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岡本幸一郎のテスラ「モデル S」の自動運転機能で仙台〜東京を無充電一気走り

往路は山形の雪道でデュアルモーター4WD+ミシュランスタッドレスの実力を確認

 テスラモーターズは2016年1月、EV(電気自動車)の「モデルS」に日本国内で自動運転を段階的に実現するソフトウェアの提供を開始した。ソフトウェアのアップデートで実現する「オートパイロット」と「オートレーンチェンジ」がどのようなものかを体験するため、東京から仙台まで実際に走ってみることにした。なぜ仙台を目的地としたのかにも理由があるのだが、それはのちほどあらためてお伝えしよう。

 東京の青山にあるショールームで「モデル S P85D」を受け取り、首都高速から東北自動車道を目指す。オートパイロットは、ディスプレイの右上にハンドルのアイコンが出ていればスタンバイOKで、クルーズコントロールのレバーを2回手前に引くと“ポンポン”という電子音とともに起動する。一方、オートレーンチェンジは、オートパイロット実行時にウインカーを出すと、自車の周囲360°の状況をセンサーで確認し、自動的に車線を変更するという機能。ただしこのとき日本では規制によりハンドルを握っている必要がある。

東京の青山ショールームを出発

 両機能は基本的には高速道路や自動車専用道路での使用を想定しているのだが、今回はどのように制御するのか見るため、市街地を含めアイコンが出たときには積極的に使ってみた。

 テスラとしても市街地での検証は行なっているとのことで、実際に試すと、ときおり制御の範囲を超えた状況になることもあるが、それに気をつけていれば結構使えるという印象。首都高速では、Rのきついコーナーもあるところ、法定速度に設定していれば走行ラインを外すことなくトレースしていく。かなりの角度もグイッとハンドルを切り込むのはなかなかインパクトがある。

 往路は100km/hの速度域を維持しつつ、必要に応じて車線変更に伴う加減速を行なった。加減速のコントロールが緻密で素早いのも、さすがはリニアにトルクを生むモーターで駆動するEVなればこそ。「レンジモード」をONにすると、バッテリーの持ちを優先して、加速の仕方や空調の効きがややマイルドになる。

 さらには、Rの大小や移りたい車線の交通量など、さまざまな状況でオートレーンチェンジも試したところ、これまた驚かされた。動作は非常に的確で、信頼性の高いものだった。機械が安全をしっかり確認した上で、大丈夫なときには素早くステアリングを切って隣りの車線に移り、スッとヨーを収束させる。移りたい車線が混雑している場合には、安全な車間距離が確保された状況になるまで待ってからレーンチェンジを行なう。目の前のディスプレイには、周囲の状況がリアルタイムに表示され、認識している車線のほか、車高の低いクルマなら乗用車の、車高の高いクルマならトラックが表示されるのも、分かりやすいし面白い。

 欲をいうと、これぐらい俊敏に車線変更してくれたほうがよい状況もある反面、やや横Gの立ち上がり方が急で、もう少し穏やかでもよいかなと感じた状況もあった。このあたりは徐々に洗練されていくことだろう。左側の走行車線を走行していて、インターチェンジなど左側から合流車両があるという状況で、ごくまれに衝突する可能性を感じて自らハンドルを切ったこともあったのだが、そういう場合でも最終的には回避すると思ってよいそうだ。これについては制御をさらに進化させるのもそうだが、車車間通信の普及に期待したほうが話は早そうだ。

 ハンドルを握っている必要があるとはいえ、あまり力をかけず、軽く手を添えている程度でも大丈夫。車線変更するのをやめようと思った場合は、ウインカーを戻せばオートレーンチェンジ機能が解除される。

 途中、休憩をはさみつつ北へ向かったのだが、こうして長時間、長距離を走るほどに、オートパイロットのありがたみを感じる。速度の調整はもとより、車線と車線の間の中央を自動的に維持してくれる機能の恩恵も大きい。同様の機能をすでに導入しているクルマは世の中にいくつか存在するが、テスラのものもかなり完成度が高い。もともとクルマの直進安定性が高いことが根底にあるのに加えて、この日はかなり横風が強かったのに、的確に修正舵を加えて車線内をキープして走ってくれる。

