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ブリヂストン、天然ゴム資源「パラゴムノキ」の簡易病害診断技術を確立
天然ゴムの生産量を将来的に確保
(2015/12/1 00:00)
- 2015年11月30日発表
ブリヂストンは11月30日、天然ゴム資源「パラゴムノキ」の簡易病害診断技術を確立したと発表した。同日、都内において同技術に関する発表会を開催した。
ブリヂストン中央研究所 渡辺訓江氏は、現在の世界の天然ゴムの生産量と消費量を示し、世界で年間1100万t生産されている天然ゴムのうち、約90%をタイヤ産業が使用しているという。国別消費量では、2013年のデータにおいて中国が世界の4割弱を消費。これは自動車生産の伸びにリンクしている。
天然ゴムの特徴は、「高強力」「耐摩耗」「低燃費」と優れたものを持っており、一般的なタイヤ成分の約半分が天然ゴム由来のものとなる。強度が高いことから、トラック・バス用、建設機械用、航空機用など耐荷重の大きいタイヤは100%が天然ゴムになっているという。
この天然ゴムは、「パラゴムノキ」から樹液(ラテックス)を採取することで原材料を得ており、主な生産国はインド、スリランカを含むアジア地域になる。ブリヂストングループも、スマトラ、カリマンタン、リベリアに農園を持ち、天然ゴムの採取を行なっている。
このパラゴムノキの農園で問題となっているのが、特有の病気「根白腐病」の発生だという。この病気にかかったパラゴムノキは、根の成長により周囲に被害が拡大し、現状では専門家が葉の変化を目視して判断するしかないという。
そこで、ブリヂストンはこれまで、「リモートセンシング技術(衛星画像解析による診断)」「ラテックスの成分分析」「葉の表面スペクトル温度の測定」「DNAレベルでの病原菌の検出」といった診断技術を開発してきた。今回発表された診断技術はDNAレベルでの病原菌の検出に属するもので、より簡易な形での検査ができるようにしたLAMP法を用いるものとなる。
従来方法より安価で手軽なLAMP法
LAMP法については、東京農工大学 大学院 教授 農学博士 有江力氏が説明。有江教授によるとLAMP法はLoop mediated amplificationの略で、4~6種のプライマーを使うことで標的となるDNA配列を捕捉、短時間で病気の原因となる標的DNAを爆発的に増幅できるという。
このLAMP法のよい点は63℃で反応するため、電気ポットで沸かしたお湯などで反応を進めることができ、15分~60分でDNAを109~1010倍に増幅できること。反応が進めば目で見ても標的DNAがあるかどうか分かるとし、蛍光試薬を加えることでより明確になるという。
これにより、検査を行ったパラゴムノキが病気の原因となるDNAを持っているかどうか分かり、伐採をするかなど病気への対応があらかじめ可能となる。
今後の検討課題としては、費用や定量などを挙げ、試験費用の低価格化を図るとともに、試験に用いる量が多いと本来発病しないものまでも発病すると判定するなどのないよう知見を積み重ねていくとしている。
この新しい簡易病害診断技術だが、ブリヂストン中央研究所 渡辺訓江氏によると、ブリヂストン社内だけの技術にするのではなく、広く利用される技術として開発し、試験キットなどとして製品化をする際は製薬メーカーと協力することが必要だろうとのことだった。