まるも亜希子の「寄り道日和」

電動レーシングカートで氷上を爆走する「第2回 ERK on ICE」

マシン1号車は私がドライブした先導車。タイヤがこの中でいちばん滑りやすいと聞き、ちょっと慎重に控えめにドライブ。エキスパートクラスの皆さんは、さすがマシン操縦の飲み込みが早く、1周目から激しいバトルが繰り広げられました。

 氷の上を静かに爆走する、電動レーシングカート。そんな、誰も見たことのなかったモータースポーツ「ERK on ICE」が誕生したのは、昨年のことです。その時はコロナ禍のために一般参加者の募集は断念し、メディア対抗戦のみ決行。編集部員+ジャーナリストの2名1組でパシュートを行なうトーナメント制となり、マシンは静かなのにドライバー同士はバッチバチの火花を散らした熱き戦いが繰り広げられたのでした。

 そして今年、ついに一般参加のドライバーを募集して、本格的にスタートとなった第2回ERK on ICEがKOSE新横浜スケートリンクで開催されました。カートは初めて、という人のための「ビギナークラス」と、カート経験者による「エキスパートクラス」は、1周100mのオーバルコースを用意ドンで競うスプリントレース。どちらも4名ずつの5回戦で行なわれました。

 あとはメディア対一般参加チームによるパシュートのトーナメント制となる「マスタークラス」も設定。いったいどんなドライバーが集まるのか、ワクワクで当日を迎えました。

新横浜スケートリンクを貸し切って、9月23日に開催された「第2回 ERK on ICE」。今回は200名までの観戦/見学もOKとなり、ご家族や仲間たちと楽しむ姿が多く見られました。外は気温30度の暑い日でしたが、中はダウンコートが必要な寒さ。でも競技は熱いというのも新感覚です。前回はドライバーとして参加した竹岡圭さんも、今回はレース解説者としての参加。フレンドリーなトークで会場を盛り上げてくれました

 今回私は、競技に参加するのではなく、ビギナークラスとエキスパートクラスの先導車ドライバーに任命されたんです。一般参加の皆さんは、氷上を電気カートで走るなんてまったく初めての人ばかり。練習走行の時間がないので、ぶっつけ本番となるわけです。どれぐらい滑るのか? 思ったよりグリップしてくれるのか? スピードはどれくらい出るのか? などなど、きっと不安や謎が多いはず。なので、1周ないし2周の先導走行を行なってから、レーススタートという形になりました。

 で、参加者の皆さんも初めてなら、私も先導車の電気カートに乗るのは初めてで、スタッフさんたちの噂によれば「先導車はパワーを絞ってあり、タイヤはいちばん滑りますよ」というではないですか。え~っ、めっちゃ不安! と思いつつ試しに1周走ってみると、確かに直線でもドリフトしそうなほどズリズリ(笑)。なので、先導車といえどもあわよくばドライビングを楽しんじゃえ~、なんて思っていた下心はスッパリと捨てて、安全運転に徹することにしたのでした。

 参加者の皆さんは、さすがにカートはまったく初めて、という人はいなくて、スリックカートで練習してきたという人や、マスタークラスには全日本カートのチャンピオンという強者も! 嬉しかったのは、女性ドライバーが3人ほど参加していたことですね。以前、筑波サーキットのイベントでお会いしたことのある女性もいて、再会に盛り上がってしまいました。

 そしていざレースがスタートしてみると、エキスパートクラスはのっけから大荒れ。先導走行が終わり、私が待機スペースに入ると、フォーメーションラップののちにグリーンフラッグが振られて競技スタートとなるんですが、アクセルを踏みすぎていきなり1コーナーでスピンしたり、壁のバルーンにぶつかったり。3周のレースでこんなにも抜きつ抜かれつ、大逆転やどんでん返しが起こるとは……とハラハラドキドキしちゃいました。

 ビギナークラスも、最初はおっかなびっくりだった人が、最終コーナーでは勢いよく突っ込んだりして、会場が沸きましたね。しかも参加者には皆さんご存知のパンツェッタ・ジローラモさんもいらっしゃって、大暴れ。さすがのパフォーマンスを見せてくれました。

 さて、最後はマスタークラスだったのですが、これがもう見応えたっぷりで、モータースポーツ新時代を告げるかのような、圧巻の走りが飛び出したんです。みんな思わず、身を乗り出してスケートリンクに釘付けになっていたほど。

 この時、私は確信したんです。長年、モータースポーツに関わり、楽しませてもらってきた1人として、なんとかこの先も永遠にこの楽しさを味わいたい、後世に伝えていきたいと思っていたんですが、それにはこのERK on ICEこそが、救世主となってくれるのではないか。日本のみならず、世界中にあるスケートリンクで季節も天候も問わずに競技ができ、爆音もCO2も出さずに競えるモータースポーツは、これしかないですよね。子供から大人まで、誰でもできるというのも、可能性が広がるなぁと感じています。

 参加した皆さんからも、「面白い」「もっと走りたい」「沖縄から北海道までを転戦してシリーズ戦にしてほしい」といった前向きな声もたくさんいただきました。次回はジュニアクラスを作ってほしいという意見も多かったので、主催した日本EVクラブの舘内代表は、嬉しい悲鳴といった感じだったのではないでしょうか。

 私も来年、また先導ドライバーでもいいので、この新時代のモータースポーツを一緒に盛り上げていけたらいいなと思っています。詳細は、Car Watchチームとしてマスタークラスに参戦した編集部の塩谷さんと、夫の橋本洋平によるレポートがアップされると思いますので、そちらをぜひチェックしてくださいね。

ビギナークラスの各回で優勝した5名の表彰式。いちばん左にいらっしゃるのは、レオンの表紙などで有名なパンツェッタ・ジローラモさん。暴れん坊な走りで会場を沸かせ、優勝してとても嬉しそうでした。女性ドライバーの「のんちゃん」も落ち着いた走りで見事優勝! 今回、女性ドライバーが大活躍だったのが私としては感激したポイントです
まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Zなど。 現在は新型のスバル・レヴォーグとメルセデス・ベンツVクラス。