特別企画

【特別企画】WTCC開催記念 ツインリンクもてぎ撮影ガイド(後編)

 WTCC(世界ツーリングカー選手権)が戦いの舞台を鈴鹿サーキットからツインリンクもてぎに移す。前編に引き続きWTCCの新たな舞台となるツインリンクもてぎの撮影ガイドをお届けしたい。

 前編(http://car.watch.impress.co.jp/docs/special/20150904_719494.html)ではヘアピンカーブ、90°コーナー、最終のビクトリーコーナーを紹介した。後編では130R、S字カーブ、V字コーナーの撮影ポイントを紹介したい。

コースMAP ロードコース(PDF)

http://www.twinring.jp/course_m/pdf/road_course.pdf

 この記事では便宜上、パドックがあるサーキット全体のインフィールド側をインサイド、グランドスタンドのあるサーキットの外側をアウトサイドと呼ぶ。右コーナー、左コーナーにかかわらずマシンの進行方向の右側がインサイド、左側がアウトサイドとなる。

 S字カーブは地下道でインサイドとアウトサイドがつながっているが、撮影時の動線としてはインサイドの130R~S字カーブ、アウトサイドの130R~S字カーブ~V字コーナーと移動した方が撮影がしやすいと思われる。今回はインサイド、アウトサイドの順で紹介していこう。

 前編と同様に撮影ポイントの紹介は
・Google Mapsの空撮写真に撮影位置を図示したもの
・その場所からの風景写真
・サンプル写真は○○mmのレンズで撮った元画像(トリミングなし、リサイズのみ)
・その写真をフルHDサイズにレタッチしたもの(拡大画像はExifデータあり)
で構成している。カメラ本体はEOS 7DとEOS 7D Mark II。いずれもAPS-Cの撮像素子を使用しているので、35mm判換算するときはレンズの焦点距離を1.6倍していただきたい(例:300mm×1.6=480mm相当)。

S字カーブ インサイド

 最初はS字カーブの2つ目。背の高い照明灯付近から金網越しにS字2つ目の右ターンを狙うことができる。金網越しの流し撮りでスローシャッターを切るときは、絞り込まれるので金網が写り込むことが多い。NDフィルターを使用してできるだけ絞りを開けて撮ると金網の影響が少なくなる。

照明灯付近から金網越しにS字2つ目を狙う
金網は反射が少なく色かぶりは少なめ
300mm(480mm相当)のレンズを使用。シャッター速度1/30秒で撮影
フルHDサイズにレタッチした画像。フォトギャラリーにも掲載

 撮影ポイントを少しS字の進入側に移すと金網の位置が低くなる。観戦エリアは土手になっていて、金網の上スレスレから撮る場合は足下が傾斜地となる。土手の上段はフラットなので、好みで撮影ポイントを選択すればよいだろう。

 今回のサンプル写真はS字1つ目から2つ目に向かうマシンを流し撮りしているが、S字1つ目のクリッピングポイント付近を正面から狙うこともできる。

S字1つ目から2つ目に向かうマシンを流し撮りで狙う
土手の途中まで下り、金網ギリギリから見た風景
200mm(320mm相当)のレンズを使用。シャッター速度1/30秒で撮影
フルHDサイズにレタッチした画像。フォトギャラリーにも掲載

 同じ土手の左側に移動すると、130RからS字カーブへ進入してくるマシンを正面から狙うこともできる。マシンまでの距離があるので天候によっては陽炎の影響が出る。撮った画像を確認してフォーカスが甘かったりマシンに描かれた文字が歪むときは、土手の上段に上って撮った方が空気のゆらぎを避けることができる。

130RからS字カーブへ進入するマシンを正面から狙う
土手の途中まで下り、金網ギリギリからS字に進入するマシンを正面から見る
300mm(480mm相当)のレンズを使用
フルHDサイズにレタッチした画像。フォトギャラリーにも掲載

