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三菱ふそう、全国から108名が参加した「第46回サービス技術コンテスト」実施
2015年度はサービスフロントによる「ニーズを引き出し、提案する能力」を重視
(2015/10/14 11:30)
- 2015年10月10日開催
三菱ふそうトラック・バスは10月10日、同社の喜連川研究所(栃木県さくら市)において「第46回サービス技術コンテスト」を実施した。三菱ふそうのトラックおよびバスを取り扱う販売会社のなかから、メカニック2名とサービスフロント1名がチームを組み、顧客対応を競うコンテスト。全国の販売会社などから36チーム、108名が参加した。
1時間で問診から整備対応までを競う
コンテストのうち、実技は1時間の制限を設けて行われた。課題車両は「キャンター」の4tダンプトラック。実際に用意されたのは荷台を架装を施す前の車両だが、ダンプとして実使用した場合に想定されるトラブルや点検項目をユーザーに提案することも競技の内容となっている。
来店したユーザーは「造園会社の社長」という設定で、造園会社なので土砂の輸送はもちろん、立木の輸送などにも車両が使われることが想定される。また、泥の多い場所での利用が考えられるほか、持ち込んだ社長自身以外に社員も運転するため、来店した人がクルマの状態をすべて把握してないことも考慮することになる。
課題として出された来店の目的は「6カ月点検」で、現在の4tトラック(総重量8t未満)の初回車検は2年なので、購入から1年半が経過しているという設定。以前の大会で行われた競技内容は「修理」ということだったが、点検では特にトラブルの申し出がない状況での対応となり、しかもオイル交換など車両の状態に合わせた整備提案まで含まれてくる。
競技はまず、ユーザー役の人からサービスフロントがよく話を聞いて応対するところからはじまった。今回の課題である「6カ月点検」という依頼は、このとき初めて各チームが知ることになる。競技ではサービスフロントの対応を重視しているため、どのように話を聞き、それに対してどこまで整備項目の提案が行われるかもポイントになる。車両に関するユーザー側からの指摘事項は1つだけで、トラックを整備に持ち込むときの回送中に、トンネル内で「SAMウォーニングの点灯があった」という点だけになる。
この問診をさっと終わらせて実車の確認に進んでしまえば、整備時間の確保という意味ではスムーズに進む。しかし、競技でもフロント対応が得点の約半分を占めるように、この点は重要項目。ユーザー役の人が口にする会話のなかには、今回持ち込んだトラックとは別に利用している2tトラックのタイヤがバーストしたエピソードなどもあり、それを安全点検に活かしたり、その2tトラックの安全点検を提案できるかなども重要とされた。
一方、課題車両のキャンターには複数の修理項目が隠されていた。2人のメカニックが手分けをして、点検ハンマーでボルトの緩みを確認したり、ノートPCをトラックの診断コネクターに接続。専用ソフトウェアを使って内部のコンピュータが検知した情報を利用して問題がないか調べていく。
大きな修理項目としては、坂道発進のときに後退を防ぐ「EZGO(イージーゴー)」。故障は単純な断線が原因で、故障自体は警告灯やコンピューターからのエラーメッセージですぐに分かるが、対応するためにブレーキやトランスミッションといった個所から点検をはじめると、なかなか故障部分にたどり付けないという。
また、SAMウォーニングの点灯は、ユーザー側でスモールランプをLEDタイプに交換したことによるもの。交換したLEDによっては抵抗値の特性が電球と大きく異なり、クルマが球切れと判断するケースもあるという。
このほか、課題車両にはプロペラシャフト接合部の緩み、後部反射板の欠落、ブレーキランプの球切れ、ワイパーゴムの劣化、エアフィルターの汚れ、冷却水の不足などが隠されていた。
