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ブリヂストン、路面状況をリアルタイムに認識する「CAIS」に基づいた路面状態判別技術説明会
ネクスコ・エンジニアリング北海道とライセンス契約を締結。今冬から実用化
(2015/11/26 00:00)
- 2015年11月25日発表
ブリヂストンは11月25日、「CAIS(Contact Area Information Sensing)」コンセプトに基づく路面状態判別技術の実用化に成功したと発表。同日、同技術についての説明会を都内で開催した。
CAISは2011年9月に発表された技術で、タイヤから接地面の情報を収集・解析し、路面情報やタイヤの状態を把握することが可能な同社のセンシング技術の総称。降雪などによる路面状態の急激な変化をリアルタイムに感知することを可能とし、刻々と変わる路面状態を車載解析装置によって「乾燥」「半湿」「湿潤」「シャーベット」「積雪」「圧雪」「凍結」の7つの区分に判別。その判別結果を車内ディスプレイに表示し、ドライバーへタイムリーに伝達することで安全運転を支援するというもの。
2011年11月からネクスコ・エンジニアリング北海道と共同で試験を進めており、今回ネクスコ・エンジニアリング北海道とライセンス契約を締結。2015年度冬季から、世界初のタイヤセンシング技術として実用化されることが決定している。
説明会ではブリヂストン 執行役員 中央研究所担当 森田浩一氏、ブリヂストン 中央研究所 研究第5部 タイヤエレクトロニクス研究ユニット 花塚泰史氏、「CAIS」の開発に携わった情報・システム研究機構 統計数理研究所 所長 樋口知之氏が登壇して概要を説明。
CAISの詳細な紹介は花塚氏から行われた。花塚氏は「CAISはタイヤと路面が接地する領域の情報を取得し、我々にとって有益な情報を取得する技術。タイヤはこれまで走る・曲がる・止まる・支えるという4つの機能で車両を文字通り足下から支えてきた。自動車を人間に例えるならタイヤは足。我々の足も、同じように歩く・曲がる・止まる、そして我々の身体を支えるという機能を有している。しかし、我々の足にあってタイヤにないもの。それが“感じる”という機能で、その“感じる”という機能をタイヤに付与することでタイヤに新しい価値を創出し、社会に安心・安全という価値を提供できると考えた」と、CAIS導入の経緯を語る。
このCAIS技術の実現に向けては、リアルタイムにタイヤの摩耗状態が分かる摩耗推定システムと、路面状況をリアルタイムに知ることができる路面状態判別システムという2つの技術が鍵になるという。
なかでも路面状態判別システムは、タイヤの内面に取り付けられた加速度センサーがタイヤの周方向(回転方向)の加速度を検出することによって実現するもので、「加速度センサーからの情報は無線送信機を介して瞬時に転送される。車両に搭載される解析装置はそのデータを分析し、(7つの区分のうち)どの路面に一番近いのかを判断して出力する。分析には、加速度センサーの情報に内包される路面状況ごとの特徴を数値化すること、そして数値化された情報を元にあらかじめ設定された基準と照らし合わせて路面状態を出力する2つの過程がある」(花塚氏)という。
具体的に説明すると、タイヤは真円を保ったまま(接地しない状態)低速で回転するだけなら回転方向(周方向)にかかる加速度はゼロになるそうだが、実際にはタイヤは車両に取り付けられ、荷重を受けながら回転している。このときタイヤが路面に接地した際、路面と平行になるように平らになり、加速度センサーが接地端部に差し掛かると円軌道から直線軌道に急激に変化。その変化を見ているという。その変化を振動波形にすると、路面に接地した瞬間と、路面から離れる瞬間で互いに異なる2つのピークを持つ波形が示されることになる。
同社はこの加速度センサーを付けたタイヤでさまざまな路面状態で計測を実施。その結果、路面状況に応じて特徴的な波形が生じていることが判明したといい、「例えば湿潤路面では、タイヤは路面と接する前に水膜と接するので、それに応じて大きな加速度振動が得られる。一方で、凍結路面を走行している場合、タイヤは微妙に滑りながら回転している。従って、その滑りによって生じる加速度振動が波形に現れる。このように、路面状況によって異なる波形の特徴が判明したのは、我々がタイヤメーカーとしてタイヤの物理をよく理解できていたからこそ分かったこと」と、花塚氏は胸を張る。
こうした特徴を機械に判断させるには、路面状況に応じた波形の特徴を数値化する必要があるとし、「これは特徴のある領域の信号を抽出し、その後、抽出した加速度信号ごとにフィルターをかけ、特徴が現れる周波数帯のみの振動を取る。これによって特定の領域の、特定の周波数帯の振動レベルとして特徴を数値化する」「数値化された特徴を使って路面状態を判別するわけだが、それには何らかの基準が必要になる。我々は最適な基準を得るために最先端の統計数理の領域にある機械学習技術を導入した。これによって高精度に、リアルタイムに路面状態を7つに判別できるシステムを完成させた」と解説を行った。
また、CAISの開発パートナーとなったネクスコ・エンジニアリング北海道が今回導入した冬期道路管理システムについても触れ、「NEXCOグループでは凍結しそうな路面に対して凍結防止剤を散布する作業を行うが、(今回のシステムでは)我々のCAISを搭載した車両でまず走行し、道路の状況を線的に表示。これによりどの場所が凍結していて、どの場所が乾燥しているのか一目瞭然になる。これだけでも価値はあるが、今回はさらに後続の凍結防止剤散布車に無線で情報が転送され、この情報をもとに凍結防止剤散布車は確実に凍結防止剤を撒くべきところに撒き、その撒く量も最適化するといったことが可能になる。このシステムは実際に今冬から運用を開始する」「この冬季路面管理への適用は、非常に大きな価値を社会に貢献できると思っているが、さらにこの価値を一般の車両にも適用し、社会に広く貢献していきたいと考えている。例えば、ドライバーが目で見ても分かりにくいブラックアイスバーンを事前に検知し、それをドライバーに瞬時に警告できるようになる。そして昨今、自動運転に代表されるように高度化が急速に進んでいるが、CAISを導入することでさらに安全な自動車制御ができるようになる」と述べ、今後CAISの普及に取り組むとともに、自動運転車への適用も視野に入れるとした。
なお、説明会の後に行われた質疑応答で、CAISの普通車への導入時期について「2020年の東京オリンピックに間に合わせたい」との予測がアナウンスされている。