだが、水素燃料実現へ向けての次の課題は「水素燃料を利用できる環境のための、インフラ対策」だと言う。

エフィシエント・ダイナミクスを実現するための技術N55B30Aを搭載した535iは、燃費を改善しつつ出力を向上直噴エンジンを搭載した120i
エフィシエント・ダイナミクスを体現した「ビジョン・エフィシエント・ダイナミクス」5シリーズ アクティブハイブリッドは2011年に生産開始
ハイブリッドの次はEVそして水素燃料へ

 

ウルリッヒ・クランツ執行役員

2013年登場のメガシティ・ビークルはEV
 ディャンドーファー博士に続いては、EV「コンセプト・アクティブE」に乗って、ウルリッヒ・クランツ執行役員が登場した。

 クランツ氏は「プロジェクト・アイ」の責任者。プロジェクト・アイは、2007年にBMWグループが「ナンバーワン戦略」を策定したときに誕生したもので、「持続可能で未来志向のコンセプトづくり」を使命とし、都市部のユーザーのニーズを汲み取った新製品の開発を主な業務とする。「アイ(i)」は「イノベーション、アイデア、インキュベーター」の頭文字。通常の製品開発とは異なり、原材料、コンセプト、デザイン、販売、マーケティングのすべての段階で新しいアプローチを採り、まったく新しい生産プロセスや技術、コンセプトを生むべくシンクタンク的役割を果たす。

 都市部のユーザー向けの乗り物、つまり「メガシティ・ビークル」の開発のため、プロジェクト・アイはロスアンゼルス、メキシコシティー、ニューヨーク、ロンドン、パリ、上海、東京で潜在的顧客と数日間生活し、ヒアリングを実施。メガシティ・ビークルがEVでなければならないという結論に達したと言う。

 そして、実験車両、MINI Eを製造し、米国、英国、独に計550台以上を希望者に提供、大規模実証実験を開始した。ここでは、再生エネルギー利用の可能性、市場の潜在力、乗り換えのシナリオ、ユーザーの行動やEVに対する受容性、EVの長所と短所などを探った。

世界の都市でヒアリングを実施MINI Eは2人乗りのEVMINI Eでの実証実験は米英独で行われた

 ベルリンでの実験でのユーザーのプロファイルで一般的だったのは、「35歳以上の男性で、教育水準が高く、平均以上の収入があり、新技術を好む」というもの。「家庭のセカンドカー」「日常の足」としてMINI Eを使用した。

 実験に当たって、MINI Eの航続距離(現在までの実績は、1充電で158km)が短所になると予想されたが、MINI E全車の1回あたりの平均走行距離は9.5kmで、BMW 116iやMINIクーパーの11km前後とさほど変わらず、MINI Eはこれらの車種と同じような使われ方をしていることが分かった。また充電時間の長さも短所になると予想されたが、これは自宅や勤務先での駐車中に5時間以上かけており、特に問題になることはなかった。

 これにより同社は、MINI Eの航続距離を僅かに伸ばし、室内を拡大すれば、都市ユーザーのニーズにほぼ完全に対応できるとした。

 「メガシティ・ビークル」は、2013年の登場が予定されており、電動パワートレーンと炭素繊維などによる軽量な車体を備えると言う。

ベルリンでの実験では、MINI Eの航続距離や充電時間は短所として認識されなかった
メガシティビークルは、MINI Eの航続距離を僅かに伸ばし、室内を拡大すれば実現可能

 

ギュンター・ゼーマン執行役員

 会見にはBMW AGのアジア、パシフィック、南アフリカ担当執行役員であるギュンター・ゼーマン氏も登場。

 BMWが日本市場で受け入れられた理由を「BMWのテクノロジーとデザインの限界に挑む情熱が、日本にマッチした」とし、「日本は持続可能モビリティの先端を行っている。我々のイノベーションには、日本のような革新的なマーケットが必要」と、日本にコミットする姿勢を強調した。

ビジョン・エフィシエント・ダイナミクスは4シーターのプラグイン・ハイブリッド車

 

MINI Eの次のステップの実験車両であるアクティブE。汎用リチウムイオンバッテリーを搭載する2シーターであるMINI Eに対し、アクティブEはEV専用バッテリーを積み、4座とラゲッジスペースを確保する

 

日本でも実証実験が行われるMINI E

 

年内に日本に投入されるアクティブハイブリッドX6。4.4リッターV8ツインターボエンジンと2モーターのフルハイブリッドパワートレーンを搭載

 

アクティブハイブリッド7は、4.4リッターV8ツインターボエンジンを1モーターでアシストするマイルドハイブリッド

(編集部:田中真一郎)
2010年 6月 16日