レビュー

【スタッドレスタイヤレビュー】ダンロップ「ウインター マックス 02」

 ダンロップ(住友ゴム工業)のスタッドレスタイヤに、新しく“ダンロップ史上最高傑作”と謳われる新製品「WINTER MAXX 02(ウインター マックス ゼロツー)」が誕生した。基本性能は前身であり、高い評価を得ていた「ウインター マックス 01」から引き継ぎながら、①氷上性能を向上させ、②効き長持ち性能を高めた点が大きな違いだ。

 そこで今回は、北海道にあるダンロップのテストコースでその違いを体感してみることにした。試乗日はこの時期(2月初旬)の北海道とは思えないほど暖かく、さらに試乗時間の中盤からは小雨が交じるという悪条件での試乗となった。そのため、テストコースでウインター マックス 02の性能をしっかりと確認するにも、コース内の雪道をタイヤで掘ってしまうなどコースを痛めてしまう可能性(1度コースを痛めてしまうと、その後の開発テストに支障が出てしまう)があることから、テストは周回を制限して行なわれた。

 そのかわり、コース外の一般道での試乗では、橋の上の凍結路面から多量の雨を含んだシャーベット路面まで、多彩な悪条件のなかでその実力を確認する絶好の機会となった。

“ダンロップ史上最高傑作”と謳われる新製品「WINTER MAXX 02(ウインター マックス ゼロツー)」
「ナノフィットゴム」をさらに進化させた「超密着ナノフィットゴム」を採用し、トレッドパターンでは「MAXXシャープエッジ」をベースに最適化を追究した「MAXXグリップパターン」を導入して氷上ブレーキ性能やブレーキ性能、コーナーリング性能を強化
試乗会は北海道にあるダンロップのテストコースで早朝から実施された

 まずは、前モデルであるウインター マックス 01を装着したトヨタ自動車「アクア」をコース内の登坂路で試乗する。テスト条件は、大人2人が乗り込み勾配路を上り、車体が完全に傾斜した状態で一時停止して、そこから再発進を試みるという内容だ。01の場合、アクセルをゆっくりと踏み込んでも駆動力がじんわりとしか伝わらず、登坂を開始することができない。よって、そこからさらにアクセルを踏み込んでいくのだが、極端に言えばミリ単位でアクセルを踏み込んでいっても一向に前に進む気配は増えず、ある一定の段階からは今度は駆動力が抜けはじめ、最終的にはトラクションコントロールが作動して発進不可能な状態に陥ってしまう。

ウインター マックス 01装着車では登坂で駆動力が抜け、発進不可能な状態になる

 同じテスト条件で臨んだウインター マックス 02では、最初にゆっくりと踏み込むと01と同じようなタイミングで駆動力が発生する。当然、このタイミングでは発進するために必要な駆動力は得られていない。違いはここからだ。さらにじんわりと踏み込んでいくと、ゆっくりとではあるが確実に車体が前へと動き出すのだ。これに気をよくして踏み増してしまうとスリップ率が高まって駆動力が抜けてしまうが、じんわりとしたアクセル操作をそのまま続けていけば登坂路を上りきることが可能だった。このテストは01と02でそれぞれ2回行なったが、いずれも結果は同じ。01でもサイドブレーキを駆使すればなんとか上れそうなシーンもあったが、最終的には上りきることができなかった。

同条件でもウインター マックス 02では、じんわりとしたアクセル操作を続ければ登坂路を上りきることが可能

路面変化なども01より格段に分かりやすい

 次に、周回路にある左右の開けた平坦路面で、ゆったりと大きなサインカーブを描くようなスラローム走行を行なった。ウインター マックス 01、ウインター マックス 02ともに車両制御装置であるVSCはONのままで、車速は50km/hを維持した。01では右→左というステアリング操作にわずかながらの遅れを伴ってアクアの鼻先が動き出し、次いで車体の後半部がさらに遅れてついてくる、そんなイメージでスラロームをこなす。このとき、意図的にステアリング操作を早めると一気に高まりをみせるスリップアングルに対応しきれずに車体の走行ラインはふくらみ、サインカーブが徐々に大きくなってくるのがよく分かる。

 同じようにウインター マックス 02でテストしたのだが、違いは最初のステアリング操作から実感できた。端的に言えばアクアの動きがステアリング操作に忠実になっているのだ。ステアリングを操作した際の重みが増し、同時に掌に伝わる路面の情報も確かなものへと変化した。これにより、例えばスラローム走行中の路面変化なども01より格段に分かりやすくなっているため、早朝(試乗会開始時はまだ薄暗かった)や深夜などでヘッドライトの灯りのみで路面状況を把握しなければならない心もとないシーンでも、安心して走行することができるだろう。

