レビュー
【スタッドレスタイヤレビュー】ダンロップ「ウインターマックス SJ8」を1シーズン使ってみた
2017年10月2日 12:24
いきなり個人的な話になってしまって恐縮だけれども、筆者のカーライフにおいてダンロップ(住友ゴム工業)のタイヤはカナリ大きな比率を占めていたりする。以前、クロスカントリータイプの4WDに乗っていた時は、スタッドレスとして「GRANDTREK(グラントレック) SJ4」を履いていたし、現愛車の初代「マツダ CX-5 XD AWD」のサマータイヤは「GRANDTREK PT3」だ。
少し本題と外れてしまうが、このPT3。乗り心地、操縦性、静粛性などなどCX-5用に開発されたのでは?と思ってしまうほどマッチングがイイのだ。「もうこれ以外考えられない!」ってほど気に入っていたものの、そこはあくまでもサマータイヤ。2014年2月に首都圏を襲った豪雪では、AWDのパフォーマンスを発揮することができず取材先で立ち往生。幸いなんとか自宅まで帰ることはできたのだけれども、しばらくはクルマで動くことができなくなってしまった。そんなこともあってスタッドレスの必要性を痛感したものの、その後しばらくは緊急を要する事態は発生せず、仕事でも自車で雪国に出かけることもなかったため、スタッドレスタイヤ装着の優先順位を下げていたのだ。
だが、2016年シーズンになって雪国に出かける案件がいくつか発生。いよいよスタッドレスタイヤが必要になってきた。
それでは、とCX-5の純正タイヤサイズを確認してみると225/65 R17が標準となっている。19インチの設定もあるけれど、扁平率の低いタイヤは価格も高いし、空気量が多い方が乗り心地はよいハズなので、今回は軽やかにスルー。で、このサイズのスタッドレスタイヤを調べてみると、メジャーなブランドからはほぼSUV用としてラインアップされているようだ。今回は「WINTER MAXX(ウインターマックス) SJ8」を装着してみることにした。
ダンロップがリリースするSUV向けスタッドレスタイヤは、前モデルまでは「グラントレック」ブランドのSJ7だったのが、このSJ8からは「ウインターマックス」ブランドに衣替えしている。このモデルからは独自の新材料開発技術である「4D NANO DESIGN(フォーディー ナノ デザイン)」により開発した「ナノフィットゴム」を採用するなど、新世代へと進化を遂げていることが理由だろうか。詳しいスペックは(ダンロップの新世代SUV用スタッドレス「ウインター マックス SJ8」の技術を見る)を参照していただきたい。
ということで、2016年も残りわずかとなった12月26日、「タイヤセレクト環七杉並店」(東京都杉並区)に出かけSJ8を装着することにした。最初はPT3を外して純正ホイールに装着する予定だったが、ダンロップ製オリジナルホイールが意外に安価だったため予定を変更。在庫があった「Violento JS」に装着して貰うことにした。「通常の2倍以上の塩害噴霧試験をクリアした塩害対策仕様」ってことらしいので、スタッドレスとのコンビネーションは抜群。それでいて前車の時に購入した16インチの“テッチン”ホイールより安いんだから驚いてしまう(リム幅とか細部は違うけど)。「SJ7よりライフ性能を7%向上した」というのもSJ8のウリではあるけれど、まったく降雪の心配がない季節にスタッドレスの走行距離を伸ばしてしまうのはなんとも勿体のない話。これで冬期に装着した際、SJ8のパフォーマンスをより長期間持続できるハズだ。
オンロードで不安なし
さて、まずは雪のない普通のオンロード。日常的に雪が降らない西住みほどそこでの走行比率が高くなるワケで、重要なポイントになってくる。
そんなことを考えつつタイヤセレクト環七杉並店を出発。すぐに感じたのはトレッド面のしっかり感だ。一般的にスタッドレスタイヤだと細かなサイプが数多く刻まれているため柔らかい印象になりがちだけれども、このタイヤはまったくの逆。街乗りの速度域ではとてもしっかりとしたフィーリングで、いかにもスタッドレスといった柔らかさは感じない。峠道などをちょっと元気に走ると若干ヨレる印象はあるものの不安を覚えるほどではなく、「ああ、タイヤが減って勿体ない」と心理的なブレーキが掛かって自然とアクセルを緩めてしまう(?)程度。逆にステアリング中立状態からの反応はPT3以上で、キビキビと走ることができるのが面白い。
ロードノイズに関しては工事区間を通った時に一度だけ盛大なノイズが発生したことがあるものの、それ以外はPT3とそれほど変わらず静かなもの。この点からもいかにも「スタッドレスタイヤを履いてます」ってフィーリングはあまり感じない。
高速道路でも印象は変わらず。普通に運転している限りではネガな部分を感じることはほとんどなかった。直進安定性についても同様で、100km/h巡航時でもステアリングには手を添える程度で十分だった。もうひとつ気になる雨天時の性能に関しては、そういったシチュエーションに遭遇しなかったこともあって残念ながら未確認となってしまっている。と、装着当初の印象はこんな感じ。
雪道での印象は?