 高速道路を長距離走るときに、ただレーンに沿って走るだけでも実はかなり神経を使うものだ。それを、こうして性能の高い機械に任せることができると疲労がぐっと小さくてすむ。さらには、このクルマは余力ある動力性能と、先で述べたオートレーンチェンジにより、車線変更も安全確認まで含めて機械がやってくれる。これらの合わせ技により、かつて味わったことのないほど疲れ知らずであった。

 途中、急速充電器のある箇所に立ち寄り充電する。デュアルモーターのP85Dには今シーズンから用意された19インチサイズのスタッドレスタイヤ「ミシュラン X-ICE XI3」を装着しており、山形の蔵王方面を目指すことにした。チャデモに対応するアダプターも用意されているので急速充電器が使えるのもありがたい。

急速充電器のチャデモに対応するアダプターが用意されている
充電状況はスマートフォンでも確認ができる

 山形蔵王PA(パーキングエリア)と一体になった山形蔵王ICで下りて、西蔵王高原ラインにつながる道を上ると、最初は除雪されていた路面も少し進むと圧雪となっていた。デュアルモーターの実力を試すにはもってこい。あたり一面が雪景色でとてもきれいだ。モーターがリニアにトルクを発生するので、滑りやすい路面でもコントロール性に優れることに加えて、4輪駆モデルのP85Dならフロントでも引っ張ってくれるので、よりイメージした走行ラインに乗せやすい。滑ってもリカバリーが早いこともデュアルモーターならでは。さらには緻密に4輪の駆動力を制御するESCとミシュランスタッドレスも効いて、雪道におけるライントレース性はすこぶる良好だ。

ミシュランスタッドレス+デュアルモーター4WDと相まって、ライントレース性は良好

 もう1つが回生ブレーキだ。「標準」と「弱」を選べるようになっていて、雪道を走るときにはやや強めに回生する「標準」の按配がよい。ブレーキを踏むことなく、アクセルだけで加減速をコントロールできてとても運転しやすいこともEVのテスラならでは。また、P85Dなら後2輪ではなく4輪で回生するせいか、滑りやすい路面でもより挙動が乱れにくく感じられた。

 せっかく蔵王に来たので、有名な樹氷を観に行くことにした。標高が高い地点まで行くと冷たい風が吹いていたが、最高の景観を楽しむことができた。

 下山して、予約していた仙台ロイヤルパークホテルまで行くためにはバッテリー残量が足りないため、山形市内の日産のディーラーに充電しに立ち寄った。リーフを販売している日産では多くのディーラーに急速充電器を設置していて、利用についてはメーカーを問わず開放されている。テスラユーザーにとっても心強い話だ。30分間の急速充電で、料金は540円。

 そして、仙台ロイヤルパークホテルへと向かった。冒頭でも述べた、今回なぜここを目指したかが、ホテルの地下駐車場に行くと分かる。写真をご覧のとおり、テスラ専用の超急速充電器を設置する「スーパーチャージャーステーション」があるのだ。

仙台ロイヤルパークホテルの地下駐車場にあるテスラ専用の超急速充電器「スーパーチャージャーステーション」
仙台ロイヤルパークホテル マーケティング部の萬崎さん

 仙台ロイヤルパークホテル マーケティング部の萬崎さんにお話をうかがったところ、「テスラさんから当ホテルの所有者である三菱地所に対して働きかけがあり、三菱地所としても、環境保全への取り組みの一環として協力するはこびとなり、先月スタートしたばかりです。これで仙台にお立ち寄りいただくと、首都圏から本州の最北端までを往復できるようになりましたし、仙台を拠点にしていただいて、東北をまわっていただくのもよいでしょう。当ホテルはもともとクルマでいらっしゃる方が9割近くで、高速道路からのアクセスもよい立地なので、ぜひ使っていただければと思います」とのことだった。テスラオーナーには朗報である。

