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ミシュラン、危険物輸送のタンクローリーに初めて「X One」を新車納入

最大需要地の東京での導入も初。輸送業界の問題点をタイヤから解決

2016年2月15日 開催

 日本ミシュランタイヤは2月15日、東京都江戸川区に本社を構える品川倉庫運輸が新車導入するタンクローリーに、同社のトラック・バス用ワイドシングルタイヤ「X One」が新車装着されたことを受け、都内で報道向けの納入報告会を実施した。

品川倉庫運輸に「X One」を装着して品川倉庫運輸に新車納車された日野自動車「プロフィア」
X Oneシリーズの「XDN 2」を装着。タイヤサイズは455/55 R22.5
トレッドパターンには、水平方向と垂直方向の両方に波状のサイプを入れ、隣り合うブロック同士が支え合う「ダブルウェーブサイプ」などの技術を投入
タイヤ側面に小さな「ミシュランマン」を設定。左手を挙げてプラットフォームの位置を教えてくれている
車両前方側の駆動輪にもミシュラン製の「XZN+MIX ENERGY」を装着。危険物を輸送する16kL積みのタンクローリーでは前2軸式が主流なので、この取り組みが成功した場合には水平展開によって効果を拡大できるという
タンクの後方やリアタイヤのマッドガードなどにミシュランのロゴマークが装着されていた
車両の前後に「危」「毒」の標識を装着
車体後方には積載物や最大積載量を表示するパネル、配管バルブなどを設置
プロフィアに装着したX Oneの前でフォトセッションに臨む品川倉庫運輸株式会社 代表取締役 若林権太郎氏(左)と日本ミシュランタイヤ株式会社 トラックバスタイヤ事業部 執行役員 高橋敬明氏(右)

X Oneを採用した初の「危険物を輸送するタンクローリー」「東京都の会社」

日本ミシュランタイヤ株式会社 トラックバス事業部 マーケティング部 ビジネスセグメントマネージャー 尾根山純一氏

 報告会では、日本ミシュランタイヤ トラックバス事業部 マーケティング部 ビジネスセグメントマネージャーの尾根山純一氏からX Oneの製品コンセプトや日本導入が始まってからの流れ、導入によるメリットなどが解説された。

 このなかで尾根山氏は、X Oneが持つ最大の効果を、従来型のダブルタイヤから変更した場合、1軸あたりで約100kgの車両軽量化が実現されることであると紹介。さらに装着によって7種類のメリットが得られるとして、車体の軽量化によってトラックで求められる積載量の拡大、軽量化に加えてタイヤの低燃費性能による燃料代の削減、時間も手間も必要となるダブルタイヤの内側タイヤをなくすことによるメンテナンスの簡略化、左右4本から2本になって車体を支える強靱さによるパンク率低減などを大きなものとして挙げ、これ以外にも転回時などにタイヤの摩擦が減ることなどによる操作性の向上、廃棄タイヤを削減できることによる環境負荷低減、メーカーが本格導入した場合の車両設計の自由度拡大などを口にした。

 日本国内での需要拡大は、排出ガス規制の「2011年ポスト新長期規制」のスタートや安全基準の強化による装備充実などを受け、近年のトラックは重くなっていく一方。物流に使われるトラックは、重量が増えてしまうと積載できる荷物がその分だけ減ってしまい、仕事としての生産性に直結してしまう。また、現在は落ち着きを見せているものの、過去には燃料価格が高騰する時期もあり、ミシュランタイヤのユーザーからは、こうした車両の重量増や燃料費に対しての解決策を望む声が寄せられたという。

 これを受け、同社ではX Oneを積極的にアピールするようになったほか、今回のようにそれまで導入実績がなかったジャンルのトラックでX Oneが導入されるタイミングで報道向けの納入報告会を行なってきた。輸送業界ではジャンルや車両の運用方法によってタイヤに求められる性能も大きな差があることから、導入した会社について紹介することにより、似たようなジャンルの会社にも利用を提案しているのだ。

 Car Watchでもこれまでに多くの納入報告会を取材してきたように、すでに多彩なトラックにX Oneが採用されていているが、今回は「危険物を輸送するタンクローリー」「東京都の会社」として初のX One採用となった。なお、運送業の需要は各都市の経済規模を背景としており、トラック需要も東京都が国内最大の需要地域になっているという。

