ブリヂストン、「持続可能な」社会の実現に向けたタイヤ将来技術の説明会 2050年を見据えて100%再生利用可能な素材へ |
ブリヂストンは5月23日、「『持続可能な』社会の実現に向けたタイヤ将来技術について」と題した説明会を報道陣向けに開催した。この説明会は、2050年を見据えて同社が取り組んでいるタイヤ技術を紹介するもので、最終的にはタイヤの100%サステナブルマテリアル化を目指している。
技術説明を行ったのは、ブリヂストン取締役 常務執行役員 製品開発管掌 森本芳之氏、執行役員 タイヤ基礎開発担当 濱田達郎氏、執行役員 環境担当 江藤尚美氏の3名。主に森本取締役が、タイヤ技術の将来像について語った。
取締役 常務執行役員 製品開発管掌 森本芳之氏 | 執行役員 タイヤ基礎開発担当 濱田達郎氏 |
会場に展示された「非空気入りタイヤ」装着車両。これも再生可能資源を使用すると言う |
ブリヂストンは、2011年5月に持続可能な社会の構築に向けた環境宣言をリファインしており、環境活動の方向性を明確化している。森本取締役によると、同社は150を超える国々で企業活動を展開しており、ぶれない活動の方向性が大切だと言う。
この環境宣言には、「自然と共生する(自然共生社会)」「資源を大切に使う(循環型社会)」「CO2を減らす(低炭素社会)」の3つ社会の実現がうたわれており、この社会の実現のため、低燃費タイヤ(CO2を減らす)、ランフラットタイヤ(スペアタイヤをなくすことで、資源を大切に使う)、環境負荷物質を代替する製品(自然と共生する)などの開発を行っている。
ブリヂストングループの環境宣言 | 環境活動 |
ブリヂストンは世界最大のタイヤ会社・ゴム会社として、将来にわたってモビリティ社会を支えるため、資源消費と環境影響のデカップリングに取り組んでいく。このデカップリングというのは、地球の人口や世界の経済活動(GDP)に比例して資源消費や環境に影響を与えるのではなく、2050年にはCO2排出量を2005年比で50%以上減らすことで低炭素社会を実現し、生態系に対する影響を低減することで、生物多様性に貢献していく。また、タイヤの資源循環を図ることで、資源生産性の向上に寄与し、2050年の目標として100%サステナブルマテリアル化を掲げている。
環境認識 | 人口や経済成長とのデカップリングを目指す | 2050年の中期目標 |
森本取締役は、現在のタイヤの構造について語り、トレッドやサイドウォールがゴムによって構成されているほか、内部材としてビードには鋼材が、プライにはゴムと補強繊維が使われていると言う。原材料の構成としては、天然ゴムや合成ゴム、カーボンブラックなどゴム関連で3/4に達しており、性能を発揮するために多様な素材を使用している。これらの素材を、供給面、事業面、環境面のすべての側面で持続可能であることが必要で、100%サステナブルマテリアル化で実現していく。
タイヤの構造と、使われている素材 | すべての側面で持続可能な構造を実現していく | 100%サステナブルマテリアル化を実現することで、環境負荷を低減する |
そのためには、さまざまなタイヤ技術の投入も必要だが、「化石資源などのように消費を続けるといずれ枯渇すると予測されている“以外の”ものを使っていくことが必要」と言い、新たな再生可能資源を用いたり、これまで化石資源を用いていたものを再生可能資源に置き換えたりという取り組みを行っていく。
新たな再生可能資源を用いる取り組みが、「ロシアタンポポ」や「グアユール」を用いた天然ゴムの生産。現在は天然ゴム資源として、パラゴムの木を熱帯において栽培しているが、温帯でロシアタンポポを、乾燥地域でグアユールをといった、栽培地域、栽培品種の多様化を行う。
これまで石油を用いて作ってきた合成ゴムに関しても、バイオマスを利用した合成ゴム作りを行い、タイヤに必要なカーボンブラックに関してもバイオマス由来のものに置き換えていく。ただ、バイオマスについては、可食性由来のものではなく、なるべく非可食性由来のものを用いていきたいと語った。
さまざまなタイヤ技術を投入 | 素材も再生可能資源に変更していく | |
原材料から変更していく | 天然ゴム資源を拡大 | 繊維も木質バイオマス由来のものに |
合成ゴムもバイオマスから作る | カーボンブラックもバイオマス由来に | ゴムの配合剤については、さまざまなバイオマスを使用する |
説明会場に展示されたバイオブタジエン | セルロース繊維 | グアユール由来の天然ゴム |
ロシアタンポポ由来の天然ゴム | 技術開発のマイルストーン | さまざまなテクノロジーを投入することで、2050年以降に非再生資源の使用をゼロにしていく |
ブリヂストンは、これらの素材変更を基本的には同社のみで行っていく予定で、濱田執行役員は、「すでにゴムを加工する施設は持っている。最後の薬品(ゴムへ配合するさまざまな化合物)については、(現在、施設を持っていないため)難関かなと思っている」と言い、垂直統合のモデルでビジネスを行っていく。原材料から生産する体制を整えることで、経営的なメリットも見い出していく。
これらの取り組みを世界最大のタイヤ会社・ゴム会社であるブリヂストンが行うことで、世界経済の成長や人口増加に伴うことのないよう、地球環境負荷の低減を目指していく。
先進国のタイヤメーカーは、天然素材を用いたタイヤ開発に積極的に取り組んでいるが、気になるのはコスト面への影響。新興国にもタイヤメーカーが存在し、コスト面で圧倒的な差が付くようであれば、世界的に特別な規制が成立しない限り、販売面で不利な状況となっていく。コレに関しては、「企業である限りコスト競争力を維持した状態で100%サステナブルマテリアル化に取り組んでいく」と言い、他社との競争環境の中、持続可能な社会の実現を目指していく。
(編集部:谷川 潔)
2012年 5月 24日