「バッテリー ジャパン(第2回国際二次電池展)」開催
EVや電動バイクなど展示

FCEXPOなどと併催される「バッテリー ジャパン(第2回国際二次電池展)」

2011年3月2日~4日開催
東京ビッグサイト(東京都江東区有明)
入場料:当日5000円(Web事前登録で無料)



 充電可能な二次電池関連の展示会「バッテリー ジャパン(第2回国際二次電池展)」が東京ビッグサイト(東京都江東区有明)で開幕した。「FC EXPO 2011(第7回国際水素・燃料電池展)」「PV EXPO 2011(第4回国際太陽電池展)」「第2回量産試作加工技術展」「第1回エコハウス&エコビルディングEXPO」「第1回国際スマートグリッドEXPO」と併催され、29カ国、1680社が出展する世界最大級の新エネルギー総合展「新エネルギーWEEK 2011」(主催:リード エグジビジョン ジャパン)となっている。

 会期は3月2日~4日で、開催時間は10時~18時(4日のみ17時まで)。入場料は当日5000円となっているが、バッテリー ジャパンのWebサイトから登録すれば無料となる。入場証は会場内すべての展示会で共通。18歳未満の入場はできない。

 バッテリー ジャパンは前回よりも規模を2倍に拡大。二次電池の研究、開発、製造に必要な部品、材料、装置などを展示。今回はバッテリー ジャパンとFC EXPOを中心に、自動車関連の話題をピックアップする。

アルミフレームのレーシーなEV「EVA-01-RS」
 古河スカイのブースに展示されていた「EVA-01-RS(通称:エバワン)」は、電気自動車(EV)のコンセプトモデル。古河スカイはFBバッテリーでおなじみの古河電池と同じ古河電工グループで、アルミ素材を作っている企業だ。このエバワンは、アルミでどこまでできるのかという実験で製作したもの。そのため、フレーム以外にもアルミがふんだんに使われている。ここまでのコンセプトモデルを作るのは、アルミ素材メーカーとしては初の試みだという。

 エバワンは交流モーターをリアに搭載するMRレイアウト。前後重量配分は50:50になっている。バッテリーは冷却用のヒートシンクを付けたリチウムイオン電池を3個搭載し、満充電で35kmの実走行が可能だという。インバーター用の冷却器は水冷式で、高温側のルートはアルミ製コルゲートチューブになっている。現在は速度リミッターを付けているが、それでも60km/h以上のスピードが出るという。ブースでは、敷地内を走行するデモ映像が上映されていた。

コンパクトなアルミフレームの「EVA-01-RS」イメージコンセプトはボディーまで形作られている駆動用のリチウムイオン電池は冷却用のヒートシンク付き。通常バッテリーは補機類のために搭載している
サスペンションの大部分もアルミ製レカロシートと3連メーターがレーシーさを演出するインバーターは水冷式。高温のLLCをフロントのラジエーターまで運ぶのはアルミ製コルゲートチューブ

 一方、少し離れた場所にブースを展開する古河電池は、昨年夏に話題になった小惑星探査機「はやぶさ」に搭載された宇宙衛星用電池を展示していた。古河電池は1971年の第1号科学衛星「しんせい」からはじめ、数多くの科学衛星用電池を製造、納入している。「はやぶさ」に搭載されているのは角形リチウムイオン電池で、通常のバッテリーと違い、宇宙空間での使用に耐えるハードケースや、安定性・信頼性を上げる工夫がされているという。

手前が「はやぶさ」搭載の宇宙用リチウムイオンセル、奥は「あかつき」に搭載されているもの40年の歴史を持つ古河電池の「宇宙衛星用電池」の変遷

ランニングコストを抑える電気自動車用急速充電システム
 GSユアサは、太陽光発電エネルギーを利用した急速充電システム「PV-EVシステム」を参考出品した。これは、太陽電池パネルと通常電力をパワーコンディショナーで管理し、リチウムイオン電池に蓄電。通常は太陽電池パネルからリチウムイオン電池に充電し、充電量が足りない場合や夜間は、通常電力から充電するという仕組みになっている。

 太陽電池パネル使用時や充電量が満たされていれば電力を使うことがなく、停電の際でも太陽光があれば充電できるというのがポイント。リチウムイオン電池の容量は、i-MiEV1台を充電できる。将来的には、このリチウムイオン電池にリユースバッテリーを使うことで、電池交換の際のコストを抑えられるという。

出力容量19kWの急速充電器「EVC-20KA」4.5kWパワーコンディショナーとリチウムイオン電池(11モジュール、88セル)