以前からダブルタイヤをシングル化することを目的としたタイヤは存在したが、X Oneはさらなるワイド化を実現しているほか、駆動輪としても使えることが大きなポイント
大型のタンクローリーで限定的に利用されていたX Oneだったが、「2011年ポスト新長期規制」に対応するため車両が重くなったことを受け、1回に運べる積み荷を維持したいとの需要から単車でも装着されるようになった
車両重量の軽減は多くのトラックユーザーが持つ要望
2013年にX Oneを導入したタカラ物流システムは、排出ガス規制に適合させつつ荷物の積載量をキープ。同時に3.5%の燃費向上も計測している
X Oneの販売見込みは、2015年〜2016年、2016年〜2017年とも約1.6倍増を計画している
2013年以降はさまざまなジャンルで使われるトラックに採用が拡大。今回は危険物を輸送するタンクローリーに新車装着された
危険物を輸送するタンクローリーでX Oneを採用するメリットなど。東京都でのX One初導入ともなった
品川倉庫運輸株式会社 代表取締役 若林権太郎氏

 また、導入する側からの視点を、品川倉庫運輸 代表取締役の若林権太郎氏が紹介。若林氏は、タンクローリー業界が抱える2つの課題について取りあげ、まず「ドライバーの確保」については、輸送業界全般に言える問題点ながら、さらに危険物の輸送を行なうタンクローリーではドライバーに危険物取り扱いの免許、さらに牽引免許などが求められ、石油元売り会社などでは24時間稼働といったケースもあり、ハードルの高さと労働条件の過酷さで人材確保が大変になっていると明かす。2つめは「積載重量の確保」で、安全規制、環境規制などの強化で車両は重くなる一方であることに加え、タンクローリーではさらに消化器や静電気の帯電を防ぐ装置などを備え付けることに影響され、積載できる重量の確保は徐々に深刻な問題になってきていると言う。

 この課題解消のため、若林氏はさまざまなことに取り組んでいると説明。ドライバーを確保するために免許を取得するための支援、SNSを活用したPR、社員たちと居酒屋などで直接コミュニケーションしたりと策を巡らせているが、「やはり重要なのはお給料の確保、アップであるというのが私の実感です」と語る。自身が会社に入社した1999年ごろから取引先からの運賃がどんどん下がっていく状態となっており、泣く泣く社員の給料をカットしたものの、なんとかして給料を上げたいと思い続けてきたという。簡単なことではないが、売り上げを上げ、コストを抑えて利益を高めることを目指し、取引先から評価されることで売り上げを上げて給料をアップすることが大切だとする。

 そのために5年間無事故で営業を続け、これが取引先から大きく評価されてサーチャージや月額運賃の最低保証の値上げ、運賃単価の値上げといった要求をすべて認めてもらう結果になった。これにより、賞与を出すことができたという。この実現には優秀なドライバーがよい仕事をできる環境を整えることが会社として重要な役割であると語り、ドライバー同士の学び合いシステムの導入や取引先の担当者がドライバーを直接評価できるシステムなどを導入している。

「積載重量の確保」では、車両総重量22tという制限のなかで、さまざまな規制によって車両重量が増え、その半面として運べる荷物量が減ってしまっているが、とくにタンクローリー業界では、入れる液体に影響しないステンレス製のタンクを使う場合、車両は10年程度で耐用年数が終わっても、ステンレスタンクは20年〜30年ほど使い続けられる。しかし、近年では車両が重くなることで、せっかくのタンク容量を生かせないケースが増え、これが今回のX One導入のきっかけになったと話す。ミシュランが協賛する「トラックドライバー甲子園」の会場でX Oneのことを知り、テストとして既存のタンクローリーに装着して運用してみたところ、2015年11月、12月の燃費が前年同月比で10%以上改善したとのこと。また、ドライバーに対するインパクトについても期待しており、採用活動の宣伝としても効果を期待しているという。

 これらの効果を受け、今回の新車導入に合わせてX Oneを導入。これまでなら最大積載量は11.5tの車両で、積載量が260kg増加した11.76tを実現したことも大きな成果であるとアピールしている。今後は2台のX Oneをグループ内で検証していく予定で、車両が軽くなったことで空荷時の制動力が高まり、またセットとなる空気圧チェックシステムを見ることでドライバーの安全意識が高まって安全性が向上するといった効果が出ることも期待していると語っている。

タンクローリー業界が抱える2つの課題は「ドライバーの確保」と「積載重量の確保」
ドライバーの確保で重要なのは「お給料のアップ」
優秀なドライバーがよい仕事をできる環境作りをして、売り上げをアップさせ、給料をアップするという循環
優秀なドライバーが乗務する車両の助手席に座り、車内がきれいだったり、抜け道に頼らないといった日常的な心がけをドライバー同士で教え合う「学び合い」などを行なっている
車両重量と積載重量を合わせた車両総重量は上限が決まっているので、車両重量が増加すると積載重量はその分だけ減ってしまう仕組み
タンクローリー業界独自の課題として挙げられた「タンク載せ替え」の問題。これが今回のX One導入のきっかけになったとのこと
X Oneの約100kgやアルミホイールの導入などによって車両重量が抑えられ、積載量が従来比で260kg増加した
X One導入による新たな試みにより、最終的な給与アップに結びつけたいと期待している

(編集部:佐久間 秀)