 限界付近の挙動をみるべく徐々に車速を上げていくと、当然ながら一定の段階でステアリングの操作量が増え、同時に後輪が横滑りを開始するのだが、ウインター マックス 01では早々にVSC制御が入るタイミングでも、ウインター マックス 02ではまだ舵がしっかりと効いていてVSCの介入もない。また、そこから少しだけ車速を上げて後輪が滑り出すような状況を作り出していくと、さすがにVSCが介入して制御を始めるが、その量は01よりも体感的には半分以下だ。こうしたことから、02の雪柱せん断力とエッジ効果の高さを体感することができた。

 続いて、ウインター マックス 01から格段に向上したとされる氷上性能を試すべく、氷盤路での試乗を行なった。車両は引き続き前輪駆動のアクアだ。01ではステアリング操作に比例して徐々にスリップアングルが増大する傾向にあるが、ウインター マックス 02では明らかにスリップアングルの増大率が低下し、狙った走行ラインを保ちやすかった。

 また、制動力に関しても02の場合、車体が完全停止する直前まで一定の減速度を保てるのに対して、01は終盤で減速度が弱まる。つまり、さらにブレーキを踏み足したくなる衝動にかられるシーンが多かった。ただ、残念ながら雨足が強く氷盤路には所々、水が浮き始めていたことから、いわゆる氷の上での正しい評価とは必ずしも一致しないかもしれないが、それでも、実際の交通環境では氷路で雨というシーンは考えられる。そうして意味でも比較試乗は有意義だった。

ウインター マックス 02はブレーキングでも完全停止の直前まで減速度が一定(写真の試乗車はプリウス)

4WDプリウスの後輪が持つ力強いモーター駆動をしっかり路面に伝えてくれる

 一般公道ではメルセデス・ベンツの先代「Cクラス」(W204)とトヨタの新型「プリウス」の4WDモデルで試乗を行なった。筆者は先代Cクラスのステーションワゴン版(S204)を愛車にしているため、雪道での素性はよく理解している。そこで最初に結論だが、ウインター マックス 02では、前後輪のバランスが01よりも向上し、車体の安定性が増した印象が強い。これは登坂路、降坂路問わず、直線やカーブといったいずれのシーンでも終始感じられた。

 まずはウインター マックス 01を装着したCクラスで走り出す。最初のカーブでゆっくりとした減速(ブレーキペダルに足を乗せて軽く踏んだ状態。▲0.1~0.15G程度)では雪柱せん断力によってグッと前荷重になることが伝わり、その前荷重のままゆっくりとしたステアリング操作を行なうと、今度はエッジ効果によって車体が確実に向きを変えていく。02では、この減速→ステアリング操作まで、操作に対する応答性が高く、これが01との大きな差として体感できた。ご存じのとおりCクラスは後輪駆動だが、基本的な特性としてドライ路面から氷上に至るまで後輪のスタビリティが高い一方で、相対的にステアリングを通じた路面情報が弱い。これは路面が滑りやすくなるとその傾向が顕著となるのだが、02を装着すると滑りやすい路面での前後差が縮まっていく、そんな印象を抱いた。

ウインター マックス 01と比べ、02では操作に対する応答性が高いことを体感

 最後にプリウス。このプリウスの4WDは独立した後輪用のモーターによって最大70km/h程度まで後輪が駆動を行なうのだが、シャーベット状のとくに滑りやすい路面であっても力強いモーター駆動をしっかりと路面に伝えてくれる。圧雪路でもこの印象は同じで、低速カーブで徐々にアクセルを開けていくようなシーンでも横方向に駆動力が抜けてしまうことはなく、確実に後ろから車体を押す力を実感できた。

一般道での試乗では、前後輪のバランスが01よりも向上して車体の安定性が増した印象。滑りやすい路面でもプリウス後輪のモーター駆動力をしっかりと路面に伝え、確実に後ろから車体を押す力を実感

 性能向上を果たしたウインター マックス 02だが、こうした走行性能が長持ちする(ダンロップ史上最長)という点に筆者は大きく惹かれた。さらに、降雪の少ない地域に住みんでる身としては、雪上の性能もさることながら、「しなやか成分」によって氷上でのブレーキ性能が長持ちするという点にも大きな関心を寄せている。これは実際にウインター マックス 02を購入し、経年変化を確認してみたい。また、後輪駆動の車両開発は前述したCクラスでテスト走行を重ねたということから、Cクラスオーナーのみならず、全般的に後輪スタビリティ重視の欧州車などとのマッチングも良好ではないかと推察する。

西村直人:NAC

1972年東京生まれ。交通コメンテーター。得意分野はパーソナルモビリティだが、広い視野をもつためWRカーやF1、さらには2輪界のF1であるMotoGPマシンの試乗をこなしつつ、4&2輪の草レースにも参戦。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)理事、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会 東京二輪車安全運転推進委員会 指導員