125cc相当のパワーを持つ電動バイク
 IHIブースには、ホンダ「PS250」をベースにした電動バイクが展示されていた。バッテリーは、リチウムイオン電池モジュール「monoblock」を搭載。電気駆動ユニットや車両のカスタマイズはピューズが行っている。ピューズ担当者に話を聞いたところ、重量物を運ぶことをターゲットとしてモーターを製作。125cc相当の出力が出せるという。フレームの加工はしていないが、バッテリー搭載に適した形状に、ボディーの至る所を加工しているとのことだった。

ホンダ「PS250」をベースにした電動バイク大幅に加工しているとのことだが、基本フォルムに変更はない

世界初公開となるGM用バッテリー
 日立マクセルのブースでは、GMの新ハイブリッドシステム「eAssist」に採用されたHEV用リチウムイオンモジュールを展示していた。今回が世界初公開となるこのモジュールは、ハイブリッド車(HEV)用に新規開発され今年量産を開始する新製品だ。従来の製品に比べてセルの長さが短く、コンパクト設計になっている。また、電動バイク用のラミネート形リチウムイオン電池パックの参考出品もあった。軽量コンパクト設計で、鉛蓄電池と比べて体積比で1.8倍、質量比で2.6倍のエネルギー密度という。

新開発のHEV用リチウムイオンモジュール従来型のHEV用リチウムイオンモジュール従来型(奥)と比べて新型(手前)はセルの長さが違う
ラミネート形リチウムイオン電池パックが搭載された電動バイクもともと搭載されていた鉛蓄電池4個分の体積に電池パック(1400Wh)電池容量を半分にし、軽量化バイクへの搭載を考慮した電池パック

バッテリーとモーターで空を飛ぶ、リトルベランカの展示
 リチウム系バッテリーパックの取り扱いをしているリトルベランカでは、高出力ブラシレスモーターとリチウムポリマーバッテリーを使った電動パラグライダーや電動カートなどを展示していた。この電動パラグライダーは、リチウムポリマーバッテリー14セル(約56V 10Ah)を搭載。約10分の飛行時間が可能だという。ラジコン飛行機やパラグライダーなど、エンジンのようにパワーが必要なものが、徐々にブラシレスモーターとリチウムポリマーバッテリーに置き換わってきているようだ。

全装備重量は約20kgとなる電動パラグライダー最高スピード約20km/hの電動ファンカート。約70分の走行ができるという

FC EXPOでは燃料電池車の展示や試乗会を開催
 「JHFC(水素・燃料電池実証プロジェクト)」ブースで展示されている燃料電池車は、昨年の展示に比べ数が少なく、こぢんまりとした印象。展示車両は、トヨタ自動車「FCHV-adv」、日産自動車「X-TRAIL FCV」のカットモデル、本田技研工業「FCXクラリティ」の3台。

 展示されていた「FCHV-adv」「X-TRAIL FCV」「FCXクラリティ」の3台と、マツダ「プレマシーハイドロジェンREハイブリッド」を合わせた4台の試乗も行われていた。この試乗は助手席と後部座席に3名が乗車し、会場である東京ビッグサイト周辺の一般道を走行するもの。走行時間は10分程度だが、数少ない燃料電池車に乗るチャンスとして見逃せない。人気は「FCHV-adv」「FCXクラリティ」の2台。試乗時間を予約して整理券をもらい、時間になったら試乗会場に集合する。今回は日産自動車「X-TRAIL FCV」に試乗した。

 アイドリングでエンジン音が聞こえないのはもちろんのこと、走行中の車内は静か。タイヤから出るロードノイズや周囲の音の方が気になる。そして、想像していたより加速が良かった。エンジンのようなトルク曲線に沿った加速ではなく、いかにもモーターといったリニアに加速感が独特だ。試乗は予約制なので、試乗したいなら入場後真っ先に試乗の受付を済ましたい。

FCHV-adv「X-TRAIL FCV」のカットモデルFCXクラリティ
試乗会会場。手前はプレマシーハイドロジェンREハイブリッド今回試乗した「X-TRAIL FCV」

 「新エネルギーWEEK 2011」は、東京ビッグサイトの西展示棟、東展示棟のすべてを使った大きなイベントだ。そのすべてを1日で回ることは難しい。会場の出入り口にも、2~3日かかる旨の張り紙がしてあるほど。しかし、すべてを回らずともその一部分でも触れてみるだけでも面白い。

 自動車や電池といった完成された製品だけでなく、例えばリチウム電池の材料をかき混ぜる機械、ラッピングする技術といった専門分野の展示もある。一般的にはなじみが少ない展示も多いが、気になった製品や技術を説明員に訪ねると、ていねいに教えてくれるのもポイントだ。将来は当たり前になるであろう最新技術を感じことができるだろう。

(政木桂)
2011年 3月 3日