 S字カーブから130R方向に移動すると、S字に進入するマシンを斜め前から撮ることができる。この付近は土手に階段があるので足場はわるくない。常に数人のカメラマンが撮影している定番のポイントとなっている。

S字に進入するマシンを斜め前から狙う
土手の中断に下りて130R方向に向くと、S字に進入してくるマシンを撮ることができる
300mm(480mm相当)のレンズを使用
フルHDサイズにレタッチした画像。フォトギャラリーにも掲載

 土手の最下段に下りて130R側に少し移動すると、S字カーブを抜けるマシンを後ろから撮ることができる。金網越しの撮影なので、絞りが開放気味となる高速シャッターは問題ないが、低速シャッターで撮る場合は事前に絞り込みボタンで金網の写り込みを確認するなどの注意をしたい。

 サンプル写真はスローシャッターでマシンをアップで撮ったものと真後ろから写し止めたものなど。撮影意図や手持ちのレンズによって撮り分けることができる。

S字カーブを抜けるマシンを後ろから狙う
土手の最下段に下りて金網越しにS字を見る
300mm(480mm相当)のレンズを使用。シャッター速度1/15秒で撮影
フルHDサイズにレタッチした画像。フォトギャラリーにも掲載
300mm(480mm相当)のレンズを使用
フルHDサイズにレタッチした画像。フォトギャラリーにも掲載
レンズを159mm(254mm相当)にズームして使用
フルHDサイズにレタッチした画像。フォトギャラリーにも掲載

130R インサイド

 次に紹介する撮影ポイントは130Rとファーストアンダーブリッジだ。5コーナーを立ち上がったマシンはスーパースピードウェイ(オーバルコース)の下をくぐり、130Rに進入してくる。ファーストアンダーブリッジ側に近付くとブラインド気味となるため、特定のマシンを狙って撮るときは難易度が高くなる。

 130Rのクリッピングポイント付近を斜め前から撮れるポイントを紹介しよう。土手の中断、植え込みの手前まで下ると金網の影響もなく130Rを狙うことができる。

130Rのクリッピングポイント付近を斜め前から狙う
土手を中断まで下り、植え込みの手前から130R方向を見た風景
300mm(480mm相当)のレンズを使用。シャッター速度1/100秒で撮影
フルHDサイズにレタッチした画像

 ファーストアンダーブリッジ側に移動すると、130Rを抜けるマシンを横から狙うことができる。マシンまでの距離はグッと近くなるので短いレンズでも撮影できる。

130Rを抜けるマシンを横から狙う
植え込みの手前から130Rを見る
105mm(168mm相当)のレンズを使用。シャッター速度1/160秒で撮影
フルHDサイズにレタッチした画像

 先人達の足跡か自然にできたものかは不明だが、この付近の植え込みには中に入れる隙間がある。そこに入ると低い位置から撮ることができる。

写真では分かりにくいが、植え込みのところどころに隙間がある
植え込みの中に入ると低い位置から撮ることができる
105mm(168mm相当)のレンズを使用。シャッター速度1/160秒で撮影
フルHDサイズにレタッチした画像

 さらにファーストアンダーブリッジに近付き、130Rイン側の縁石が始まるあたりに移動するとトンネルを抜けた直後のマシンを撮ることができる。背景にホテルツインリンクが入るので広角で撮っても面白い。

縁石の始まるあたりを狙う
背景にホテルが入る
126mm(202mm相当)のレンズを使用。シャッター速度1/125秒で撮影
フルHDサイズにレタッチした画像
24mm(38mm相当)のレンズを使用。シャッター速度1/30秒で撮影
フルHDサイズにレタッチした画像

 インサイドの最後はファーストアンダーブリッジの中を走るマシンの撮影だ。金網の折れ曲がる位置までファーストアンダーブリッジに近付くと、トンネルの中を狙うことができる。トンネルの中と外では光量に大きな差がある。シャッター優先モードで撮るとトンネルから飛び出してくるマシンは露出オーバーになることが多い。トンネル内のマシンを狙うのであればマニュアル露出に設定した方が確実だろう。