仙台ロイヤルパークホテル

 出発前に仙台市内を少し走って、アップデートされて搭載されたばかりの「ルーディクラス(馬鹿げた)」モードを試してみたところ、尋常ではない速さ! 以前の「インセイン」モードも相当に速かったが、トルクの盛り上がり感があったところ、ルーディクラスモードは盛り上がりを感じる時間もないほど、最初からすさまじく速い! “馬鹿げた加速”とテスラ自身が言うこのモードの加速性能は0-100km/hが3.0秒。アクセルを踏んだ次の瞬間にはすでに高い速度域に達している。前日も高速道路の上で試してどのくらい速いか雰囲気は感じていたが、ゼロスタートだとなおのこと速さを実感する。

通信機能を使ってクルマのさまざまな機能がアップデートされる

 もう一度ホテルにもどって満充電の状態にし、帰路はどこまで無充電で走ることができるのかを試す。走り方は、高速道路はすべてオートパイロットまかせで車速は80km/hにセット。2名乗車で空調は使わず、シートヒーターのみ入れた。果たしてたどり着けるのか?

 ナビゲーションに表示される目的地までの距離と、メーター内に表示される走行可能距離を見ると、走行可能距離のほうが100kmほど長いままずっと推移していて、交通状況や上り下りの勾配の変化によって、微妙に上下するという感じだった。また、初日は風が強かったが帰路はあまり吹いておらず、直進安定性の高さをますます実感した。さらに往路でも感じたとおり、クルマが人間よりもずっと的確に安全を確認してくれるというのは、やはり本当に助かる。このクルマなら長距離のドライブもまったく苦にならない。

 バッテリーが約半分となり、走行可能距離が246kmの表示となった上川内SA(サービスエリア)で小休止。目的地までの距離は144km。この調子で行けば余裕をもって帰ることができそうだ。その後も約100kmのアドバンテージを保ちつつ、同じようにオートパイロットを80km/hに設定して走行した。

高速道路はすべてオートパイロットまかせで車速は80km/hにセット
上川内SAで小休止

 さらに、鬼平犯科帳に着目した「温故知新」のコンセプトで知られる羽生PAにも立ち寄ったのち、同じように走行を続けてほどなく東北道のターミナルである浦和料金所が見えてきた。左側の走行車線を走っていて、いよいよ料金所にさしかかろうというときに、直進してETCレーンを目指すものと思ったところで、料金所の手前の車線が増える箇所で不意に左に大きくハンドルが切れてちょっと驚いた。おそらく左側の白線を読んだからだと思われるが、この辺りもゆくゆくは改善されることだろう。

東北道を東京に向かって走る
「温故知新」のコンセプトで知られる羽生PA

 仙台〜東京の無充電走行については、余裕を持って東京 青山のテスラショールームまで384.2kmを走りきることができた。メーター表示では、さらに112kmの航続距離が表示されており、単純計算では490km以上走ることができるということになる。しかも、この数字は夏タイヤではなく、スタッドレスタイヤで実現した数字になる。仙台から東京にかけては、大きく見るとゆるい下り坂になるとはいえ、デュアルモーター4WD+スタッドレスタイヤで490km以上を無充電で走ることができる性能はEVの可能性を広げていくだろう。

 自動運転機能について往復1000kmあまりを走って感じたのは、わずかに何度か上手くいかなかったかな感じた場面もあったものの、全体としては素晴らしい完成度だったということだ。

往復1000kmあまりを走った走行データ

 テスラが実現した自動運転は、長距離の運転をより快適にするためのものであるのはもとより、人間の負担を減らして安全性を高める上でも効果的であり、運転に自信のないドライバーにとっても心強い味方になってくれることに違いない。そんなことを身をもって体験した今回の旅であった。

(岡本幸一郎)