雪道のテスト場所として選んだのは信州。昨年ヒットした某アニメ映画の舞台とも言われているあたりだ。決して、取材のついでに“聖地巡礼”したかった、なんて不埒な理由ではないので念のため。
シチュエーションとしては高速道路を降りてからしばらく一般道を走り、ワインディングを登っていく途中から雪道になる、って感じ。実際、ルートの途中にもあるのだけれど、スキー場に行くような感覚だと思ってもらえば分かりかりやすい。
くねくねした山道を登っていくと、日陰になった部分から徐々に路面に雪が現れ始める。聞いたところによると2週間ほど前に降った雪が残っているとのことで、溶けて凍ってを繰り返した結果、ツルツルとは言わないまでも圧雪というよりはアイスバーンに近い状況になっている。クルマのメーターに表示される温度計は-7°程度を示しており、かなり冷え込んでいることが伺える。
そんな雪とも氷ともつかない路面状況でも、SJ8はしっかりとしたグリップを発揮。路面の状況もキチンとステアリングに伝えてくれるので、安心して走ることができた。半面、スキー場の近くということもあってチェーンで走るクルマがいるためかデコボコになっている路面が多く、それもキッチリ伝えてくれるので「酷い道だな、おい」なんて閉口することにもなるけれど。
こうした路面を走っていて顕著に感じることができたのは、縦方向のグリップの良さだ。これはアクセルオンでの加速時はもちろん、ブレーキング時にもハッキリと感じられる。試しに安全なスペースで40km/h程度からフルブレーキングしてみたところ、ABSの介入がない状態でも挙動を乱すことなく真っ直ぐにストップ。4輪のグリップバランスが異なる状況でブレーキをロックさせると、停止直前に左右どちらかにスリップしてしまうことがあるけれど、SJ8&CX-5のコンビはそんな兆候をまったく見せることがなかった。ブロックやサイプの形状、それに加えてナノフィットゴムの効果ってことなんだろうけれども、この安定感、安心感はドライバーにとって、「それはとっても嬉しいな」って思えるパフォーマンスだ。ただ、クルマとのマッチングもあるのだろうけれど、横方向に弱い印象も。これは縦方向のグリップが強いため相対的にそう感じてしまうのかも。コーナー入口ではキチンと減速して出口ではトラクションを活かして加速、いわゆる「スローインファーストアウト」で走るのが良いようだ。
続いて15cmほどの新雪が積もっている路面にもチャレンジ。こんなシチュエーションでも走破性は十分で、除雪が行なわれていない駐車場でUターン、なんて場合でも躊躇なく入って行くことができる。ただ、CX-5のi-ACTIV AWDは任意にデフロックを作動させることができないため、ハデに走ろうとすると時折、制御が入って駆動力が抜け失速してしまうのが残念無念。降雪直後の除雪されていない林道にチャレンジ、なんて遊びはヤメておいたほうが良さそうだ。まぁ、クルマ自体がクロカン4駆じゃないしね。
タイヤの話に戻して圧雪路はどうかと言えば、これはもう快適のひとこと。こうした路面でもグリップ力は十分だし、乗り心地も上々。知らず知らずのうちにスピードが上がってしまう。
今回、雪道の走行は限られた時間だったためミラーバーンのような路面を試すことはできなかったものの、SJ8は舗装路から雪道まで総じて満足できるパフォーマンスを持っていると実感することができた。