今回、ほぼすべてのチームが対応すべき項目の発見に成功したが、時間内にすべて対応できたチームはゼロ。競技では、時間が不足してすべての問題に対応できないことがもともと想定されており、限られた時間のなかでどれだけユーザーに説明し、整備提案をして対応できたかがポイントだった。
チームごとに対応はさまざまで、フロント対応でしっかりと聞き出すチームもあれば、さらっとトラックの確認に進むチームもあり、見つかった不具合対応の順番もさまざま。整備のやり方1つをとってもキャビンの上げ方や安全確認方法、車両のフロア下に潜る方法なども異なっているように見えた。
なお、コンテストは実技競技での1000点に加え、ペーパーテストによる学科競技も実施。1人100点で最大300点が加算され、計1300点満点の点数によって順位が決定した。
いわき支店、郡山支店混合のSC北日本 東北・北関東〈1〉チームが優勝
競技が終わり、場所を移して1位から3位までのチームが表彰された。優勝はSC北日本 東北・北関東〈1〉チーム。準優勝はSC西日本 中国・西四国〈2〉、3位はSC東海・北陸〈5〉。
優勝したSC北日本 東北・北関東〈1〉チームは、サービスフロントにいわき支店の中根剛氏、メカニックに郡山支店の小野寺孝太郎氏と樽川正人氏の3人によるチーム。3人は2年連続で同じチームを組んでコンテストに挑んでいる。前述のとおり、すべての課題をクリアすることはできなかったものの、実技、学科ともに高得点を挙げた。
優勝チームでは、準備の段階では前年のように修理依頼から不良個所を特定して直すという実技課題を予想しており、ユーザー役の人から「6カ月点検」と告げられたときには「頭が真っ白になった」とのこと。優勝チームにとっても今回の課題は予想外のものだったようだ。
表彰式では総評として、大会会長でもある三菱ふそうトラック・バス セールス・カスタマーサービス本部 カスタマーサービス統括部長のヤン・モレス氏から「今日ここにいるのは、全国3000名のメカニック、フロントの合計のトップ3%。ここにいることが勝利だ」として、競技参加者を讃えた。
日常にあることを盛り込んだコンテストへ
前回までの実技では、故障個所を見つけて直すことに主眼を置いていたが、今回はフロント業務を重視。点検依頼を受けて、ユーザーへの説明と提案に重点を置いたことが特徴となっている。大会実行委員長で、三菱ふそうトラック・バス セールス・カスタマーサービス本部 サービスマネジメント部長の岡田祐樹氏は「真のご用命は何か? サービスはどんなことを提案できるか? 定期点検をして、ご用命以外の提案ができるかも審査の項目となる」とコンテストの狙いを説明した。
また、大会役員をつとめる三菱ふそうトラック・バス セールス・カスタマーサービス本部 FUSOアカデミー部長の村木正人氏は、現在の研修制度でもある「FUSOアカデミー」について説明。「資格制度を導入しており、まずは国内で行い、海外にも広めたい。メカニックは全体で2千数百人。販売店にはメカニックの研修は平均して年間5日間を目標にお願いしている」と解説した。
大会顧問で表彰式のプレゼンターも務めた三菱ふそうセールスジャパン本部長の三輪為夫氏は、整備において「生産性の改善」を重点項目にしているとし、販売店のビジネスとして必要である以外に「工場に長くクルマを停めておきたくないお客様にも喜ばれること。生産性の改善はお客様と工場がwin-winの関係になる」と効率化の重要性を訴えた。また、今回の競技については「タスクが今まで以上に増えるので、もっと時間を意識してもらいたい」と、生産性を高めるという狙いにも合致した課題であると説明した。
さらに三輪氏は、最近の整備士の人材不足についても触れ、「従来は高校から専門学校に進んだ専門学校卒を採用していたが、最近は高校卒業生を採用。ゼロから教育していくことも試みている」と話した。三輪氏はトラックの整備士は仕事のやりがいがあると語り、その理由として、乗用車と比べて桁違いに走行距離の多いトラックの整備は、車検に偏りがちな乗用車整備よりも一般修理が多く、整備士としてのやりがいや達成感があるとして、その点もアピールしながらリクルーティングを行っていると述べた。