トンネルの中を狙う
金網越しにトンネルの中を見る
300mm(480mm相当)のレンズを使用。シャッター速度1/125秒で撮影
フルHDサイズにレタッチした画像

130R アウトサイド

 アウトサイドは130R側からS字カーブ、V字コーナーと紹介していこう。最初は130Rのアウトサイドから金網越しにS字に進入するマシンを背後から撮影する。土手を上り金網に貼り付くと、130RからS字へ向かうストレートを真後ろから見ることができる。ここは午前中に逆光になる。11月のSUPER GTの頃は逆光がレコードラインを浮かび上がらせる演出をしてくれる。

S字に進入するマシンを背後から狙う
金網越しに130RからS字に向かうストレートも見る
300mm(480mm相当)のレンズを使用
フルHDサイズにレタッチした画像
昨年11月のSUPER GTで金網の目の前の報道エリアから撮影。秋の午前中は逆光がレコードラインに反射する

 130RからS字、V字、ヘアピンまで、アウトサイドの土手はほぼ切れ目なく撮影が可能だ。これだけ長い区間を金網などの障害物がなく撮れるサーキットは滅多にない。撮影ポイントは無限だが、いくつかのポイントを見てみよう。

 まずは130RからS字に向かうマシンを真横から流し撮り。インサイドと異なり5コーナーを立ち上がったあたりからマシンを認識できるので、狙ったマシンを撮ることは容易だ。土手の最下段に下りると撮影位置も低めで、金網の影響もなく快適に撮影することができる。

130RからS字に向かうマシンを真横から流し撮りで狙う
やや距離はあるが遮るものはなにもなく、快適に撮れる
300mm(480mm相当)のレンズを使用。シャッター速度1/125秒で撮影
フルHDサイズにレタッチした画像

 今回はアウトサイドからトンネル内のマシンを撮影しなかったので、風景と望遠レンズの画角だけ分かるように写真を掲載しておく。かなり距離はあるのでこちら側からマシンをアップで撮るのは難しそうだ。

130Rアウトサイドの土手からトンネル方向を見た景色
300mm(480mm相当)のレンズを使用

S字カーブ アウトサイド

 S字カーブのアウトサイドは流し撮りの最適ポイントだ。土手の最下段に下るとレコードラインの回転中心付近となるので、連写中のマシンはフレームの中にほぼ同じ大きさでとらえることができる。進入から立ち上がりまで撮ることができるので、カメラの連写性能しだいで20枚以上を一気に撮ることもできる。初心者で流し撮りの成功率が低い人でも何枚もピタっと決まった絵が撮れそうだ。

S字アウトサイドの土手の最下段からS字を流し撮りで狙う。ここはレコードラインのほぼ中心となる
進入側
クリッピングポイント付近
立ち上がり側
300mm(480mm相当)のレンズを使用。シャッター速度1/125秒で撮影
フルHDサイズにレタッチした画像
300mm(480mm相当)のレンズを使用。シャッター速度1/125秒で撮影
フルHDサイズにレタッチした画像
300mm(480mm相当)のレンズを使用。シャッター速度1/125秒で撮影
フルHDサイズにレタッチした画像

 WTCCのPR映像で紹介される特徴的シーンの1つが、コーナーの縁石で片側のタイヤを浮かして走るシーンだが、昨年までWTCCが行われた鈴鹿サーキットでは頻繁に片輪が浮くシーンは見掛けなかった。筆者はたまたまデグナー1つ目で片輪が浮くマシンを見掛けて撮影したが、デグナーは観戦エリアからの撮影は難しいポイントだった。

 スーパー耐久でS字カーブ1つ目で片輪を浮かせて走るマシンを目撃した。もしかするとWTCCでは頻繁に片輪が浮くシーンを見られるかもしれない。実際に走り出してみないとどうなるか分からないが、ひそかに注目の撮影ポイントだと思っている。

たまたま見掛けたS耐マシンの片輪走行。300mm(480mm相当)のレンズを使用。シャッター速度1/125秒で撮影
フルHDサイズにレタッチした画像
昨年のWTCCでデグナー1つ目を片輪走行するマシン

