【2012 International CES】メルセデス・ベンツ基調講演
「自動車はデジタル化で“自由”を手に入れる」とツェッチェ会長

独ダイムラーAG 取締役会長 ディーター・ツェッチェ氏

会期:1月10日~13日(現地時間)
会場:米国ネバダ州ラスベガスコンベンションセンター



 メルセデス・ベンツを販売する独ダイムラーAG取締役会長 ディーター・ツェッチェ氏は1月10日(現地時間)、米国ネバダ州ラスベガスで開催中の世界最大のコンシューマーエレクトロニクスショー「International CES」の基調講演に登場し、自動車のデジタル化に関するダイムラーAGのビジョンについて語った。

デトロイトモーターショーから駆けつけてきた自動車メーカー首脳
 International CESの基調講演には初登場となるダイムラーAGだが、ツェッチェ会長は前日はデトロイトで行われているデトロイトモーターショーに参加し、その足でラスベガスに移動してきたのだと言う。こうした動きをしているのはダイムラーAGだけでなく、同じドイツの自動車メーカーであるアウディや米国のフォードなどもCESにブースを構え、記者会見や講演を行うなど、自動車メーカーにとってデジタル家電の展示会であるCESは無視できない存在になりつつある。

 ツェッチェ会長は「現代の自動車にはいくつかの課題がある。石油枯渇やCO2排出削減への対策などの資源・環境問題、交通渋滞などを様々な形で解決していく必要がある」と述べ、現在の自動車産業が抱える課題を指摘した。そうした問題を解決する手段として「携帯電話がスマートフォンへと進化したように、自動車もスマートビークルになっていく必要がある」と述べ、通信機能を搭載し自動車の情報化などを推し進めることで問題の解決を図るべきだと説明した。

クラウドの技術を積極的に活用していくことでもっと便利な自動車に
 ツェッチェ氏は自動車が“スマートビークル”へと進化するために、5つの自由を実現する必要があると述べた。その5つとは、

・The Freedom of Time(時間からの解放)
・The Freedom of Speech(音声機能からの解放)
・The Freedom of Access(所有からの解放)
・The Freedom of Energy(エネルギー問題からの解放)
・The Freedom of Information(情報アクセスの改善)

であり、それぞれのテーマにそってダイムラーAGのビジョンが説明された。

 “The Freedom of Time(時間からの解放)”というテーマでは、ドライバーがどのようにして安全に情報にアクセスできるかに関しての説明が行われた。ツェッチェ氏は「運転中は、スマートフォンなどを触って情報にアクセスできない時間になる。しかし、ドライバーは常に情報にアクセスしていたいと考えており、クラウドを利用すればどの端末からでも情報にアクセスすることができるようになる」と述べ、クラウドサービスの活用を車内の情報端末からでも、ユーザーは安全に自分の情報にアクセスすることができると指摘した。

 ツェッチェ氏は、米国向けメルセデス・ベンツSLシリーズなどに用意している車載情報システム「mbrace」を紹介し、その第2世代である「mbrace2」を今春よりSLなどに搭載していくことを明らかにした。ツェッチェ氏は「mbrace2は最初はSLからスタートするが、今後、ほかのモデルでも標準になっていくだろう」と述べた。

2012年型メルセデス-ベンツSLには、mbrace2という新しい車載情報システムを搭載1つめのテーマはThe Freedom of Time(時間からの解放)
自動車でもクラウドの利用を推し進めていく自動車の中でもFacebookやGoogleのサービスが利用できるようになる

カーシェアリングも、ITの技術を利用してさらに便利にしていく
 2つめのテーマである“The Freedom of Speech(音声機能からの解放)”では、ダイムラーAGの音声機能への取り組みについての説明がされた。ツェッチェ氏は、「我々は古くから音声機能に取り組んできた。その当時としては画期的な機能だったが、今から見れば玩具のようなモノだった。しかし、新しい世代の音声機能はそうではない」と述べ、同社のコンセプトカーであるF125!に搭載された音声機能を説明した。「我々のコンセプトカーでは3時間先の場所の天気を音声で教えてくれたり、これまで聞いた音楽などの傾向を記憶していて自動で好みの音楽を推薦してくれたりする」と説明。音声機能を進化させ、ドライバーにとってフレンドリーなインターフェイスを実現していく必要があると指摘した。

