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JAL、安全性や業務の的確さを競う「JALグランドハンドリングコンテスト」開催
高い技術とスタッフ同士の信頼関係が支える“JAL品質”が垣間見えたコンテスト
(2014/11/6 18:15)
- 2014年10月30日開催
JAL(日本航空)は10月30日、「JALグランドハンドリングコンテスト」を開催し、報道陣に向け初めて公開を行った。
このコンテストは、JALグループ便が運航されている国内26空港でグランドハンドリング(空港のランプエリアでの航空機の離発着に関するさまざまな業務)を行うスタッフが貨物、手荷物の搬送や航空機への搭降載について、安全性や業務の的確さを競うもの。会場となった東京国際空港(羽田空港)にあるJALメンテナンスセンターの駐機場に集まった入社1年目から15年目までの42名が、日ごろから現場で鍛えた技術を競い、同時に各々が築いたノウハウを共有し学び合った。
競技は貨物をコンテナに積み込む作業の技術、品質、速度等を競う「搭載部門」と、2名1組でトーイングトラクター(以下、TT)とハイリフトローダー(以下、HL)に分かれコンテナを航空機に搭載する技術、品質、速度等を競う「車両部門」の2部門が行われた。
12名で競われた「搭載部門」
大型コンテナ(DAF)に搭載されている貨物を小型コンテナ(LD2)に移す競技。制限時間は5分。荷物は重量もサイズもさまざまで、中には破損した荷物や航空機に積載できない危険物などが混入されていて、それらを正確に判断した上で限られたLD2のスペースを無駄なく使うことが要求される。一見単純に見える作業だが、荷主や乗客から預かった荷物をいかに傷つけず丁寧に、そして危険物の搭載を防ぎつつ、定時運航のためのスピーディな作業が求められるグランドハンドリングの精神が集約されたような競技だ。なお、今回の競技はコンテナからコンテナへの荷物の移動という内容だが、ボーイング737等の小型機の場合、コンテナを搭載できないため手作業で直接機内に積み込むこととなる。
参加者の中でもっとも経験の長い旭川空港を担当する長原賢司氏は、「旭川空港では1便あたり6人前後のグランドハンドリングスタッフが担当してます。飛行機に関わる者として、何よりお客様には空の旅を楽しんでもらいたいと思ってます。到着して預けた荷物に傷がついていたり壊れていたりしたらガッカリですよね。そういうことのないように日々仕事に向かっています」「また、旭川空港は小さい空港ですからお客様から私達の仕事が丸見えなんですよ。仕事に対し気が引き締まります」と、グランドハンドリングスタッフの業務内容などについて語った。
15チーム30名が参加した「車両部門」
コンテナの搬送を受け持つトーイングトラクター(TT)担当者と、航空機に積み込むためのハイリフトローダー(HL)担当者に分かれ、それぞれの運転技術と連携確認行為を競うのが車両部門だ。搭載部門同様、定時運航に関わる重要な仕事だ。航空機の機体に直接接するHL担当者の搭載資格は、機体ごとの格納場所の構造やハッチの構造を熟知する必要があるため、小型機、B767、B777、B787それぞれ別の資格となる。
日本航空 代表取締役副社長の佐藤信博氏は大会中、自身の搭乗経験について触れ、「先日、ものすごい豪雨のなか成田発ロサンゼルス行き62便に搭乗しました。搭乗者が全員揃いドアクローズされてもなかなか出発しない。キャビンのチーフの方の『乗り継ぎのお客さまの荷物の手配で少々遅れます』とのアナウンスに、お客様は『えーっ』という反応でした。私が外を見ると、豪雨のなか自分(グランドハンドリングスタッフ)がずぶ濡れになりながらお客様の荷物が濡れないよう一生懸命いつものように仕事をしていました。その時コクピットのキャプテンから『大変申し訳ありません、少々遅れます。でも外を見てください。もの凄い豪雨のなか我々の地上スタッフの方がお客様の荷物を慎重に濡らさないようにハンドリングさせていただいております。この遅れの分は我々が飛行高度を選択し、あるいはルートを選択することで必ず皆様を定刻にロサンゼルスまでお連れします』とアナウンス。このとき、キャビンの中で拍手が起こると同時に、安堵の表情と外を見るお客様の姿がアチコチに見えました」と述べ、いかなる天候下でも荷物を傷つけないようにハンドリングする姿こそが日本航空グループのグランドハンドリング魂だと語った。
日ごろから我々が当たり前のように享受している、航空機の快適かつ安全な飛行と定時運航は、グランドハンドリングスタッフやパイロットなど運航に関わるすべてのスタッフが一丸となることにより達成されているのだ。世界中の空港関係者がその質の高さに驚くというJALのグランドハンドリングだが、特に熟練した「ロードマスター」と呼ばれるスタッフをJALが就航している世界中の空港に配置し、海外の空港の技術向上にも日々努めているという。
立ち入り禁止場所であるランプエリアで働くスタッフは、我々乗客と直接接する機会はない。しかしながら、楽しみにしていた空の旅や仕事での移動、宅配便による荷物の送付など、どれ1つとってもグランドハンドリングという仕事は我々利用者と密接な関係を持つ大切な仕事だ。そして、1つ1つの荷物を手で大切に扱い、1つ1つの作業を声を出し確認しながら進めるその作業は、意外なほどアナログだ。「顧客満足度ナンバーワン、愛される会社」を目指すJALは、その規模に似つかわしくないほど手作りの会社なのだと今回のコンテストを通じて感じた。