 S字カーブのアウトサイドは撮影ポイントの宝庫だ。次はV字側に移動して正面から撮影してみた。ポストの脇からS字カーブを見ると、1つ目と2つ目のクリッピングポイントをほぼ縦に見ることができる。複数台のマシンを1つのフレームに入れることができるので、WTCCの激しいバトル感を撮ることができそうだ。

ポスト脇からS字を狙う
S字1つ目から2つ目に向かうマシンを正面から見ることができる
300mm(480mm相当)のレンズを使用
フルHDサイズにレタッチした画像

 さらにV字側に移動し、S字カーブが左、右と開いて見える位置からの撮影。望遠レンズを持っていない人でもスタート直後の長い車列を撮ることができる。背景にフラッグが入るのでそれも演出に1つとなる。

さらにV字側に移動した位置から狙う
左右にラインが振れ、背景にフラッグが入る
55mm(88mm相当)のレンズを使用
フルHDサイズにレタッチした画像

 次はインサイドとアウトサイドを結ぶトンネルの出入り口付近。S字2つ目のクリッピングポイントを正面から撮ることができる。立ち上がってくるマシン、V字へ向かうマシンも流し撮りで撮ることができる。

地下道の出入り口付近からS字2つ目のクリッピングポイント付近、立ち上がり、V字への向かうマシンを狙う
S字側の風景
V字側の風景
300mm(480mm相当)のレンズを使用。シャッター速度1/125秒で撮影
フルHDサイズにレタッチした画像
300mm(480mm相当)のレンズを使用。シャッター速度1/125秒で撮影
フルHDサイズにレタッチした画像
300mm(480mm相当)のレンズを使用。シャッター速度1/160秒で撮影
フルHDサイズにレタッチした画像

V字コーナー

 V字コーナーも障害物はないので撮りやすいポイントだが、観戦エリアからマシンまでは少し離れている。また、撮影位置もやや高めとなる。今回はクリッピングポイント付近のサンプル写真を掲載したが、その前後も撮影することはできる。

土手の最下段からV字のクリッピングポイント付近を狙う
V字コーナーのクリッピングポイント付近の風景
300mm(480mm相当)のレンズを使用。シャッター速度1/60秒で撮影
フルHDサイズにレタッチした画像

その他

 以上で後編の撮影ポイントの紹介は終了だ。前編、後編で紹介したポイント以外にも、ダウンヒルストレートを正面から撮ったり、4コーナー付近をオーバルコースのバックストレート側から撮ったりすることができる。紹介していない場所で注目したいのは、メインストレートに沿ってオーバルコースに設置される仮設スタンドだ。

 V席と呼ばれるこのスタンドは筆者自身入ったことがないので撮影しやすいのか否か分からない。そのV席の最も1コーナーよりのエリアはV1ローソンシートとなっていて、ローソン/ミニストップ/ローチケで限定発売となっている。このV1ローソンシートは1コーナーを真横から見る位置なので、1コーナーのバトルやクラッシュシーンを撮ることができるかもしれない。前売り観戦チケットは

・自由観戦エリア券:5000円
・V・G・Zエリア券:6500円(V1エリア入場不可)
・ローソンシート:6500円(V1+V・G・Zエリア入場可)

 となっている。値段はV・G・Zエリア券と同じで、V1エリアにも入れるローソンシートは明らかにお得だ。是非V1ローソンシートから撮った写真をWTCCフォトコンテストに応募していただきたい。

奥川浩彦

パソコン周辺機器メーカーのメルコ(現:バッファロー)で広報を経て2001年イーレッツの設立に参加しUSB扇風機などを発売。2006年、iPR(http://i-pr.jp/)を設立し広報業とライター業で独立。モータースポーツの撮影は1982年から。キヤノンモータースポーツ写真展3年連続入選。F1日本グランプリ(鈴鹿・富士)は1987年から皆勤賞。