インプレッション
ダイハツ「コペン セロ」
Text by 真鍋裕行(2015/9/1 00:00)
待望の丸目登場
2014年6月に販売が開始された2代目となる新型「コペン」。先代は愛らしい丸型のヘッドライトとテールレンズが印象深かったが、新型ではスタイリッシュな新意匠の「コペン ローブ」から導入されることになった。同年11月には、力強くアグレッシブな外装パーツを纏った「コペン エクスプレイ」が登場。そして今回、待望の丸目モデルとなる「コペン セロ」の販売が“第3のモデル”としてスタートした。
新型コペンは、2014年の登場時に「DRESS-FORMATION(ドレスフォーメーション)」と呼ばれる、外装パーツを簡単に取り替えられる画期的なアイデアを盛り込むことにより、ユーザーが好みのスタイルに変更することができると発表。その流れを受けて、外装パーツの一部をマットブラックに仕立てたエクスプレイが生まれた。エクスプレイはフェンダーやサイドステップ、バンパーなどの外装パーツに手が加えられたモデルなので、ヘッドライトの意匠はローブと同様のキリッとして吊り上がったデザインだった。しかし、「初代コペンの丸型ヘッドライトこそがコペンのエクステリアイメージ」という人も多いようで、丸目モデルの発売が待ち望まれていた経緯もある。
外装パーツを交換できるという画期的な意匠変更を可能としたのが、「D-Frame」と呼ばれる骨格構造になる。通常のクルマは、モノコック構造と呼ばれるシャシーを採用していて、フレームとボディーの外装パーツが一体となって路面からの入力を受け持っている。だが、新型コペンでは骨格と樹脂外板が分かれているので、主に骨格が入力に対応することになる。外装パーツに路面からの入力を頼らないということは、強靱な骨格が必要となるのは想像に容易い。そのため、D-Frameを開発するための専任の開発チームが組まれ、強度分析などが行われた。その結果、新型コペンは骨格+樹脂外板という新しい考え方を取り入れたにも関わらず、初代コペンに対して上下方向の曲げ剛性で3倍、ねじれ方向の剛性で1.5倍の強度を誇るものが完成した。
強靱なD-Frameに組み合わせられるエンジンやトランスミッション、シャシーなどの基本コンポーネントは、今回のセロを含めて3モデルとも同様となる。エンジンは3気筒のインタークーラー付きターボのみで、最高出力は64PS、最大トルクは92Nm。トランスミッションはCVTか5速MTから選択できる。このように、内外装の意匠以外はすでに発売されているローブやエクスプレイと同様のスペックとなる。足まわりやセッティングに関しても変更を受けていない。
改めてその乗り味は?
ということで、ドライブした印象は基本どのモデルも同じになるわけだが、改めてセロに乗る機会を得たので、そのフィーリングをお伝えしたい。
大人2人がしっかりと乗れて快適に走ることができるコペン。小さいながらも収納スペースが用意されていて、ルーフを閉じている状態ならば2人分の荷物をトランクに搭載することもでき、小旅行なら対応してくれる。対比されることが多いホンダ「S660」は究極の軽スポーツカーとして痛快なハンドリングを目指しているが、このようにコペンはオープンカーを楽しめる素養を持っている。それは電動ハードトップが採用されていることからも分かり、ルーフを簡単に閉めることで快適なクルージングが楽しめる。GTカーとしての性能を追求しているのが、コペンの最大の特徴といえる。
それでも、スポーティに走らせようと思えば応えてくれる性能も持ち合わせている。直列3気筒エンジンのレブリミットは7500rpmからで、過給圧が掛かってくるのが3500rpm付近から。過給圧が掛かる領域を上手につなげれば、俊敏性のある加速が味わえる。高剛性のD-Frameを採用しているお陰で、オープン状態でも十分なコーナリングスピードを保てるところ、ルーフを閉じることでその性能はさらにアップ。クローズド状態で走ることで、オープンではフロントが逃げ気味だった特性が抑えられる。そしてコーナリング中の切り増しにもより応えてくれるようになり、さらに高いコーナリング性能を示してくれた。
ローブ、エクスプレイ、セロという3モデルが出そろった新型コペン。ドレスフォーメーションと呼ばれる外装パーツの取り替えも可能にしたことや、ルーフのカラーリングをラッピングで変更できる施策など、これまでの市販車にはない取り組みが行われている。外装パーツは、これからもサードパーティを含めて色々出てくるようで、新型コペンの楽しみ方がさらに広がっていくのは間違いないだろう。