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ヤナセ100周年記念デザインコンテストのスペシャルカー製作プロジェクトが始動

最優秀賞を受賞した大木佑太さんのアイデアを実車のGLAに反映

 ヤナセが創業100周年を記念してモービル 1と共同で実施したデザインコンテスト「こんなメルセデスに乗りたいコンテスト」は、5月19日に受賞作品が発表されたあと、最優秀「ヤナセ100周年賞」の受賞作品のスペシャルカー製作が進められている。

ヤナセ100周年記念デザインコンテスト、最優秀は「GLACLASS+100km」の大木佑太さん

http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20150519_702600.html

 まずはコンテストの概要を振り返ると、自動車関連の分野で学んでいる学生を対象に「こんなメルセデスに乗りたい!」という題材で、理想とするスペシャルカー(ドレスアップカー)のデザインを公募。3月から約1カ月間の募集期間を経て、最優秀賞となる「ヤナセ100周年賞」を獲得したのは、千葉大学 大学院 工学研究科 製品デザイン研究室の大木佑太さんが描いた「GLACLASS+100km」だった。

ヤナセ100周年賞を受賞した千葉大学 大学院 工学研究科 製品デザイン研究室の大木佑太さん。自身がデザインした「GLACLASS+100km」のコンセプトや、デザインを行ったときの心境などを語ってくれた

 このデザインコンテストでは、受賞作品のデザインを使って実車化を行い、そのスペシャルカーをプレゼントすることも賞典となっている。自動車関連の学生を対象にしたのは、未来のある学生に実際のカーデザインの現場を知ってもらい、自分のデザインしたクルマを作り上げる喜びを感じてほしいとの願いが込められている。そのため大木さんは、自らがデザインした「GLACLASS+100km」を製作するため、現在は外装パーツのモディファイに取り組んでいる。

 最優秀賞を受賞した大木さんは「受賞の連絡が来たときは信じられない気分でした。研究室ではカーデザインの勉強をしてますが、デザインを描く対象となっていたのが理想のクルマや好きなスタイルなので、実際に販売しているクルマをベースにデザインをしたことはなかったので難しい作業でした。理想的なクルマなどは、ホイールベースやボディーサイズなどの実際の要件がないので自由度が高いのです。ですが、今回のコンテストの作品は要件があり、実車との整合性を取ることは今まで経験したことがなく、ハードルが高い部分でもありました」と語り、コンテストに提出した作品製作について振り返ってくれた。

「ゴツゴツ感を強調して迫力のあるGLAをデザインしました」と語る大木さん

 では、自らデザインした「GLACLASS+100km」は、どのような特徴やコンセプトで製作したのだろう。

「今回のデザインコンテストはベース車両がGLAだったので、よりメルセデス・ベンツのクロスカントリー車やSUVとしての力強さを与えようと思い、ウニモグやG クラスを参考にしました。フロントまわりは、グリルとサイドのダクト部分の造型に目が行くような迫力を持たせています。カラーリングでは、フロントバンパーとフェンダー、リアバンパーの一部をマットブラックにすることで迫力を出しました。普段はスタイリッシュな方向のデザインを描くことが多いのですが、コンテストではほかの人もスタイリッシュさで押してくると思ったので、ボクはゴツゴツ感を強調して迫力のあるGLAをデザインしました」(大木さん)と、GLAをより力強いSUVモデルに仕立てることを想定し、デザインを描いていったそうだ。

 先述のように、このデザインコンテストではカーデザインを描くだけではなく、デザインを実車に落とし込んだスペシャルカーを製作してプレゼントすることも賞典に含まれている。

 そこで実車製作に協力しているのがホシノインパル。SUPER GTやスーパーフォーミュラに参戦する以外にも、エアロパーツやオリジナルパーツの製作を行っているメーカーであり、エアロパーツのデザイン性の高さには定評がある。

車両製作を担当するホシノインパルの金子哲也取締役

 ホシノインパルの金子哲也取締役は、この企画について「学生を対象にしているところや、実際にクルマを作り上げてプレゼントするというのは非常にすばらしいコンテストだと思います。実車にパテを盛って削り、自分の描いたデザインを形に起こすことは学校のプログラムでは不可能なことだと思います。学生にとってかけがえのない経験になることでしょう。ですので、私の持っているノウハウやアイデアを最大限に伝えて、大木さんのデザインしたクルマを作り上げていこうと思います」と述べ、コンテストのすばらしさと車両製作に向けての考えを語ってくれた。

 このように、大木さんがデザインしたGLAはホシノインパルのサポートを受けて製作が進んでいる。

デザインを忠実に実車に落とし込む作業は、困難な部分も発生する。そこで、金子氏は自らがエアロパーツをデザインした経験を大木さんに伝え、どのような方法をとればデザインを再現できるかを考えていった
フロント、リアともに細部の造型を作り込むにはさまざまな要件があるので、金子氏と相談しながらデザインを決めていった
ラインを引いては遠くから見てという作業を繰り返し、フロントの形状を決める

 自らのデザインを実車に落とし込むというこれまでに経験のない作業について、大木さんは「デザインするときも実車のGLAをベースに描いたので、ある程度はそのままの形になると思っていましたが、実車にはさまざまな要件があって上手く再現できないこともあります。とても勉強になることで、理想的なデザインだけを施しても作業が進まないということです。具体的にはグリルやサイドダクトの形状などが問題点で、グリルは大口径にするとリインフォースが見えてしまい、ダクトはデザインのような奥行きをどのように表現するかが課題となっています」と明かす。

 実際にデザインを実車に施す作業のなかで、これまでにない作業での難しさを感じているようだ。だが、金子氏は「大木さんのデザインをいかに実現するかが我々の仕事なので、描いてもらったデザインのように実車を作り上げます」と語り、協力し合ってGLAのスペシャルカーを完成させていくとのことだった。

 今後は、ボディーパーツ細部の作り込みとなる最終段階を経て、8月下旬の実車披露に向かうことになる。

6月25日時点のデザイン。スリーポインテッドスター横のウイングやグリル下の造型をどのようにするかを検討していた
金子氏のアドバイスを受け、細部の造型を調整する大木さん。クレイモデルを削ったことはあるが、1/1の実車でこのような作業を行った経験はないという
7月2日時点でのGLAのようす。サイドダクトに奥行きが出て、グリルにも力強さが感じられるようになった。フロントまわりは、思いどおりの造型に近づいてきたようだ
リアまわりの作業も進んでいる。フロントと同様にディフューザー形状が用いられ、ダクトを設けることで迫力のあるスタイリングを形成している

(真鍋裕行/Photo:高橋 学)