 3つめのテーマである“The Freedom of Access(所有からの解放)”では、「これまでは自動車というのはドライバーが所有しなければアクセスできないものだった。しかし、これからはそれも変わっていくだろう」と語り、今後はカーシェアリングのような仕組みが当たり前になっていく可能性があると指摘した。

 その例として、ダイムラーAGがドイツ、オランダ、米国、カナダなどで自治体などと協力して行っている取り組み“Car2Go”を紹介。Car2Goは電気自動車などを利用したカーシェアリングサービスで、ドライバーはスマートフォンなどで近くにある自動車を探し、自動車に乗って移動し終えたらそれを乗り捨てていくという仕組みだ。

 また、ツェッチェ氏は「car2ogetherという取り組みでは、ユーザーの端末同士がピアツーピアで通信し、同じ目的地の人同士が自動車をシェアすることを自動で行える」と述べ、さまざまな取り組みを実現することで、自動車を所有せずとも、自動車を利用できるような仕組みの確立を目指すべきだと語った。

2つめのテーマは“The Freedom of Speech(音声機能からの解放)”未来の自動車は、道の状況を話しかけたりしてくれるツェッチェ氏の背後にあるのがF125!コンセプトカー
3つめのテーマは“The Freedom of Access(所有からの解放)”"サン・ディエゴでのCar2Goの実験
Car2Goで利用されている電気自動車car2ogetherではSNSの技術を利用して、同じ目的地を目指す人と自動車をシェアして移動することが可能になる

自動車のセンサー情報を社会全体で共有
 4つめのテーマである“The Freedom of Energy(エネルギー問題からの解放)”では、ガソリンという現代の自動車が抱える制限についての解決に向けた話がされた。自動車はガソリンに代表される化石燃料、またはバッテリーからの給電で動いているので、それらがなければ動かなくなってしまう。「例えば山間部や砂漠でガソリンや電気がなくなってしまえば、ドライバーは炎天下に放り出されることになり、場合によっては命が危なくなる。そこで、ITの技術を活用して常にスマートフォンやPCなどで自動車の状態をチェックし、目的地までガソリンや電気が足りないようならそれを補充するよう運転手に促したりすることができる」と述べ、自動車の管理にITを活用していくことの必要性を訴えた。

 さらに、ツェッチェ氏は、「我々は燃料電池で動作するBクラスをすでに出荷開始している。我々の燃料電池車はすでにカリフォルニア州で購入していただき、使われている」と述べ、燃料電池車や水素自動車などについてダイムラーAGが積極的に取り組んでいることをアピールした。

 5つめのテーマである“The Freedom of Information(情報アクセスの改善)”では、「現在でもカーナビ上に渋滞情報を表示しているが、自動車同士が直接通信したり、情報を互いに活用したりするシステムができあがっていない。自動車にもっとセンサーを搭載し、その情報を収集すれば、問題のある道路を把握し他のドライバーに通知することが可能になる」と述べ、より多くのセンサーを搭載し、その情報を自動車同士で共有することや、クラウドサービスで活かしていくインフラの導入を目指すべきだと指摘した。その例としてダイムラーAGが研究している、情報共有の実証実験などについて説明した。

 最後にツェッチェ氏は、「こうした変化は一夜で起きるものではない。ステップバイステップに実現していく必要があり、我々は運転をもっと楽しくする必要があり、そのために情熱をもって取り組まなければならない」と述べ、講演をまとめた。

4つめのテーマはThe Freedom of Energy(エネルギー問題からの解放)PCやスマートフォンなどを利用して自動車の状況をモニターする

(笠原一輝)
2012年 1月 17日